だから俺は料理人だって言ってんだろ!   作:色々残念

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第21話、二虎流

古流武術臥王流をベースとし、改良を加えた四大系統から成る武術である二虎流の創始者は臥王鵡角という男であり、それぞれの継承者によって技術体系が異なっているらしい。

 

二虎流の基本的な体系としては、歩法や走法の火天ノ型、身体及び力ノ操作が操流ノ型、肉体軟化に関節技は水天ノ型、肉体硬化と打撃技の金剛ノ型、という体系となっており、四大系統を全て極めてこその二虎流であると十鬼蛇王馬に教えていた十鬼蛇二虎。

 

今現在の十鬼蛇王馬としては火天ノ型と操流ノ型が得意で、水天ノ型と金剛ノ型が苦手という状態となっていて、二虎流という流派の力を全て発揮することはできておらず「前借り」に頼ることも増えている。

 

「前借り」は肉体に負荷をかけることになり、血管の損傷や脳内出血による記憶喪失、混濁、幻覚、幻聴、そして最終的には心臓が限界を迎えることは間違いなく、十鬼蛇王馬は「前借り」を使う度に死へと近付いていった。

 

十鬼蛇二虎から二虎流を受け継いだ十鬼蛇王馬は「前借り」の影響で記憶を忘れており、習得した二虎流の奥義である「鬼鏖」のことすらも完全に忘れていて、奥義を使うこともできなくなっていたようだ。

 

更に過去の十鬼蛇二虎との戦いで肉体に枷までかけられている十鬼蛇王馬は、本当の実力を発揮することができないまま柳葉竜胆と戦うことなったが、柳葉竜胆は一撃で戦いを終わらせるつもりはなく手加減していたので、まだ戦いは続いていく。

 

二虎流火天ノ型「火走」という焔のごとく揺らめき、敵を幻惑する歩法術で柳葉竜胆の周囲を回りながら攻撃を繰り出す十鬼蛇王馬だが、全ての攻撃が柳葉竜胆に受け止められていき、直撃したものは一つもない。

 

柳葉竜胆が放った拳が避けられないと悟った十鬼蛇王馬は二虎流金剛ノ型「不壊」で拳を受けることにして、全身の筋肉を締め固めて胴体に向けて放たれた拳を受けたが、十鬼蛇王馬の不完全な金剛ノ型「不壊」では防ぐことができない威力だった柳葉竜胆の拳。

 

衝撃とは柔らかい物体ほど深部まで浸透しやすく、全身の筋肉を瞬時に緊張、収縮させることにより硬度と密度を高め、衝撃の浸透を防ぐという技が二虎流金剛ノ型の基本技である「不壊」だと十鬼蛇二虎に教わっていたことを十鬼蛇王馬は思い出す。

 

戦いの最中に十鬼蛇二虎から教えられた様々なことを思い出していた十鬼蛇王馬は、柳葉竜胆の拳で吹き飛ばされて地面を転がり、立ち上がって立ち向かっていき、二虎流操流・火天ノ型「畝焔」を使い、最高速度を保ったまま急激な方向転換を行った。

 

急激な方向転換を可能にするのは重心移動であり、踏み込みの瞬間に人体の重量の6割を占める上半身を一気に傾けることで、進行方向を無理矢理変化させる技こそが「畝焔」であるが、脚部には当然大きな負担がかかる。

 

そんな技を使ってでも柳葉竜胆の意表を突く必要があると考えた十鬼蛇王馬は、最高速度のまま柳葉竜胆に突撃していき、二虎流火天ノ型「烈火」と金剛ノ型「不壊」の複合技、二虎流金剛・火天ノ型「瞬鉄・砕」を放ったが、あっさりと十鬼蛇王馬の腕を掴んで止めた柳葉竜胆。

 

「瞬鉄」は二虎流で一番速い攻めの型であるが、その動きはきわめて直線的で読み易く、超人的な動体視力を持つ柳葉竜胆には全てが見えていて、十鬼蛇王馬の腕を掴んで止めた柳葉竜胆は十鬼蛇王馬を投げ飛ばす。

 

