【本編完結】転生したらブラック鎮守府の時雨だった話 改   作:chanhaya

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この後日談を普通に長編小説として書くとほぼ確実に私が飽きるので、互換性のある短編をたくさん書いてストーリーをつくることにしました。


ゴー・トゥ・網走 前編

 

 

 

 

 

ある冬の日、時雨は網走へと独り旅に出ていた。

 

かつて網走鎮守府の提督を(左遷とはいえ)十数年務めていた彼女にとってここは故郷のようなものだった。

 

彼女が乗っている列車は特別快速せきほく、数年前、深海大侵攻により網走鎮守府とその周辺が壊滅した後、廃止となった特急オホーツクのかわりとしてできた列車である。

 

※イメージ

 

【挿絵表示】

 

 

「もうすぐ着くかな」

 

頬杖をしながら窓の外を見ると既に市街地が広がっている。車両の乗客は時雨1人で、先ほどまで老夫婦が乗っていたが、前の駅で時雨のことを奇妙なものを見たかのような様子で降りてしまった。

 

彼女は特に気にせず、車窓から流れる景色を眺めていた。その表情はとても懐かしいそうで穏やかだった。

 

『まもなく終着、網走、網走です。全てのドアをご利用いただけます』

 

自動放送のアナウンスが聞こえる。かつての特急オホーツクの男声だった自動放送と違い少々機械的な女性の声だが。

 

列車が止まると同時に時雨は降りる。改札で切符を渡して外に出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何だか町全体が暗かった。身を切るような風がびゅうびゅう吹いている。

 

僕が網走にいた頃はもっと活気のある土地だったと思うけど……。

 

僕が想い出すこの土地はこんなところじゃない。もっと良いところがたくさんあった。だが、その良いところの記憶が薄ぼんやりしていて微妙に思い出せないので、もともとここはこんな土地だったということにしておこう。

 

今回網走へ帰ってきた理由は観光のためではない。

最近、夢の中で網走鎮守府の沈んだ艦娘達に見つめられるような気がして寝覚めが悪いので、供養のために墓参りに行くのだ。それにしても何だろうあの夢は。

網走が壊滅する直前に自分が経験したことをなぞるように繰り返し見せてくる。あれはおそらく、僕を責めているのだろう。何故お前だけが今も生きているんだという無言の圧力を感じる。

 

「……早く行こう」

 

僕は足早に鎮守府の跡地へと向かった。

 

道中、店がたくさんある通りを通りかかる。店はほとんど閉まっていてシャッターが下ろされている。たまに開いている所もあるが、品物はまばらだ。

 

「……」

 

僕の記憶の中にあるこの通りは多少寂れてはいたが、賑やかだったはずだ。でも今は誰もいない廃墟のようだ。とても寂しい感じがした。まるで僕の心を映しているかのように、何もかも灰色に見えた。

 

それから数十分ほど歩き、僕はかつて網走鎮守府があった場所へと辿り着いた。しかしそこは荒れ果てていて見る影もない状態だった。草が伸び放題になっている。かつて鎮守府だったであろう崩落した建造物がほとんど撤去されずに放置されている。

 

そしてそこに慰霊碑があった。前世の僕と艦娘達の名が刻まれている。僕はその中の一つの名前を見るたびに罪悪感に押し潰されそうになる。

 

でもなぜだろう、彼女達の名前を見てもモヤがかかっているように顔すら思い出せない。

 

そしてその事実が僕をさらに苛む。そして頭が割れそうな酷い頭痛がしてくる。

 

「くっ……」

 

僕は頭を抱えその場にしゃがみ込んだ。痛みのあまり意識が遠のきかける。その時、突然後ろから誰かに声をかけられた。

 

「おい、どうした?大丈夫か?」

 

振り返ると、そこには50代くらいの漁師と思しき男性が立っていた。彼は心配そうにこちらを見つめている。

 

あれ?この人のことを知っている気がする。僕が提督だった頃よく会っていた人だったような……名前は確か――。

 

僕が必死に名前を出そうと記憶を探っていると突然視界がぼやけ、そのまま気を失ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここは?」

 

目を覚ましたとき、見覚えのない和室の中にいた。身体を起こし辺りを見回す。隣には先程の男性が座っている。

 

「……登志夫さん」

 

「?なんで俺の名前知ってんだ?」

 

無意識のうちに声に出していた。……僕の友人の、彼の名前を。

 

「……そんなことよりここは俺の家だよ。お前さんが倒れてたところをたまたま見つけてな」

 

「そうですか……」

 

僕はゆっくりと立ち上がる。少し目眩がしたが、すぐに治った。

 

「もう大丈夫なのかい」

 

「はい、ご迷惑をおかけしました」

 

「いいって、時雨ちゃん」

 

……なんで僕の名前を?

