ヘルマプロディートスの恋   作:鏡秋雪

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第19話 赤鼻のルドルフ 【ジークリード8】

 12月も中ごろになってますます寒くなった。今の最前線は第49層だ。

 ここ、第46層の通称≪アリ谷≫と呼ばれるポイントは巨大アリが多く湧く。巨大アリは攻撃力は高いもののヒットポイントと防御力が低い。攻撃さえうまくかわせれば効率よく倒すことができる。経験値もおいしいので攻略組で人気のレベル上げポイントだ。

 ここは攻略組同士の紳士協定で1パーティ1時間という約束が取り交わされている。昼間は6時間待ちなんてザラだ。しかし、今の時間は深夜0時だ。待ちパーティーは私とコーのパーティーと聖竜連合の3人組がいるだけだった。そして、今戦っているのは黒の剣士だった。

 私はそこで、黒の剣士――キリトの戦いぶりに息をのんだ。

 初めて見るソードスキルだ。単発の重攻撃だが、リーチが長くダメージは両手剣のように高い。キリトの武器は私と同じ片手剣だ。どれだけスキルが上がればあのソードスキルが使えるのだろうか。

 その重攻撃のソードスキルを中心に攻撃を組み立て、3連撃の≪シャープネイル≫、投剣スキルのピックでの牽制などを駆使して次々と巨大アリを葬っていった。

 パーティーであれば十分安全マージンが取れる場所だが、キリトはソロだ。一歩間違えればたちまち彼は死の坂を転げ落ちる事になるだろう。しかし、それを感じさせない安定した戦いぶりを見せていた。

「すごいね」

 私の左隣でコーも鬼気迫るキリトの戦いぶりに目を丸くした。

「うん」

 私はキリトの姿に狂気を見た。あの狂気には見覚えがある。と言うより経験がある。

 かつて私とコーが血盟騎士団に入った時の事だ。私からコーが離れて行ったと思っていた時(結局それは私の思い違いであったが)、心の虚無を埋めるために私は狂気に囚われただひたすら戦っていた。

 私とキリトが違う所は一人でもしっかりと自分のヒットポイントを管理しモンスターを倒していく技術を彼はちゃんと持っている事だ。

 そろそろ、キリトが狩りはじめてから1時間が経とうとしていた。彼は冷めた視線を私とコーに投げかけると、6連撃で巨大アリを攻撃して呟くように言った。

「スイッチ」

「了解!」

 私はキリトと巨大アリの硬直時間の隙間に滑り込んで巨大アリを2連撃≪バーチカル・アーク≫で仕留めた。そして、メニュー操作をして1時間のタイマーをセットする。

「遠い敵は任せて!」

 コーの≪ペネトレーションアタック≫で輝く鉄球が巣穴に飛び込んでいく。姿は見えないが巨大アリにヒットしている音が聞こえた。

「OK!」

 私の背中はコーが守ってくれる。彼女の背中は私が守る。ここのモンスターが何匹出てこようと負ける気は全くしない。私たちはレべリングを始めた。

 

 後3分で1時間だ。

「ジーク。そろそろ、後ろとスイッチしよう」

 巨大アリの湧きには波がある。今はちょうど停滞期になっているようだ。コーの言うとおり、今待っている聖竜連合のパーティーに譲った方がいいだろう。

「OK」

 私は単発の重攻撃を繰り出しながら叫んだ。「スイッチ!」

「おう!」

 私が硬直している間に聖竜連合のパーティーが割り込んで、狩りを始めた。

 私は巨大アリのターゲットを受けないように慎重に後退した。

 巨大アリにターゲットされない位置まで下がると、キリトはすでに聖竜連合の次の場所を確保していた。

「おつかれ~」

 コーが私に向かって明るい声で手を上げた。私は彼女とハイタッチを交わして微笑みあった。

「今日はこれで終わりにしよう」

 私はコーに提案した。

「そうだね」

 コーは笑顔で頷いた。

「先にヴィクトリアの所に行ってて」

 私はコーを送り出すと、キリトへ足を向けた。

 キリトはうつろな瞳で聖竜連合のパーティーの狩りを見つめていた。

「キリトさん。あまり無理をしないでください」

 私はハイポーションを一つ差し出しながら声をかけた。

「……」

 キリトはちらりと私を見たがすぐに視線をアリ谷に戻した。

「私も以前、壊れたように戦い続けた事があります。自分を壊すような事はしないでください。あなたに想いを託した人は……」

「うるせぇよ」

 私の言葉はキリトの絶対零度の声色でさえぎられた。

 キリトの心は完全に閉ざされている。私なんかの一言でそれが解けるとは全く思っていなかったが、こうも正面から拒否されるとさすがに鼻白んだ。

 私の閉ざされようとしていた心はコーが開けてくれた。キリトの閉ざされた心の扉を開けてくれる人は現れてくれるだろうか。

 私はため息をついて、受け取りを拒否されたハイポーションをポーチにしまった時、聖竜連合のパーティーの叫びが聞こえた。

「女王だ!」

 その叫びに視線を向けると、普通の巨大アリの2倍以上の体格のアリが巣穴から現れていた。これはボスモンスターではないが、攻撃力もヒットポイントも高い。単体であればなんとか対抗できるが、普通の巨大アリが何体もいる状況で対応を誤ると一気に死に至る恐れがあった。