距離が離れたところで「どうした王馬、今日は調子が悪いのか」と言った柳葉竜胆に黙って向かっていく十鬼蛇王は、二虎流操流・水天ノ型「水燕」という不規則な軌道の突きを連続で放つ技を繰り出した。

 

不規則な軌道で放たれていく連続突きを捌いていく柳葉竜胆に今度は二虎流金剛ノ型「鉄砕」という筋肉を締め固めて硬度を高めた拳を放つ技を使った十鬼蛇王馬。迫り来る十鬼蛇王馬の拳を受けずに腕を掴んで捻りあげた柳葉竜胆は十鬼蛇王馬を地面に叩きつける。

 

地面に叩きつけられる前に二虎流金剛ノ型「不壊」を使った十鬼蛇王はダメージを軽減することに成功。しかし完全ではない「不壊」では痛みを感じることになり、ダメージを無くすことはできておらず、十鬼蛇王馬は身体を痛めることになった。

 

それでも戦うことを止めない十鬼蛇王馬は十鬼蛇二虎が言った言葉を思い出しており、十鬼蛇二虎と始めて出会った時のことも思い出していた十鬼蛇王馬は柳葉竜胆が連続で繰り出す拳に合わせて二虎流操流ノ型「流刃」を使い、手の甲の硬質な骨部分で、柳葉竜胆の拳の軌道を変えていく。

 

始めて十鬼蛇王馬と出会った時に十鬼蛇二虎は「流刃」で銃弾を弾く姿を見せており、十鬼蛇王馬が始めて見た二虎流の技は操流ノ型「流刃」であったことは間違いないだろう。弾丸の発射速度は到底人間が対応できる速度ではない。

 

しかし銃口の角度、発射の瞬間を見極めることにより、直撃を避けることは可能である。これを応用し、銃弾の入射角度を見極め、直撃の瞬間、硬質の骨部分で弾丸を押し出し、軌道を変えるという芸当をやってのけた十鬼蛇二虎の姿は、十鬼蛇王馬の記憶に深く刻まれていたようだ。

 

「自分が生き抜くためだけに振るう暴力。それじゃあ獣と変わらねえ。俺たち人間が目指すべきはそこじゃねえ。「暴力」は「暴力」をもってのみしか制することができない。だからこそ、テメーを貫く信念。誰にも負けない、鍛練・修練をもって「暴力」は「武」へと昇華される」と十鬼蛇王馬に語った十鬼蛇二虎。

 

そんな十鬼蛇二虎の言葉を思い出していた十鬼蛇王馬は、悪いな二虎、すっかり忘れてたぜと思いながらも柳葉竜胆との戦いを続けていき、二虎流火天ノ型「幽歩」の歩法から続けて金剛ノ型「鉄砕・蹴」という蹴りで行う「鉄砕」を十鬼蛇王馬が放つ。

 

名も無き武術の「柳」によって蹴りの力の流れを変えられた十鬼蛇王馬は、身体を回転させられて柳葉竜胆に無防備な背を向けることになったが、操流が得意な十鬼蛇王馬は直ぐに体勢を立て直して柳葉竜胆から距離を取った。

 

その気になれば十鬼蛇王馬を拳の一撃で容易く倒せる柳葉竜胆は、二虎流を受け継ぐ十鬼蛇王馬の実力を全て引き出す為に加減をしていて、戦いの中で十鬼蛇王馬が全力を出しきるまで戦いを終わらせるつもりはない。

 

貫手を使った「瞬鉄」である二虎流金剛・火天ノ型「瞬鉄・穿」を繰り出す十鬼蛇王馬。貫手が直撃する前に十鬼蛇王馬の腕を掴んで止めていた柳葉竜胆は「これが今のお前の限界か?王馬」と言うと臥王流より名も無き武術に伝わった「纏鎧」を打撃に応用した拳を十鬼蛇王馬に打ち込む。

 

全身の筋肉を硬化させて筋肉を鎧に変える臥王流の「纏鎧」は二虎流金剛ノ型「不壊」の元となった技であることは間違いない。十鬼蛇王馬の「不壊」でも防ぎきれない威力で打ち込んだ柳葉竜胆は戦いを終わらせるつもりだった。

