だから俺は料理人だって言ってんだろ!   作:色々残念

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第7話、ピザ窯

片原滅堂の庭があった場所は殆んどが畑となっていたが、まだ空いているスペースがあり、そこで柳葉竜胆がピザ窯を作っていた。

 

耐火レンガを使って柳葉竜胆が作り上げたピザ窯は、しっかりとピザを焼けるようになっていて、試しに焼いてみたピザが美味しく焼けていたことを喜んだ柳葉竜胆。

 

「爺さん、ピザ窯作ったけど、ピザ食わねぇか」と片原滅堂を誘った柳葉竜胆に「竜胆は多才じゃのう、ピザ窯まで作れるとはの」と言って笑った片原滅堂は、ピザを食べに行く。

 

ピザ窯の近くには椅子とテーブルまで作られており、丁寧に作られた座り心地が良い椅子に、竜胆は家具作りの才能もあるようじゃなと片原滅堂は思った。

 

生地にトマトソースを塗り、畑で取れた新鮮な野菜と用意したベーコンにチーズをたっぷりと乗せたピザ生地をピザ窯に入れていく柳葉竜胆は、料理に手を抜くことはない。

 

薪で暖められたピザ窯の内部に入れられたピザが焼かれていき、良い匂いが漂ってきている間、片原滅堂は椅子に座ってピザが焼き上がるのを待つ。

 

焦がさないようにしっかりとピザ窯の中で焼かれているピザを見ていた柳葉竜胆は、焼けたピザの色合いを見ていき、そろそろ良さそうだと判断してピザを取り出す。

 

しっかりと焼かれたピザを皿に乗せた柳葉竜胆は、ピザに切れ目を入れて食べやすいようにすると片原滅堂が待つテーブルに置いた。

 

焼き上がったピザを食べた片原滅堂は「これは美味いのう」と喜んでいて、あっという間に焼きたてのピザを食べ終えた片原滅堂。

 

見るからに美味しそうなピザとその匂いに食欲が刺激されたのか思わず腹を鳴らしてしまった護衛者がいたようで、物凄く恥ずかしがっているその護衛者。

 

「爺さん、護衛者にもピザ食わしてやっても良いか?」と聞いた柳葉竜胆に「おっけいじゃ」と答えた片原滅堂は護衛者が腹を鳴らしてしまったことは特に気にしていなかったようだ。

 

ピザ窯で更にピザを焼いていった柳葉竜胆が、できたてのピザを護衛者達にも配っていき、その場にいた全ての護衛者にピザが行き渡っていく。

 

柳葉竜胆がピザ窯で焼いたピザを食べた護衛者達は「美味い!」と全員が思っていたようで、思わずそれを声に出している者もいて、各々がそれぞれの反応をしていたらしい。

 

口を隠すマスクを外してピザを食べた片原滅堂直属護衛の鷹山ミノルは「美味いなこのピザ」と思っていたらしく、自然と顔が笑顔になっている。

 

カップラーメンが好物である4代目滅堂の牙、王森正道も牙の座を退いてから片原滅堂直属護衛となっており、片原滅堂の傍に常に護衛として立っている王森正道にも柳葉竜胆からピザが渡された。

 

柳葉竜胆がピザ窯で焼いたピザを食べて「今まで食べてきたピザの中でも竜胆が焼いたピザが一番美味いかもしれん」と考えていた王森正道。

 

片原滅堂の豪邸の敷地内に勝手にピザ窯を作った柳葉竜胆を怒る者は誰もいないようで、護衛者達の反応も「ピザ窯を作ったのか」程度であり、柳葉竜胆の行動にも慣れてきていた護衛者達は全く怒ることはない。

 

片原鞘香と片原烈堂が遊びにきた時も柳葉竜胆が作ったピザ窯は活躍したようで、2人にピザ窯を使った焼きたてのピザを提供した柳葉竜胆。

 

片原鞘香と片原烈堂にもピザ窯で焼いたピザは好評だったらしく、また食べたいと思うほど美味しいと言ってもらえたことを嬉しく感じた柳葉竜胆はピザ窯を手入れしていく。

 

