だから俺は料理人だって言ってんだろ!   作:色々残念

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今日2回目の更新です
3回目は23時になります


第24話、若槻武士

猛虎と呼ばれる拳願仕合古参闘技者にして、拳願仕合最多勝利数の記録を持つ若槻武士。6年前に若槻武士へ敗北を刻んだ滅堂の牙を倒す為に牙を研いできた若槻武士は、格上を倒す為の牙を身につけていた。

 

天明元年創業であり、日本5大医薬品メーカーのひとつだが売上高は国内第2位で、高血圧治療薬を主力商品としているが、近年はその他の医薬品の創薬、開発にも注力している拳願会の古豪、古海製薬との拳願仕合が決まった大日本銀行。

 

古海製薬所属闘技者である若槻武士は牙との再戦かと思っていたようだが、相手となるのは5代目滅堂の牙、加納アギトではなく柳葉竜胆である。古海製薬社長古海平八は「牙は牙でも番外の牙で、牙違いだったようだね若槻君」と若槻武士に言っていた。

 

「加納が出ると思ってたんですがね、あてが外れましたが、全力で行きます、そうしなければいけない相手ですよ、番外の牙、柳葉竜胆という男は」と言った若槻武士は柳葉竜胆を過小評価することはない。

 

拳願仕合が行われる場所はプライベートビーチであり、夏場に人気な仕合会場ではキャンプファイアやバーベキューなどが行われていて飲み物が配られている。近隣の土地も拳願会所有である為、騒いでも人目につくことはない仕合会場で行われる仕合。

 

砂浜で対峙した柳葉竜胆と若槻武士の間で審判が手を高く掲げてから振り下ろし、仕合開始の合図として「始め!」と叫ぶと急速に接近していった柳葉竜胆と若槻武士の拳がぶつかり合い、若槻武士の拳だけから血が流れていく。

 

名も無き武術に怪腕流から伝わった部位鍛練で鍛えられていた柳葉竜胆の手は凄まじい強度を持っていて、若槻武士の拳に打ち勝つ強度を持つ柳葉竜胆の拳。常人の約52倍の筋繊維密度を持っていた若槻武士は、人類の範疇を大きく 上回る筋力を持つ。

 

通称「超人体質」という全世界でも過去数件しか確認されていない珍しい症例である若槻武士の攻撃力はコンクリートをも容易く粉砕する。そんな若槻武士と真っ向から打ち合える柳葉竜胆も人間離れした力を持っており、アドレナリンの多量分泌による火事場の馬鹿力を発揮していた柳葉竜胆。

 

若槻武士を力で押し始めた柳葉竜胆へと拳を繰り出す若槻武士は奥の手を2つ持っているがまだ使うことはない。5代目滅堂の牙に敗北してから格上を倒す為に研鑽を続けていた若槻武士は、身につけた奥の手を公式の拳願仕合で使ったことは無かった。

 

例えるならば限界まで縮めたバネを一気に解放するように全身の筋肉をある一点に向けて収縮させていき、言うなれば「芯」人体の中心へと力を集約し、一気に解き放つ技こそが若槻武士の奥の手である「爆芯」だ。

 

そして若槻武士のもう1つの奥の手は組み技であり、一流と言える程度にまでは仕上がっているが、超一流には及ばない実力でしかない若槻武士の組み技は、まだまだ不完全であることは間違いないだろう。

 

砂浜で立ち止まって拳を打ち合う柳葉竜胆と若槻武士だったが戦法を変えた柳葉竜胆は、若槻武士を軽々と投げ飛ばす。打投絞極が超一流である柳葉竜胆の攻撃は変幻自在であり、目まぐるしく変わる柳葉竜胆の戦法に若槻武士は着いていけていなかった。

 

投げかと思えば打撃、打撃かと思えば関節技、自在に動きを変える柳葉竜胆に翻弄されていた若槻武士は、奥の手である「爆芯」を放つ隙がないことに気付いていたようで、全身の力を集約して一気に解き放つ技の「爆芯」を繰り出す溜めが作れないほどに激しい柳葉竜胆の攻め。

 

柳葉竜胆の技は全て勝負を終わらせることができる技であり、防がなければ敗北に繋がることを理解していた若槻武士は必死に防いでいくが、止まることなく技を繰り出し続けて動き続ける柳葉竜胆の体力は尋常ではない。

 

柳葉竜胆と若槻武士の激しい攻防が続いていき、受け身に回っているだけでは勝てないことを良くわかっていた若槻武士は、なんとか打撃を叩き込もうとするが、それを待っていた柳葉竜胆に腕を取られてしまった若槻武士は肘の関節を外されてしまう。

 

