だから俺は料理人だって言ってんだろ!   作:色々残念

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第16話、裏格闘技団体

拳願仕合で100勝無敗の大記録を達成した柳葉竜胆は、片原滅堂の番外の牙として名が知られており、拳願仕合以外の裏格闘技団体にも注目されるようになっていたようだ。

 

裏格闘技団体では拳願仕合に次ぐ規模の煉獄の主催者である豊田出光と柳葉竜胆が親しくしている姿を見た拳願会会員達は、柳葉竜胆が煉獄に移籍するのではないかと考えて噂話を広めていたらしい。

 

柳葉竜胆が煉獄に移籍するという噂話は拳願会会長の片原滅堂に伝わっていたが、噂話は所詮噂話じゃろうが一応竜胆本人にも聞いてみるかのうと思っていた片原滅堂は柳葉竜胆に問いかけをする。

 

「竜胆が煉獄に移籍するという噂話が広まっておるんじゃが、実際竜胆には移籍してみようという気はあるのかのう」と片原滅堂からの問いかけに「煉獄に移籍したら豊田出光さんに毎日ハンバーガー作ることになりそうな気がするから移籍なんかしねぇよ爺さん」と答えた柳葉竜胆。

 

「竜胆ならそう言うじゃろうなと思っておったぞ」と言った片原滅堂は笑いながら「わしと出会う前に豊田出光と出会っておったらどうしていたかの」と気になったことを聞いていた。

 

「ハンバーガーだけ作らせられるのは料理人として嫌だからな、専属料理人にならないかって聞かれても結局断ってたと思うぜ」と答えていった柳葉竜胆は自分の考えを素直に言っていたようであり、それが理解できた片原滅堂は納得したように頷く。

 

「竜胆は今日もこれから拳願仕合じゃったの、期待しておるぞ」と言いながら笑った片原滅堂に「アギトが朝っぱらから戦いを挑んで来なけりゃ、料理人の仕事だけで終わってたんだが、仕合があるのに戦いを挑んでくるアギトが悪くねぇか爺さん」と柳葉竜胆は聞くと片原滅堂の返答を待つ。

 

「ファイトじゃ竜胆」とグッと親指を立ててそれだけ言った片原滅堂に「おい、それだけか爺さん」と言う柳葉竜胆に護衛者達が近付いてきて「そろそろ移動する時間です竜胆さん」と言ってきた。

 

「ちょっと爺さんに文句くらい言わせろ、主にアギトを止めようとしないことに関して」と言いながら止めようとする護衛者達を引きずって片原滅堂に接近していく柳葉竜胆。

 

必死に止めようとしていた護衛者達の1人が「ちょっ、止まってください、あとでシュークリームあげるから」と言い出したが「シュークリームは嫌いじゃねぇが、それで俺が止まるわけねぇだろ」と言った柳葉竜胆は止まらない。

 

片原滅堂直属の鷹山ミノルと王森正道が全力で制止に加わってようやく止まった柳葉竜胆は「帰ってきたら言うことあるから待ってろや爺さん」とだけ言って護衛者達に連れられて拳願仕合の会場まで向かう。

 

裏格闘技団体では現在最大規模である拳願仕合を観戦しに来る大企業の面々は拳願会会員であり、今日行われる拳願仕合が片原滅堂の闘技者が戦う仕合だと聞いた拳願会会員達は、テンションが最高潮に上がっていたようだ。

 

滅堂の牙か番外の牙の拳願仕合が観れると喜ぶ拳願会会員達は、今日の仕合が始まる時を今か今かと期待して待ち続けており、明らかに仕合前から興奮していた拳願会会員達。

 

柳葉竜胆の姿が現れると「今日は番外の牙の日か」と言った拳願会会員達は、最高に上がったテンションのまま、会場に響き渡る雄叫びのような声で「番外!」と柳葉竜胆のことを呼ぶ。

 

今日は煉獄から移籍してきた元A級闘士が相手であり、拳願仕合の次にレベルが高い煉獄でも数少ないA級闘士であったことから、確かな実力を持っていることは間違いない相手を前にしても普段通りに柳葉竜胆は落ち着いていた。

 

拳願仕合が開始される前に対峙する柳葉竜胆と元煉獄A級闘士は構えを取っていき、名も無き武術の構えを取っている柳葉竜胆に対して、ジークンドーの構えを取っていた元煉獄A級闘士。

