文才がないことを再確認しました。
プライベートがバタバタしていて、更新は遅いですがよろしくお願いします!
「あ、あの…」
なのはが俺の服の袖を引っ張ってきた。
「・・・・・・・」
俺は無言でなのはを見る。
「あの…///」
俺と視線が合うとうつむくなのは。
何か決心をしたのか顔を上げるなのは。互いに無言で見つめ合う。そして…
「あ、あの…あのね///お、お願いがあるの!」
黒部から任務の連絡があり、地球のそれも海鳴市で事件が起きたので地球での俺の自宅で黒部と合流して転移魔法で捜査本部へ行くとの事だ。任務はいいのだが捜査本部の場所が俺にとって問題だった。捜査本部の場所は…
アースラだった…
近くを巡回中だったアースラをEMEが超法規的なまでの絶対指揮権で捜査本部にした。最初のなのはとフェィトと銀髪転生者の戦闘を確認する以外、なのは達と接触は一切していないのに何故こうなる?まあ、アースラに行ったからといってなのは達に会うとは限らないが。
パンパン!
転移する前にとりあえず面倒事に巻き込まれませんようにと合掌して神に祈る。転生した時に現れなかったので祈りが通じるかは不明だが…
「何してんだ?」
「神頼み…」
「?何かよくわからんが行くぞ」
黒部が展開した魔法陣の中に入る俺。そして転移魔法が発動した。到着したのはアースラの廊下と思われる場所だった。
「黒部、紅太郎」
急に声をかけられ振り向くと男がいた。美しい顔立ちの男だった。美しい顔立ちの男だった。目にかかるかかからないか程度の前髪、首筋にかかるかかからないか程度の後ろ髪。名匠が描きこんだような美しい眉と目、美しい鼻と口が存在している。男の肌は余分な色素を落としたように白く、その美しさは人外の雰囲気すら備えている。この男こそ黒部と並ぶ力量を持つ、白木だ。下手な転生者より全てにおいて有料物件だといえる。
「よう白木。もう動いても大丈夫なのか?」
「ああ。動く程度はな」
白木は松葉杖をついていた。その全身も、あちこちが包帯だらけである。白木は以前の任務で重傷を負った。まだ、その傷が癒えてないようだ。そんな状態なのに任務をするためここに来ているようだ。そんな白木を見て黒部は。
「肩でも貸そうか?」
「いや、前回の任務の時にさんざん借りたからな。これ以上は借りれないさ」
と、微笑した。
「そういえば黒部。何故、こんな所に転移してきたんだ。ブリッジに転移したほうがいだろう」
「それは、お互いさまだろう。何でお前はブリッジにいないんだ」
「今のところ出番はなくてな。この怪我何でとくにさせることもないらしくてな、気晴らしにな。そっちは?」
「今回、指揮をしてんのが光本の奴だろ。あんま、会いたくないんだよ。隊員を道具のように考える奴とはな」
明らかな敵意を顔に出す黒部。
「気持ちはわかるが怒るなよ。そういえば、紅太郎。調子はどうだ?」
「まあまあ…です…」
「そうか。その調子でがんばれ」
「はい…」
白木の顔を改めて見るが、スゲー美形だ。コイツがその気になればハーレムなんて簡単に作れるんじゃないだろうか?