流石に腕を折る隙までは無かったようだが肘の関節を外された若槻武士に肘をはめる隙を柳葉竜胆が与えることはなく、容赦なく攻め続けていった柳葉竜胆は拳撃を叩き込んでいくと若槻武士に攻めさせることはなかった。

 

片腕しか使えない状態になっていたとしても若槻武士は「まだ俺は立ってるぜ柳葉竜胆」と勝負を諦めることはないようで、審判が止めることもない拳願仕合は止まらずに続き、柳葉竜胆は戦いを終わらせる為に拳を本気で握る。

 

若槻武士の顔面に叩き込まれた柳葉竜胆の拳は凄まじい威力を持っており、拳を喰らった自分の頭が吹っ飛んだと思った若槻武士が混沌とした意識の中で、まず取った行動は自分の首から上に頭が付いていることの確認だった。

 

若槻武士にまだ意識があることを知っていた柳葉竜胆は追撃の拳を顔面に打ち込む。若槻武士の顔面にめり込んだ柳葉竜胆の拳は、若槻武士の意識を完全に失わせることになり、決着となった柳葉竜胆と若槻武士の拳願仕合。

 

初見泉と加納アギトに続いて若槻武士に敗北を刻んだ男となった柳葉竜胆は、拳願仕合で戦った若槻武士のことを強い相手だったなと思っていたようで、火事場の馬鹿力を使わない素の筋力なら負けてる相手は初めてだと若槻武士を高く評価していく。

 

久しぶりに人を本気で殴った柳葉竜胆は若槻武士が死んでいないか確認しにいくことにしたようで、若槻武士が運ばれた場所まで向かう柳葉竜胆。仮設された医務室で古海平八と話していた若槻武士を確認した柳葉竜胆は生きてるみたいで良かったと安心する。

 

様子を確認しにきた柳葉竜胆に気付いていた若槻武士は「何をしにきた番外の牙」と顔に包帯を巻いた状態で言った。黙って去ろうとしていた柳葉竜胆は話しかけられたからには無視して帰るのも悪いかと思って立ち止まると「久しぶりに人を本気で殴ったので貴方が死んでいないか確認しにきただけですよ」と正直に言う。

 

「確かに頭が吹っ飛んだかと思うほど凄まじいパンチだった」と納得した若槻武士は続けて「番外の牙と呼ばれているわりには、滅堂の牙とは考え方が違うな、5代目滅堂の牙はそんなに甘くはない」と言って柳葉竜胆の言葉を待つ。

 

「俺は俺ですよ、番外の牙って呼び名も自分で名乗ったわけじゃない」と言いながら若槻武士を見て「拳願仕合じゃ誰も殺さないと決めてるんです、それが俺の決めた俺だけのルールなんですよ」と語った柳葉竜胆。

 

「拳願仕合は結果が全てだ、負けた俺がとやかく言うことではなかったな、滅堂の牙、加納アギトと柳葉竜胆は違うということが良くわかったよ」と言った若槻武士は拳願仕合の最中とは違って穏やかな笑みを浮かべていたようだ。

 

相手を決して殺さないと決めて今まで行ってきた数々の拳願仕合を相手を殺すことなくやり遂げてきた柳葉竜胆を嫌いではないと思った若槻武士。死者を出さずに拳願仕合で130勝以上をして無敗であり続けた男が柳葉竜胆だった。

 

加納アギトですら成し遂げていない記録。決して相手を殺さず死者を出すことのない拳願仕合を130回以上も行って勝利し続けてきた柳葉竜胆の本気を僅かでも引き出せたことを誇った若槻武士は、だが次は負けないと決意していたらしい。

 

敗北しても折れることはなかった若槻武士は、怪我が治るまでしばらく療養してから修行をやり直さないといけないなと考えていて、柳葉竜胆が加納アギトより強いと知れたことは悪いことではないかと判断する。

 

拳願仕合の猛虎は再び牙を研いでいき、5代目滅堂の牙、加納アギトを倒す為に修行を積み重ねていった。そんな日々を過ごしていた若槻武士にも休日はあり、町を今井コスモと一緒に歩いていた若槻武士は焼肉屋にまで向かう。

 

ひたすら肉を焼いて食べていった今井コスモと若槻武士は腹いっぱいになるまで焼肉を食べていくと支払いは若槻武士が全て支払ってから、腹ごなしにバッティングセンターに行くことになった今井コスモと若槻武士の2人。

 

向かったバッティングセンターで遊んでいた柳葉竜胆と劉東成は、どっちが多くホームランを打てるか競っており、今のところは柳葉竜胆がリードしている勝負。直ぐに熱くなりやすい劉東成はバッティングに集中できておらず空振りすることも多い。

 

