サイヤ人 in ヒロアカ   作:H & J

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蛇腔総合病院に通う日々となった夏休み。でも近い内に起こるビックイベントを前に2人はどんな反応を示すのだろうか……。


第22話 魔境の発目さん家

 夏休み初日、蛇腔総合病院前のバス停にて。

 

 

「あの……誰ですか?」

 

 

 出会って早々、開口一番に発目にそう言われた彼は、金縛りにあったかの如く動きを止めた。

 

 だが発目の反応も無理はない。何故なら今の彼は、サイヤ人の血を持つ者にしかなれない伝説の戦士、『(スーパー)サイヤ人』に変身しているのだから。

 

 超サイヤ人に変身出来るようになったのは2年以上も前だが、人前でその姿を見せるのは今回が初めてである。普段とは見た目も雰囲気も180度変わっているので、発目が初見で彼の事だと気付かないのは当然と言えるのだ。

 

 だからこそ、彼も気を取り直して発目の名を呼ぶ。その一言で発目もすぐに気が付いた。

 

 

「その声、その口調……なんだ、あなたでしたか。普段と全然違うので分かりませんでしたよ。しかしまあ、改めて見ると本当にいつもとは違いますね。

 急にどうしたんですか? 金髪碧眼にして、髪型も変えて。大胆なイメチェンしますね。今更になって高校デビューってやつですか」

 

 

 声と口調で気付いてくれたのは嬉しいが、やはりこの姿には食い付くらしい。

 

 それもそうかと心の中で思いつつ、説明が長くなるので後で詳しく話すと発目に伝える。本人は今すぐ聞きたそうにしていたが、時間が時間なので渋々引き下がってくれた。

 

 

「それでは行きましょうか。殻木先生が待っていると思うので」

 

 

 立ち話も程々に、彼と発目はバス停を離れて病院へ。

 

 そして病院の受付に真っ直ぐ向かい、殻木と会う約束をしている旨を受付の人に伝える。

 

 

「ねえ、ちょっと見てよ。受付の所にいる人。ほら、あの金髪の……!」

 

「わああ! ちょっとちょっと、何よあのイケメンは!」

 

「病院であんなイケメンに出会えるとかマジ眼福なんですけど!」

 

「あのキリッとした表情の合間に見せるちょっとした笑みが良いアクセントよねー!」

 

「ほら見てよ、受付の人も若干顔が赤くなってる。何とか平静を保ってるっぽいけど」

 

「隣にいるの彼女さん? 羨ましすぎるんですけど」

 

 

 受付で用件を伝えている間、周囲にいる人々の視線、特に女性からの視線が彼に集まっていたが無視。衆目に晒されるのは体育祭や職場体験で既に慣れている。今更どうとも思わない。

 

 だが、それを見ていた発目が受付を済ませて殻木のいる部屋へ向かう途中、クスクスと笑いながら彼の肩をポンと叩く。

 

 

「結構な注目を集めていましたね。そのイメチェンを変装目的でやったのであれば、逆効果だったかもしれませんね。受付の人も声のトーンが高くなっていましたよ?」

 

 

 確かにこれは逆効果だった。

 

 正直言うと、超サイヤ人になった理由の1つとして変装目的も多少は含まれていたのだが、まさかあそこまで注目を浴びる羽目になるとは思わなかった。とは言え、変身したのはそれだけが理由ではないので問題ない。

 

 変身しようがしまいが、周囲の注目を集めるのは避けられないと分かっただけでも良しとしよう。

 

 そう思いながら殻木のいる部屋に入ると、ソファーに腰掛けお茶を入れている殻木の姿が目に入った。どうやら待たせてしまったらしい。

 

 

「おお、やっと来たか2人とも! 研究室に行く前に、お茶でも飲んで寛いで……発目よ、隣にいる人はどちら様で?」

 

「まあ、やっぱりそうなりますよね。えー、この人はですね──」

 

 

 見た目が変わった彼を見て当然の如く疑問を口にした殻木だったが、発目の説明を聞いて愉快な笑い声を上げた。

 

 

「ハッハッハッ! いやあ、久々に大笑いしたわい。やはり若いとは良いもんじゃのう。まさかそこまで印象が変わるとは驚いた!」

 

 

 前に見た黒髪黒目の時とは似ても似つかない、凄まじい変化っぷりがどうやら笑いのツボに入ったらしい。

 

 そう言って大笑いする殻木を横目に、ソファーに座った彼は提供されたお茶と茶菓子を嗜んだ。

 

 

「……さて、年甲斐もなく笑った事だし、そろそろ治療液の開発に取り掛かろうかの。お2人さん、まずは研究室に移動しようか」

 

