だから俺は料理人だって言ってんだろ!   作:色々残念

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第12話、名も無き武術

柳葉竜胆が柳葉大樹から学んだ武術に名は無く、古武術をベースに様々な武術を組み合わせた武術であり、多種多様な武器を使った武器術も含まれている。

 

武器を使う武器術も含めれば更に数多くの技が存在する名も無き武術の無手による技の骨子と言える技は、煉獄、金剛、無極という3つの技であった。

 

煉獄は絶え間無い連打を叩き込む技であり、金剛は心臓を強く押し込んで一撃で相手を落とす技、神経伝達物質を思うままに出せる柳葉竜胆は無極を使うことは殆どないが習得はしているようだ。

 

無極には2つの使い方があり、1つはゲート・コントロールを行って痛みを伝える神経であるAδ線維とC線維に、それより太い圧覚や触覚などの刺激を与えると痛みの信号が脳まで届くことなく痛みが弱まることを利用していく。

 

無極の意味は極めずであり、痛めている箇所に柔らかくて温かい肉塊が優しく巻き付くのをはっきりとイメージして脳を騙すことで、圧覚、触覚、温覚を感じることによって痛みのゲートは開かず、脳まで痛みの信号は届かない。

 

そしてもう1つの無極は余力を引き出す技で、人間は全力を出しているつもりでも常に余力を残しており、その余力を100%近くまで引き出すことができるようになる技こそが無極。

 

非常事態に直面した時、人は思いがけない力を出すことがあるが、火事場の馬鹿力と呼ばれるそれを引き出す為に今度は柔らかい肉ではなく非常事態に直面した時のことを想像し、死に直面した時のことを想像する。

 

心理的限界で人間が無意識に力を抑制する働きをサイコロジカル・リミットと呼び、死に直面したイメージでサイコロジカル・リミットが外れ、本能を司る大脳辺縁系が興奮して神経細胞からドーパミンが大量に出ることは確実だ。

 

対戦者にこの力で攻撃しようとした時、脳は騙されていた事に気付いて一瞬で外したはずのサイコロジカル・リミットをかけ直すが、脳を騙している僅かな一瞬の時間だけ、サイコロジカル・リミットを外した火事場の馬鹿力を出すことが可能。

 

0.01秒で情報を引き出し、0.09秒で頭の中で必要な場面の再生を終えることで0.1秒で無極が使えるようになっている柳葉竜胆は、無極を使うことは殆どないらしい。

 

神経伝達物質を思うままに出せる柳葉竜胆は闘争心を誘発するアドレナリンと鎮痛効果を持つβエンドロフィンを大量に出すことで痛みを感じることなく、アドレナリンの大量分泌によって火事場の馬鹿力を引き出すことができる。

 

しかし加納アギトの代わりに戦うことになった拳願仕合でこの能力を使ったことは一度もない柳葉竜胆は、鍛え上げられた素の力と練り上げられた名も無き武術によって勝利を重ねてきていた。

 

名も無き武術には必殺の投げ技が存在していて、その技は相撲では撞木反り、柔道では肩車、プロレスではファイヤーマンズ・キャリーと呼ばれているが、名も無き武術では高山と呼ぶ。

 

他流派と違うことが一点あり、それは抱え上げた時に睾丸を握っていることで、投げる瞬間に潰れるほど睾丸を強く握り、痛みにより受け身をさせず頭から投げる技こそが高山。

 

通常では頭から落としても確実に致命傷を与えられるとは限らず、まともに頭から落とすことは不可能に近く、立ち直り反射によって安全な姿勢を保つ能力が生類には備わっている為、意識的でなくとも僅かな首のひねりによって致命傷を逃れることが総じて多い。

 

防御本能を防御本能で潰すことで投げを必殺技とする高山は、屈曲反射を使い、数多くの脊髄反射のうち痛覚神経を求心路に持つ屈曲反射は、全ての反射に優先する反射で、睾丸を握り潰す痛みにより受け身をさせることなく頭から投げ落とす技。

 

相手を確実に殺す為の投げ技だと言える高山を使う機会は「中」以外だと無いと思っている柳葉竜胆は、拳願仕合では高山を使うつもりは全く無いようであり、基本的には相手を殺しかねない技は使わないようにしているようだ。