柳葉竜胆にも友達はいるのかと驚いていた若槻武士と「あっ、柳葉さんじゃん、バッティングセンターに来るんだね柳葉さんも」と柳葉竜胆に話しかけていた今井コスモ。柳葉竜胆はホームランを連発しながら「久しぶりだね今井君」と言うとバットを構えてバッティングを続けていく。

 

「楽しそうだな柳葉さん、俺達もやろうよ若槻さん」と言った今井コスモに「バッティングセンターに来たのは初めてだが、球をバットで打てばいいのか?」と聞く若槻武士はバッティングセンターに来たのが初めてであり、どうやって遊ぶのかがいまいちわかっていなかったようだ。

 

今井コスモに教わりながらバッティングをしていった若槻武士は、今井コスモにバットはしっかり握ってと言われたことを守り、バットを強く握り過ぎて壊してしまうこともありながら、なんとかバッティングセンターを楽しむことができていたらしい。

 

初めてホームランを出せた若槻武士は、なかなか面白いなと思って夢中でバットを振るう。バッティングセンターでそれなりに腹ごなしができた今井コスモと若槻武士は、そろそろ帰ろうということになって、帰り道を歩いていく。

 

帰り道で襲われることになった若槻武士は、怪我を負わせることを目的としている相手が手慣れていることから雇われたプロだと判断したがそれは正解で、壊し屋というターゲットを壊すことを専門にするプロであった。

 

明日拳願仕合の予定があった若槻武士に差し向けられた刺客のタイミングからして、仕合で戦う企業が用意したプロであることは間違いないと理解していた若槻武士だったが、容赦なく拳を壊し屋相手に叩き込んだ。

 

拳による一撃で倒れて動くことはない相手を見て「脆いな、もう壊れちまった」と言い放った若槻武士。プロの壊し屋だとしても拳願仕合の猛虎を相手にするには実力が不足していたようであり、かすり傷すらも負うことはなかった若槻武士は万全で明日の拳願仕合を戦うだろう。

 

「熊の肉を食ってみたいんじゃがのう」と唐突に言ってきた片原滅堂に「突然どうした爺さん」と言う柳葉竜胆は、また爺さんの思いつきが始まったよと完全に慣れていたが、熊の肉を食うまで諦めねえだろうな爺さんは、と片原滅堂の考えを理解していたようだ。

 

「熊の場所はわかっておるからのう、頼んだぞい竜胆」と言い出した片原滅堂に「俺が行くことは決定なのかよ爺さん」と言う柳葉竜胆へ「護衛者達だけじゃと熊に勝てない可能性があるじゃろ」と言った片原滅堂。

 

「熊と戦うとか料理人の仕事じゃねぇんだけど、俺は料理人だって言ってんだろ!爺さん」と嫌そうな顔を隠さない柳葉竜胆に向かって「護衛者が熊に食われたら竜胆も困るじゃろ、畑作業をする人員が減るのは間違いないのう」と言って片原滅堂は柳葉竜胆を向かわせようとする。

 

「仕方ねぇな、爺さんの我が儘で死ぬなんて可哀想だし、着いていってやるよ」と折れた柳葉竜胆だったが「ただし、持って帰ってきた熊肉が不味くても文句言うなよ爺さん」と片原滅堂に約束させた柳葉竜胆は、どう処理しても不味い肉ってのはあるからなとよく知っていた。

 

護衛者が運転するトラックに乗った柳葉竜胆は熊がいる場所まで向かっていき、森の中で巨大な熊を発見した柳葉竜胆は護衛者に「この熊か?」と確認をすると、熊に近付いていく。人間より肉が厚く臓器も身体の奥にある巨大な熊が立ち上がると更に巨大さが理解できる。

 

巨大な熊の肋三枚下の心臓を蹴る「金剛」によって一撃で熊を倒した柳葉竜胆は、素手で熊の首を力づくで引きちぎって豪快に血抜きをすると、護衛者と共に熊を手早く解体していきながら、熊を熊肉に変えていった。

 

トラックに熊肉を積み込んだ柳葉竜胆と護衛者は片原滅堂の豪邸にまで戻っていくと熊肉の臭みを取る作業に移る柳葉竜胆と護衛者。野性味と言うには臭すぎる臭みを取っていった柳葉竜胆と護衛者は今度は調理を始めるが、スパイスをふんだんに使っていき、取りきれなかった臭みを誤魔化す。

 

完成した熊肉の料理を食べた片原滅堂は「うむ、竜胆がしっかりと下処理して丁寧に味付けされた熊肉はなかなかの味じゃのう、不味くはないぞい」と満足していたようであり、安心して胸を撫で下ろしていた護衛者と、料理人として料理を褒められて悪い気はしない柳葉竜胆だった。

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