 

 お茶菓子を片付け、雑談しながら研究室に向かった3人は、この1週間でそれぞれ積み上げた研究成果を早速報告しあった。とは言え1週間で得られた成果などたかが知れたもので、目を見張るような進捗は見られなかった。

 

 

「ほうほう、そちらも同じ感じか。まあ、1週間そこらでどうにかなるものでもないしの」

 

「そうは言っても1週間掛けてまだこれだけしか課題をクリア出来ていないのはちょっと……うーん、アプローチを変えるべきでしょうか?」

 

 

 予想していた事とはいえ、今まで紆余曲折しながらも最終的にアイテム開発を成功させてきた彼と発目は、ここに来てとてももどかしい気分を味わっていた。失敗した事は数え切れない程あるが、全く進展しなかったのは初めての経験だったからだ。

 

 だが、そんな2人を見て朗らかに笑う殻木。2人より何倍も長い年月を生きてきたこの老人には、今の2人と違って確かな余裕があった。

 

 

「まあまあ、そう焦る事はない。別に期限があるわけでもないしの。焦らずゆっくり研究を進めていけばそれで良い。そう急がなくても、いつかは完成するじゃろうて。

 良いか2人とも、こういう時こそ余裕を持って動きなさい。物事が上手くいかない時も楽しんでこその人生というもの。今は分からずとも、どんな状況でも楽しめる時がいつかは来るじゃろうて」

 

 

 流石は人生の大先輩と言うべきか、その言葉には確かな重みがあったと思う。焦らずゆっくり、とは良く言われるものの、そう簡単に出来る事ではない。

 

 上手くいかない時があると、人間誰しも焦りを覚える。だが、殻木に限ってはそのような焦りは一切見受けられなかった。今の言葉が慰めなどではなく、本心から出たものだと良く分かる。

 

 成功も失敗も多く経験してきたからこそ滲み出る余裕。その余裕から出た言葉に、2人は首を振って肯定するでも反論するでもなく、ただ黙って傾聴するのであった。

 

 

 


 

 

 

 一方その頃、ヒーロー科1年A組達の方では。

 

 

「うああああ! 凄い、これがI•アイランド! 至る所にヒーローコスチュームやサポートアイテムがこんなにたくさん!」

 

「ふふっ、どう? 驚いたでしょ? ここも最先端技術を惜しみなく使用して作られたアイテムで目白押しなの! それと当然、展示してある物のほとんどが、パパが取得した特許を元に作られてるのよ!」

 

「えっ、ここもですか!? さ、流石世界を代表する科学者デヴィット・シールド……話の規模が違い過ぎる!」

 

 

 海外の海上に浮かぶ巨大な人工移動都市、I・アイランド。世界中のヒーロー関連企業が出資し、個性の研究やヒーローアイテムの発明などを行うために作られた学術研究都市。世界中の科学者達にとって憧れの地であり、ここで研究出来る事は科学者にとって最高の誉れとなる。

 

 そんな世界中の科学者達の英知が集まった、まさにサイエンスハリウッドのような島で、個性やヒーローアイテムの研究成果を展示した個性技術博覧会であるI・エキスポが開催されていた。

 

 本日はそのプレオープンの日。A組の緑谷はI・エキスポに招待されたオールマイトに誘われ、I・アイランドに着いた先で出会ったオールマイトの親友の娘、メリッサ・シールドと共にI・エキスポを満喫していた。

 

 その道中で他のA組の面々とも出会い、現在大所帯で色んな施設を回っている。

 

 

「例えばこのスーツ。素材が1枚の薄い生地のように見えるけど、実は特殊な製法で作られた超極薄の緩衝材が使われていてね。それが150層も折り重なってて、これを着用すれば高さ30mから落下しても軽い怪我で済むくらい衝撃吸収に優れているのよ」

 

「吸収能力が半端ない!」

 

「例えばこのヘリコプター。一見ただのヘリコプターにしか見えないけど、陸・海・空それぞれの場所によって瞬時に適した形に変化する仕組みがあるの。しかも上は標高6000m、下は深海3000mまで耐えられるくらい頑丈よ!」

 

「もはやヘリコプターの性能じゃない!」

 

「例えばこのゴーグル。一度捕捉した相手を30kmまで追跡出来る機能とか、他の人と100km以上離れても通話出来るインカムとか、他にも4つの機能を搭載した特殊なゴーグルなの!」

 

「機能が多すぎる!」

 

 

 展示されているアイテム1つ1つをメリッサが説明し、それを聞いて驚愕し続ける緑谷。

 

