零れた嬌声と共に、仰け反りながら白い喉笛を惜しみなくシルメリアは晒す。
汗が覆い、しっとりと濡れた肌に誘われるように口を近づける、ブラムス。
目の前にある無防備な白い喉元で口端を吊り上げながらゆっくりと開く口から見えるもの。それは凶器のような鋭い犬歯で。
「敵に弱みを晒したのだ。何をされても文句は言えぬぞ」
どこか楽しげな声が終わるやいなや、ひとかけらの慈悲など与えずに、ブラムスは容赦なく喉笛に歯を立てる。
かぷり。
もうずっと嬲られて全身に紅い華が咲き誇る肢体は、悦楽と痛覚の境界線の微妙な力加減でもって噛みつかれた。長い時間あちらこちらを嬲られ続けたせいで既に感覚が鋭くなっているシルメリアに過分な快楽を惜しみなく与える。
深い息と悲鳴の様な喘ぎ声が闇夜のしじまを犯す。
声で、息で、シーツに食い込ませた指と浮かせた腰と、踵をシーツの上に這わせることで、シルメリアは過分な快楽を逃がそうとする。それらの全てが相手を付け入らせる隙となることなど、僅かな理性に必死にしがみ付くシルメリアは気付かない。
そして気付かせない様に、ギリギリの匙加減でもってブラムスは追い詰める。
「ゃ…あ……」
「嫌ならもっと拒否をしろ」
理性が残るシルメリアは、自分がブラムスに何をされているのかを理解っている。それはそうだ、ブラムスはシルメリアに自覚させるために触れる場所の力を絶妙に加減しているのだから。
耳元でささやきながら息を吹きかけたら、間髪入れずに耳朶にぬらりと舐めるブラムスの手は、シルメリアの悦い場所には絶対に触れない。触れて欲しい場所の周りのみに絶え間なく刺激を与える。
荒れ狂う水面に浮かぶ木の葉の様に翻弄されるシルメリアは、それでもなけなしの理性を手放すまいとする。
「んぅ…」
濡れた声を吐き出すと同時に思わず立てた膝を、筋張った大きな手が膝頭を包み軽く爪を立てる。そのまま内腿に向かってじっくり手が滑る。
「はしたない格好だな」
理性が残っているがために言われた言葉の意味を正しく理解したシルメリア。途端に身の置き所がなくなり、なんとか逃れようとする白い身体をブラムスは難なく抑え込んだ。
行為は拒否が言えても、自分の感情は否定出来ない。拒めない。
抑え込まれても尚、快楽は追いかけてくる。
快感に脳髄が侵されそうなシルメリアは喘ぎ続ける。
ブラムスの言う様に、自分ははしたない。もっともっと触れて欲しいと心のどこかで思っている。
でも言葉にしたらどうなるの?嫌われたら?呆れられたら?ブラムスに快楽だけが欲しかったのかと思われたら?
じわ、と緑の瞳に涙がにじんだ。
は、は、と小刻みに喘ぐシルメリアの口を大きな掌が覆う。
ブラムスは相変わらず悦いところには触れようとはせずに、焦らすように周りを刺激して苛む。
「望みを言え、シルメリア」
水音が追従した。
未だに言葉を発しないで眉を寄せるシルメリアを、真紅の双眸が色香と共に犯す。見ないで欲しいと思ったけれども、視線を外すことがどうしても出来なかった。
ブラムスは手を移動させ、絶え間なく蜜を零し続けるはしたない花弁に、別のモノをあてがうとゆっくりと縦に動いてみせる。
シルメリアは限界だった。
シルメリアは理解っている。良い淀む自分の為に、ブラムスは手の平で唇を隠してくれたことを。
その優しさが嬉しかった。温もりが胸の奥にひろがる。
だから大きな掌に唾液で湿った唇をそっと寄せ。
―――――欲しい。
涙と一緒に零れた泣きそうな小さな声をブラムスは聞き逃さなかった。絡み合った真紅と緑の視線。真紅の双眸はゆっくりと細まる。
「いい子だ」
どこか優しい深い声が、同時に深い場所へと向かった。
そして闇夜が荒れ狂う。
背徳の紅い華は、まだ足りないとばかりに全身にくまなく咲き、その都度にシルメリアは乱れた。
ブラムスから否応なしに与えられる快楽。湿り気を帯びた欲情まみれの喘ぎ声と責める言葉は快楽が滴る音と一緒に加速する。同時に、理性とやらを静寂と共にズタズタに引き裂いた。
ブラムスは寝台に背をつけるとシルメリアを跨がせた後、体勢を固定するために手首を握る。理性やモラルの残骸を容赦なく握りつぶし、蹴散らし、更にシルメリアを高みから底知れぬ渦中へと引き摺り込んだ。
シルメリアは沸騰した頭で問われるままにどこが悦いのかを善がる声で答える。
厚い胸板に堕ちてきたシルメリアの細く白い指に自分の指を絡ませながら、ブラムスは体勢を入れ替える。
尚も求める声がしじまに響いた。
熱を帯び紅い華の咲く柔らかな肢体を、何もかもから隠す様に守る様に、大きな背中が覆い尽くす。
武器も鎧も服も理性もモラルも。
邪魔するものが一切なくなって、ようやくブラムスとシルメリアの心が触れあう。
いつまでもどこまでも離れまいとするように、二人の指に力がこもった。