【本編完結】転生したらブラック鎮守府の時雨だった話 改   作:chanhaya

67 / 84
57話 地獄

 

 

 

 

深海棲艦により東京がさらにえらいことになっていた頃、荻原とゆかいな第零艦隊は大本営にやってきた。

 

「ふう、やっと着いたな。それじゃあ、第零艦隊、帰っていいよ」

 

「いや、私たちの仕事あなたを監視することなんですが……」

 

「そうですよ、荻原准将。勝手な行動をされては困ります」

 

「いや~、ごめん。まあ許して?ほらっ飴あげるから」

 

「いらないです。子供扱いしないでください」

 

神風は意外と冷淡だったという。

 

「あー、はいはいわかったわかった。てか、坂本の奴演説してるけどかなり、いやめっちゃヤバイなあいつ」

 

「き、貴様、元帥を愚弄するな!殺すぞ!」

 

神風は坂本関連の話になると感情的になるようだ。

 

「はあ、あんなキ〇ガイが元帥になるとか世も末だな」

 

荻原は神風の反応が面白く感じ、さらに煽ってみた。

 

「き……き、キチ〇イだと!貴様に言われる筋合いはない!第零艦隊総員!コイツを囲め!」

 

案の定、彼女は怒った。やはり、煽り耐性が低いようである。

 

第零艦隊の艦娘たちが荻原に銃を向けて囲む。その時だった。

 

「~~~~~~~~~~っぽい!」

 

夕立が突撃してきたのだ。

 

第零艦隊の艦娘たちはいろいろな方向に吹き飛ばされた。

 

「お前は……夕立か……なんか雰囲気と髪の色違くないか?……なんか姫級みたいな気迫を感じるんだが」

 

「ぽいっ!」

 

「なんか『ぽい』すら気迫が感じられるような…………あっこいつ見た目が夕立改二っぽいだけで姫級に覚醒してるわ」

 

「なんですか!あの駆逐艦は!」

 

「ひ、姫級て……」

 

「新たな姫級として登録するなら名前が必要になりそうだから一応決めておくか」

 

何か知らんが荻原と第零艦隊で夕立の名前をどうするか話し合うことになった。

(ちなみに数10メートル離れると人間が深海棲艦に蹂躙されているような場所でである)

 

(あれ、私は今何やってんだろう?)

 

そんなことを考えながらも真面目に話し合いを始める。で、結果『ソロモン深海棲姫』と命名された。

 

夕立の方は「かっこいいっぽ~い」となぜか気に入ったらしい。

 

「よし!これでいいだろ。それじゃあ、第零艦隊を追い払ってくれ」

 

「了解っぽい!」

 

夕立は第零艦隊の面子を全員蹴り飛ばし、荻原を担いで大本営の屋上に上がった。

 

しばらくすると大本営の敷地内の広場に第零艦隊を先頭とした深海棲艦の集団とコズロフスキー少佐率いる祖国超兵の集団が向かい合うように現れた。

 

完全に拮抗状態と言えるので誰も手出しができない。

 

「やべえな」

 

「やばいっぽい」

 

二人の語彙力が死んだ。

 

すると、深海棲艦や夕立の電探が音速を超える速度で東京に向かってくる飛行物体を捉えた。

 

「なんかくるっぽい!」

 

「……何が来るんだ?」

 

それはすぐに見えてきた。それはロシア軍の戦闘機、SU57だった。

 

「いや何しに来たんだあいつ!?」

 

「あ、なんか急上昇したっぽい」

 

下を見ると深海棲艦や超兵たちもざわざわしている。

 

まあそりゃそうだろう。いきなりロシアの戦闘機が来たら驚く。

 

そして戦闘機はいきなりバレルロールすると、コックピットから人型が…………時雨が出てきた。

 

ちなみに戦闘機はしがみつく涼月を乗せたまま湾岸方面に墜落していった。

 

時雨は空中を滑空して大本営の広場、深海棲艦と超兵が睨み合う境界線にちょうどスタッと着地した。

 

