だから俺は料理人だって言ってんだろ!   作:色々残念

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第8話、人斬り軍司

自分で食材を見る為に買い出しに向かっていた柳葉竜胆は血の匂いを敏感に感じ取り、匂いの元である路地裏に向かう。

 

そこでは首を斬り落とされた人間が1人と、戦っている人間が2人いて、刀を振るうサングラスをかけた男と、ナイフで刀を受けている女が戦いを続けていた。

 

特徴的な黒い眼を持つ女は呉一族であることは間違いなく、暗殺一族の呉一族が押されている殺し合いの相手は鬼頭軍司であり、人斬り軍司の異名を持つ。

 

このままでは呉一族の女が負けることになると理解していた柳葉竜胆は、一応知り合いの呉恵利央さんの一族を死なせるのは問題がありそうだと考えて、殺し合いに割り込むことにしたらしい。

 

首を斬り落とされた男が使っていたのか近くに落ちていた刀を拾って鞘に納めた柳葉竜胆は鬼頭軍司と呉一族の女が殺し合う最中に入り込んでいく。

 

呉一族の女から突き出されたナイフを鞘で弾き、鬼頭軍司が斬り払う刀を伏せてよけて足払いをかけて鬼頭軍司を転ばせた柳葉竜胆。

 

自分が苦戦していた鬼頭軍司を容易く転ばせた柳葉竜胆の動きを見て自分では敵わないと理解した呉一族の女は素早く距離を取り「何者だ」と柳葉竜胆に声をかける。

 

「通りすがりの料理人だよ」と言い放った柳葉竜胆は、立ち上がって袈裟斬りをしかけてきた鬼頭軍司の攻撃を鞘に納まっている刀で弾き上げて、鞘で鬼頭軍司の鳩尾を突いた。

 

突かれた鳩尾を押さえて後退りした鬼頭軍司は「料理人ごときが邪魔するんじゃねぇよ」と言いながら柳葉竜胆を睨むが、柳葉竜胆は全く気にしていない。

 

「こいつの相手は俺に任せてそのまま下がってな呉一族の人」と言うと柳葉竜胆は鬼頭軍司に近付いていき、鬼頭軍司の刀の間合いに自分から入り込む。

 

「舐めやがって」と怒りを抱いている鬼頭軍司は呉一族を3人も殺していた実力者であり、人斬り軍司の異名は伊達ではないが、今回は相手が悪かったようだ。

 

刀を持つのは久しぶりだが、手に吸い付くような感覚は変わっていないなと考えている柳葉竜胆は、久しぶりにアレでもやってみるかと繰り出す技を決めていく。

 

人斬り軍司が両手で持った刀を全力で真正面から振り下ろしていくと柳葉竜胆は鞘に納めた刀でそれを受け止めて、鞘から刀を瞬時に引き抜き峰打ちを鬼頭軍司に叩き込む車という技を繰り出す。

 

実際は峰打ちではなく斬る技であるが、今は着替えを持っていないので返り血で血塗れになることは避けたかった柳葉竜胆は峰打ちで鬼頭軍司を倒した。

 

「とりあえず倒しておいたから、これで大丈夫だろ、それじゃあ呉恵利央さんによろしくな、呉一族の人」と言って立ち去ろうとした柳葉竜胆を「待って」と思わず呼び止めていた呉一族の女。

 

人斬り軍司を倒した柳葉竜胆を見て、強い人間に惹かれる呉一族の人間として柳葉竜胆に、好意を持つことになった呉一族の女は「これ、あたしの電話番号」と自分の携帯電話の番号を書いた紙を柳葉竜胆に渡しておく。

 

「あたしの名前は呉時子、覚えておいて、貴方の名前は?」と聞いてきた呉時子に「柳葉竜胆」と答えた柳葉竜胆は、刀を呉時子に渡して「処分は、よろしく」とだけ言うと足早に立ち去った。

 

