細石   作:moon

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細石
腐った竜と腐った職人


「腐った竜の歌」

 

腐った竜は結晶を弾く。

汚れた翼に付いた爪で。

闇に抱かれた冷たい結晶。

歌うことを捨てた竜は、結晶を弾いて歌う。

 

竜は玉座の間に入る。

闇より暗い玉座の間。闇に抱かれし結晶。

我は王が不在の時、玉座を守るためにしか入らない。

なのに結晶は常に王と共に在る。その中に醜い神族がいる。

貴様が何故此処に在るのか。

憎い憎い憎い。

 

砕いてしまえ。

 

翼を広げた時、爪が結晶を弾いた。

鋭く、硬質な音は闇に響く。

 

歌。捨てた歌。もう歌うことは出来ない、竜の歌。

貴様が歌うのか?我の代わりに歌ってくれるのか?

 

竜は何度も爪で弾く。

音は何度も闇に響く。

竜は歌う。

 

「気に入ったのか?」

城の主は問いかける。

何時、王は還って来たのか?

怒らないのか?

竜は後ろを振り返る。

「好きなだけ、歌うといい。」

王は玉座に向かって歩く。

今日は、王と共に在る。

王の為に歌う。

王と共に竜の歌を聴く。

 

腐った竜は結晶を弾く。

汚れた翼に付いた爪で。

闇に抱かれた冷たい結晶。

歌うことを捨てた竜は、結晶を弾いて歌う。

 

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「腐った職人の技」

 

ドラゴンゾンビが又扉を壊した!

レッサーヴァンパイア達は怒り心頭だ。

まったく、直す身にもなれ!!

 

人であった時、職人として腕を揮った。

王城の建設にも携わった者もいる。

名工と謂われた者も多数。

死を迎えた時、転生を拒んだ。来世も職人になれるとは限らない。

ならば、不死者でもいい。職人でいたい。

 

自分一人と思いきや、同じ思いで不死者となった者が結構いるもんだ。

わしが一番だがの。私に決まっているだろう。いや、俺だぜ。以下同文。

腕に覚えのある職人だった者達は、不死者王の城に集う。

此処は、思いっきり腕が揮える。

王は我等を統治しない。それでもいい。

王に相応しい城にする。我等が勝手にする。

それでいいのだ。

 

勝手に増改築を重ねて、城はどんどん大きくなった。

といっても、数多の職人がいるおかげで、

色々な事案がすんなり決まらないのもまた事実。

「この部屋は不要ですね。」

「いや、必要だ。」

「具体的に何故必要か示せ。出来なければ、却下だな。」

「ラム・ガーディアンが剣を置く部屋が欲しいと言った。」

「作らないと、切り殺されますね。」

 

「この装飾は、全体の調和を壊すぞ。」

「無駄に煌びやかじゃのう。」

「古臭ぜ、じいさん。これくらいやってもいいだろう。」

「だから、色調から問題だと言っている。」

夜の孤城で激しく論議をする。

いやはや、これもまた戦いか。

 

「とりあえず、ドラゴンゾンビが通れるくらいの広さにせんといかんじゃろ。」

「そっちが先ですかね。」

「王が不在の時を狙って飛んで来るぞ。」

「爪で結晶をつんつん弾いてるな、奴等。」

「叱られるのが怖いんかのぅ。」

「叱られるどころか、昇天ですよ。」

「そもそも、つんつんして楽しいのか?」

「楽しいんじゃねぇの?俺等が城に手を入れるのが楽しいようにな。」

「おぉ、若いのに相手を貶めんとは、いい心がけじゃのう。」

「じいさん、一言多い。」

 

腐った職人。腕まで腐っていると思ったら大間違い。

彼等は仕事に取り掛かる。

時間をかけて、納得のいく仕事をする。

此処は時間に追われない。

 

扉を直し、最終調整をしている中、

「相変わらず、いい腕をしている。」

玉座から声がした。

職人にとって何より嬉しい言葉を、我等の王はくれる。

 

明日の日中はよく眠れそうだ。

 

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