 

ジークンドーの最も強力な武器は何か知ってるかい番外の牙さんよと考えていた元煉獄A級闘士は、その答えを俺が見せてやるよと内心で思うだけで言葉に出すことはない。

 

最速最短の連打こそがジークンドーの最も強力な武器だと考えていた元煉獄A級闘士は、最短距離を突く縦拳が可能にする驚異のハンドスピードを持っており、煉獄での試合は毎回短時間で終わらせていた。

 

簡単に終わってくれるなよ拳願仕合のもう1人の王よと考えていた元煉獄A級闘士は、番外の牙と呼ばれる柳葉竜胆との戦いを楽しむつもりでいたようだが、柳葉竜胆は素早く戦いを終わらせようと思っていたらしく、速攻で決めにいこうと考えている。

 

拳願仕合の審判が戦う両者の間に立ち、振り上げた手を振り下ろすと同時に開始の声が響き渡り、ついに拳願仕合が始まりを告げて構えた両者が接近していくと先に拳を繰り出す柳葉竜胆。

 

柳葉竜胆が繰り出すジャブは重く速い一撃であり大抵の相手は、その一撃で顔面を潰されて沈んでいたがなんとかそれを避けることができた元煉獄A級闘士は最速の縦拳を連続で放つ。

 

全ての縦拳を柳葉竜胆に避けられた元煉獄A級闘士は、強い相手と戦いたくて拳願仕合に移籍したのは間違いじゃなかったな、俺の縦拳を容易く避けられた奴は煉獄にはいなかったのに、番外の牙は涼しい顔して避けてやがると思いながら嬉しそうに笑った。

 

縦拳を回避していきながら胴を狙った順突きを繰り出すと見せかけてフェイントを入れた柳葉竜胆が底拳を使って、豪速球投手のフォームのような降ろし打ちを元煉獄A級闘士の顔面に叩き込んだ。

 

顔面を陥没させられた元煉獄A級闘士が薄れゆく意識の中で最後に思ったのは、いずれリベンジしてやるから待ってろ番外の牙という再戦を誓う戦意に溢れたものであったらしい。

 

こうして裏格闘技団体の拳願仕合は柳葉竜胆の勝利で終わりとなって、101勝無敗と記録を伸ばした柳葉竜胆は片原滅堂の豪邸に帰っていき、料理人としても働いていく。

 

「つーか爺さんは何で俺を闘技者にしたんだ、アギトが無理でも正道やミノルが居ただろ」と食後のデザートを食べている片原滅堂に聞いた柳葉竜胆に「竜胆のことを自慢したい気持ちがあったんじゃろうな」と答えた片原滅堂。

 

「自慢って子どもじゃねぇんだからよ爺さん」と呆れたように言う柳葉竜胆へ「男はのう、何歳になってもガキのまんまじゃよ」と言い切った片原滅堂は「竜胆は戦うことは嫌いかの」と聞いてくる。

 

「戦うのは嫌いじゃねぇし、戦うなら負けんのは嫌いだよ」と答えた柳葉竜胆は「まあ、こうして料理人として働けてるからそれは悪いことじゃねぇよ爺さん」と言って柳葉竜胆は笑っていた。

 

「それで、今日のデザートがシュークリームだったんじゃが、これは護衛者にもらった物かのう」と聞いてきた片原滅堂へ「俺が作ったやつだよ、あのやり取りまだ覚えてたのか爺さん」と答えた柳葉竜胆は、なんともいえない微妙な表情をしていたようだ。

 

裏格闘技団体では現在最大規模の拳願仕合が1位とすると業界2位は煉獄であり、業界3位は毘沙門と言えるだろう。裏格闘技団体では老舗であるデスファイトという武器ありの戦いをする裏格闘技団体も存在しているが人気は年々下がっているらしい。

 

豊田出光に呼ばれて煉獄に来ていた柳葉竜胆が上位のB級闘士の試合を観戦していると近付いてきた豊田出光が「竜胆君、育ての親とは会えたかい」と聞いてきた。

 

「一応会えましたよ、そういえば大樹は煉獄のA級闘士になっているみたいですね」と答えた柳葉竜胆に「そう、彼は僕の気に入っているA級闘士の1人でね、カウンターで勝負を決めるからワンカウンターと呼ばれているよ」と言った豊田出光。

