もうじき、私は消失する。
「ラグナロク」は猛り狂いながらミッドガルドのみならず、神界をも呑み込んだ。
私は、王呼の秘法が発動していなかったから転生先が決まっていなかった。そして転生先が決まらかったた故に次元の狭間で眠っていた。だから神々の黄昏に巻き込まれることなく、かろうじて存在している。
この身に残る力はほんの僅かだ。少しばかりのそれを用いて精神を器で肉体で覆う。
魂の無い、精神のみの特異な存在。歪な私に相応しいと思った。
レナスは主神となり、世界を、未来を創った。
シルメリアは結晶に囚われたまま、現在に留まっている。
私は過去を、オーディンの残滓を抱いたまま、いずれ消失するだろう。
それが私の運命。
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「知らぬな。」
ブラムスは玉座に座ったまま何の感情も無い声で答えた。
不死者王の横には冷たい光を放つ戦乙女がいる。
闇より暗い玉座の間。
そこを訪れた一人の男がいた。
入り口に立つその男は身の丈もあろうかという大剣を担ぎ、顔に傷跡を刷いた、まさに重戦士であった。
「此処には来ていないんだな。」
念を押すようにアリューゼが不死者王に尋ねた言葉の続きを口にする。
アリューゼの声は闇に吸い込まれた。
闇の質量が加速的に増加する。アリューゼの神経と肌がびりびりと騒ぎ出す。
頬を持ち上げて圧力に耐えているその時であった。
闇に真紅の印が刻まれた。
不死者王ブラムスの視線が、重戦士アリューゼを捉えた瞬間。
全ての音を動きを闇が絡め取る。
アリューゼの息遣いさえも奪い取られそうな、冷たい闇。
「くどい。」
冷たい闇が動く。
幾星霜の闇を重ねた重低音が圧倒的な気配と共に浸透し、闇が無言で額ずく。
不死者王ブラムス。
その力はラグナロクをも退け、夜の孤城と共に再びミッドガルドに現れた。
新しい世界に残る古い世界。
現存する唯一の前世界が、ここブラムス城なのだ。
だから、ここにアーリィが居るかも知れないとアリューゼは思い至り、訪れた。
しかし、不死者王ブラムスがアリューゼに寄越した返事は「否」であった。
「そうか・・・。邪魔したな。」
一言いうと重戦士は踵を返し、入り口から離れていった。
後姿が徐々に小さくなっていく。
そして消えた瞬間、鈍い音と共に扉は閉ざされた。
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「感謝する。」
漆黒の声が前方の闇から響いた。
闇に溶けた人影が徐々に輪郭を顕わにする。
運命の女神、漆黒の戦乙女、夜の長女アーリィ。
戦乙女の上は静かに微笑んだ。