 

相手を殺さなくても自分が生きていけるなら殺す必要はないと考えている柳葉竜胆は無法地帯である「中」で生まれ育った人間にしては随分とまともであると言えるだろう。

 

柳葉竜胆に名も無き武術を教えた柳葉大樹の師は、古流柔術臥王流最後の継承者である臥王鵡角と怪腕流先代当主下地和文とも交流があったようで、名も無き武術には臥王流と怪腕流の技術も僅かに伝えられているらしい。

 

怪腕流の部位鍛練と折れた指であっても筋肉を強制的に収縮させて拳を作る技や、全身の筋肉を硬化させて衝撃に備える臥王流の纏鎧という筋肉を鎧に変える技も名も無き武術には技術として伝わっており、柳葉大樹から柳葉竜胆にも教えられている。

 

柳葉大樹は師から二虎流という流派についても教えられていた為、十鬼蛇二虎と十鬼蛇王馬のことを気にかけていたが、常に十鬼蛇二虎と一緒にいることができる訳もなく、柳葉大樹の目が届かない場所で十鬼蛇二虎は死ぬことになってしまった。

 

十鬼蛇二虎が死んだことを知り、唯一残された十鬼蛇二虎の弟子である十鬼蛇王馬のことを探す為に「中」を出た柳葉大樹は、十鬼蛇王馬のことを見つけ出す為に動いていくが、十鬼蛇王馬を見つけることはできていない。

 

師である柳葉大樹が十鬼蛇王馬を探していることを知らない柳葉竜胆は今日も教わった名も無き武術を用いて拳願仕合を戦っていき、部位鍛練によって鍛えられた拳による一撃で対戦相手を倒す。

 

臥王流から伝わった纏鎧を応用して打撃の瞬間に筋肉を硬化させて威力を上げる技も用いることができる柳葉竜胆だが拳願仕合では使ったことはないようで、この技が解禁されるのは加納アギトと戦う時だけであったようだ。

 

加納アギトと戦う時は容赦がない柳葉竜胆は、5代目滅堂の牙である加納アギトの実力を認めているからこそ、戦う時は手を抜かずに戦って加納アギトのことを倒していく。

 

拳願仕合よりも柳葉竜胆と戦う時の方が全身全霊の全力を振り絞って出せている加納アギトは、柳葉竜胆に勝つ為だけに持てる全てを使っていき、それでも届かない柳葉竜胆という高い壁に挑んでいった加納アギト。

 

恵まれた身体を持ち、名も無き武術を身に付けている柳葉竜胆は、加納アギトが初めてぶつかった壁であり、超えることができていない存在で、加納アギトが認める強者である柳葉竜胆。

 

戦うたびに強くなる柳葉竜胆と加納アギトは、お互いを高めていきながら激しい戦いを続けると勝者が決まるまで戦いが止まることはなく、毎回柳葉竜胆が勝者となり決着する戦い。

 

幼い頃から身に付けている名も無き武術を日々磨いている柳葉竜胆は料理人として働きながらも武術を研鑽することは止めておらず、名も無き武術を受け継ぐ者として武を曇らせることはなかった。

 

自分は料理人であると考えている柳葉竜胆には戦いの才能があり、料理人の才すらも上回る戦いの才は、柳葉竜胆に戦いを引き寄せていき、穏やかに料理人として生きるという柳葉竜胆の願いは叶うことはなく、柳葉竜胆は戦いを続けることになるだろう。

 

それでも柳葉竜胆は諦めることなく料理人であり続けようとすることは間違いないようで、料理人であることを大切にしている柳葉竜胆は戦うことよりも料理をすることの方が好きであり、これからも料理人として柳葉竜胆は生きる。

 

柳葉竜胆の名も無き武術に興味を抱いている片原滅堂の護衛者は多く存在しており、武術家としての柳葉竜胆に弟子入りしたいと考える護衛者も少なくはないが、柳葉竜胆は弟子入りを認めることはないようだ。

 

