名状し難き烏賊と人類種の天敵な山猫は呪いなんて信じない   作:犬(ゆきいろ)

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首輪付きと言う呼び方はカラード所属のリンクスへ、若干の皮肉が籠っているがリンクスなんて殆どカラードに登録されているから、所謂テロリストに首輪付きと呼びかけられても別段気に成らない。

誰かが人の言葉を解さない獣となじったきもしたけれど、ヒューマンもアニマルなのだから、別に何でも良いやという感じ。

言葉が通じた所で相互理解不可能なのも良くある事だ。言葉が通じて解決するのなら、国家解体戦は起きなかったし、リンクス戦争も無く、傭兵なんて存在せず、ありとあらゆる戦争は発生しない。

 

むしろヒューマンはビーストなのだ。

己の利益の為に、動物では考えられない様な手段と道具と手間をかける。

 

しかしリンクスは正しく生物なのだろうか?

 

個人差はあるけれど、皆多かれ少なかれ強化人間だ。

BFFのお友達はあまり弄ってないらしいけど、脳の方はそれなりに機械で補強していたし、アスピナのお友達はむしろ脳と脊椎以外殆ど捨てて、消化器官等は入れ替えさえ無く排除していた。あれは最早生物というより生体パーツ。

 

まあそんな事、どうでもいいのだけれど。

重要なのは『セレンのリンクス』で在る事。セレンに『最高傑作』と誇って貰える事。それだけでいい。

『セレンのリンクス』という存在に成れるだけでいい。

 

セレンの教えを自分の物に、セレンに誇って貰える傭兵に、どんな依頼だってこなして見せる。

セレン、せれん、ねえ聞いて! 沢山たくさんたくさん殺したよ!

沢山褒めて、ほめてほめて!

 

セレンと戦うの? いいよ! 任せて! 見ていて! セレンが育てたリンクスの実力だよ!ねえセレン! 勝ったよ! 貴女を殺せて見せたよ! ほめて! ねえ! 褒めて!

 

セレン?

ねえ、セレンどこ? どこに居るの? どうして褒めてくれないの?

 

何か間違えた? 何か違った? セレンの期待に応えられなかった?

 

ねえ、おかあさん、どこ?

 

誰も何も答えてはくれない。

 

 

 

 

 

子守歌の様なオルゴールの音が聞こえる。眠いっていたのだろうか?

 

セレンはあまり歌が上手では無かったし、子守歌を強請った事も無かった。企業が認可し放映する物はセレンが余り好きでは無かったから、眠る時はただひたすら彼女の鼓動だけを聞いていた。

それはとても穏やかな眠りだった。

オルゴールの音なんか比べ物に成らない程。オルゴール何かが代りに成る訳もない。それでも突然ピン、と音階板が中途半端に跳ね曲が止めば、それなりに気にはする。

ぴくりと『耳』が勝手に動き変化の正体を無意識に探ろうとする。

 

「おや、驚いた。またこんな所を訪れる物好きか」

 

古臭い調子の、気取った印象を受ける『狩人』の声がする。誰か来たのだろうかと『前足』をぴんと伸ばし、背を伸ばす。ぐっと伸びる背骨に『尻尾』がひょこりと自然に上がる。

 

『前足』?

普通人間に前足なんてものは存在しない。四脚機体に繋げると自身に後脚を持った様な認識になるが、『足』と『脚』では文字の通りに感覚も大分違う。ちなみにタンク脚部は正座で滑空している感じだったりする。

今のは間違いなく『足』の感覚だった。

 

頭はギリギリぶつからないけれど、『耳』の先が天井を擦り擽ったい。擽ったいままにぶるぶると首を振ると、ナニカがPAに接触したのか、ばちっと軽い音がする。

なんだろう。寝起きでよく分からない。くぁ、と欠伸をして見るが頭ははっきりしない。

 

『狩人』と誰かが話して居るみたいだけれど、不思議な事に狩人以外の言葉は上手く聞き取れない事が多い。

むしろ狩人は誰とでも会話が成立する。

セレンは知らない人、特にBFFのロリコンみたいのとは口を聞くなと言っていた。あとORCAの……おるか……? なんだっけ。

寝ぼけた頭でぽやぽやしていると、再び何かが干渉したのか跳弾したように、さっきから耳の先を擽る天井にめり込む。

コジマじゃなきゃいいや。コジマは不味い……。

 

もう一つ欠伸をして寝転んだところで、狩人のくつくつと大人ぶって控え目な笑い方が聞こえる。大人ぶっているが、あいつはずっと人形(nanny)を抱えている。ずるい。こっちはセレンが見当たらないというのに。

 

「気にするな。あれは唯の首輪に繋がれた可愛らしい仔猫でしかない」

 

しかも何かばかにされてた。

 

時々ハイテンションでやって来る人達に良くある、若い男女の組み合わせ、しかも今日は二人っきり! これは間違いなくアレだ。サベージビーストの人が言ってた。若い男と女が連れ立ってこそこそ人気の無い所に行くのなんか、うんんたらかんたら、と。

複数人で騒がれるのも嫌だが、自分達の秘密基地で見知らぬ男女の青姦とか繰り広げられたら堪らない(この新しい知識をセレンに披露して以来、何故かサベージビーストが僚機として雇えなくなった)。

いつもはただ騒ぎにくる若者を見ているだけの狩人が、今日は何事か話していると思ったら、急にこっちの悪口を言って来た。

 

ごろりと再び寝転んだばかりだけど、頭を持ち上げて突然の悪口に遺憾の意を表明する。

ぐるぐると、喉の奥で唸り声がなる。

仔猫だなんて評されては、傭兵の商売に影響がでてしまうじゃない。依頼が無ければセレンに褒めて貰えない。

 

……セレンは、どこ……?

 

最も重要な事を思い出し、慌てて視線を彷徨わせた先に苛烈なまでに強い、揺ぎ無い真っ直ぐな視線の女が映る。

 

せれん(おかあさん)……!」

 

機体()』との接続を切り離して、彼女の元に駆け寄って抱き着いた。

 

 

 

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