「そこのエインフェリア、止まれ!」
「誰か、シルメリア様に注進を!早く!!」
「エインフェリアの分際で、いい気になるな!」
「貴様の思い通りにはさせんぞ!」
口々に叫びながら、神族達は次々と襲いかかる。
「私の邪魔をするな。」
倒れていく神族を見ながら、煩わしそうにブラムスは言った。
まったく、無駄な事をするものだ。
今迄の不満が噴き出したか。
理由はどうあれ、私に向かってくる者には、倒す。
ブラムスの視界にエインフェリア達が映る。
彼等は遠巻きに見るだけで、
ブラムスに手を出そうとはしない。
そうだ、お前たちは手を出すな。
私に関わる事は消失を意味するぞ。
蜂の巣をつついた様な騒ぎの中、
ブラムスは宮殿の外へ向かう。
ビフレストへと。
「来い。」緑を踏みしめながら、ブラムスは言った。
私を選定したのは、お前だ。
あの出会いがあったから、エインフェリアとしてヴァルハラにいる。
「共に在れ」とお前は言った。だから、共に在ったのだ。
シルメリア直属の配下として、常に側に。
その事実を快く思わない神族達を黙らせるだけの結果は出してきた。
異端者だ、お前は。
エインフェリアの意思を尊重する。決して道具として扱わない。
だから、あの時、私を解放しようとしたのだろう?
不死者王と知っていながら。
人と神、エインフェリアと神、そして不死者と神。
私とお前との因果は、生易しいものではないぞ。
運命の女神自らが結んだ因果だ。
あの邂逅で、お前は私を捕らえた。
だが、私の選択を受け入れた事で、お前は私に捕らえられたのだ。
複雑に絡み合う因果。
その因果を断ち切ろうとするのなら、
そしてこの事態の収拾を図ろうとするのなら。
お前は、私を止めねばならんぞ、シルメリア。
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さわさわと風が吹く。緑を、ブラムスの髪を揺らす。
「止まれ。」鋭い声がブラムスの背中を突き刺す。
シルメリアの気配。
お前は、私が思った通りの戦乙女だ。
ブラムスはゆっくり振り返る。
出会った時と変わらない、蒼穹の鎧、黄金の髪、緑の瞳。
「誰も手を出すな。」
離れた場所に居る神族達、エインフェリア達を制しながら、
鋭利な刃物で裂く様に、戦乙女は此方に向かって来る。
自分の目の前に立ち、静かな声で告げた。
「勝手は許されんぞ。お前は、解放を拒んだのだからな。」
「止めるか?」片方の眉を吊上げ、悪戯っぽく笑いながらブラムスは問う。
「無論だ。」不敵な笑みと共に、シルメリアは剣を抜いた。
後方を横目で見やり、厳しい面差しで言葉を投げる。
「我等の闘いだ。重ねて言うぞ、誰も手を出すな。」
誇り高き、戦乙女。
ひとたび戦いとなれば、自ら先陣に立ち、剣を振るう。
周りから見れば、雄々しい戦乙女だろうが、
自分にしてみれば、エインフェリアを守っている様にも見える。
それは支配される者の悲哀を知る故か?
だが、ヴァルハラに属する神である以上、ヴァルハラの掟に従う。
掟を破ろうとするエインフェリアは、葬る。
その先にあるのは魂の消失。
召喚した者の責務として、神族として掟を遵守する。
そういう厳しさも持ち合わせている。
私を解放しようとしたのもお前なら、葬ろうとするのもお前だ。
「強い自分も、弱い自分も受け止められる者」
お前は静かな表情の下で、自らの思いとオーディンの思惑の間で一人苦悩する。
それは15歳の少年が味わった孤独と同じなのか。
「ブラムス。」剣を構えてシルメリアは呼びかけた。
お前にとって私はブラムスなのだな。
出会った時の、解放しようとした時の。
そういう事か。
ヴァルキリーとして私とやり合う気だ。
エインフェリアの自分相手なら、互角だろう。
命名者として「縛り」にかけ、成功すれば、勝機が増える。
己が命名者と知りながら、勝因になり得る一つを捨てるか。
気に入ったぞ。運命の女神、戦乙女の末。
「シルメリア。」
二人の姿が交錯した。
「エインフェリアは、どうなると思う?」
「消失すると思われます、オーディン様。」
「誰がそうする?フレイ。」
玉座で神が言葉を交わす。