「おお、こんなに晩飯がたくさん……いい夜だね」

 

……なんか不穏なこと言ってるが気にしないことにしよう。うん。

 

「で?提督、こいつらを殺せばいいんだよね?命令がないから動けないんだけど」

 

そう言う時雨の右目は獲物を前にした肉食獣のようであり、好物を好きなだけ食べていいと言われた子供のようでもあったという。

 

なお、荻原はだんまりしていて、時雨に神風やコズロフスキーが近づき圧をかけている。

 

しかし時雨は全く意に介していない様子で神風とコズロフスキーを見つめている。

 

その顔はとても美しく、同時に禍々しかったと夕立は語った。

 

「提督、命令出して」

 

沈黙を破ったのはまたもや彼女であった。時雨は少し寂しげに笑ったあと、今度は満面の笑みを見せたのだった。

 

「……」

 

荻原はまだだんまりを続ける。時雨は痺れを切らしたようにこう言った。

 

「命令だ、命令を寄越せ!海軍軍人、荻原大輔!」

 

時雨の言葉に覚悟を決めた荻原はようやく口を開いた。

 

「……命令だ!駆逐艦時雨!!私からの命令はただ一つ!!ここにいる敵を皆殺しにしろ!!殲滅しろ!!掃滅しろ!!奴らをこの都市から生かして帰すな!!!」

 

彼の叫びが終わった数秒後、時雨は口を開いた。

 

「了解した。提督」

 

彼女は嗤っていた。

 

それは敵がこれから迎える運命を嗤ったのか、それともこんなこともできるようなバケモノになり果てた自分を嗤ったのか。それは誰にも分からなかった。

 

「深海制御術式第1号、解放」

 

だが、その場にいた全員が感じ取った。

 

このバケモノは、生かしてはいけないと。生かしておけば、恐ろしいことになると。

 

「うおおおおお!!!」

 

神風が時雨に短刀を投げつけたのを皮切りに深海棲艦や超兵が時雨に、襲いかかる。

 

あるモノ、砲撃の嵐を彼女に見舞う。

あるモノ、無数の銃弾を彼女に放つ。

あるモノ、人型ですらなくなった彼女に銃剣を何度も突き刺す。

あるモノ、液状化した彼女に殴りかかる。

 

しかしそれらは無意味に終わる。

 

 

 

 

 

 

 

 

────地獄の釜の、蓋は開かれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空中戦艦モスクワの艦橋にて、クズネツォフ大佐とゆかいな仲間たちはその様子を眺めていた。

 

「さあ、来るぞ……死が来る。死人が舞う。死が踊る。死に抗うこと叶わず、人は散るのみ……」

 

「何をブツブツ言ってんの?」

 

突然のロシア語のつぶやきに対して瑞鶴は当然のように反応する。

 

それに対してクズネツォフは何も言わずただ黙って見ていた。

 

「まあ、見ていればわかるさ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

再び地上。

 

「撃ち方やめ!撃ち方やめ!」

 

時雨の周囲を囲んで攻撃を続けていた超兵と深海棲艦は攻撃を中断した。

 

これ以上の攻撃は無駄だと気づいたからだ。

 

彼女の体は液体のような何かに変化しており、そこから生えている腕は数十、数百、いや数千にも達していた。しかもそれらはすべて触手のように動き回っていて、明らかにヤバイものだった。

 

そんな光景を目の当たりにしてもなお攻撃を仕掛けようとした勇敢な兵士がいたが次の瞬間彼は首と胴体を切り離されて死んだ。それはまるで鋭利な刃物で斬られたように鮮やかだった。

 

そして彼女の中から出てきた。それを為したモノが。かつて彼女に殺された空母棲姫が。

 

ある深海棲艦は姫級の命令を無視して攻撃を仕掛けた。だが、その深海棲艦はライフルで撃ち殺された。

 

そして彼女の中から出てきた。それを為したモノが。かつて彼女に殺された狙撃兵と哀れな抑留者二人が。

 

もう手遅れだったのだ。彼女の中からは次々と彼女に殺されたモノたちが這い出てくる。

 