残された呉時子は鬼頭軍司を殺すことよりも、鬼頭軍司を雇っていた現在の雇い主を追うことに決めて、気絶している鬼頭軍司を放置したまま移動する。

 

現在の鬼頭軍司の雇い主は呉時子によって殺害され、目覚めた鬼頭軍司がそのことを知り、仕事の失敗を悟って自分の評価が下がったことを理解した人斬り軍司。

 

こんなことになったのもあの料理人とやらが原因だと考えた鬼頭軍司は、自分の邪魔をした柳葉竜胆への復讐の為に情報を集めることにしたようだ。

 

裏社会の情報網を使って柳葉竜胆について探っていた鬼頭軍司は、拳願仕合に辿り着き、大日本銀行の闘技者である柳葉竜胆の名をようやく知ることになったらしい。

 

そう易々と手を出せる相手ではない柳葉竜胆をどうやって殺すかを考えていた鬼頭軍司は、現状では柳葉竜胆を殺すことは不可能だと理解していた。

 

そんな鬼頭軍司に手を差し伸べる者がいたようで、片原滅堂を相手にするつもりの東洋電力会長、速水勝正が「柳葉竜胆を殺させてやる」と鬼頭軍司に話を持ちかけていく。

 

差し伸ばされたその速水勝正の手を取った鬼頭軍司は、速水勝正が組織する守護者に所属することになり、守護者同士を戦わせて決める守護者のランキングで瞬く間に1位となった鬼頭軍司。

 

狙いは柳葉竜胆1人だけの鬼頭軍司は、来るべき戦いに備えて腕を磨いていき、いつか柳葉竜胆を殺すことを夢見て守護者として働いていく鬼頭軍司は速水勝正を狙う呉一族を斬り殺す。

 

呉一族を今までの合計で10人殺した鬼頭軍司は確実に強くなっていて、裏社会では有名になっている人斬り軍司の名を更に広めることになった。

 

守護者のランキングで2位のロンミンが思わず本気を出しても勝つ程に強くなった鬼頭軍司は、速水勝正の守護者で最強の存在となっていたらしい。

 

柳葉竜胆を殺すという一心で強くなっていった鬼頭軍司は、更なる強さを求めて守護者として戦いを続けていき、確実に己の実力を上げていく。

 

一方その頃柳葉竜胆は加納アギトと戦っており、以前よりも強くなった加納アギトを相手に負けることはない柳葉竜胆も間違いなく強くなっていたようだ。

 

戦いを終えた柳葉竜胆と加納アギトは食卓に向かい、料理人として料理をして、加納アギトの好物であるカツ丼を大盛りで用意した柳葉竜胆。

 

カツ丼を用意してくれた柳葉竜胆に感謝をしてから食べ始めた加納アギトは「相変わらず竜胆のカツ丼は美味い」と思いながら綺麗にカツ丼を食べる。

 

大盛りのカツ丼を直ぐに食べ終えた加納アギトは「私がこれを消化したら、また戦うぞ竜胆」と言い出して柳葉竜胆を物凄く困らせていた。

 

「俺と何回戦えば気が済むんだアギトは」と嫌そうな顔を隠さない柳葉竜胆に「お前に勝てるようになるまでだ竜胆、私が滅堂の牙として相応しい存在になるにはお前に勝利する必要がある」と言い切った加納アギト。

 

「俺がアギトを痛めつけて倒すと拳願仕合の仕事が俺に回ってくるんだが」と言う柳葉竜胆は既に何度か拳願仕合を行って全勝をしており、大日本銀行の番外の牙として有名になっていた。

 

「消化は終わった、勝負だ竜胆」と言ってきた加納アギトへ「俺の話を全く聞いてねぇなアギト」と言った柳葉竜胆は、ため息をつくと加納アギトを連れて戦える場所まで移動していき、広い一室で対峙して構えた両者。

 

