庭園水晶   作:moon

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そして、堕ちた。

「これは…?」

「ケーキだ」

シルメリアの問いかけに答えるブラムス。

ブラムスの口からケーキという言葉が出る違和感。その違和感をひしひしと感じて、シルメリアは訝しげな表情をする。

ブラムス城で一番日当たりのいい部屋。その部屋でテーブルを囲むように立っている不死者王と戦乙女。

彼と彼女が囲むテーブルの上にはシルメリアの額飾りともう一つ、ブラムスが言った通りケーキが置いてある。

シルメリアは緑の瞳でケーキを見た。

雪の様な真っ白なクリームが側面を上面を覆って美しい模様を描き、上部の苺はクリームの白とは対照的に真っ赤でそして艶やかだ。

「確かにケーキだけど…」

何故、唐突に、ケーキなんだろうか。

疑問は口にしないが、思いっきり表情に出ているシルメリア。そんなことは一向に気にしないブラムスが無造作にケーキに指を突っ込む。

「え?」

予想外のブラムスの行動にびっくりした顔をしたシルメリアがブラムスを見る。

当のブラムスはというと、ほら、といった具合に無言でシルメリアの目の前にクリームの付いた指をかざす。

これをどうしろというのか。

眉を寄せたシルメリアは無言でブラムスの指を見ていたのだが、その指が自分の口元へと伸びてきた時点で相手の思惑に気付いた。

驚いた表情で顔を上げると、口の端を僅かに持ち上げたブラムスと視線がぶつかる。

小さく首を横に振ると指から逃れようと後退りするのだが、如何せん狭い部屋だ。シルメリアの背はすぐさま壁に付いた。

壁際に追い詰められてしまったシルメリアに対して、ブラムスは悠然としているが更に追い込む。

 

クリームから鋭利な爪がちらりと見える。何者をも切り裂く切っ先のような爪。これを口に含むというのは、刃物を口の中に入れるのと同じだ、自殺行為だ、危険極まりない、とシルメリアは思った。

「……ゃ…」

小さな声で意思表示をする。否という意思を。

だがブラムスはお構いなしで追い打ちをかける。

「聞こえんな」

地を這う低い声が、シルメリアに絡みつく。

自己防衛の為に口をへの字にするシルメリアに対してブラムスは挑発するように言う。

「意思表示も出来ないのか?」

ふっ、と鼻で笑われても絶対に言うものかという表情のシルメリア。対するブラムスは長年対峙してきた戦乙女の性格を熟知していた。真紅の双眸が意地悪く光る。

「オーディンの人形は」

シルメリアの表情が動く。思わず反論しようと開いた口に凶器が突っ込まれた。

 

ふんわりとした優しい甘さが口の中にひろがる。

無造作に突っ込まれたと思われた指は、実は迅速にだが慎重に侵入したのだ。その証拠にシルメリアの口の中は傷一つしていない。

口腔を緩やかにまさぐる指からは、白い甘いクリームはもう無い。クリームはシルメリアの舌が絡め取ってしまった。今口の中にあるのは鋭い爪を従えた不死者王の長い指で、指はシルメリアの口腔を蹂躙している。

ブラムスの手首を両手で掴んで何とか口から指を出そうとするのだが、相手の指は巧みに自分の舌を、上あごを、刺激する。

無駄な足掻きを止めないシルメリアは、顔を横に逸らして逃れようとしたのだが、ブラムスが気づかない訳が無い。

人差し指はそのままで、親指と中指で細い顎を掴んで固定した。無理矢理に白い顔をもっと上向かせる。己が方へと。

顔に意識が向いているシルメリアをいいことに、自分の脚を閉じていた両膝へ割り込ませ、やんわりとした刺激を与える。

シルメリアが気付いた時には、何もかもが遅すぎた―――――

 

 

 

舌の上を指の腹が撫で、時々爪先がつつく。上顎をゆうるりと触られると刺激が緩やかに全身へ流れる。

「…ぁ……ふ…」

顔を固定されたために嚥下しきれなかった唾液が口の端か溢れて、つう、と筋を作る。

左手でブラムスの手首を掴み、右手で胸板を押しのけようとしているから無防備な下半身をじりじりと刺激され、泣きそうになった。

右手でシルメリアの口腔を汚すブラムス。左手で金色の髪をかき上げ隠れていた感覚器官を顕わにした。耳朶を軽く食んでみる。

「……く…ぅ…」

羞恥と抗議と、そしてじんわりと劣情が滲みだした表情が、ブラムスを見ている。

対するブラムスは意地悪い笑みを浮かべたまま舌を耳へねじ込む。

新たな刺激に体を仰け反らせるシルメリア。

 

「どうして欲しい?」

 

真紅の双眸は、乳白色の上のあの赤のような艶を放つ。

掻き上げた髪を放り出して、左手はシルメリアの脚を覆う白い布の上を静かに滑りだした。

 

止まらない唾液と、抑えきれない体の内部からの熱。

刺激は押し寄せる波の様に後から後からやってきて、劣情を弄ぶ。

諦観するかのように固く目を瞑ると、シルメリアは両手をだらりと下げた。

 

愉悦の笑いが白い耳朶をくすぐる。

やっと解放された口は喘ぎながら、言葉を紡ぐ。

 

 

「―――――」

 

 

そして、墜ちた。

 

 

 

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