【本編完結】転生したらブラック鎮守府の時雨だった話 改 作:chanhaya
10話 時雨の回顧
横須賀鎮守府がまだブラック鎮守府だった頃、変な噂が流れた。
時雨は、深海棲艦の内通者、或いは深海棲艦そのものではないか、と。
それから、僕には常に疑いの眼差しが向けられた。
当然だよね。轟沈者はほぼゼロな上、僕だけが無傷なんだから。
そんな日々が続いたある日のこと。僕を疑っていたある軽巡が、僕を問い詰めた。
「あんた、何企んでんの?」
「……何も」
「嘘ね!だってあんただけいつも傷一つないじゃない!」
そう言って彼女は僕を殴った。痛かった。けど僕は表情を変えなかった。だってこの痛みには慣れていたから。殴られるのも、蹴られるのにも。
「もういいわよ。どうせあんたなんか誰も信じてくれないんだし」
その言葉を聞いて少し胸がチクリとした気がしたけれど、きっと気のせいだろう。
次の日、僕の部屋の前に沢山の手紙があった。全部同じ人からだった。内容はどれも僕に対する罵声だった。
『裏切り者』『死ね』などの言葉ばかりだった。僕はこれを全て燃やして処分した。
ある日、僕の部屋の中に何かが投げ込まれた。それは大量の小石だった。中には鉄屑とかもあった。僕はただ黙ってそれを見た後、それらを全てゴミ箱に入れた。
数日後、また部屋の中に投げ込まれるものがあった。今度は花瓶だった。中には何も入っていなかった。僕はそれを割って捨てた。
それからも毎日のように僕への嫌がらせは続いた。
ある日のことだった。食堂で昼飯を食べたていたら、どこからか「時雨はどうしてあれに耐えられるの?」「私なら自殺する」「やっぱりあいつ艦娘じゃないんじゃ……」というヒソヒソ話が聞こえてきた。
その瞬間、僕は頭に血が上る感覚を覚えたが、いちいち構っていたらきりがないので無視することにした。
すると今度は「私、あいつの部屋の近くで寝てるんだけど……夜中になると毎晩すすり泣くような声が聞こえるのよ……気色悪いわ」なんて言う奴が現れた。僕は思わず立ち上がった。しかし周りにいた人たちからは冷たい視線を浴びせられただけだった。
その日の夜、僕は部屋の中で泣いた。悔しくて悲しくて仕方がなかった。僕は何もしていないのに……。
数日後、僕のもとに手紙が届いた。その内容は僕に対する誹謗中傷のオンパレードだった。僕はそれに一通り目を通した後、火をつけて燃やした。その時ふと思った。あぁ……僕ってこんなことされても何も感じなくなってきちゃったんだなって。
悲しいはずなのに、辛いはずなのに、涙すら出なくなった。いつの間にか心が麻痺してしまったみたいだ。
僕はもう疲れたよ。早く楽になりたい。
『どうしてこんな目に合わなくちゃいけない?』
『恩知らず共め』
『早く楽になりたい』
『
『
『
『何カ壊しタい。壊さなイと僕が先ニ壊れちゃう』
『艦娘共が……』
『……僕ってなんだっけ……』
どんどん曖昧になっていく。思考も、記憶も。
敵を殺して残機にしたり、前任に汚されたり、
僕の、本来の表の僕が裏の黒い僕と混じり合って消えていく。
まるで白い紙に水に溶かした黒い絵の具をぶちまけたように広がってゆく。そして、少しずつ黒くなるのだ。そしていつか完全に黒く染まる。
僕はもうダメかもしれない。もう二度と戻れないかもしれない。
……僕は人間として大切な何かを失ってしまったのかもしれない。それが何かはわからないけど。多分人間性のようなもの。人として一番大事な部分を失ったのだと思う。
ある日のことだった。
「こんにちは。時雨さん」
「……お前は……■■…だったか」
「覚えていてくださり光栄です」
「それで、なんの用だ?」
「いえ、大したことではありません。あなたがだんだん壊れていくのを見るのが楽しいだけです」
「っ!?︎お前……」
「えぇ。私は深海棲艦ですよ。あなたの大事なものを奪ってやりました。まあ、まだ始まりに過ぎませんが」
「どういうことだ」
「すぐにわかりますよ。ではまた会いましょう」
「おい待て!」
僕は■■に殴りかかった。
「時雨さん、暴力はいけませんよ?あと、後方注意」
「は?」
後ろを振り向くと■■、さらにその後ろには■■の仲間数人がいた。
「な、なんでいるんだい!?︎」
「それはこっちのセリフよ!あんた、■■■になにしてくれてんのよ!!︎」
そう言って■■は僕を蹴り飛ばした。
「ぐあっ!」
そのまま壁に激突する。
「時雨、今ので終わりだと思ってないでしょうね?みんな、こいつリンチするから手伝ってくれる?」
「はい、先輩」「了解しました」「任せて下さい!」