「コー!」

 私はコーに声をかけた後、聖竜連合のパーティーに声をかけた。「助けが必要ですか?」

「お、おう。女王を引っ張っていくから追手のアリを片づけてくれないか」

 リーダーらしい男が上ずった声で返事をしてきた。

「了解」

 私は隣に駆け寄ってきたコーに視線を投げかけると、彼女は力強く頷いた。「いくよ」

「うん」

 コーは槍を握りしめて私の後に続いた。

 私たちが所属する血盟騎士団と聖竜連合はだんだん険悪な雰囲気になりつつあった。原因は血盟騎士団が最強ギルドと呼ばれるようになったことにある。聖竜連合は攻略組最大ギルドで各プレーヤーのレベルも高い。しかし、集団としての戦闘力は血盟騎士団と比べるとやや見劣りするというのが世間の評価として固まりつつあったのだ。

 聖騎士ヒースクリフ、閃光のアスナの強さは桁違いで、聖竜連合で対抗できそうなのはギルドマスターのレンバーぐらいだが二人と比べると見劣りする。さらにヒースクリフとアスナの脇を固めるゴドフリーをはじめとする戦士も聖竜連合のメンバーより一歩先んじている。しかも、シーフのアラン、遠隔攻撃のコーなどのスペシャリストが戦術の幅を広げている。

 こういう状況は最強ギルドを目指している聖竜連合にとって面白くない事だった。最近では事あるごとに聖竜連合は血盟騎士団に対して対抗意識をむき出しにして絡んでくることが多くなってきていた。

 そんなわけで仲が悪くなりつつある二つのギルドだが、こういう事態になれば協力しあう。お互い、ゲームクリアに向けての貴重な戦力だ。

 聖竜連合のパーティーは女王アリの攻撃を受けながら後退を始めた。私とコーは追いすがってくる一般巨大アリを足止めに入った。

 私とコーが突進系のソードスキルで同時に攻撃を加え先頭の巨大アリを葬った後、二人の攻撃を合わせて次々と後続の巨大アリをポリゴンのかけらに変換していった。

「うわあ!」

 私の背後で絶叫が聞こえた。

 視線を向けると聖竜連合の一人が女王アリの粘液と噛みつきのコンボ攻撃を受けてあっという間にヒットポイントバーが赤に染まった。

 彼らは思ったよりレベルが低いパーティーだったのかも知れない。攻略組のトップに立ちたくて無理にここでレべリングをしているのだろう。そうでなければこうも簡単に崩れるはずがない。でも、今はそんな事を考えている場合ではない。

(まずい! 助けなきゃ!)

 しかし、私もコーも助けに行けない。もし助けに行けば巨大アリの追撃を受けてこちらも危なくなる。

 キリトがふらりと動いた。体重を前にかけたと思った瞬間、その姿がかき消え女王アリに痛撃を与えた。強攻撃、体当たり、強攻撃、体当たり。女王アリの反撃を許さない連続攻撃でそのヒットポイントを削って行く。

(なに、あれ)

 強攻撃で発生する硬直時間を体術で埋める攻撃があるという話は噂で聞いた事があった。しかし、実際に目にするとその威力は圧倒的だ。

「ジーク! 集中して!」

 私はコーの叫びで我に返った。襲いかかってくる巨大アリの粘液攻撃を間一髪でかわし、身を翻しながら≪スラント≫を叩きこんだ。

 背後で女王アリの末期の絶叫のあと、ポリゴンが散る音が聞こえた。

 聖竜連合を追撃していた巨大アリのすべてを倒し、私とコーは振り向いた。そこでは聖竜連合とキリトが一触即発の雰囲気を漂わせていた。

「どういうつもりだ。貴様! 横殴りだけじゃなくってラストアタックまで持ってきやがって!」

 聖竜連合のパーティーリーダーがキリトに食いかかった。ラストアタックをキリトが持っていったという事は女王アリの経験値のほとんどをキリトが持っていったのだろう。聖竜連合のパーティーにはスズメの涙ほどの経験値しか入らなかったはずだ。

「……」

 キリトは面倒くさそうに剣先を払うと片手剣を背中の鞘に納めた。

「シカトしてんじゃねえ!」

「待ってください!」

 私はキリトをかばうように間に入った。

「なんだよ!」

「そちらさんが死にかけていた所が助かったんだから、いいじゃないですか」

「だからって、回復させればいいじゃねぇか! 女王を倒して経験値を持ってくなんて」

「経験値が必要なら、続きをやったらどうですか?」

 私は巨大アリの巣穴を指差して微笑んだ。「時間がもったいないですよ」

「行くぞ!」

 パーティーリーダーは唾を吐き捨てて狩りに戻った。

(血盟騎士団へのヘイトがまた高まっちゃったかな……)