 

「確かに大樹はカウンターが得意でしたね」と頷いていた柳葉竜胆へ「大樹君は竜胆君の武術の師匠でもあるんだよね、竜胆君は竜胆君で元煉獄A級闘士に勝ったって話が僕のところにまで伝わってるよ」と豊田出光は笑う。

 

「どうだったかな煉獄の元A級闘士の実力は」と聞いてきた豊田出光に「拳願仕合の並の闘技者よりは強かったですよ、初撃が避けられたのは久しぶりでしたからね」と正直な感想を答えた柳葉竜胆は嘘をつかない。

 

「煉獄も中々強者が集まってきたかと思っていたけど、どうやら拳願仕合のレベルは思っていたよりも高いみたいだね」と柳葉竜胆の感想を聞いて思ったことを素直に言葉にした豊田出光は頷く。

 

「そういえば竜胆君が煉獄に移籍するんじゃないかって噂があるけど実際どうなのかな?」と話を変えて聞いてくる豊田出光へ「それは完全にデマですね、単なる噂話ですよ、豊田出光さんとこうして話している姿を見た誰かが勝手な想像をしただけです」と断言した柳葉竜胆。

 

「うん、ちょっと残念かな、竜胆君が煉獄に移籍してくれたら面白くなりそうだと思ってたんだけど移籍はしてくれそうにないね」と柳葉竜胆の反応を見て思った豊田出光は残念そうな顔をしていた。

 

「ああ、そうだ、竜胆君がレシピを考案してくれた煉獄の弁当、売れ行きが物凄く好調だってスタッフが喜んでたよ、特に煉獄焼肉弁当が1番売れてるらしいね」と話題を変えた豊田出光は以前柳葉竜胆が手伝った弁当についての話をする。

 

「売れてるのはわかってましたが煉獄焼肉弁当が1番人気なのは知らなかったですね、料理人として役に立てたことは嬉しく思いますよ」と言った柳葉竜胆は料理人としての仕事が成功したことを喜んでいたようだ。

 

柳葉竜胆と豊田出光がそんな会話をしている間も煉獄B級上位の闘士達による激しい戦いは続いていたらしく、体格では劣っていた相手が武術を用いて戦況をひっくり返す。

 

武術を使いこなしていた煉獄B級闘士の上位の実力は限りなくA級に近いようで、体格を活かした喧嘩殺法で戦う対戦相手を徐々に追い詰めていった武術の使い手である煉獄B級闘士。

 

最終的には武術の使い手の勝利で終わった煉獄B級闘士達の戦いを観戦していた柳葉竜胆と豊田出光は、A級に限りなく近い戦いが観れたと思っていて、満足できる試合だったと感じた2人。

 

「煉獄も悪くないよ竜胆君」と言ってきた豊田出光に「そうですね悪くないのはわかりますが、俺は拳願仕合の闘技者ですよ」と言い切った柳葉竜胆は煉獄には参加しないという意思を伝える。

 

「そっか、竜胆君の意思は固いようだね、今は諦めるけど、もし気が変わって煉獄に移籍したくなったらいつでも受け入れるよ、また今度会おうね竜胆君、その時はきみの作ったハンバーガーが食べたいな」と言った豊田出光は去っていった。

 

豊田出光との会話を終えた柳葉竜胆が片原滅堂の豪邸に戻ってきたところで、呉恵利央と呉時子の姿を発見した柳葉竜胆は「お久しぶりですね呉恵利央さん」と話しかけていく。

 

「竜胆か、久しいのう、時子とは仲良くやっておるようじゃな」と笑みを浮かべて言ってきた呉恵利央と「会いたかったよ竜胆!」と言いながら柳葉竜胆に突撃して抱きついた呉時子。

 

キスの雨を降らせてくる呉時子を落ち着かせてから呉恵利央に「今日は滅堂の爺さんに会いに来たんですか」と聞いた柳葉竜胆へ「そうじゃったが入れ違いになったようでのう、しばらく待つように言われておったんじゃよ」と答えた呉恵利央。

 

「簡単に食べられる軽食でも用意しましょうか」と言う柳葉竜胆に「腹も空いてきたところじゃし頼もうかのう」と言った呉恵利央へ「ちょっとだけ待っていてくださいね」と言って調理場で素早く軽食を用意した柳葉竜胆は2人の元へ向かった。

