名状し難き烏賊と人類種の天敵な山猫は呪いなんて信じない 作:犬(ゆきいろ)
首輪つきは愛情いっぱいに育った、コジマ色のくりくりした可愛いお目目の男の子だ。実年齢は兎も角、殺す事と育て親以外への認識が薄いので、子供と言って差し支えはない。
自身も家族というものに縁遠く親子関係と言うモノを掴めない霞スミカがそれでも全力で愛情を注ぎ育てた自慢のリンクスだ。
ただその愛は、ミッションの成果が芳しく無ければ真っ向から失意を辛辣に告げ、組んだばかりの機体テストだろうが容赦なくレールガンをぶち込んで来るようなものだ。
それだって、めちゃくちゃに己の弟子であり養い子を可愛がっているつもりだったのだ。おそらく世間のソレとは大きな隔たりがあったが、愛して居た事に間違いは無く、首輪付き自身も愛されている事を自負していた。
騙して悪いがをしようもんなら、企業との兼ね合い等も放り捨て、ノリノリで『見せしめだ』などと言って破壊命令をだし、よくもうちの子をコケにしたなと過激な文句を連ねる。
首輪付きがすっかりリンクスとして開花した後は、ソブレロコアに社長砲を積んでマザーウィルを割に行ったり、弾薬費企業持ちと知れば、馬鹿みたいに高い弾薬をばら撒き焦土を作りに行く弟子を止める事もせず、『私のリンクスは可愛いな!』と誇らしげに見ている程に好きさせていた。
要は親馬鹿だった。(実年齢は兎も角)汚染物質色のきらきらしたお目目でセレン、セレンと呼びかけて来る弟子が可愛すぎた。
溺愛する弟子に不埒な輩を寄せ付けまいと、元の苛烈な性格も相まって、過剰なまでの防犯意識を備えさせた。
実際、目障りなアホの様に強いリンクスを仕留める方法は?と言えばそんなもん、ネクストに乗ってない時に暗殺。とかの方がよっぽど建設的だったため、ある程度の自衛手段は必要だった。
その辺は、各企業、抱え込んでるリンクスたちへそれぞれの指示なり措置などがあったりする。
そして完全独立傭兵であるセレンの最高傑作は、彼女の血気盛んな教えのままに不審者と見れば容赦なく急所を突く事を学習した。
まあ、そんな訳なので、『セレン』の横についてとことこ歩いて居たのに、急に見知らぬ男に抱え上げれたら驚く。驚いたままに、後ろのポッケに雑に突っ込んであった女性の護身用にもピッタリ、全長が15㎝もないコンパクトに可愛いらしい銃を引き抜き、躊躇いなしのノータイムで六発全弾打ち込むのも仕方ない。
変態ペド野郎に慈悲は不要。間違いが起きる前に仕留めろとの教えを忠実に守った。
忠実に守った筈なのに、自分を無遠慮に持ち上げた推定変態クズ野郎には一発も当らず、ぽかんとしてしまうなどと言う、傭兵に有るまじき醜態を晒してしまった。
変態を屠る事もできず、醜態を晒した自分にも苛立ったものだから、全弾撃ち尽くしたちっぽけな拳銃を投げつけ、舌打ちをし、中指立てて唾を吐くぐらい許されても良いだろう。
殆ど様相の分からない顔面に向けてぶん投げた、小さいとは言え鉄の塊がぶち当たる事無く、がしゃりと地面に落ちた事に少々面食らう。
なんだこのどこぞのコジマの煌めき大好き企業が作り上げた、PA整波性能19103、KP出力999の企業戦士みたいなショタコン。
首輪付きはぎゅっと顔を歪めて不愉快そうな表情を作る。
六発真正面から至近距離でぶち込まれた筈の推定ペド野郎は、見た目にそぐわないガラの悪さを呈し、有害な着色料たっぷりのメロンソーダみたにきらきらした目を眇め、中指突き立てている幼児を見詰めてたった一言呟いた。
「いや何コレ?」
めちゃくちゃ動ける上に火力も高いアクアビットマンとかいう存在。