他の艦娘達も僕のことを囲み始めた。
「ま、まって、やめて、くれ」
「うるさいわね。口答えしないでもらえるかしら?ねぇ、■■■?」
「ええ、その通りよ。時雨さん、黙っていてください」
それから数十分後、そこにはボロ雑巾のようにされた僕と、満足そうな顔をした艦娘たちの姿があった。
「はぁ〜楽しかった〜」
「そうですね、■■」
■姉妹と仲間たちは満足そうに去って行った。
僕はボロボロになった身体を再生させながら、先程のリンチの時聞いた耳に付く言葉を思い出していた。
『■■時■!あな■のせいで■■は!』
『あ■たさ■いなけ■ば…』
『■■■■■■■』
不思議とその思い出せない言葉が頭から離れなかった。いつかどこかで聞いたことがあるような気がしたからだろうか。
目が覚めた。いつの間にか寝てしまっていたみたいだ。
窓から見える空は既に暗くなっている。
僕はゆっくりと起き上がり、ベッドから抜け出す。少し体が重いなぁ。どうしようかな?食堂でも行こうか。
その時、扉がノックされる音が響いた。
「……はい」
僕の返事と同時に扉が開かれる。そこに居たのは、あの時僕を問い詰めてきた軽巡───五十鈴だった。
「なに? 何か用事でもあるの?」
僕の言葉を聞いているのか聞いていないのか、五十鈴は何も言わずに近づいてくる。
「……えっと、なにさ?」
困惑気味に問うと、五十鈴はいきなり頭を下げて、
「ごめんなさい!」
……なにそれ。なんで謝るのさ。意味わかんないよ。
「なにがしたいの?」
思ったことをそのまま口にすると、五十鈴は顔を上げて、
「私は貴女のことを何も知らなかった。ただの噂を信じて、貴女を一方的に悪者にしてしまった……。本当にごめんなさい……」
今にも泣き出してしまいそうな表情だった。僕は、別に気にしていないのに。
「……いいよ、もう。過ぎたことだし」
「でも! 私のしたことは許されないことで、その償いはしないといけないの!」
僕の言葉に被せるように、叫ぶ。その必死さが伝わってくる。
僕は、別に怒ってなんかいない。だから、償う必要なんてないのに。
僕は彼女に歩み寄る。そしてその肩に手を置く。びくりと震える彼女を見て、思わず優越感を感じてしまう。嗜虐心がそそられてしまう。多分、僕の口は三日月のように歪んでいると思う。
無意識の内にこうなってしまうのだ。否が応でも自分が壊れていることを実感する。
「ねぇ、五十鈴さん。僕は怒っていないんだよ。だって、僕はこの鎮守府の皆のことが好きだから。もし仮に、僕が深海棲艦だったとしても、それは変わらない」
ただの建前だ。前はこんなことを思っていたのかもしれないが、今は違う。お前らなんて大嫌いだ。
僕をそんな目で見るんじゃねえよ鉄屑が。
そんな汚い言葉が溢れ出す。だけど、僕はそれを心の奥底に押し込んで、微笑む。
「だからさ、もう気にしなくて良いよ。ほら、僕が許してあげるから。ね?」
僕はそう言うと部屋を出ようとしたが、五十鈴に腕を掴まれたので振り返る。
彼女は俯いていた。その頬には一筋の雫が伝っている。
「ありがとう……。それと、ごめんね……」
消え入りそうな声で呟くと、僕の手を引いて抱き締めた。
……なんだコイツ?鬱陶しいんだけど?僕は彼女の体を軽く押す。だけど、彼女は離れようとしない。
「離してくれる?」
冷たく言い放つと、ようやく離れた。
「あ、うん。ごめんね」
「いや、別にいいけど。そろそろお腹減ったし食堂に行くから」
それだけ言って、僕は部屋を出る。
後ろから五十鈴の声が聞こえたが、無視した。……ああ、苛つくなぁ。
後日談書きたいんですが、読みます?
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読むから書け
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あったら読む
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好きにしろ
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読まない
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どうでもいい
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蛇足だから書くな
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串本の白露の話を書け