【本編完結】転生したらブラック鎮守府の時雨だった話 改 作:chanhaya
「……もうすぐ2年か」
荻原は執務室でコーヒーを飲みながら呟いた。
あの日から、鎮守府の雰囲気は明らかに暗くなった。夕立や網走時雨、涼月などは部屋に閉じこもりがちになり、他の艦娘達も皆元気がない。
前よりかは幾分マシにはなったが。
「はあ……」
荻原は机の上に置いてある写真を見る。そこには楽しげに笑う時雨の姿があった。
「…………」
時雨が消滅してから2年が経った。
荻原は准将から中将に昇進。大本営は新体制に一新され、呉鎮守府提督である山下中将が元帥に昇進した。
また、あの三つ巴の戦いは深海棲艦の大侵攻ということにされ、祖国超兵の存在は闇に葬られた。
世論は未だに艦娘兵器派が多いが、徐々に変わりつつある。艦娘の人権保護や反戦デモなどの活動により、国内での艦娘に対するイメージは少しずつだが良くなってきている。
横須賀鎮守府には新たな艦娘が大勢着任し、現在は総勢150人となっている。だが……時雨はいない。ドロップや建造でも新しい時雨は着任しなかった。
「…………」
明日は時雨の二回目の追悼が行われる予定だ。
「……」
今でも時雨のことを考えると胸が苦しくなる。辛い。苦しい。泣きたい。会いたい。愛している。様々な感情が入り交じる。
するとその時だった。
コンコン
ノック音が聞こえる。誰か来たようだ。誰だろう?
「はい」
扉を開けるとそこには何故か白露がいた。
「どうしたんだ?こんな時間に」
「えっと……ちょっとお話があって」
「分かった。入れ」
「うん」
「それで、何の話だ?」
「時雨のこと」
「……!」
思わず心臓が跳ね上がる。
「……ねえ、提督」
「な、なんだ?」
「……まだ引きずってるの?時雨のことを」
「……ああ」
「忘れろとは言わないけどさ、そろそろ立ち直ってよ。じゃないとみんな心配するよ?」
「分かってる。だけど中々切り替えられなくてな……。すまない」
「ううん、謝らないでよ。無理もないよ。あんなことがあれば……」
「……すまん」
沈黙が流れる。
「ねえ、提督」
「ん?」
「聞いてほしいことがあるんだけどいいかな?」
「別に構わないが」
「ありがと。あのね、私……転生者なの」
「……は?」
いきなりとんでもないカミングアウトをされて呆然とする荻原。しかし彼女は構わず続ける。
「私の前世はこの横須賀鎮守府の提督でね、時雨の前世の杉野とは結構仲良かったんだよ」
「……」
「私は西馬の奴に殺されちゃったんだけど、何故か白露として生まれ変わっていたの」
「そう……なのか」
「まあ、信じてくれないよね……」
「……いや、信じるよ」
「へっ!?」
「……時雨も転生者だって本人が言ってたからな。ありえることだと思ってた」
「そう……なんだ」
「だからお前も転生者なんだなって思っただけだ。他に何かあるのか?」
「ううん、それだけだよ。じゃあ私、もう寝るね。お休みなさい!」
「おう、お休み」
「……」
「……」
再び二人の間に沈黙が訪れる。
「……ねえ、提督」
「どうした?」
「キスしてもいい?」
「……は?」
「その、なんていうか……提督に抱き締めてほしいというかなんというか……」
顔を真っ赤にして言う白露。
「……分かった。ほら、来い」
荻原は両腕を広げる。
「……ありがとう、提督」
そして二人はお互いを抱き締め合った。とても暖かい気持ちになる。
(……俺も寂しかったんだろうな)
「……ねえ、提督」
「なんだ?」
「あの、その、キスしたいです」
「はぁ……分かったよ」
二人はそのまま唇を重ねた。最初は軽く触れるだけのキスだったが徐々に舌を入れていくディープなものに変わる。二人の息遣いが激しくなる。
やがて名残惜しげに口を離すと銀色の糸が引いていた。
「……」
「……」
白露の顔はすっかり蕩けていた。そんな彼女の姿を見て荻原は思う。
(やばい、滅茶苦茶エロい)
「あの……もう一回……」
「はいはい」
それから数時間、執務室からは甘い声が響き、白露は無事に荻原ハーレムの一員になった。
◇
夜。
荻原は鎮守府の広場で散歩していた。雨が降ったり止んだりしているが、傘は差していなかった。
「ふぅ……」
彼はベンチに座って一息つく。
『時雨のことは忘れない。だがいつまでも過去に囚われているわけにはいかない』
そう思ってはいるもののやはり忘れられなかった。するとそこに。
「……ん?」
網走時雨がやってきた。
「どうしたんだ?こんな時間に」
「眠れなくて」
「奇遇だな。実は私も同じだ」
「隣に座ってもいいかな?」
「ああ」
網走時雨は隣に腰かける。
「……」
沈黙が流れる。しばらくして網走時雨が口を開いた。
「ねえ、荻原さん」
「どうした?」
「どうして泣いてるの?」
「えっ?」
「涙、出てるよ」
そう言われて頬に触れると確かに濡れていた。無意識のうちに涙を流していたようだ。
「あれ?おかしいな……。なんでだろう?」