 私はため息をついてキリトを見た。

 キリトは私から目をそらして聖竜連合の戦う様子を見始めた。

「行こう。コー」

 私はコーの右手をとってヴィクトリアの所へ向かった。

 ステイさせていたヴィクトリアの首を撫でてあげると、優しい目で私に甘える声を出した。

「帰ろう」

 私はヴィクトリアに騎乗していつものようにコーの騎乗を手伝った。

「キリトさんってすっかり人が変わっちゃったね。ああいう人は嫌いだな」

 コーが騎乗し私の腰に掴まりながら呟くように言った。

「ああ、でも……」

 私はコーに返事をしながら、クラインにキリトがアリ谷にいるという情報をメッセージで送った。

 私とクラインはフレンドとして良い関係を築いている。彼は女性相手になると目の色が変わる欠点があるが、男性として、大人としてなかなか頼りになる人だ。風林火山のメンバーたちも男ばかりだが気持ちのいい人たちが集まっている。これも彼の人徳であろう。もっとも、私本来の性別であったならこんな良い関係は結べなかっただろう。

 キリトがあのように変わってしまった原因を私はクラインから聞いた。

 それはソロだったキリトが一時所属していたギルドが全滅したという話だった。きっと彼はその事に責任を感じているのだろう。否……それだけではないだろう。きっとギルドメンバーの中にとても大切な存在がいたのだろう。そうでなければあそこまで壊れない。

「でも?」

 いつの間にか物思いにふけってしまった私を促すようにコーが尋ねてきた。キリトのプライベートに関わる事をどこまで話していいのだろうか? でも、私はキリトの事を誤解してほしくなかった。

「キリトさんは大切な人を亡くしたみたいなんだ。私も、もしコーがいなくなったら、ああなってしまうと思う……」

 そこまで言った時、コーが力強く抱きしめてきた。「コー?」

「僕はいなくならないよ」

「うん。ありがとう」

 私は腰に回されたコーの腕を軽く叩いた。

「キリトさんの心を温めてくれる人が現れるといいね」

「そうだね」

 私はコーの手を強く握った。それだけで私の心は温められる。

 すぐにクラインからの返信があった。すぐにアリ谷に向かってみるとのことだった。クラインが少しでもキリトの心を少しでも癒してくれることを私は祈った。

 

 

 

 次の日、血盟騎士団全員参加の定期ミーティングが開かれた。これは攻略層以外で発生している事件の報告やスキル上げのポイントなどいろいろな情報が交換される場だ。

「えっと、街中での睡眠PKについて追加情報があったわ」

 アスナがメモを手にしながら話し始めた。「眠っている相手にデュエルを申し込んで、≪完全決着モード≫で受託させるらしいわ。ほかに、担架で圏外まで連れて行く手口もあるみたい。今後、圏内といえども油断しないように。宿屋でちゃんと寝るようにしてね」

「まったく、いろいろ思いつきやがんな」

 ゴドフリーが大きく息を吐くと、周りにいたほとんどが頷いた。

「これもラフコフが広めてるのかね?」

 プッチーニが肩をすくめた。

「全部が全部、ラフコフがやってる事じゃないだろうけど、つい、そう考えちゃうよね」

 コーが微妙な笑みを浮かべながら首を振った。

「ラフコフ以外のオレンジギルドも活動が活発になってるから気を付けてね。めったに最前線に来ることはないと思うけど」

 アスナはそう言って、アランに目を向けた。「じゃ、アラン。みんなお待ちかねよ。クリスマスイベントの続報をお願い」

「≪背教者ニコラス≫の件。追加情報があったよ。どうやらゲットできるアイテムの中に≪蘇生アイテム≫があるみたいだよ」

 アランはアスナの言葉に頷いて立ち上がって話し始めた。

「ほお」

 ブリーフィングルームに驚きの声が上がった。

 11月下旬からNPCが語り始めたクエスト情報。曰く「12月24日の24時。≪背教者ニコラス≫という怪物がどこかの巨木の下に現れる。それを倒せば怪物が持つ大袋には多くの財宝が詰まっている」