「それじゃ、ブリッジに向かうとするか」
「ああ。話を聞く限り今回の任務も相当に危険なようだ。気をつけろ」
「ああ」
黒部は軽く手を上げ返事をする。俺は黙礼して黒部に続いた。
ブリッジに向かう際にアースラにいる局員とすれ違ったが、俺と黒部を見る視線が疎ましいものを見るようだった。無理はないだろう。今回はEMEが権力を使い、アースラを捜査本部にした。アースラにも任務があっただろうに強制的にEMEの手伝いの様な事をさせられれば気分はよくないだろう。疎ましく思われるのはそれだけではなかった。この世界でのEMEは特権階級・超エリートの集団だ。魔術師ランクも高く、レアスキル持ちの隊員が多い。『空』や『海』や『陸』などといった枠組みには入らず独自で動き何でもこなす集団だ。それゆえに他人の畑に土足で入っていき、現場を仕切り、権限でそこにいるEMEの以外の隊員を使う。EME隊員はエリート意識が高く横暴な人間もいる。さらには実戦や現場の状況を理解できない温室育ちの人物もいる。親の七光りで入隊したのだろう。例えていうなら〇ガ〇ダムのテ〇ターン〇のようなものか。俺も居心地は悪いがそこで働いている以上文句はいえない。それに世話になっている黒部やスミレもいるから。
おっ…ブリッジに着いたか…って、何だこの険悪な空気は!EME隊員とアースラの隊員。互いにピリピリした感じで作業をしているぞ。
「あら、到着したのね。おふたりさん」
スミレが声をかけてきた。スミレも今回の任務に加わっているようだ。
「光本は?」
壁に背を預けて訊く黒部。
「あっちで、この艦の艦長リンディ・ハラオウン提督と話をしているわ」
スミレが目配せをして教えてくれる。そちらを見るとリンディと光本が話をしている。が…
「おい、あれは話というより言い争いみえるぞ」
そう、話し合いよりは言い争いに見える。といっても感情的になっているのはリンディの方で光本は端的に応えているようだ。
「光本課長の作戦に納得がいかないみたいで…。私も作戦内容は聞いてないからどういった理由で言い争いなっているのかはわからないの」
「アイツの事だ。ろくな作戦を立ててないだろう。まあいい。とりあえずどうなっているのか状況を説明してくれ。なにがなんやらさっぱりわからん」
「そうね」
スミレが資料を片手に語り始めた。
スミレの話を聞かなくても何となく俺はわかった。これはEMEのイベントだ。確か新宿・池袋の地下街に多数の怪物が発生し、取り残された人達を守りながら地下迷宮からの脱出は計る話だ。ただ、これは海鳴市で起きている。話の内容が異なるかもしれない。というかこんな事件が起きる程、海鳴市の地下街って大きかったのか?
「情報が次々と入ってきて、今それを整理しているところだけど、地下街から突如、怪物が現れて人々を襲いかかったそうよ。死傷者もでているわ。地下街から逃げた人の色々な目撃例があるわ。例えば馬と人間が合わさったような怪物を見たという例があったり、首から上が牛で体が人間という怪物を見たという例もあるわ」
「パニック状態だったんだろ。いったい地下には、何匹くらいの化け物がいるんだ?」
「さあ、もう少し目撃情報を集めて、真否のほどを考察してみないかぎりなんともいえないけど、現段階で入っている情報が全て正しいとすれば、恐らくは数十匹はいると思うわ」
「一体なにが起こってるっていうんだ。地下で」
「さあ。でも今まで遭遇したことのないような何かであることは確かね」
それはそうだと思う。地下街で数種類の怪物が『やあ、久しぶり!』なんて挨拶しながら集まるわけはないだろう。