 更にその後ろで2人のやり取りを静かに見守るA組の生徒達。麗日に至っては薄ら笑いを浮かべながら緑谷とメリッサの会話を聞いている始末。口は笑っているが目が笑っていない。

 

 そんな雰囲気の中、メリッサがふと何かを思い出したようにそう言えばと声を上げた。

 

 

「ねえねえ、ちょっと気になっていた事があるんだけど、1つ聞いても良い?」

 

「ふぇっ!? あ、はい! どうぞ!」

 

「皆、雄英高校のヒーロー科にいるでしょう? だから知っている範囲内で良いんだけど、体育祭で活躍していたあのサポート科の男の子。彼は今日、I・エキスポに来ていないのかなぁ……と思っててね」

 

 

 何を聞いてくるのかと思えば、例のサポート科の彼の事について尋ねられた緑谷達。

 

 期末試験前にヒーロー科全員で合同訓練を行って以降、彼とは特にこれといった交流はしていない。故に彼が今どこで何をしているのか、緑谷達の中に知っている者はいない。

 

 その事を緑谷が代表してメリッサに教える。

 

 

「すみませんメリッサさん、僕達まだそこまで彼と深い交流があるわけじゃなくて、その……ここにいるのかどうか分からないんです」

 

「あっ、良いの良いの、謝らなくて! ちょっとした興味本位で聞いただけだから! でもそっか、知らないならしょうがないわね。彼とは是非、1度会って話してみたいなって思ってたけど」

 

 

 サポート科の彼と会えない事に少し残念がっているメリッサを見て、緑谷が再度ごめんなさいと言って頭を下げる。

 

 別に緑谷もメリッサも謝るような事はしていないが、お互い性根が優しすぎるためにどちらも謝り倒すという奇妙な光景が出来ていた。

 

 そんな状況を止めたのは一緒にいた飯田だった。

 

 

「まあまあ、2人とも一旦落ち着いて。それにしても、メリッサさんはどうして彼に会いたいと?」

 

「だってほら、彼って体育祭の時にホイポイカプセルとかエアカーとか、I・アイランドで作られるアイテムに負けないクオリティの物を作ってるでしょ? 同じ科学者として興味があるというか、負けてられないなーっていう対抗心? みたいな?

 ……あ、あははは! やだもう、何かごめんなさいね! 本当に私個人の勝手な事情だから、そんなに気にしないで! ねっ?」

 

 

 そう言って何度も平謝りするメリッサを前に、緑谷達は今もどこかで研究しているであろう彼の姿を思い浮かべた。

 

 ヒーロー科ですら全く寄せ付けない圧倒的な実力があり、メリッサのようなI・アイランドの優秀なアカデミー生にも科学者として名を知られている。

 

 そんな人が雄英高校にいる現状に、本当にとんでもない人と同じ学年になったなと、どこか遠い目をするのであった。

 

 

「あっ、そうこうしている内にもうこんな時間! そろそろ閉園も近いし、レセプションパーティーに行くための準備しないと!」

 

「言われてみれば、今は17時半。閉園は18時で、パーティーが始まるのは19時から。確かに、そろそろ準備に取り掛かった方が良いな。……よし皆、ここは一時解散して各自ホテルに戻ろう! 正装に着替えて30分後に集合だ!」

 

「「「「おー!」」」」

 

 

 I・エキスポの開催を記念して開かれるレセプションパーティーに遅れないよう、各々が正装に着替えるためホテルに戻って行く。

 

 その後、緑谷がメリッサから『フルガントレット』というサポートアイテムをもらったり、パーティー中に敵の集団が襲撃して来たりなど、実に様々な出来事がI・アイランドで起こるのだが、この時の緑谷達は知る由もなかった──。

 

 

 


 

 

 

 ──場所は戻り、蛇腔総合病院の研究室にて。

 

 研究開始から随分と時間が経ち、午後8時半を回った頃。

 

 

「……ん? もうこんな時間か。2人とも、ひとまず研究はこの辺にして、また明日にしよう。病院ももう閉まっているし、外もとっくに暗くなっている。今日はもう帰りなさい」

 

「いやいや、まだまだこれからですよ殻木先生! 今良いところなんです! あとちょっとだけ、ちょっとだけですからもう2,3時間は粘って……あっ」

 

 

 殻木から帰宅を命じられ、研究途中の発目はまだ帰らないという拒否の姿勢を見せたが、思い出したように彼の方を見て静かになった。

 

 先程まで鼻歌交じりに室内を動き回っていた発目が急に黙りこくったので、隣にいる彼が心配そうに見ていると、いきなり実験の手を止めて荷物を纏め出した。

 