自分でもよく分からなかった。気付けば勝手に流れていたのだ。すると網走時雨が背中をさすってくれた。とても心地よい感触だった。
「……落ち着いた?」
「ああ、ありがとう」
「僕にできることがあれば何でも言ってよ」
「ありがとな。それじゃあ一つ頼みがあるんだがいいか?」
「うん」
「抱きしめてもらってもいいか?」
そう言うと彼女は微笑みながら言った。
「うん、分かった」
網走時雨は優しく彼を包み込むように抱擁する。
「ありがとうな」
「どういたしまして」
しばらくそのままの状態でいたが、どちらからともなく体を離す。
「そろそろ部屋に戻るよ」
「ああ、お休み」
そう言うと網走時雨は歩き出した。荻原はそれを見送る。
(一番ショックだったのは彼女だったんだろうにな……何をやっているんだ、私は)
荻原はベンチから立ち上がり散歩を再開する。雨は一層激しくなっていた。
「ふう……」
すると前方から誰かが来るのが見える。艦娘だろうか?暗がりでよく見えない。よく見ると……。
「……いい雨だね。提督」
「……ッ!?」
聞き覚えのある声を聞いて心臓が跳ね上がる。ゆっくりと前を見るとそこには時雨がいた。
「し、ぐれ……なのか?」
「うん、そうだよ」
時雨は答える。荻原は動揺を隠せなかった。目の前にいるのは紛れもない時雨である。
「時雨!本当に時雨なのか!?」
「うん、体は別の時雨だけど中身は僕だよ」
「…………時雨!」
荻原は駆け寄って彼女を力一杯抱き締めた。もう二度と会えないと思っていた大切な人がこうして自分の腕の中にいるという事実に心の底から喜びを感じた。
「時雨……」
「うん……」
「時雨……」
「大丈夫だよ、提督」
荻原は泣きじゃくっていた。時雨はずっと荻原を抱き締め続けた。
「落ちついた?」
「……うん」
二人は今、雨に打たれながら抱き合っていた。お互いに言葉はなかった。
やがてどちらからともなく体を離すとお互いの顔を見つめ合う。
そして自然とキスをした。お互いの気持ちを確かめるような優しいキスだった。
やがて唇を離すと二人は再び顔を見合わせる。時雨はとても嬉しそうな表情をしていた。
「会いたかったよ、提督」
「私もだ。……時雨」
「やっと会えたね」
「ああ……」
それから二人は手を繋いで執務室へと戻った。道中で会話は一切なかったが、繋いだ手を通してお互いの気持ちは十分過ぎるほど伝わってきた。
執務室に着いた二人はそのままベッドへ入り、一晩中愛し合った。お互いの存在を確かめ合うかのように……。
そして翌朝。
「ん……」
カーテンの隙間から差し込む朝日で荻原は目を覚ました。横にはスヤスヤと眠る最愛の人の姿が。
「ふわぁ……」
大きく伸びをして体を起こす。隣では時雨がまだ眠っていた。荻原は彼女の頭を撫でる。
「ん……」
時雨は身じろぎするとやがて目を開ける。そして自分に触れている荻原の手に気付いた。
「おはよう、時雨」
「おはよう、提督」
時雨は幸せそうに微笑む。
「ごめんな、起こしちゃったか?」
「ううん、平気」
時雨は起き上がって背筋を伸ばす。
「ねえ、提督」
「ん?」
「これからまたよろしくね」
「ああ、こちらこそ」
しばらくして、荻原と時雨は鎮守府本館の扉から外へ出る。
「行こうか、提督」
「ああ」
二人は並んで歩き出す。
雨は既に止み、雲一つない空だった。
─完─
ここまで読んでくださった方がいるかはわかりませんが、ありがとうございました。
とりあえず、後日談は書きたいことが湧きまくっているので新章みたいな感じになります。
ちなみに私は今年、受験生なのですが、まあ完結できてよかったです。
私はそれなりに頭のいい志望校に行きたいので、後日談は投稿ペースがかなり遅くなると思いますが、許してプリーズ。
なお、荻原はメンタルが強くないヤリチンです。男の上半身と下半身は別の生き物ですので。
後日談書きたいんですが、読みます?
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読むから書け
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あったら読む
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好きにしろ
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読まない
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どうでもいい
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蛇足だから書くな
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串本の白露の話を書け