護衛者達を弟子にしない理由としては柳葉大樹に「名も無き武術を受け継いだ者として弟子を取るなら教える相手は選ぶように、そしてできるなら自分の子どもだと言える相手だけに教えてくれ」と言われているからであった。

 

既に成人を迎えている護衛者達を自分の子どもとは絶対に言えないだろうと考える柳葉竜胆は、いずれ生まれるであろう自分の子どもに名も無き武術を教えるつもりであり、名も無き武術を教える相手を選んでいる柳葉竜胆。

 

柳葉大樹から受け継いだ名も無き武術を次代に引き継ぐことを考えていた柳葉竜胆は、しっかりと名も無き武術が受け継がれるように努力しようと思っていたようで、柳葉大樹から教わってきた名も無き武術の教え方も全て覚えているらしい。

 

今日も加納アギトと戦うことになった柳葉竜胆は煉獄を使って勝負を決めようとしたが、柳葉竜胆が繰り出している煉獄の途中で左上段順突きを出したところで、上半身を倒して遠近感を狂わせて左上段順突きを空振りさせて柳葉竜胆の身体を泳がせた加納アギト。

 

左上段順突きから右中段掌底に続いて、右上段弧拳、右下段廻し蹴り、左中段膝蹴りに続くはずの煉獄を止める為に動く加納アギトは柳葉竜胆と自分の戦いを映像記録で見て思い付いた煉獄封じを実行に移す。

 

出足を止める膝関節を狙った前蹴りを放つ加納アギトの前蹴りを避けた柳葉竜胆の動きは、加納アギトの狙い通りであり、柳葉竜胆が前蹴りを避けたところでズボンの裾を踏んだ加納アギトは中段膝蹴りを柳葉竜胆に打たせなかった。

 

加納アギト最強の技、龍弾という寸勁を放つ技を柳葉竜胆に放とうとした加納アギトだったが神経伝達物質を思うままに出せる柳葉竜胆が火事場の馬鹿力を自在に引き出せることは知らなかったようで龍弾を柳葉竜胆に受け止められた加納アギトは身体の動きを一瞬止めてしまう。

 

至近距離で間合いゼロから放つ柳葉竜胆の肘打ちによる金剛が加納アギトの心臓に突き刺さり、一撃で失神した加納アギトは倒れ込んで動くことはなく、今回の戦いも柳葉竜胆の勝利で終わる。

 

煉獄が封じられるとは、アギトは更に強くなったなと思った柳葉竜胆は、相手に使われた時に対処ができるように煉獄の封じ方も次代には受け継いでおいた方が良さそうだと考えていたようだ。

 

こうして更に強くなった柳葉竜胆と加納アギトは実力を確実に上げていき、武術家として高度な戦いが可能となり、番外の牙と滅堂の牙は互いを高める武術の研鑽を止めることなく続けていく。

 

昨日よりも明日は間違いなく強くなっていく柳葉竜胆と加納アギトの戦いは、加納アギトが柳葉竜胆に勝利するまで続くことは間違いないようで、戦いで加納アギトを倒すと拳願仕合が回ってくることにも慣れた柳葉竜胆は、拳願仕合80勝無敗という凄まじい記録を持つ。

 

今日もこれから拳願仕合だなと思った柳葉竜胆は、アギトの代わりに随分と俺も戦っているような気がするなと考えながら拳願仕合の会場まで向かっていくと、柳葉竜胆が現れたことで観客から歓声が上がる。

 

番外の牙の顔と名は既に拳願会会員に知れ渡っており、有名人となっていた柳葉竜胆が現れるだけで観客のテンションは最高潮に高まっていき、牙という呼び名では滅堂の牙と被る為に番外と柳葉竜胆を呼ぶ観客達。

 

構えを取った柳葉竜胆と今日の対戦者の間で審判が振り上げた手を振り下ろし仕合が始まっていくと「さて、戦ろうか」と言った柳葉竜胆が凄まじい速度で対戦者に接近していった。

 

それから何が起こったかは、拳願会会員達を含む観客達による番外という歓喜の叫びが答えであり、今日も柳葉竜胆が一撃で拳願仕合の勝負を決めたということは言うまでもない。

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