「滅堂の牙こそが全てを超越する存在、竜胆、お前を超える」と言いながら連続で拳を放つ加納アギトは超えるべき壁だと考えている柳葉竜胆に挑んでいき、放った拳を全て柳葉竜胆に打ち落とされていく。

 

拳を打ち落とされてしまっても、それは想定内だと考えた加納アギトは蹴りを繰り出すが完全に間合いを見切られて避けられてしまった蹴りが空を斬り、空気だけを薙ぎ払う。

 

無形による型のない動きで柳葉竜胆を攻める加納アギトは止まらずに動き、縦横無尽に攻撃を続けていくが、全ての攻撃を凄まじい動体視力で見切っている柳葉竜胆に一撃も当たることはない。

 

ならばと無形から武に切り替えようとした加納アギトの僅かなタイムラグで接近した柳葉竜胆の直突が、加納アギトの顔面に叩き込まれていった。

 

その突き打ちは身体の急激な捻りと重心の移行に、手、脚、腰、の一致で決まるものであり、並みの相手なら一撃で倒れる威力があったが、加納アギトは倒れずに堪えていたようだ。

 

しかし確実に直突が効いてはいたようで足を震わせて身体が安定していない加納アギトに、一気に間を詰めた柳葉竜胆は容赦なく追撃の横打を叩き込む。

 

加納アギトは二虎流金剛ノ型の技である不壊という技を使って筋肉を締め固め、横打に耐えようとしたが不壊では防ぎきれない威力がある柳葉竜胆の横打。

 

耐えがたい凄まじい苦痛が加納アギトを襲っていき、加納アギトの脇腹に打ち込まれた柳葉竜胆の拳が与える痛みに、思わず加納アギトの顔が歪む。

 

続けて振り上げられた柳葉竜胆の肘が加納アギトの顎をかち上げていくと、強制的に上を向かされて喉が露になり、無防備になっていた加納アギトの喉仏。

 

柳葉竜胆と戦う時も護衛者としてスーツを着ていた加納アギトは、いつもの戦闘用スーツを着ておらず、襟がある普通のスーツを着ていたようで、柳葉竜胆に襟を掴まれてしまう。

 

襟を掴むと同時に加納アギトの喉仏を親指で押し込んで、仏骨投を繰り出した柳葉竜胆は加納アギトを投げると、足刀で倒れ込んだ加納アギトの顔面を踏み潰して戦いを終わらせた。

 

こうして柳葉竜胆の勝利で終わった戦いは数え切れない程になり、勝負を挑んでくる加納アギトを毎回倒している柳葉竜胆は凄まじい強さとなっている。

 

鍛えられた柳葉竜胆の身体は成長と共に更に力強く逞しくなっていき、柳葉大樹から受け継いだ名も無き武術は確実に柳葉竜胆の力となっていたようだ。

 

加納アギトの代わりに拳願仕合に出ることになった柳葉竜胆が戦う姿を観戦していた呉時子は、柳葉竜胆に目が釘付けとなっていて夢中で応援をしていたらしい。

 

かなり耳がいい柳葉竜胆は呉時子の応援する声がしっかりと聴こえていたようで、呉一族のあの人も見に来てるんだなと思いながら対戦相手に拳を叩き込む。

 

一撃で決着となり柳葉竜胆の勝利で終わった拳願仕合で、呉時子の喜びの声が聴こえた柳葉竜胆は物凄く喜んでるなと思わず笑ってしまっていた。

 

それから何回か拳願仕合をしていた柳葉竜胆を毎回応援しに来てくれていた呉時子に、いつも応援してもらえてありがたいなという気持ちを抱いていた柳葉竜胆は拳願試合が終わった後に、呉時子に電話して「いつも応援ありがとうございます」と礼を言う。

 

そんな柳葉竜胆に「一緒に食事でもどう?」と聞いてきた呉時子に了承した柳葉竜胆は暇な時間を作って呉時子と一緒に食事をすることになり、交流を深めていく。

 