 

「……ええ、確かにそうですね。今日はもう暗いので帰る事にします。それではまた明日、朝9時にはこの研究室に来ますので。お先に失礼します、殻木先生」

 

「あ、ああ、お休みなさい発目君。君もお休みなさい。今日はしっかり寝て、また明日から研究に打ち込もう」

 

 

 荷物をバックパックに纏め、それを背負って殻木に挨拶する発目。態度の急変ぶりに殻木が戸惑いの様子を見せるも、発目はそれを気にする事なく研究室を後にする。

 

 彼も殻木に軽く挨拶をしてから研究室を後にすると、急いで発目の後を追いかけ隣に立ち並ぶ。

 

 それにしても急にどうしたのだろうか。あの病的なまでに自分本位の発目が、殻木に1度帰宅を命じられた程度で大人しく引き下がるとは思わなかった。正直言って、本当に3時間くらいは粘ると予想していた。

 

 何か事情でもあるのだろうか。疑問に思った彼は発目に尋ねた。

 

 

「えっ? あそこで大人しく引き下がった理由? 困りましたねぇ、思い出してくださいよ。あなた、これから毎晩どこに泊まるかもう忘れたんですか?」

 

 

 発目にそう言われて彼は思い出した。夏休みの間、今日から毎晩発目の実家に居候する事を。

 

 まだ荷解きもしていないのに初日から深夜帰宅なんてしたら、発目の実家にお邪魔する時、一緒に住んでいる他のご家族に迷惑を掛けてしまう。

 

 だから先程は大人しく引き下がったのだろう。家族になるべく負担を掛けさせないために。

 

 

「今日から私の家に泊まるんですよ? 全くもう、今から乙女の家に行くのですから、少しは緊張感を持ったらどうです? こう見えても私、年頃の女の子なんですから。こんな事、普通はあり得ないんですよ?」

 

 

 言われてみれば確かにそう。年頃の女性が異性を自身の家に、ましてや実家に泊まらせてくれるなど普通はない。

 

 3大欲求が食欲・睡眠欲・性欲ではなく、食欲・睡眠欲・戦闘欲のサイヤ人故か、全く緊張していなかったし記憶から飛んでいた。今もなお、一片たりとも緊張していないが。

 

 だがこの反応を見るに、何だかんだ言って発目はそれなりに気にしていた様で、それに気付いていなかった時点で配慮に欠けていた。これは良くない、反省すべき点だろう。

 

 本来なら他人の事情など微塵も興味ないのだが、発目の事となると途端に甘くなってしまうのはこれ如何に。謎である。

 

 そんな事を思いながら市営バスと電車を乗り継いで帰路に就く事40分。京都府蛇腔市に隣接する播土市、その中心地から少し離れた場所の住宅街に発目の家はある。

 

 発展した街の中心地近くとは思えないほど閑静な住宅街。しかし、建ち並ぶ家々を一目見れば分かる。ここは間違いなく高級住宅街だ。彼の実家もそのような場所にあるので良く分かる。

 

 そんな住宅街を横切る公道を歩き続ける事更に20分、計1時間掛けてようやく発目の実家に辿り着いた。

 

 2,3階建ての一軒家が建ち並ぶ中で聳え立つ近未来的な直方体の建物。いわゆる高級マンションだ。

 

 

「まあ、実家とは言いましたがそこまで大層な物ではありませんよ。このマンションの一室が私の家ってだけの話です」

 

 

 大層な物ではないと言うが、1階当たりのマンションの面積と部屋数から推測するに、1部屋の広さは相当なものだと思われる。謙遜にしては些か無理があるのではなかろうか。

 

 こうしてマンションの中に入り、エレベーターで10階まで登った彼は、遂に発目が住んでいる一室の玄関前に立った。

 

 

「さあさあ、ここが私の家ですよ。遠慮せずにどうぞ上がってください」

 

 

 そう言われて家にお邪魔した彼を待っていたのは、壮年の男女2人。発目の家は両親と発目の家族3人暮らしだと聞いているので、この2人が発目の両親と見て間違いないだろう。

 

 彼は2人に対して丁寧にお辞儀すると、挨拶と共に事前に用意していた菓子折りを取り出した。

 

 その菓子折りを受け取った発目の両親は、柔和な笑みを浮かべてお礼を言うと、丁寧なお辞儀と挨拶で快く彼を迎え入れる。

 

 

「こちらこそ初めまして、いつも明がお世話になっております。父の明良(あきら)です」

 

「母の明理(あかり)です」

 

 

 明良に明理。発目の下の名前が明だから、家族揃って明るい名前をしている。雰囲気とかではなく、名前の文字そのものが。

 