 この情報を受けて、ほとんどの攻略組は目の色を変えた。多くの財宝というのが巨額のコルにしろ、アイテムにしろ、今後の攻略に役立つ事は間違いないからだ。

「昨日、NPCの一人が≪ニコラスの大袋の中には命尽きた者の魂を呼び戻す神器さえ隠されている≫って言ってるんだ」

「聖竜連合が昨日から、血眼になって情報集めてるのはそれが原因か」

 マティアスが首をすくめながら言った。

「問題はその≪背教者ニコラス≫がどこに現れるかだ。目星はついてんのか?」

 ゴドフリーがアランに尋ねた。

「2か所まで絞り込んだんだけど、どちらも確証がなくって」

「どうする? 二手に分かれるか?」

 ゴドフリーがアスナに目をやりながら尋ねた。

「ニコラスはおそらく、40層のボスクラスの力を持っているだろう。分かれるのは得策とは言えないな」

 アスナの代わりに答えたのはヒースクリフであった。「その二つの場所を見比べて多数決で決めたらどうかね?」

「団長……。あまり今回のイベントは乗り気じゃなかったんじゃないですか?」

 アスナは首を傾げた。

 そうなのだ。ヒースクリフはこのクリスマスイベントの話があっても、通常の攻略を優先させるべきだと主張していたのだ。そんな経緯があって、アラン一人にクリスマスイベントの情報収集を任せ、我々は第49層の迷宮区攻略を続けているのだ。

「まあ、君たちがあまりにも楽しそうなんでね。この際、私も楽しもうかと思ってね」

 美しいテノールの小さい笑い声をもらしたあと、ヒースクリフはニヤリと微笑んだ。「それに私一人でこの層のボスを倒しに行けないからね」

「じゃあさ、今から案内するよ。団長、いいですか?」

「ああ。じゃあ、行こうか」

 ヒースクリフが立ち上がると、全員がそれに合わせて立ち上がった。

 

 NPCが呟く情報から候補地としてリストアップされたのは17か所。アランはその中から木の大きさや品種などを検討し、二つに絞ったらしい。

 両方とも第35層の≪迷いの森≫にあるということで、アランの案内で両方のポイントを見て回った。

 最初のポイントはねじくれた巨木であった。いかにもいわくありげで怪しい雰囲気を醸し出している。夜になると青白くライトアップされたように輝き、イルミネーションで輝くクリスマスツリーのように見えるとのことだった。

 二つ目のポイントはまっすぐに立つ巨木であった。周囲の木が遠慮するかのように小さい木のためにその巨木の存在感は圧倒的だ。まるで公園にクリスマスの時にだけ運ばれてくるツリーのようにその存在をアピールしていた。こちらも夜になると青白く輝き、クリスマスツリーのように見えるという。

「じゃあ、挙手で決めましょう」

 アスナが提案し、みんなが頷いた。「じゃあ、最初の場所だと思う人」

 ぱらぱらと手が上がった。しかし明らかに少ない。一目で半数に届いていない事は明白だった。

「11ね」

 念のためアスナは手の数を数えた。そして、自分も挙手しながらみんなに尋ねた。「ここだと思う人」

 私は手を上げた。周りを見ると一目で半数を超えていると分かった。

 今更気付いたが、コーとヒースクリフが手を挙げていなかった。コーはともかく、ヒースクリフが手を挙げていないのがとても気になった。

「じゃあ、ここでいいわね。ここに反対な人も多数決なので、もし間違っていても後から文句言わないようにね」

 アスナがそう言うと全員が頷いた。「じゃ、後は迷宮区のマッピング作業に戻りましょう。アランは引き続き情報収集をお願い」

「了解!」

 アランが敬礼をすると全員がそれに倣うように敬礼した。そして、全員が転移門へ向かう事になった。

「どうして、最初の場所だと思ったの?」

 迷いの森をアランの先導で主街区に戻る途中、私はコーに尋ねた。

「んー。勘だね」

 コーは可愛らしく首を傾けた。「でも、茅場ってけっこうヒネてるからさ、クリスマスツリーっぽくない奴を選ぶんじゃないかなって思っただけ」

 コーの言葉に近くを歩いていたヒースクリフがニヤリと笑ったので、私は彼に視線を移した。

「団長も最初の場所に手を挙げてましたよね」

「私は純粋に勘だよ」

 ヒースクリフは微笑んだまま言葉を続けた。「茅場の心理まで考えているコートニー君の方が数段上だな」

「まったく、茅場って何をやってるんだろうね。GMみたく、僕たちに見えずにあちこち見て回って楽しんでるのかなあ。嫌な奴」

 コーは渋い表情で天井を見上げた。「きっと、なにかの育成ゲームみたいに僕たちの行動を見て楽しんでいるんだろうなあ」

「そう考えると悔しいね」

「でも、このままの生活もいいかなって思い始めてる自分もいるんだけどね」

 コーはクスリと笑って私の腕を抱いた。

「私も……。でも、これって茅場の思うつぼだよね」

「悩ましい所だね」

 私とコーは見つめあって笑った。そんな私たちを見て、ヒースクリフは我が子を見るような優しい光を瞳に浮かべた。そして、ニヤリと笑って足を速めて離れていった。私たちに気をつかってくれたのかも知れない。

「セルバン! 壁! 壁をくれ!」

「売り切れました。今度の入荷はクリスマスイベントの後になりまーす」

 私たちの後ろでプッチーニとセルバンテスのコントのようなやり取りが耳に入り、私とコーは再び顔を見合わせて笑ってしまった。

 

 

 