「で、俺達になにをしろっていう要請なんだ?」
「それは光本課長に聞いてみないとわからないけど、おそらくは…」
「来ていたか」
スミレの話を遮り、男が声をかけてきた。すべて後ろになでつけた髪の毛を、ひと筋ふた筋前に垂らしている。金属フレームの眼鏡をかけた顔つきは、この世のすべてを己の定規で測ることすらできそうな、知性的な顔つき。こいつは光本だ。光本の後ろにはリンディにクロノ。そして…いましたよ。なのは達が…。俺の祈りは通じなかったようで。なのはにフェイト。はやてにヴォルケンリッターの一同。あれ?フェイトそっくりな人物がひとり。ひょっとしてアリシア?何でいるんだ?はやてがいるとい事は闇の書の事件までは解決しているのか。それと銀髪転生者。うわ~会いたくない連中に会ったな。
「どーも。お疲れ様で」
と黒部。
実に張り詰めてない挨拶である。お辞儀をしなければ、黙礼もしない。仁王立ちのまま、声だけかけたといった感じである。
しかし光本は、そんな事はまるで気にしない様子で、眼鏡の奥から鋭いまなざしを黒部に向けた。
「状況は把握しているのか?」
「ええ、スミレから聞きましたよ。新手のモンスター・テロじゃないですか?」
「いや、今のところ要求はなにもない。別で大きな問題がある」
「大きな問題?」
「結界が張られてない」
「はあ?」
「どういった力働いているのか不明だが、こちらが結界を張っても展開されない。そのせいで多方面…特に地球での対応の処理に手間がかかっている」
情報操作で世間的にテロの仕業になっているようだ。これって大問題だろ。
「その件はこちら側で対処する。お前達と乾には地下に降りてもらう」
「地下に降りてなにを?」
「ここだ」
光本が空間パネルを展開し指をさす。
「ここにある食品売り場に、八人の人間が取り残されている。女学生が四人。母親と子供、老人、怪我をしている男の八人だ。二時間ほど前に警察署に連絡が入り、地下街に取り残されていることを告げてきた。一旦電話を切り、しばらくして電話をかけたようだが繋がらないそうだ」
「死んでんじゃないですか?」
黒部が悲観的な、しかし現実的なことを呟く。
「その可能性が大きいな。お前と乾には、それを確かめにいってもらいたい」
「他に適任の能力の隊員がいるでしょ」
「全員別の任務で出ている。だから近場にいたお前等を呼んだ」
「なるほどね」
「連絡手段が直接回線だけだったが、それも途切れた今、生存を確認するには行って確かめる他ない」
一同が沈黙する。
「任務内容を説明する。黒部と乾は地下三層、直線距離にして約十分の距離にある食品売り場まで到達し、そこに取り残されている八人、ないしそれ前後の生存者がいればその人間を救出すること。以上が今回の任務だ」
「それ前後?」
と、黒部。
光本はチラと黒部を見て、
「負傷者がいるからな。すでに減っているかもしれないし、先ほどお前が言っていたように全滅している可能性もある。もしくは他の生存者と合流して、人数が増えている可能性もある」
「なるほど。でもどこか安全なところに逃げてるかもしれませんよ?」
「ああ。だが電話連絡がついているうちに、救出に向かうのでなるべくその場を動かぬようにと伝えてある。移動していたとしても、おそらく食品売り場までたどり着けばわかる距離だろう」
「なるほど」
あまり気乗りしなさそうに、黒部が返答した。
光本の話を聞いていて思ったが、取り残されている人数が原作と違うような気がする。はて?