 

柳葉竜胆の拳を腹部に受けた十鬼蛇王馬は吹き飛び、二虎流金剛ノ型「不壊」が効かねえ威力で拳を打ち込んできやがった、柳葉竜胆も「不壊」に似た技が使えるのは知ってたが、俺以上に使いこなしてやがる、決めにきたな柳葉竜胆と思いながら柳葉竜胆を見る。

 

瞬時に十鬼蛇王馬に近づいた柳葉竜胆に、カウンターに使うと効果的であると十鬼蛇二虎に教わった二虎流金剛・火天ノ型「瞬鉄」を肘打ちで放つ「瞬鉄・爆」を繰り出した十鬼蛇王馬だが、十鬼蛇王馬の「瞬鉄・爆」を容易く受け止めた柳葉竜胆。

 

普通に打つだけでは威力が後方に逃げるが、相手のスピードを利用すれば破壊力は飛躍的に上昇することは間違いない「瞬鉄・爆」を片手で受け止めた柳葉竜胆は、身体能力で十鬼蛇王馬に圧倒的に勝っていたようだ。

 

そして名も無き武術の達人である柳葉竜胆の身体に長く触れるということは、必ず攻撃を受けることであり、四方投げで投げられた十鬼蛇王馬は頭から投げ落とされて意識を失うことになって、戦いはこうして終わった。

 

しばらくして目覚めた十鬼蛇王馬に「何で「前借り」を1度も使わなかったんだ?王馬」と問いかけた柳葉竜胆に「この戦いは「前借り」を使わないで戦わねえと駄目な気がしただけだ」と答えた十鬼蛇王馬。

 

「腹減ったな、飯でも食いに行こうぜ」と言い出した十鬼蛇王馬へ「山を出たら直ぐにタクシー呼ぶからよ、ちょっとだけ待ってな王馬」と言った柳葉大樹は続けて柳葉竜胆に「美味い肉を出す店までタクシーで行くが、竜胆も一緒に来るか?奢るぞ」と聞く。

 

「いや、俺はいいよ、王馬にたらふく肉を食わせてやればいいさ」と答えた柳葉竜胆は「まあ、個人的には王馬には野菜をもっと食ってもらいたいところなんだが、あまり強制させるのも良くないからな、大樹に王馬の食生活は任せるよ」と言う。

 

「じゃあ俺は家まで走って帰るんで、お先に失礼」と言って柳葉竜胆が走り出し、一足先に帰っていく姿を見ていた十鬼蛇王馬に「それで、いつも戦ってる俺よりも強い竜胆と戦ってみてどうだった王馬」と聞いてみた柳葉大樹。

 

「確かに柳葉大樹より柳葉竜胆は強いんだろうが、柳葉竜胆が全く本気を出していなかったのはわかるぜ、俺が二虎流の技を出しきるまで待っているようだったな、使える技は全部使ったが、こんなに二虎流が通用しねえ相手は初めてだったぜ」と答えた十鬼蛇王馬。

 

後継者をしっかりと育てたことに関してなら、お前を上回ったみたいだな二虎と思っていた柳葉大樹は、それを十鬼蛇王馬に言うことはない。俺がいずれあの世に行ったら十鬼蛇二虎に自慢しようと考えていた柳葉大樹は呼び出したタクシーに十鬼蛇王馬と共に乗り込んだ。

 

美味い肉を出す店にまで向かったタクシーが止まり、運賃を支払ってタクシーから降りていく柳葉大樹に続いて降りていった十鬼蛇王馬は「ここで美味い肉が食えんのか?」と言いながら柳葉大樹と一緒に店に向かっていく。

 

ステーキセットからハンバーグセットに骨付き肉まで食べていった十鬼蛇王馬は、確かに美味い肉だなと思っていたようで、かなり大量の肉をあっという間に食べていき、空になった皿を山のように積み上げていった。

 