 その日の夜。自宅でくつろいでいると、風林火山のサブリーダーの一人、テンキュウから『今からお宅に伺いたい』とメッセージが入った。

「テンキュウさんが来るって」

 私がコーに声をかけた。

「おー。じゃあ、お茶の準備するね!」

 コーは嬉しそうに立ち上がってお茶の準備を始めた。

 テンキュウは風林火山の中で一番懇意にさせてもらっている男だ。年齢はクラインと同じぐらい。細身の体に口ヒゲと頭全体を覆う赤いバンダナがトレードマークの男だ。

 コーによるとテンキュウは『典厩』という官職名からとったという事だ。コーが言うには武田信玄の弟の官職名だそうだ。この話題をきっかけにしてコーとテンキュウは歴史話で盛り上がり私がやきもちを焼くほど意気投合していた。

 コーは歴女だったのか。私は彼女の意外な一面を発見して嬉しくなった。

 私がOKの返事をメッセージで返してしばらくすると、家のドアがノックされた。

「どうも、どうも。こんばんわ」

 玄関を開けるとそこでテンキュウは何度も頭を下げた。服装は柿色の小袖に黒の肩衣を身にまとい、茶色のマフラーを首に巻くという珍妙な和洋折衷姿だった。

「どうぞ」

 私は手を広げてテンキュウをリビングへ促した。

「テンキュウさん。いらっしゃい!」

 コーは明るい声でお茶をテーブルの上に準備した。

「お気遣いなく」

 テンキュウは優しい微笑みで頭を下げた。

「どうぞ座ってください」

「どうも、どうも」

 私が促す言葉でテンキュウはソファーに腰を掛けた。

「今日はどうしたの?」

 弾む声でコーが尋ねた。

「リーダーが昨日のお礼にこれを」

 テンキュウはメニューを操作して1本のボトルを実体化させた。「本当は自分で直接持ってきたかったようなんですけど、忙しいのと、あと、コートニーさんに失礼があるといけないので私が名乗り出ました」

「うん。それはいい人選だ」

 コーがにっこりと笑った。

「コー。失礼だよ」

 私は鋭い声と視線でコーをたしなめた。

「ごめん」

 コーは萎れてうつむいた。

「いやいや。いいっすよ。リーダーはなぜか可愛い女の子を前にすると人が変わっちゃうんで」

 テンキュウは高らかに笑った。そして、改めて実体化させたボトルを私に差し出した。「どうぞ」

「これ、≪ルビー・イコール≫じゃないですか」

 私はそれを手に取って驚きの声を上げてしまった。

 確かこれはカップ1杯で敏捷度の最大値が1上がるというレアなお酒だ。

「初めて見たよ」

 コーもやや興奮気味に言った。

「3人で飲みましょう」

 と、私が言うとコーがぱっと表情を明るくして立ち上がった。

「いいね! グラス持ってくるね」

「あ、お茶の準備してくれたから今度は私が」

 私はあわてて立ち上がってコーの後を追った。

「じゃあ、一緒に」

「いいなあ。新婚生活……」

 背後のテンキュウからそんなつぶやきが聞こえた。

 3つのグラスにルビー・イコールを注ぎ3人で乾杯した。

「くぅ。しみるなあ」

 テンキュウが一口を味わったあと顔をゆがめて幸せそうに呟いた。

「で、キリトさん。どうでした?」

 私はワインの味に似たルビー・イコールを半分ほど飲んだ後、尋ねた。

「俺たちはレベル上げでたまたま会ったっていう格好をしたから直接話してないんですよ。リーダーがサシで話をしてましたけど。戻ってきた時、浮かない顔をしてましたから……」

「そうですか……」

 やはり、クラインでもキリトの心を開かせるのは無理だったのだ。かつて私は第25層のボス戦で命をキリトに救われた恩がある。少しでも報いたいと考えているのだがそれは難しいようだった。

「でも、蘇生アイテムが手に入れば……」

 テンキュウはヒゲに手をやりながら言った。「彼は変わるかもしれません」

「蘇生アイテムか……」

 コーはグラスを揺らしながら首を傾けた。「どうせなら、今まで死んだ人の分の蘇生アイテムが出てくれたらいいのにね。2000個ぐらい」

「それなら、俺はログアウトアイテムっていうのが欲しいっすよ!」

 テンキュウが破顔した。

「一人だけ逃げないでくださいよ」

 私はテンキュウの言葉を混ぜ返して3人で笑った。

「KoBは今回のフラグMobが現れるポイントは特定できたっすか?」

「こればかりはねー」

 コーはいたずらっぽく笑って私に目配せをした。

「言えませんよ。ハズレかもしれないし」

 私がコーの言葉を引き継いだ。「そちらは?」

「現在調査中です。こう言っちゃなんですが、ウチのリーダーの勘は結構当たるんすよ」

 テンキュウはニヤリと笑った。「きっと、アタリを引いてくれるはずです」

「じゃあ、24日に現場で風林火山と会えればラッキーですね」

 私も負けずにニヤリと笑った。

「そしたら、俺は二人の陰に隠れてますよ。そして、ラストアタックだけ頂きます」

「ひどーい!」

 コーが笑いながらテンキュウを指差した。「そしたら、絶交だかんね!」

「え?」

「コーを甘く見ない方がいいですよ。私なんてブロックリストに入れっぱなしにされた事もありますから」

「まじっすか?」

 テンキュウは驚きで腰を浮かしながら私に顔を近づけてきた。

「まじまじ」

 私も前かがみになって頷いた。

「ジーク! 昔の事を掘り返さないでよ!」

 ドンと私は突き飛ばされてソファーごと床に転がった。

 これを見てテンキュウは哄笑し、私たちも笑った。

 