 

「どうして僕の名前を知ってるんですか」

 

「……杉野提督がよく君を連れて俺のとこに来てただろ。大侵攻のときに杉野と一緒に死んだと思ってたけど、生きてたんだな」

 

……登志夫は網走時雨のことを言っているんだろう。確かに、よく彼女を連れて君に会っていた。

 

「もう十何年も経ってるのに姿かたち何一つ変わってねえな。艦娘だからかな?俺はこの通り、黒かった髪がすっかり白くなっちまってなぁ」

 

登志夫の頭を見ると確かに結構白かった。彼は禿げてはいないが、白いものがかなり混ざっている。

 

「お前さんはずっとあのままなんだろ。若いまんまでいられていいよなぁ」

 

登志夫が羨ましそうに言う。

 

「あの……」

 

「おっとすまねぇ、つい長話をしちまった。じゃ、ゆっくりしていきな」

 

彼は立ち上がり部屋を出ようとしたところで、思い出したように振り返りこう言った。

 

「そうだ、時雨ちゃん。十何年も前に杉野提督に貰ったコート、俺には小さすぎて入らなかったから置いといたままだったんだ。よかったらやるよ」

 

シンプルにいらない服を中身本人に押し付けようとするな。しかもそれ、僕が坂本に反乱おこす直前に登志夫に渡したやつだよね。まあいいか、処分してくれても良かったんだけど。

 

「はい。わざわざありがとうございます」

 

「じゃ、達者でな。また来てくれよ」

 

僕は彼の家を後にした。外は相変わらず寒い。とりあえずさっきのコートを着てみる。サイズは少し大きいが割と着れた。あとなんか懐かしくてちょっと嬉しい。

 

さて、これからどうしようか。もう用事は済ませたが、もうすでに日が沈もうとしていて暗くなってきている。行きは新幹線と在来線を乗り継いできたが、今から帰るのも面倒くさいし……。今日は宿に泊まることにしよう。とりあえず提督に電話するか。

 

プルルルル

 

『こちら横須賀鎮守府』

 

「提督かい?時雨だけど」

 

『ああ、時雨か。どうかしたか?』

 

「うん、あのね。実は――」

 

提督に今日のことを報告する。

 

『それじゃあ、明日の昼には帰ってこいよ』

 

「わかった。それじゃ、また明日」

 

僕は通話を切った。これでひとまず大丈夫だろう。

 

 

 

 

その後僕は適当に見つけたホテルにチェックインした。部屋の内装は綺麗で、広さもあって快適だ。

 

僕は風呂に入った後、寝間着を着た状態で窓際のソファに座り、電子タバコを吸いながらテレビを眺めていた。

ニュースでは、最近オホーツク海で深海棲艦の活動が活発になり、船の被害が相次いでいると言っていた。

自称軍事学や深海棲艦に精通している専門家やジャーナリストなどが議論している。

 

そんなとき、ヘリコプターからLIVE映像が流れた。映し出されたのは、カニ漁船の船団が深海棲艦に襲撃されている光景だった。僕はその様子を観て愕然とする。よく見るとカニ漁船に登志夫が乗っている。

 

「あ、そういやあいつカニ漁師やってたっけ」

 

僕が登志夫の職業を思い出したところで、テレビの中の自称専門家たちがなんやなんやと騒ぎ始めた。

 

「…………助けに行くか」

 

僕はそう呟き、コートを手に取りホテルを出た。

 

 

 




時雨のコートは低身長男性向けの黒いチェスターコート
↓これに載ってるような
https://yunofashion.hatenablog.com/entry/2019/01/17/012848

買いたい(切実)



杉野提督(時雨)
いらなくなったコートを友人に渡すも、十数年後に自分のもとに返ってきた。
嫌な記憶はかなり忘れるが根底には残っているので記憶にないことに苛まれる。

登志夫
元ヤン。
杉野と出会った頃はまだ若干チャラかった。
たまに改造した軽自動車で杉野と一緒にドライブに行ってたらしい。



後日談書きたいんですが、読みます?

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  • どうでもいい
  • 蛇足だから書くな
  • 串本の白露の話を書け
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