煉獄のA級闘士である柳葉大樹は高額なファイトマネーを得ているので、いつも懐は暖かく、十鬼蛇王馬が大食漢であっても問題はない。札束を5つは常に持ち歩いている柳葉大樹は、十鬼蛇王馬に小遣いも渡している。

 

基本的に月に100万を小遣いとして十鬼蛇王馬に渡していた柳葉大樹だが、外食で100万を使いきってしまう十鬼蛇王馬。かなり大量に食べている十鬼蛇王馬の1回の食事は、とてつもない量であり、柳葉大樹の家計は食費が高いようだ。

 

豊田出光に煉獄へと呼び出された柳葉竜胆は、そこで煉獄のA級闘士であり三鬼拳と呼ばれる拳法家の劉東成と出会うことになり「出光さん、何ネ、このデカブツ」と初対面で言われることになる。

 

「劉君、彼が柳葉竜胆君だよ、番外の牙と言った方が有名かな」と笑いながら言った豊田出光に「番外の牙って言えば、拳願仕合で130勝して無敗って話ヨ、何でそんなのがここにいるカ」と驚いていた劉東成。

 

「僕の命を狙うって奴等が来るみたいだから護衛をしてもらおうかと思って竜胆君を呼んだんだよ、もちろん劉君もね」と言う豊田出光へ「聞いてないヨ、護衛だったら他の闘士に頼めばいいネ、私はただの天才拳士ヨ、護衛は専門外ネ」と劉東成は言い出す。

 

「俺も聞いていないんですが」と言ってきた柳葉竜胆に「あれ?片原のお爺ちゃんには事前に話を通して、竜胆君が護衛をすることに関してはOKもらってるんだけど竜胆君には伝わってなかったのかな」と首を傾げる豊田出光。

 

やりやがったなあのクソジジイと内心で思いながらも仕方ないから護衛の仕事をしっかりとするかと切り替えて、豊田出光の護衛として周囲を警戒している柳葉竜胆は観客に紛れて近付いてくる気配を感じ取り「気付いていますか?」と劉東成に話しかけた。

 

「殺気丸出しなのが近付いてくるの、よくわかるヨ、数は10人ってところネ」と言った劉東成は静かに構えを取っていて、いつでも戦えるように臨戦態勢であり、乗り気ではなかった先程とは違って戦うつもりではあるようだ。

 

左右から挟み込むように5人と5人が現れて近付いてくる姿を見た柳葉竜胆と劉東成は護衛として護衛対象を守る為に豊田出光を背にして、右は柳葉竜胆、左は劉東成で、真ん中が豊田出光という状態となっていた3人。

 

「右は任せたヨ、牙」と言う劉東成に「左は任せましたよ、劉東成さん」と言った柳葉竜胆。拳の一撃を1人1人に打ち込んでいき、右の5人を瞬く間に倒した柳葉竜胆は劉東成の動きを見て、煉獄のA級闘士は、やはり強いなと思っていたらしい。

 

劉東成が放つ発勁は一撃で殺し屋達を沈めていく。この程度の相手なら問題ないネと思っていた劉東成だが、最後に残った1人が1番強い相手であり、殺し屋が使った針によってかすり傷を負うことになりながらも殺し屋を倒した劉東成は、針に塗られていた「屍」により死にかけることになる。

 

幸い「屍」に詳しい柳葉竜胆が症状を見て、柳葉竜胆がいつも持ち歩いている血清の中に劉東成に使われた「屍」に効果のある人血清があることに気付き、劉東成は柳葉竜胆に命を救われることなったようだ。

 

命の恩人となった柳葉竜胆に感謝をした劉東成は「これから竜胆って呼ぶヨ、私も東成って呼び捨てでいいネ」と言うと笑う。それから仲良くなった柳葉竜胆と劉東成は連絡先を交換して、プライベートでも会うような仲になっていったようで、柳葉竜胆が劉東成に料理を振る舞ったりもしたらしい。

 

「料理もプロ並みネ竜胆」と驚いた劉東成に「いや本業は料理人だからね俺は」と言った柳葉竜胆は完全に戦うことが本業だと思われていたんだなと思っていて、拳願仕合で戦い過ぎたかなと柳葉竜胆は考えていた。

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