 しばらくテンキュウは談笑を楽しんだ後、24日のフラグMob戦での再会を約束して帰っていった。

 ベッドで横になっていると、入浴を済ませたコーが布団にもぐりこんできて私に寄り添うように身体を寄せた。

「ジーク」

 コーは私のすぐ目の前で視線を合わせてきた。「もし、蘇生アイテムが手に入ったらすぐに使わないでね」

「どういうこと?」

「今まで、いっぱい人が死んだところを見てきたけど、その人たちのために使わないでねってこと」

 コーは目を伏せて言葉を続けた。「僕、すごいエゴイストなんだ。蘇生アイテムがもし手に入ったら、ジーク以外に使う気はないよ 。こんな事言ったら嫌われるかもしれないけど……」

「嫌わないよ」

 私はコーの髪を撫でた。すると、コーはほっとしたように唇に小さく笑みを浮かべると目を閉じた。

 私だったらどうだろう。私はコーほど意志が固くない。雰囲気に流されて安易に使ってしまいそうな気がする。

 ソードアート・オンラインとはなんと人を試すような選択を強いるゲームなのだろう。ドロップアイテムのログは残らないから誰がレアアイテムを取ったか分からないし、今回の蘇生アイテムに至っては2000名以上の死者に対してそう多くの数はドロップしないだろう。

 蘇生アイテムを手に入れた者は死者の中から生者を選択する。同時に死者を死者として確定するという決断を迫られるのだ。私には重すぎる決断だ。

 第25層のボス戦で多くの仲間を失った。その一人一人の顔が頭に浮かぶ。彼らがもし帰ってくることができるとしたら……。私はコーのためだけに蘇生アイテムを使うと決められるだろうか?

 私はまとまりそうもない考えを投げ出した。もし、コーが私の思考をテレパシーか何かで読み取る事が出来るとしたら『またジークは考えすぎ!』って言うだろう。

 コーがパートナーとして近くにいてくれて本当によかった。コーは私にとって暗い道を照らしてくれるランプだ。このデスゲームという暗闇を照らし、私を照らし、進むべき道を照らしてくれる。

「おやすみ」

 私はコーの額に口づけした。すでに眠りに落ちていたらしく、コーの返事は静かな寝息だけだった。

 

 

 

 24日の夜。私たちは投票で決めた巨木の下に集まっていた。

 聖竜連合のパーティー18名もすでにスタンバイをしていた。しかし、レンバーの姿はない。今いるメンバーはボス攻略戦であまり見かけたことがない。おそらく聖竜連合のBチームなのだろう。

 風林火山の姿はない。テンキュウの言葉が正しいとすればこの場所はハズレなのだろうか?

「そろそろ12時だな」

 ゴドフリーが背中に背負った斧を両手に握った。

 シャンシャンシャンシャン

 鈴の音が聞こえてくると、上空に2本の光り輝く航跡が見えた。やがて、巨木の上空でそれが止まると何かがものすごい勢いで降りてきた。かなり巨大なモンスターのようだ。

「来たぞ!」

 あちこちから歓声が上がった。ここがアタリなのか! 私の胸は躍った。

 地響きを立ててそのモンスターが着地をすると雪煙が視界をさえぎった。そして、その雪煙が晴れた時、そのモンスターの姿と名が明らかになった。

『The Rudolph of red nose 』

 見上げるほど巨大なトナカイのモンスターだった。身体のあちこちが腐っておりゾンビのようなおぞましい姿だった。不自然に輝く赤い鼻は血が滴っているのではないかという恐ろしい色合いだった。