「怪物を見てもなるべく交戦はさけろ。どこから来たのか、怪物たちの正体がまったくつかめていないからな。怪物に関する情報は、集められる範囲で集めてこい。その際は無理はするな。電話回線は断線している。結界同様に念話も転移も出来そうにない。外部との連絡手段は一切ない。情報は直接地上までもってきて報告しろ」
「了解」
「それと生存者の救出が目的だが、お前等の命が危ないと判断した場合、速やかに救出を断念し地上に戻ってこい」
「は?何故?」
「死傷者は既に出ている。その人数が増える事よりも、お前等の命の方が価値の高いものだからな。お前等はこの先も、EMEとしていくつもの事件を解決してもらわなければならない。その過程で何人もの命を救うことになるだろう。ここで数人の命を救うことにこだわり、自分達の命を落とす事は愚かと考えろ」
「・・・・・」
黒部は沈黙した。
いつものことだ。
光本は、まずなによりも結果、戦果を重視する。沈着に、冷静に、精密に、そして鋭利に…すべての物事を静かに計算する。組織として考えればそれが正しい。ただ黒部にはその考えが方が納得出来ないのだろう。俺も黒部と同じ考えだ。助けられる命があるなら助けたい。その考えが原因で黒部と光本は衝突したことが幾度とある。
「デットリミットは明日の夜明けまでだ。なにがあっても、それまでに地上に戻ってこい」
「は?直接距離で十分の距離なんでしょ?負傷者がいたとしても小一時間、なにか問題が生じたとしても二、三時間、遅れたとしても夜までには戻ってこれると思いますがね。どうして夜明けまで何ですかね?」
「ガスを使う」
「ガス?」
「毒ガスだ。事態収拾のため上からの使用許可が下りた。地下街の完全封鎖が完了次第、秘密裏にガスを流す」
俺以外のその場にいる全員が驚いた。これも原作どうりだ。
「中に取り残されいる人達はどうなるんですか!地下街の中には、他にも取り残されている人達がいるはずです!」
スミレが光本が詰め寄った。
いつも冷静なスミレにしては珍しいことである。しかしそれも頷ける。管理局が化学兵器を使うなんてありえない。使うこと自体大問題だ。
「夜明けまでは待つ。しかしそれまでに救助できなかった人間は、地下の怪物たちとともに眠ってもらう」
「そんな…」
スミレが愕然とした表情になり項垂れた。
「だから、待ってください。我々も協力します!」
リンディが光本に詰め寄る。
「ガスなど使わなくても我々の部隊とEMEの部隊が強力すれば対処出来ます。取り残された人達の救助も!」
そうだろう。俺と黒部だけで救出に行かせるよりは、なのは達の力を借りた方がいいだろう。
「私からもお願いします!地下には私の友達が!」
なのはも光本に詰め寄る。えっ、友達?友達って…
「必要ない。君達は我々が与えた事だけ行えばいい」
「失礼ですが、そちらの二人だけで救出にいかせるのは荷が勝ちすぎると思います。ここにいる我々も一緒に行けば効率が上がります。ここにいるメンバーの実力は確かです」
とクロノが意見する。
「・・・・・」
光本はなのは達を見て。
「そうは思えないが」
いやいや、それはないぞ!少なからず俺よりなのは達の方が強いと思う。うわーヴォルケンリッターのみなさん、光本の発言で怒筋を浮かべてますよ。
「ごらぁ!俺の嫁たちを貶すとはいい度胸だな!最強のオリ主の俺が教育してやろうか!」
おおっ!銀髪転生者が光本にケンカを売っている。しかし、俺の嫁たちか。順調にハーレムを築いているんだな。よしよし、偉いぞ。
「「「「「「「・・・・・・・・」」」」」」」
んっ?なのは達。スゲー嫌そうな顔をしてるな。ハーレムは順調じゃないのか?
「最強?君が?」
「そうだ」
光本の質問に自信ありげに答える銀髪転生者。まあ、チート能力を持っているだろうから強いだろうけど。
「ほう…」
光本はそう言うと銀髪転生者との距離を詰めて。
ドゴォ!
光本は銀髪転生者を殴った。その勢いで銀髪転生者は吹っ飛んで行き、そのまま壁にぶつかった。おいおい。あれ本当に殴られたのか?光本の奴は全然本気をだしてないぞ。俺でも動きが見えたぞ。ワザと殴られたのか。起きあがらない所を見ると本当に殴られたんだな。ひょっとしてアイツ、弱い?
「この程度で最強か。この艦のレベルがわかるな」
「・・・・・」
光本の言葉に黙るクロノ。えっ、本当にアイツはなのは達の中で最強だったの?