ピザ窯を使ってパンを焼いてみたりもした柳葉竜胆は、作り上げたピザ窯を有効活用しており、料理人としてとても楽しい日々を過ごしていた。

 

しかし柳葉竜胆に穏やかな日常は訪れることはなく、護衛者達と戦わせようとしてくる片原滅堂や、やたらと勝負を挑んでくる5代目滅堂の牙、加納アギトから逃走したりすることになる。

 

逃げる柳葉竜胆を追う加納アギトがよく片原滅堂の豪邸で見られることになるが、加納アギトの体力が切れるまで涼しい顔で逃げ切る柳葉竜胆の体力が凄まじいことが知られていったようだ。

 

逃げる柳葉竜胆を普通のやり方では捕まえられないと判断した加納アギトは「これ以上逃げるなら、お前の大切にしているピザ窯を壊す」と言ってピザ窯を壊すそぶりを見せたが、それが柳葉竜胆の逆鱗に触れてしまう。

 

激怒した柳葉竜胆は激しい怒りを抱いていても動きは荒々しくなることなく冷静で、正確に急所を狙い、的確に加納アギトへダメージを与えていき、5代目滅堂の牙へ何もさせずに打ちのめしていく柳葉竜胆は容赦がない。

 

進化も適応もする間もなく5代目滅堂の牙、加納アギトは柳葉竜胆に2度目の敗北をすることになったようで、5代目滅堂の牙として拳願仕合をすることになっていた加納アギトはボロボロで戦える状態ではなかった。

 

「竜胆がアギトをあんな状態にしたんじゃから竜胆が代わりに拳願仕合に出てくれんかのう」と言った片原滅堂に「確かにやり過ぎたから今回だけなら良いぜ」と了承した柳葉竜胆。

 

「じゃあ闘技者として登録しておくからの、期待しておるぞ竜胆」と言って片原滅堂は大日本銀行所属の拳願仕合闘技者として柳葉竜胆を登録していく。

 

時は過ぎて拳願仕合が行われる時間になり、試合会場となる廃工場で上半身の服を脱いだ柳葉竜胆が入場していき、対戦相手である空手家の前に立つ。

 

「今日は滅堂の牙が相手だと思っていたんだがな」と言い出した空手家に「そうか、相手が俺で悪かったな」と言う柳葉竜胆は身体を軽くほぐして首を回す。

 

「いや、お前が強いのは理解できている、滅堂の牙でなかろうが油断は、しない」と言うと空手家は鉄壁の防御とされる前羽の構えを取った。

 

今まで拳願仕合で防御をする為に構えを取ったことがない空手家が初めて、前羽の構えという防御の構えを取った理由は、柳葉竜胆の実力を一端でも感じ取っていたからで間違いないだろう。

 

拳願仕合30戦無敗の記録を持っていて実力がある空手家は、目の前にいる柳葉竜胆から感じ取った実力が滅堂の牙以上ではないかと考えて、息を飲む。

 

防御をしなければ確実に一撃で試合は終わると理解していた空手家は柳葉竜胆と対峙して構えているだけで流れる汗を止めることはできない。

 

拳願仕合が始まる前から大量の汗をかいている空手家は、戦いが始まる時を待ちながら、相手の初手は何から来ると考えて頭を働かせていたようだ。

 

構えた柳葉竜胆と空手家の間に立った審判が振り上げた手を振り下ろし「始め!」と大声を上げて拳願仕合の開始を伝えると柳葉竜胆が先に動く。

 

「来るか!」と気合いを入れて前羽の構えから全ての力を受けに集中する十字受けで柳葉竜胆が放ってきた攻撃を受けようとしていた空手家に迫り来る拳。

 

十字受けで逸らそうとした柳葉竜胆の拳は重く速い一撃であり、逸らすことができなかった柳葉竜胆の拳が空手家の顔面に叩き込まれていき、顔面に拳がめり込んで意識が完全に飛んだ空手家。