 こんな姿を子供が見たら、それだけでクリスマスがトラウマになるんじゃないかと思われた。

 トナカイは雄叫びをあげるとヒットポイントバーが3本表示された。

「こりゃ、ハズレだな」

 プッチーニが抜刀して盾を構えながら言った。

「みんな、油断しないで! 前衛! 壁を作って!」

 アスナが抜刀しながら声を飛ばすと、血盟騎士団のタンクがヒースクリフを中心に隊列を組んだ。

 装備はばらばらだが、同じ制服を身にまとい隊列を組む姿はそれだけで聖竜連合に威圧感を与えたようだ。聖竜連合のパーティーは息をのみ固まってしまっていた。

「前進!」

 ヒースクリフの号令で私は周りと歩調を合わせて前進した。遠目に見たら血盟騎士団の白い壁が圧力を持って前進しているように見えるだろう。

「セルバンテス。奴のステータスは?」

 私の後ろでゴドフリーの声が聞こえた。

「30層クラスだね。大したことない」

「来たぞ」

 ヒースクリフの声で私たち前衛は盾を並べた。そこへルドルフが角を振り回しながら突進してきた。

「おいおい。角が光ってやがる。まさかソードスキルか?」

 私の隣でプッチーニが毒づいた。

 私たちはルドルフの突進を受け止めた。思ったより軽い。セルバンテスが言うように大した強さではないのだろう。

「わたしたちは側面から攻撃!」

 アスナの声が響くとゴドフリーをはじめとする両手武装の戦士がルドルフの側面を突き、たちまちルドルフのヒットポイントを削って行く。私たち前衛はターゲットがそちらに移らないようにルドルフに攻撃を加えた。

 その姿を見て、ようやく聖竜連合も動きだし攻撃に加わり始めた。

 

 20分も経たないうちに赤鼻のルドルフは大きくいななく声をあげるとそのポリゴンを散らした。そのポリゴンのかけらが消えると暗闇に『Congratulations!』の文字が明るく浮かび上がった。

「よっしゃー。ラストアタックゲットォ!」

 ゴドフリーが斧を振り上げて雄叫びをあげた。

「アニキ! あれトレジャーボックスだよ!」

 アランがルドルフがポリゴンを散らした場所に現れた大きな宝箱を指差した。

 歓声が上がる中、アスナがすたすたと聖竜連合のパーティーに向かって歩いて行った。

「リーダーは誰?」

 アスナは肩に乗った髪を華麗にかきあげながら尋ねた。

「お、俺です」

 遠慮がちに右手をあげて一人の青年が名乗り出た。

「トレジャーボックスを開けられる人はそちらにいるのかしら?」

 アスナは厳しい口調で問い詰めた。

「いません……」

「では、あれは血盟騎士団が開けます。中身は当然わたしたちがいただきます」

 有無を言わさぬ口調でアスナは言い渡した。

「撤収するぞ」

 聖竜連合のリーダーは舌打ちをした。聖竜連合はそれぞれに苦情を口にしながらフィールドから消えていった。

「アラン。出番だぞ」

 ゴドフリーはアランの頭をガシガシとかきまぜた。

「任せてー」

 アランはニヤリと笑ってトレジャーボックスの前に立った。

 がちゃがちゃという音が聞こえた。

「あ、ヤバッ」

 アランは突然叫ぶと慌てて逃げ出した。トレジャーボックスが罠発動を知らせる音を激しく鳴らした。「やっちゃった」

「まじかよ」

 ゴドフリーはニヤリと笑ってアランの頭を掴んだ。

 何もない空間に光が凝集し、8匹のモンスターが現れた。『The』の定冠詞をいただいたトナカイたちだった。

『The Dasher』

『The Dancer』

『The Prancer』

『The Vixen』

『The Comet』

『The Cupid』

『The Donder』

『The Blitzen』

 先ほどの赤鼻のルドルフに比べると小柄でヒットポイントバーも2本だ。

 このモンスター名はサンタのソリをけん引するトナカイたちの名前そのままではないか。

「これ、アランのせいじゃないよね」

 私が思わずつぶやくと、アスナがクスリと笑った。

「そのようね。赤鼻のトナカイに続いて、8匹のトナカイが出るのがここでのイベントらしいわね」

 アスナは抜刀して全員に命令を下した。「一匹、一匹やってこう。赤鼻より弱いはずよ!」

「了解!」

 全員が一斉に抜刀し8匹のトナカイを迎え撃った。

 

 私たち血盟騎士団は苦なく8匹のトナカイも葬り、トレジャーボックスを回収したあと、第35層の転送門前広場に集まった。

 血盟騎士団では「ドロップしたアイテムは手に入れた人の物」というルールがある。つまり、手に入れたアイテムで不要なものはNPCなりPCに売り飛ばすことになるのだが、どうせなら仲間内で格安で売買したりプレゼントしたくなるのが人情という物だ。

 広場でそれぞれ気の合う仲間が小集団を作って手に入れたアイテムの売買と交換が始まった。

 私とコーは結婚しているのでアイテムストレージが共通化されている。それぞれが勝手にアイテムを動かすと混乱してしまうので、アイテムを動かすのはコーの役割。私はその様子を見ているだけだ。

「やっぱり、蘇生アイテムはないっぽいね」

 コーはため息をつきながら新規入手欄をいったん閉じた。

「ニコラスじゃなかったからね。しかたがないよ」

 私はコーの頭を撫でながら慰めた。

「コートニー君。いいかね?」

 そう話しかけてきたのはヒースクリフだった。

「なんでしょう?」

 コーは首を傾げてヒースクリフを見た。

「ドロップアイテムの中にこれがあってね。私には必要ないものだから君にあげよう」

 ヒースクリフはそう言うとトレード画面でコーに何かを渡した。共通ストレージの中に納められたそれは金色の布地でできたスリングだった。≪攻撃速度ボーナス+2.0≫≪攻撃力ボーナス+5.0≫という文字が見えた。