「我々に課せられた使命は事態収拾だ。地下で起こっている異常な出来事が、地上に溢れだして大きな混乱を引き起こす前に、事態を収拾しなければならない。現状の報道管制がもつのは一日。それまでに事態を解決することを要求されている」
「そんなもん使って、世間が黙ってるとは思えませんがね」
と黒部が光本を見た。
「地球でもミッドでもテロが幻覚効果のある毒ガスを使用したという報道がされる。怪物も死傷者もそのせいだと。翌朝五時までにお前等が戻らなかった場合も、怪物に殺されたと見なしてガスを使う。何があっても五時までに帰ってこい。いいな。救助した生存者が逆に足手まといになるようなら、たとえその生存者を見捨ててもだ」
「・・・・・」
俺は奥歯を強く噛みしめる。何だろうな。この気持ち…
「生存者と合流した後、砲撃魔法で天井を撃ち抜いて通路を作るの…」
「ダメだ」
黒部が言い切る前に光本が遮った。
「上の連中が今回の化け物、死体でかまわないから見たいと言っている。お前が放った砲撃で死体が吹き飛んでしまってはガスを使う意味がない」
「そんな理由でガスを?人の命をなんだと!」
黒部が拳を握りしめ光本を睨んでいる。
「文句があるなら上の連中に言え。もっとも上の連中がお前の話を聞くとも思えないが」
「・・・・・」
組織に属している以上、上の命令は絶対だが納得はできない。
「何か質問はあるか?なければただちに用意にかかれ!」
眼鏡の縁を剃刀の刃のように光らせて、光本が一同に指令を下した。
「あの野郎、人の命を平気で秤にかけやがって」
黒部は悪態をつきながらバリアジャケットを展開している。
「・・・・」
俺は無言でバリアジャケットを展開する。そのまま転移魔法の準備をする。その時、スミレと白木が声をかけてきた。
「気をつけてな」
と白木。
黒部は笑みを見せた。
「松葉杖をついているやつに心配されたかないね」
「確かに」
白木も笑う。その横で、スミレが温かな笑顔で黒部を見た。
「ちゃんと戻ってきてね」
「了解」
黒部も穏やかな表情を見せる。スミレは俺に向き直ると。
「紅くん。黒部くんのことお願いね」
俺の頭に優しく手を置いた。気恥ずかしくなって俺は視線を外したが。
「わかった…」
素直に頷く俺。もしかしたら、スミレのもつ雰囲気に頷かされたのかもしれない。それは母性と呼ばれるものかもしれない。いや、単に俺が女性慣れしてないだけかもしれないが…
「何で俺がお願いされなくちゃならないんだ?」
苦笑する黒部。
その後、二人は離れ自分達の作業に戻った。俺は転移魔法を発動するため、魔法陣を展開しようとした時、急に服の袖を引っ張られた。引っ張られた方に振り向くと…
なのはがいた…
無言で俺を見ている。
「(あのー俺はあなたの逆鱗に触れるような事をしましたか?だったら土下座して謝りますよ)」
「あ、あの…」
「・・・・・・」
俺は無言でなのはを見る。
「あの…///」
俺と視線が合うとうつむくなのは。
何かを決心したのか顔をあげるなのは。互いに無言で見つめ合う。そして…
「あ、あの…あのね///お、お願いがあるの!」
顔を赤くしながら言うなのは。何故赤くなる?というか、何?この空気。
「地下にいる生存者の中に私の友達がいるの。だから…だから、助けてほしいの。私の大切な友達なの…だから…」
「・・・・・」
俺は返事をすることもなく振り向き魔法陣を展開する。
「(ここで返事をして、なのはに『この人は良い人』と思われたら面倒な事になりそうだからな)」
「あ、ま、待って…」
なのはが俺を呼び止めようとした時。
「悪いな、譲ちゃん」
黒部がなのはの頭をポンポンと撫でる。
「アイツは、色々と不器用なんだ」
おい!何を言っておられますのかね黒部さん?