少しずつ仲良くなっていった柳葉竜胆と呉時子は、徐々に距離を縮めていき、お互いのことを少しずつ知っていったようで、色々な話をする2人。

 

「中」で生まれ育ち本当の親を知らず、自分の名前も自分で名付けたことを語った柳葉竜胆に、自分は呉一族でも分家であり、恋愛は自由にできるということを話した呉時子。

 

かなり仲良くなった柳葉竜胆と呉時子であるが、呉時子が望んでいる関係にはまだなれていなかったようで、呉恵利央に頼み事をした呉時子は、ある決意をしていた。

 

料理人として仕事をして、加納アギトと戦い、拳願仕合でも闘技者として戦う日々を過ごしていた柳葉竜胆に来客が来ており、片原滅堂に呼び出された柳葉竜胆。

 

そこには呉恵利央と呉時子の姿があり、何の用だろうかと思った柳葉竜胆は「お久しぶりですね、呉恵利央さん」と話しかけていくと「一族の者である時子が世話になっておるようじゃな」と言い出した呉恵利央は出された茶を持つ。

 

茶を飲んで口を湿らせてから「竜胆に話があるんじゃが、今竜胆には付き合っておる相手はおるかのう」と言ってきた呉恵利央に「いえ、別に俺にそんな相手は居ませんが」と言う柳葉竜胆は何故そんなことをと疑問に思った。

 

柳葉竜胆が付き合っている相手がいないと聞いていた呉時子がガッツポーズをとっていることに気付いた柳葉竜胆は、何故呉時子が居るのかに想像がついたが特にそこを言及したりはしない。

 

俺の予想通りなら恐らくと考えていた柳葉竜胆に「時子と結婚を前提に付き合ってみる気はないか竜胆」と言った呉恵利央は真剣な顔をしていて冗談で言っている訳ではないようだ。

 

「もしかしてだけど呉時子さんから言われて、この話を持ってきたのかな呉恵利央さんは」と言う柳葉竜胆へ「鋭いのう、これは時子が望んでおることじゃ、わしは頼まれただけじゃよ」と言って呉恵利央は再び茶を飲む。

 

人斬り軍司を圧倒して倒す強さを見せた時から柳葉竜胆が好きになっていて、拳願仕合で戦う姿を見て更に想いが強くなっていた呉時子は柳葉竜胆からの言葉を待っていたようで、期待するような目で柳葉竜胆を見ていた。

 

色々と考えていた柳葉竜胆は楽しげな目で柳葉竜胆を見ている片原滅堂に「おう、こっち見んじゃねぇよ爺さん」と思いながらも自分なりに考えた結論を出す。

 

「武術と料理程度しか取り柄のない、こんな男で良ければお願いします、呉時子さん」と呉時子からの交際の申し出を受けることにした柳葉竜胆。

 

何回も交流をして仲良くなっていて、呉時子の人となりもよく知っていたからこそ柳葉竜胆は、この人となら結婚することも嫌じゃないなと思って呉時子と付き合うことを選んだ。

 

喜びが頂点に達して思わず柳葉竜胆に素早く飛びついて抱きつきながら「あたしと一緒に幸せになろう竜胆」と言うと物凄く嬉しそうに笑う呉時子。

 

「優秀な血を外部から取り入れるのも呉一族の役目じゃ、時子は役目を果たせそうじゃのう」と頷いた呉恵利央の隣で「竜胆に彼女ができた祝いをしなければのう」と言い出した片原滅堂は部下に指示を出していく。

 

盛大に祝われることになった柳葉竜胆は畑作業で仲良くなっていた護衛者達に「美人の彼女ができた裏切り者め」と冗談混じりに言われていて「うるせぇよ」と笑いながら言い返していたらしい。

 

お祝いの中心になっていて、とても楽しそうな柳葉竜胆の隣には笑顔の呉時子がいて、柳葉竜胆から離れることはなくずっと傍にいたようだった。

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