「ありがとうございます! 団長!」

 コーは驚きで目を丸くした後、まさに飛び跳ねそうな勢いで喜びを全身で表現した。

「これからの君の戦いに期待させてもらおう」

 美しく響くテノールの声でヒースクリフは小さく笑った。

 がやがやとにぎやかだった周りの声が突然小さくなった。

 何があったのだろうか? 周りに視線を走らせるとキリトが疲れ果てた表情で血盟騎士団の中を歩いていた。全てを失って呆然としているようなその姿を見て、全員が息を飲んだために静かになったのだ。

 彼は蘇生アイテムを手に入れられなかったのだろうか? それとも手に入れて絶望してしまったのだろうか?

「転移……ミュージェン」

 キリトは転移門に立って最前線の第49層へ飛ぶコマンドを呟いた。

 その姿が光に消えるとキリトなどいなかったかのように、再び徐々に周りがにぎやかになってきた。

「団長……」

 私は頭に浮かんだ疑問をヒースクリフにぶつけた。「今回の蘇生アイテムで今まで死んだ人は戻ってこれるんでしょうか?」

「恐らくは……」

 ヒースクリフは静かに首を振った。「恐らくは戻ってこれない。茅場が言った事は本当だと思う。つまり、この世界でヒットポイントがゼロになった時点で現実世界の脳が焼かれるのだ」

「じゃあ、蘇生アイテム自体デマですか?」

「いや、ヒットポイントがゼロになってから脳破壊シークエンスが走り出すまでに時間がある。蘇生アイテムは脳破壊シークエンスをキャンセルさせる効果があるのかも知れない」

「これから死ぬ人は助けられるって事か……」

「まあ、これは私の推測だ。本当の所は茅場にしか分からないさ」

 ヒースクリフはそう言って肩をすくめた。

「今回は駄目だったけど、来年、ガンバろ!」

 コーが明るい声で私の左腕を取った。

「来年か……」

 1年後……。このペースで攻略が進んでいくとすれば90層ぐらいには到達できているだろうか? それまでにどれだけの命が失われるのだろうか。その時、私もコーも無事で生きていられるのだろうか。

 私が暗澹たる気持ちに沈んでいくと、ふいにコーが私の頬に指を押し付けてきたので現実に引き戻された。

 驚いてコーを見ると、私の心を明るく照らす笑顔で弾むように言った。

「ジークは考えすぎ!」

 コーはそう言いながらびしっと指を私に突きつけた。

「ごめん」

「家に帰る前に、ミュージェンの主街区広場に行こ! あのクリスマスツリーが見れるのも今日一杯だよ」

 コーが私の左腕を引っ張り転送門まで歩いた。

「あ、コー。帰るの?」

 アスナがコーに小さく手を振った。

「うん。ジークと一緒にミュージェンのツリー見てから帰る!」

 コーが明るく答えながら手を振りかえすと、周りから冷やかしの声と口笛が聞こえた。

「「転移、ミュージェン」」

 私たちが声を合わせて唱えると、周りの風景が光に溶けていき、やがてミュージェンの市街区の景色に変わった。転送門広場の中央に美しいイルミネーションで飾られたクリスマスツリーが輝いていた。

 まるでコーは赤鼻のトナカイだ。赤鼻のトナカイがサンタを子供たちへ導くように、私をいろいろと導いてくれる。

 私がじっとコーを見つめていると、その視線に気づいて見返してきた。

「なに?」

 コーは可愛らしく首を傾ける。

 私はそんなコーの鼻を押してみた。

「ちょっと!」

 コーは驚いて私の手を振り払って睨みつけてきた。

「いや、赤くないかなと思って」

「ジーク、変すぎ!」

 コーはあきれた顔をしながら私の左手を引いて主街区のクリスマスツリーへ走った。

 やっぱり、コーは赤鼻のトナカイだ。鼻は赤くないけれど。

 私は微笑みながら彼女の手をしっかりと握って後を追った。ずっと離れないように。ずっと一緒にいたいから。




自分の文句を言われても動じないヒースクリフの大人の対応をお楽しみください(ぉ)

なんか16000文字もありながら薄い内容なのは本来の仕様です。スミマセン。

ようやく、ソードアート・オンライン原作の『赤鼻のトナカイ』、テレビシリーズだと第3話の時間に到達しました。次はどうしよう。8月のラフコフ討伐戦のネタはできているんだけど、いきなり飛ぶのは気が引けるのでまた閑話を挟むことになりそうですが、今全くのノープランです。
エロを書くか(マテ)
それともエタるか(おい)
気長にお待ちください。

お気に入りが200件超えました。本当にありがとうございます。
引き続きよろしくお願いします。

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