「だが嬢ちゃんの想いはアイツに伝わっているぜ。だからアイツは絶対に譲ちゃんの友達を助けてくるぜ」
勝手な事を言わないでくれませんかね。出来なかったらお約束のお・は・な・しが待っているかもしれないだろ。
あー後ろからスゲー視線を感じるぞ。
「おい、譲ちゃんが手を振っているぞ。お前も振れよ」
ニヤニヤしながら黒部が言う。
「・・・・・」
俺は無視して転移魔法を発動した。そして到着した場所は海鳴駅の地下へと続く階段の前。光本が上手く手配しているのか周りに人はいなかった。すでに薄暗くなり始めている。断線により停電しているのだろう。風邪など吹いていないはずだが、そこからひんやりと冷気の様なものが吹き出してくるような錯覚にとらわれる。
「・・・・・」
ごくり。
喉を鳴らして、唾を嚥下する。黒部はそんな俺を見て、
「どうした。怖じ気ついたか?」
「そんなわけないだろっ!」
子供扱いばかりしやがって。体は子供だけど。
「よし、じゃあ行くぞ」
黒部の言葉に頷いて、俺たちは地下街へと降りて行った。
無音だ。
生きている者は誰もいないかのように、音という音が聞こえてこない。聞こえてくる音といえば、二人の靴の底が階段を叩く音が、壁と天井に反響する音ぐらいだ。
「…肉眼じゃ厳しいな。アルトリウス、キアラン。反応は何かあるか?」
俺は自分のデバイスに聞く。
「反応はないわ」
「こっちもだ」
俺の二つのデバイスが答える。それを信じて進むと一度ちょっとした踊り場に出て、そのまま下に降り続ける。本来なら利用客でごった返している時刻だが、酷い有様だ。
「・・・・これは」
ある程度降りて進むと鼻腔の中に張りつくような血の匂いがしてきた。EMEの任務をこなす間に嗅ぎ馴れた匂いだ。地下街のあちこちには、人影、死体が転がっている。うつ伏せに倒れている者もいれば、仰向けに倒れている者もいる。他にも、逃げまどう人々が落としていったであろうカバンやバッグなどが散乱している。
「どうした、大丈夫か?」
「あ、ああ…」
「ぼうっとしてんなよ。生存者は…いないな…」
沢山の死体を見ながらいう黒部。そして黒部は地図を展開して。
「ふたつ先の階段を降りれば、最短距離で地下三階の目的地までたどり着けるな」
俺と黒部は地下街を歩いた。しかし原作の海鳴市の地下街もこんなに大きいのだろうか?建物の設定
も変わっているのだろうか。それと歩いていて思ったが…
「なんかRPGみたいだな…」
ぼそりと俺が呟く。
「は?」
「なんかゲームみたいだって言ったんだよ」
「これだからガキは。なんでもゲームと勘違いしやがる。任務とゲームをはき違えるな」
「そういう意味で言ったんじゃねーよ。武器を持って地下を行くっていう形式がゲームみたいだっていったんだ。この初老!」
剣型のデバイスを持って地図をもとに地下を行く様はRPGのようだ。
「誰が初老だ、誰が」
バシッ!
俺の頭を黒部が叩く。
「痛てーな!なにすんだよ」
「ガキが生意気な口をきくからだ」
「初老だから初老といったんだ。この初老」
「今も寝小便たれてるガキが偉そうな口をきくな」
「たれてねーよ!」
俺の精神は二十歳だ。そんな俺が寝小便をするか!
「そっちは!」
そこで、黒部がさっと横に手を上げた。
俺も瞬時に口を閉ざす。
「静かにしろ。何か聞こえる」
押し殺したような黒部の声。
ズシッ。
何か聞こえた。それと足の下から振動が伝わってきた。振動は足踏みするように、一回ごとに大きくなっていた。そして前方の闇の中に、なにか巨大な物が近づいてくるのが見えた。
俺と黒部は咄嗟に物陰に隠れた。
ズシッ!ズシッ!