出てきたモノたちは全員深海化されており、民間人だったであろうモノたちまでもが怪物となっていた。

 

時雨に殺されたモノは十万以上。その全てが解放された。

 

『フフ、アハハハ』

 

彼女は笑った。それが何に対してなのかはわからない。笑ったのか嗤ったのかすらわからない。

 

死人の大群は瞬く間に深海棲艦や超兵を飲み込んでいく。

 

「撃て!撃てぇ!!」

 

残った超兵や深海棲艦は攻撃を開始する。だが、彼らにできることはそこまでだった。

 

あるモノは頭を砕かれ、内臓をぶちまけ、脳漿を浴びた死体となって倒れ伏し、またあるモノは腹から背中にかけて貫かれたり首を落とされたりと、原型すら残らないほど惨殺されていった。

 

 

 

 

 

 

 

ヘリに吊り下げられたガラスの箱にいる坂本はその光景を見て、若干失禁していた。

 

「な、何が起きている!一体、なんだ!なんだこれは!な、なんだ。なんなんだ!?」

 

そんな言葉も虚しく彼らの目の前に広がる惨劇は続く。

 

「撃て!撃ちまくれ!」

 

ヘリに乗った深海棲艦が叫ぶ。

 

「撃っても撃っても出てくるぞ!?」

 

「そもそも撃っても効かないぞ!うわあああ!!!」

 

ヘリは全て時雨から出てきた狙撃兵により撃墜された。坂本が乗っていたものもだ。

 

「あああぁ!!やめろ!止めてくれえ!!」

 

生き残ったモノたちは必死に抵抗する。だが、死人の物量には勝てない。すぐに取り囲まれてしまう。

 

「誰か!助けてくれ!」

 

『ハハ、無駄だよ。諦めなよ』

 

「だ、誰だお前!声しか聞こえないぞ!?」

 

『この死人たちは全部僕だからね。まあ、そういうことさ。僕は深海棲艦やら艦娘やら人間やらの集合体だからさ、こういうこともできるんだよね。どう?驚いた?』

 

「うぎゃああああ!!」

 

深海棲艦の悲鳴が聞こえる。その深海棲艦がどこを切断されたのかもわからないが、首だけになって絶命していた。

 

そうしてまたひとり、ひとりと殺されていく。

 

 

建物の屋上に避難することができた神風と第零艦隊の面子は時雨から出た死人の大群に『屍海』と名付け、その屍海を観察することにした。

 

「な、あれは太平洋深海棲姫!?……道理で殺せぬはずだ。道理で死なぬはずだ」

 

神風が見たのはかつて戦ったことがある姫級であった。しかしそれは彼女が最後に確認した時とは違い、人の姿ではなく死人と、時雨の隷属と成り果てていた。

 

「まさかとは思っていたが……あの時雨は、ただのバケモノじゃない……死者の集合体だ。それも自分が殺した相手を取り込む質の悪い奴だ」

 

「あ、あんなのに勝てるの……?」

 

第零艦隊の陽炎が言う。無理だろう。誰もが心の中で思うことだ。

 

「いつもなら無理でしょうね。でも、今はその死者が全て外に出ている。今の時雨は"ただの"艦娘モドキにすぎない。今なら殺せる」

 

神風が言い放つと全員が武器を構えた。

 

「……行くぞ。総員戦闘準備!」

 

「「了解!!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時雨が全ての命を解放した大本営の広場では、一体の人型実体が形成されようとしていた。

 

そう、それはただの艦娘モドキとしての時雨の本体だ。

 

だが、変成魔法によりその姿は時雨の前世である杉野時雨中佐と同じ姿をしていた。

 

大本営に殺された"彼"は五年後、再び"彼"となり舞い戻ってきた。

 

 

 

 

後日談書きたいんですが、読みます?

  • 読むから書け
  • あったら読む
  • 好きにしろ
  • 読まない
  • どうでもいい
  • 蛇足だから書くな
  • 串本の白露の話を書け
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。