 

柳葉竜胆が用意したサンドイッチとおにぎりは呉恵利央と呉時子が今までの人生で食べてきたサンドイッチとおにぎりの中で、1番美味しいと間違いなく言える物だったらしい。

 

武術家としての腕だけではなく料理人としての腕も竜胆は素晴らしいようじゃなと思っていた呉恵利央は、時子は良い相手を見つけたのうと呉一族の頭首として喜んでいたようだ。

 

結婚したら竜胆に料理は全部任せようかな、料理の腕でも勝てそうにないし、と考えていた呉時子だったが「いずれ時子さんの料理も俺は食べてみたいかな」という柳葉竜胆の言葉を聞いてやる気を見せる。

 

柳葉竜胆と呉時子のやり取りを見て、これも青春かと思った呉恵利央は自分が歳を取ったことをしみじみと感じていたようで、妻と出会った昔の出来事を思い出していた呉恵利央だった。

 

「将棋でもしませんか」と柳葉竜胆が言ってきたので了承した呉恵利央は柳葉竜胆と将棋をすることになったが、思っていた以上に柳葉竜胆は将棋が強かったようで連敗することなった呉恵利央は物凄く驚く。

 

手も足も出んかったのうと少し落ち込んだ呉恵利央の代わりに将棋をしていく呉時子は、将棋のルールを覚えたてのようだったので、呉時子には駒の動かし方まで優しく教えていった柳葉竜胆。

 

それでも勝負事で負けるのは嫌いな柳葉竜胆は呉時子にも勝利していき、呉時子も連敗を重ねていくことになったが、柳葉竜胆に優しく将棋を教えてもらったことで機嫌は良い。

 

片原滅堂が帰ってきたところで将棋は終わりとなり、片原滅堂の料理人としての仕事に戻ろうとした柳葉竜胆に「今日みたいに、また会いに来ても良いかな竜胆」と言ってきた呉時子。

 

「構いませんよ、俺も時子に会えるのは嬉しいんで」と笑顔で言った柳葉竜胆に抱きついた呉時子は「絶対また会いに来るね竜胆」と言うと呉恵利央を護衛する仕事に戻っていった。

 

料理人に戻った柳葉竜胆は今日の夕食の仕込みを始めるかと調理場で作業を始めていき、今日片原滅堂が食べる夕食を丁寧に作っていくと、良い匂いに誘われたのか調理場にまでやってきた片原滅堂。

 

「今日は何かのう」と聞いてくる片原滅堂に「ビーフシチュー」と答えた柳葉竜胆は調理場に突撃してくる片原滅堂にも慣れた様子で「味見してみるか爺さん」と小皿にビーフシチューを注いで渡す。

 

「美味いのう、じゃがこれで完成ではないようじゃな」とビーフシチューを味見した感想を言った片原滅堂に「付け合わせる物があるが、それは出来上がりを楽しみにしときな爺さん」と柳葉竜胆は言うと片原滅堂を調理場から追い出した。

 

完成したビーフシチューは片原滅堂が満足する出来上がりだったらしく、何杯もおかわりした片原滅堂は旺盛な食欲を見せており、今日も健康であることは間違いないようだ。

 

こうして料理人として働いた柳葉竜胆は、片原滅堂の闘技者として拳願仕合の舞台に上がって勝利を続けていく。番外の牙は敗北することなく勝利を積み重ねていき、現在では105勝無敗となっていた柳葉竜胆。

 

106戦目の相手を前にしても普段通りの柳葉竜胆は落ち着いており、審判の合図で拳願仕合が開始されてから動き出した柳葉竜胆は握った拳を今日の対戦相手に打ち込む。

 

一撃で決着となり終わった拳願仕合の仕合会場では「番外!」と番外の牙を呼ぶ拳願会会員達の姿があって、加納アギトの代わりに出場した拳願仕合で柳葉竜胆が今日も勝利したことは間違いない。

 

仕合を観戦していた闘技者には猛虎と呼ばれる若槻武士の姿もあったようで、いずれ戦うことになるかもしれない柳葉竜胆を静かに見ていた若槻武士は、強い戦意を抱いて拳を握っていた。

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