それは、重い足音を響かせて姿を現した。俺たちは息を殺してそれが通り過ぎるを待った。それは俺達に気づくことなく闇の中に消えていった。
「なんか今、サイクロプスの幻覚を見たような気がするんだが…」
黒部が口を聞いた。そう、先ほど通り過ぎたのは、一つ目の巨人サイクロプスだ。
「俺も見た…」
原作でわかっていたとはいえ、サイクロプスを生で見るのは圧巻だ。
「なんなんだ?サイクロプスなんてもんが、本当にこの世に実在していたのか?」
黒部が頓狂な声を上げる。
「あんなもんと戦ってられんからな。とにかく闇にまぎれて目的地に行くぞ」
「…ああ」
俺と黒部は闇にまぎれ目的地に向かった。
地下三階食品売り場。
その奥には倉庫があり、その横にある事務所の中に九人の人間がいた。どうやら一人増えているようだ。九人の生存者は、事務所のドアに鍵をかけて机でバリケードを作り、じっと救助がくるのを待っていた。
食品売り場から通路に出れば、そこにすぐ二階に上る階段があるが、その廊下を得体のしれない怪物がうろついているため、一行は逃げる事しかできなかった。事務所の中は、緊張と恐怖が飽和状態に達しようとしていた。
「怖い…怖いよぅ…」
恐怖に震える女の声。女性は事務所の中に五人いる。女子高生程度の少女が二人。小学生程度の少女が二人。子連れの女性が一人。
「大丈夫、きっと助けに来てくれるからね」
一人の女子高生程度の少女が怯えているのを、、もう一人の女子高生程度の少女が元気づける。
「なんとかしてくれないか。泣いた所で、どうにもならないだろうが」
その様子を見ていた中年太りのサラリーマンの男が、いらだたしげに言う。男は先ほどから、泣き続けている少女にイライラしていた。
「そんなのわかっているわよ。でも仕方がないでしょう。ここにいるみんなは誰でも泣きたいし、誰かに当たりたいんだから。あんたも怒る暇があったら落ち着いて、みんなに協力しなさいよ!」
赤混じりの金髪、小学生程度の少女がそう言って中年サラリーマンの男を睨む。
「小娘が、偉そうな口を…」
少女の迫力に負けたのか視線を逸らす男。
「何よ、アイツ…」
「アリサちゃん。新しいタオルあるかな?」
長い紫色の髪の少女が声をかける。ここまでくればわりますよね?アリサとすずかです。
「えっ、ああ、あったわ」
アリサはすずかにタオルを渡す。すずかはタオルを受け取ると怪我をしている男の所まで行った。
「新しいタオルです」
怪我人を看病している子連れの女性に渡した。
「ありがとう」
タオルを受け取った女性は血に染まったタオルを捨て、新しいタオルに変えた。どうやらタオルで怪我人の傷口を押さえているようだ。
「いったい何が起きてるんだろ…」
不安げに呟くすずか。
「わかんないわよ…。でも…」
アリサはすずかの手を握り。
「なのは達が助けにきてくれるわよ」
「うん…」
なのは達が必ず助けにきてくれると信じる二人。
その時!
ドスン!
事務所のドアに、何かが激突する音が聞こえた。
「キャァァァァッ!」
泣いていた少女が悲鳴を上げる。緊張が破れ、部屋の中に恐怖が走る。
ドンドン。
激突音が、軽く連続性を帯びたものに代わった。まるで、何者かが拳でドアを叩くような音である。
「おい、誰かいるのか!いるならとっととドアを開けろ!救出にきたぞ!」
部屋にいる一同の顔に、灯りが灯る。
中年サラリーマンの男がバリケードを崩し、ドアのカギを外した。そこから現れたのは
黒部と主人公の紅だった。
次回は笑いを入れたいと思っています。出来るかな?
それと紅とアリサとすずかのやり取り。
どんな感じにするか悩んでます。当たりさわりのない感じで良いかな?
駄文ですが次回もよろしくお願いします