 

凄まじい威力であった柳葉竜胆の拳の一撃で仕合は決着となって勝者となった柳葉竜胆が退場していく姿を眺めていた観戦していた闘技者達。

 

やがて闘技者達に番外の牙と呼ばれることになる柳葉竜胆のデビュー戦は瞬く間に終わったようで、片原滅堂の料理人である柳葉竜胆の実力を広める結果となる。

 

柳葉竜胆は理解していないが、鮮烈なデビュー戦を行った柳葉竜胆に目をつけた者は闘技者達だけではなく、大手企業の人間達も柳葉竜胆を調べ始めていった。

 

普段の柳葉竜胆が料理人として過ごしていることを知った大手企業の人間達は、あれだけの強さがあって勿体ないと考えていたが、柳葉竜胆本人が聞けば「俺は料理人だ」と迷わず答えるだろう。

 

柳葉竜胆に無理に命ずるのではなく、欲する物を用意するか、その気にさせて柳葉竜胆から自主的に戦わせるという手法を使っている片原滅堂は、柳葉竜胆にとっては良い雇用主なのかもしれない。

 

拳願仕合初仕合を終えて片原滅堂の豪邸に戻ってきた柳葉竜胆は、戦いによる疲れを全く感じさせることはないようで、加納アギトから守ったピザ窯で試作品のピザを焼いていく。

 

ピザ窯でピザを焼いている柳葉竜胆に近付いてきて「今日はご苦労様じゃったのう竜胆」と言ってきた片原滅堂に「まあ、アギトをあんなにした責任は取ったぜ」と言う柳葉竜胆。

 

「試作品のピザだけど食べてみるかい爺さん」と言いながらピザ窯から取り出したピザに蜂蜜をかけていく柳葉竜胆に「いただこうかのう」と言った片原滅堂は切られたピザを口に運ぶ。

 

「うむ、これも美味いのう、具材はチーズだけで蜂蜜との相性もバッチリじゃ」と頷いている片原滅堂に「爺さんは甘いものも好きだから、これもいけるみたいだな」と柳葉竜胆は笑った。

 

最初に焼いた試作品が好評であったことが嬉しかったのか柳葉竜胆は、ピザ窯を使って更に試作品のピザを次々に焼いていき、片原滅堂と護衛者達まで巻き込んで味の審査を始めていく。

 

シーフードピザや、マヨネーズとジャガイモとチーズのピザに、複数の肉を乗せたものなど様々なピザをピザ窯で焼いていった柳葉竜胆を、止める者は誰もいない。

 

すっかりピザで腹いっぱいになった護衛者達が感想を言ったが「いや、全部美味いじゃ審査にならねぇだろ」と文句を言う柳葉竜胆は護衛者達よりもピザを食べているが満腹にはなっていないようだ。

 

「竜胆は「中」から外に出てきて良かったと思っておるかのう」と聞いてきた片原滅堂に「強引に連れ出しといて聞くことじゃねぇだろ爺さん」と呆れる柳葉竜胆。

 

それでも柳葉竜胆の答えを待っている片原滅堂へ「そうだな「中」から外に出て、今の生活は別に嫌じゃないぜ、俺が欲しい物を餌に戦わせようとする爺さんに困る時もあるけどな」と語ってから柳葉竜胆は続きを話す。

 

「俺がやりてぇと思うことを自由にやらせてもらってることには感謝してるぜ爺さん、だからまあ、外に出てきたことに後悔はしてねぇよ、ありがとよ爺さん」と自然な表情で笑った柳葉竜胆は、片原滅堂に感謝をしていたらしい。

 

「竜胆、これからも色々とよろしくのう」と言ってきた片原滅堂に「色々ってところが何かありそうだな」と言う柳葉竜胆は、これからも何かあるんだろうなと思っていても片原滅堂の豪邸を出ていくことはないだろう。

 

それは柳葉竜胆が片原滅堂のことを意外と気に入っているからであり、片原滅堂の豪邸が料理人として生きることができる場所であるからだった。

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