【本編完結】転生したらブラック鎮守府の時雨だった話 改 作:chanhaya
屋上から夕立とともに降りてきた荻原は時雨に話しかけた。
「……お帰り、提督」
「ただいま、提督」
荻原と夕立は時雨の変貌っぷりに戸惑っていたが、彼の雰囲気があまりにも優しくて温かいものだったために恐怖はなかった。
時雨はとりあえず夕立に近づき、頭を撫でた。
「……時雨って髭だったっぽい?」
そんなことを呟く夕立。まあ、駆逐艦娘(見た目中学生)がいきなり軍服着たチビで瘦せっぽちなおじさんになったら誰でも驚くだろう。
「まあいいじゃないか。ところで夕立ってさ……」
時雨の声音はとても優しかったが夕立は気付いたらしい。何か嫌な予感がするようだ。
「もしかしてだけどさ……姫級になった?」
ビクッ! 夕立の顔が引きつっているような気がしないでもない。
だが時雨は見逃さなかった。一瞬だが彼女の目が見開かれたからだ。
「いや、別に咎める気はないよ?むしろ嬉しいよ。仲間が強くなったんだから」
「ほんと!?良かったっぽい〜!!ありがと、時雨ぇ〜」
嬉しさのあまり時雨に飛びつき、二人の後ろの方にいる荻原に微笑ましいものを見る目で見られていることに気付いた彼女は顔を赤くしてすぐに離れる。
(恥ずかしかったっぽい……。もう……)
夕立は赤くなった頬を押さえてため息をついた。
だが、この地獄の戦場でのひと時はすぐに終わることになる。
「時雨ぇ!覚悟ォ!!」
時雨の真上から第零艦隊の神風が刀を振り下ろす。それは完全に決まったと思われた。……のだが
「来たね」
時雨はさっきまでの『リバイバル杉野提督』から普段の時雨の姿(瞳は赤)に戻り、腰の日本刀を抜いてそれを迎え討つ。一瞬鍔迫り合いの状態になり、神風は後方に飛び退いた。
「提督、夕立、手出ししないでどこかに行っててくれるかな?」
「分かったっぽい!」
そう言うなり夕立と萩原は走って建物へと入っていった。
「さあやろうか、神風」
「そうだな、始めよう。艦娘モドキ」
時雨は日本刀を両手で持ち、神風は短刀二本を両手に持つ。そして同時に動き出した。
神風は走り一気に時雨に接近し、右手の短刀を振り下ろす。
対する時雨は日本刀を力任せに振ってそれを弾き飛ばした。
神風は後方に吹っ飛ばされたが、受け身を取り立ち上がる。そしてすぐに時雨に向かい走り始める。
そして接近するとまず右、次に左の短刀で斬りかかるが、どちらも防がれて後方に飛ばされてしまった。
それどころか時雨は神風に急接近すると、首を狙って上から刀を振り下ろした。
神風は一気に走る抜けることでそれを回避し、今度は二回連続で切りかかったがやはり同じように全て防御された。
「クソッ!」
神風はバックステップで後方に下がると、短刀8本を時雨に向けて投げた。
その動作を見て時雨は南部拳銃と主砲を取り出し短刀を撃墜した。
「ふぅ、危ない危ない」
時雨はメツェライも取り出すと見せびらかすように構え、いつだったかに明石から渡された説明書を読み上げ始めた。
「対深海棲艦用大型自動拳銃『メツェライ』全長26センチ、重量8キロ、12.7ミリ装弾筒付徹甲弾、う~んいいねこの銃。いつかメツェライⅡでも作ってもらいたいね」
一息ついた時雨に神風は短刀で突撃したが、主砲、南部拳銃、メツェライを撃ちまくられ防御に徹する。
だが、それらを防御した直後、レールガンを至近距離で撃たれたために神風の左腕の関節部が破損してしまう。
「うおおおおおおお!!」
しかし神風はそんなこと気にしないと言わんばかりに突撃する。
時雨はバックステップして攻撃を避け、そのまま死人たちの頭の上を飛びながら神風から百メートルほど距離を取る。
「さあ、第二ラウンドだ」
時雨の言葉の後に神風に向けて砲弾が次々と飛来し、爆発音が続く。死人と化した深海棲艦たちの砲撃だった。
「くそったれ!!」
それでも彼女は走り続けようとするが、その足を止めるために死人の群れが襲い掛かる。
その様はまるで神風という商品に群がるバーゲンセールのご婦人方のようだった。
「邪魔だァーー!!!」
砲撃してきた戦艦ル級の頭を真上に飛んで蹴り飛ばすと空中でバク宙をして着地する。
しかしその直後、彼女の脇腹に銃弾が直撃してしまい、膝をついてしまう。
「クッ……」
「フ、フハハ、どうした神風?バケモノはここにいるぞ?殺すんだろ?殺せよ。さあさあ!ほらほら!立てよ!立って刀を構えろ!僕の目の前に立って見せろ!僕の心臓にその短刀を突き付けて見せろ!」