 とりあえず色々と突っ込みたくなるような名前は一旦置いて、挨拶を済ませたので靴を脱いで家に上がる。

 

 奥に進むと広々としたリビングがあり、ダイニングテーブル、ソファー、大型テレビなど、多くの家具家電が置かれていた。マンション自体もそうだったが、家具家電も高級感溢れる良い物を取り寄せているのが分かる。

 

 ざっと室内を見渡した感じ3LDKの贅沢空間で、外に出れば余裕でBBQが出来る広さのバルコニーもあり、ゆったり寛げる仕様となっている。

 

 これで3人暮らしだというのだから驚きだ。もしかしたら発目は案外お嬢様な所があるのかもしれない。そう思うと、殻木と初めて会った際に礼儀正しい振る舞いが出来ていた理由にも納得出来る。

 

 

「急にどうしたんですか? 1人でうんうん頷いて。何かあったんですか?」

 

 

 どうやら心の中の声がつい外にも出てしまっていたようだ。自重しなければ。彼は気を引き締めた。

 

 こうして発目の実家にお邪魔した彼は、その後両親が作ってくれた晩御飯を食べ、シャワーを浴びて心も体もリフレッシュすると、そのまま発目の部屋に入った。

 

 何でも3つある部屋の内1つは物置部屋として使用しており、客室としては全く使えないとの事。そして、残りの部屋の内1つは発目の両親の寝室として、もう1つは発目の自室として使われていた。

 

 だから必然的にリビングで雑魚寝する事になると、彼はそう考えていた。

 

 だが……。

 

 

「いやいや、せっかく来て頂いた客人、それも娘と1番仲の良いクラスメイトをリビングで雑魚寝させるのは流石に申し訳ないよ」

 

 

 という理由で、娘の部屋のベッドで一緒に寝てどうぞと発目の両親から声が上がったのだ。

 

 発目自身も特に反論は無く、両親の意見はびっくりする程すんなり通った。

 

 だが、いくら仲の良い友人とは言え異性を年頃の1人娘と同じベッドで寝かせるなど、親として果たしてそれで良いのだろうかと彼は疑問に思った。

 

 更に解せないのは、物置部屋に入った時に客人用の寝具を見つけたのだが、何故かそれを使わずに発目の部屋のベッドで寝るのを勧められた事だ。ベッド自体はダブルベッド並みの広さなので、寝る分には大して問題無いのだが。

 

 極め付けに、部屋に入る直前で両親から「これからも末永く、娘と仲良くしてやってください」と、笑顔でサムズアップされたのだから余計に困惑している。

 

 こんな事、本来なら既成事実の1つ2つ出来てしまってもおかしくないほど危ない橋だ。一緒に寝る相手が峰田の様な性欲の権化だったら、それはもう大変な事になっていただろう。

 

 そんな事を思いながら発目が使うベッドに腰掛けた彼は、今日の朝からずっと維持し続けていた超サイヤ人の変身を解いた。寝る時だけは流石に変身を解くようにしているのだ。

 

 そしていきなり変身を解いたので当然の事だが、金髪碧眼の逆立った髪型からいつもの黒髪黒目に戻る瞬間を、隣に座る発目も目撃していた。

 

 

「……えっ? ちょ、ちょっと待ってください。何ですか今の? 今、あなたの容姿が金髪碧眼から一瞬でいつもの黒髪黒目に変化したように見えたのですが……私の幻覚ですかね? あの、出来る範囲で良いので説明……してくれます?」

 

 

 もちろんそのつもりだ。そのつもりで、わざわざ目の前で変身を解いた。

 

 今日の昼、病院前のバス停で会った時に、説明が長くなるので後で詳しく話すと伝えた。

 

 だから今、寝るまでにまだ時間もあるので詳しく話す事にしたのだ。雄英校内で最も信頼している、彼が両親以外で唯一と言って良いほど心を許している発目になら、正直に教えても良いと判断して。

 

 とはいえ、何としてでも絶対に隠しておきたい話というわけでもない。何かの拍子で世間に詳細がバレたとしても、それはそれで構わないと思っている。そんな程度。

 

 そういう事なので、寝るための睡眠導入剤代わりに聞いてくれたらそれで良い。

 

 その旨を発目に伝えたところで、彼は超サイヤ人について詳しく話し始めた──。

 

 

 




最近リアルの生活が忙しくなってきたし、9月なのにまだ外は暑いしで大変っす。これを読んでいる読者の皆さんも体調を崩さないように気を付けてね。
ちなみに発目の両親の名前は独自設定、この物語限定です。
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