「……言われなくてもそうするわよ……!!」
神風は再び駆け出した。
「「神風!」」
他の第零艦隊の連中16体が彼女の周りに集まってきた。
「あなたたち……」
「加勢に来たわよ。さあ、あのバケモノをぶっ殺しましょ」
第零艦隊副旗艦の叢雲がそう言う。
「……ありがとう」
「え?今なんて?」
「なんでも無い!……行くわよ!第零艦隊突撃!!」
神風の叫びと共に第零艦隊の艦娘たちは一斉に駆け出す。
そして時雨の方向へ殺到していく。
「へえ、感動ムードってやつだね」
若干呆れている時雨に対して第零艦隊は死人の群れを蹴散らしながら進む。
「うおおお!」
「バンザアアーイ!!!」
「死ねやァ!!」
第零艦隊との距離が近づくにつれ時雨の表情が綻んでいく。
「ああ、最高だ。艦娘は素晴らしい…………肉が引き千切れ、温かい血が流れ出る感覚……それがまた堪らない。艦娘を死人の群れで押し潰す感覚、骨が砕け、臓物が溢れ出し、心臓の鼓動が止まっていく。僕に殺されていく。そしてその仲間たちは死んだ者の亡骸を踏みつけにしながら進む。そうだ、これは最高の余興じゃないか」
それを言い終わる頃には彼女は恍惚のヤンデレポーズのような表情になっていた。
狂っている。完全に。神風含む第零艦隊の艦娘全員が思った。
「艦娘は素晴らしい。まるで人間のようで、軍人のようで、兵器のようで。艦娘は美しい。容姿も、戦う姿も、散っていく様も。艦娘は優しい。彼女らの言葉に何度救われたことか。艦娘は恐ろしい。僕を殴ってくる、蹴ってくる、罵詈雑言を浴びせてくる。艦娘は妬ましい。艦娘の幸せそうな姿が、その言葉の全てが妬ましく感じる。艦娘は醜い。一見純粋そうに見えて心の内は真っ黒なんだから!僕はそんな彼女たちが大好きだったのに!!憎たらしい!!!君たちが死ねばいいのに!!!!」
もう彼、いや彼女は"提督"でも"艦娘"でもなく、ただの"バケモノ"だった。
「こ、この狂人が……」
誰が言ったのか。だが、これは今の時雨をもっとも的確に表現している。まさにその一言だろう。
「な、ぼ、僕が、きょ、狂人?ハハ、狂っているのは君たちも同じじゃないか。『艦』であるくせに人のような言葉を吐いて、人間みたいに感情を露にして。………
時雨は若干過呼吸気味になりながら黙り込む。するとおもむろに視力のほぼなくなった左目に手を突っ込み、一気に引き抜いた。左目があった場所からは血がドボっと溢れる。再生に消費する残機が全て外に出ているので再生されないが、割とすぐに血は止まった。時雨の顔の三分の一くらいは血で染まったが。
第零艦隊はそんなこと関係ないと言わんばかりに進撃を続ける。
「進め!進め!前へ!前へ!前へ!前へ!前へ!!前へ!!!」
神風の声が死人の呻き声と砲撃音の中で響く。
「はぁ……いい加減に諦めたら?こんな状況になってもまだやる気?」
少し落ち着いたのか呆れた様子で時雨は聞くが第零艦隊は完全に無視して前進する。
時雨は静かに笑った。
次の瞬間、大和の砲撃により死人の群れの一部が一気に吹き飛ばされ、神風は砲撃による煙の中に飛び込む。
そして煙が晴れると満身創痍の神風の前には時雨が立っていた。
「……僕の前に立ったか。正直驚いたよ。流石だ。流石だ第零艦隊。流石だ神風。君は有象無象の鉄屑のような
時雨の目は虚ろだが、目の前の神風をしっかりと捉えていた。彼女は喋っていた。口を開いていた。
「さあ、僕を、私を殺して見せろ。私の夢を終わらせて見せろ。私を殺せば終わる。バケモノを倒すのはいつだって
「ええ、もちろん、ぶっ殺してやるわよ」
神風はそう言うと艤装の下の方から注射器のような何かを取り出した。
「それは……深海棲艦化するやつか……はは、まさか君が使うとは思わなかったけど。ねえ、僕は
「は?あなたの願いなんて知らないし、興味も無い。これは駆逐古姫と深海雨雲姫と軽巡棲鬼から抽出した成分でできた………例えるなら三種混合ワクチンね。スペックが防空棲姫の半分くらいの素の状態のあなたなら殺しきれる。覚悟しなさい」
そう言って神風は躊躇なくその注射を自分の首に打ち込んだ。
「……君には失望したよ」
時雨もまた
もうダメだこの主人公。
後日談書きたいんですが、読みます?
-
読むから書け
-
あったら読む
-
好きにしろ
-
読まない
-
どうでもいい
-
蛇足だから書くな
-
串本の白露の話を書け