サイヤ人 in ヒロアカ 作:H & J
主人公の影響でヒロアカ原作と比べて随分と違う日々を送る発目が、真面な寮生活を果たして送るのであろうか……。
8月も残り2週間を切った、とある夏の日。
雄英高校の敷地内、校舎から徒歩5分の場所にて。
「おー、ここが私達の新たな住居ですか! 確か『ハイツアライアンス』でしたっけ? 思っていたよりも大きくて広そうじゃないですか!」
雄英の校舎近くに建てられた築3日の新居を前にして、発目が感嘆した声を上げる。
殻木との治療液開発も半ば強制的に一区切り打つ事となった彼と発目。京都から雄英に戻った2人は、1年H組のクラスメイト達と共に新築の学生寮に来ていた。
そんな彼らの前に立っているのは担任のパワーローダー先生。
「えー、皆おはよう。クラス全員、元気にまた集まれて先生はほっとしているよ。それじゃあ早速だが、中に入って説明するからついて来い」
再会の挨拶も程々に済ませ、寮に入って内装の説明を1つ1つ丁寧に行う担任。
その後を追う形で寮内の様々な設備を見て回るクラスメイト達は、新築故の清潔感と予想以上の広さに歓喜と驚愕の声を上げる。
和気藹々とした空気の中、パワーローダー先生が各生徒の部屋割りを記載したプリントを見せてきた。
「えーと、どれどれ……私が女子棟の5階で、あなたが男子棟の5階ですね。というか位置的にお向かいさんじゃないですかこれ」
一体どういう偶然か、彼と発目の部屋は最上階のちょうど向かい合う位置にあった。とても近い位置関係にある。
こんな偶然もあるんですねと発目が呟いていると、それを聞いていたパワーローダー先生が2人にヒソヒソと話し掛けてきた。
「同じ階で、しかもお向かい同士だ。凄く近い位置に部屋があると思うだろう? でも実は近いように見えて結構遠いぞそれ」
その言葉を聞いて、どういう事かと詳しい説明を求めた。
曰く、女子棟と男子棟は1階の共同スペースでしか繋がっていないから、反対側の部屋に行くには、わざわざ1階まで降りる必要があるとの事。つまり最上階に位置する2人の部屋は、その分だけ行き来に時間と労力が必要になる。
そして最近、2人とも仲睦まじいのは良いが、敷地内であまりいちゃいちゃするのもどうかと思ったのと、いつか不純異性交遊と他の先生に思われるリスクを考慮して、先生が独断で2人の部屋の距離が遠くなるように変えたという。真正面にしたのはせめてもの情けだとも。
そんな先生の話を聞いて妙に納得した表情を見せる2人。
何もそこまで気を遣う必要はないが、何だかんだ言って先生も色々と考えて配慮しているのだなと彼は内心思った。
そんな事をしても大して効果は無いのだが。
「よし、説明も大体済んだし今日はここらで解散だ。各自残った時間で部屋作っておけ。終わったら好きに過ごして良いからな。明日また今後の動きを説明する」
「「「「はい、先生!」」」」
「うん、良い返事だ。それじゃあ俺は校舎に戻るから、用があったら電話してくれ。また明日なー」
全ての説明を終えたパワーローダー先生が、学生寮を後にして校舎に戻って行く。その姿を確認したクラスメイト達は各々部屋に赴き、部屋作りに取り掛かった。
彼もその例に漏れず。部屋に入り、早速鞄からホイポイカプセルを数個取り出すと、スイッチを押して床に放り投げる。
ポンという軽快な破裂音を鳴らして煙を出すと、生活に必要な家具や衣類、電化製品や大量の食材といった多種多様の物がその場に出現した。
それらを部屋の各所に持ち運んであっという間に整理整頓を済ませると、また鞄からホイポイカプセルを数個取り出しスイッチを入れる。
次にカプセルから出てきた物は、アイテム開発に必要な工具や機械等の設備一式。元々は彼の実家の自室にある道具類その他諸々を、カプセルに詰めて持ってこれるだけ大量に持ってきたのだ。普段家にいる時はこれらを駆使し、色々なアイテムを作り出している。
だが、学生寮の部屋の広さは実家の部屋と比べて何倍も狭い。この広さでは精々工具箱と製図台を置くのが限界で、それ以外の物は室内を余計に圧迫するだけの邪魔物でしかない。しかし使う気で持ってきた以上、どうしても設置するスペースは欲しい。
ならばどうするか? 答えは簡単、
『もしもし、発目です。こちらもちょうど部屋を作り終えました。いやー、あなたがホイポイカプセルを貸してくれたおかげで作業が楽ちんでしたよ。ありがとうございます』
タイミングが良いのか、発目から部屋作りを終えたという電話が入ったので、次の作業に取り掛かる事にした。
『それじゃあ早速始めましょうか。とは言っても、あなたの力があれば割と数時間で済む作業ですけどね。恐らく今日中には問題無く終わるかと』
──それはハイツアライアンスに到着する直前の事。
間違いなく学生寮の部屋は十分な広さが無いと予想していた彼は、実家から持ってきた数々の設備一式をどこに置くのか、雄英に向かう道中で少し考えていた。
そして数秒の思考で閃いたのだ。スペースが無いなら作れば良いだけだ、と。
それを発目に相談すると……。
『良いですね! では増設しましょう!』
このような返事が来たので、引っ越し初日に大規模な増設を行う事が決定したのだ。
このようなやり取りを経て、現在彼は部屋を出て廊下に立っている。外に面する廊下の壁はガラス張りとなっており、反対側にある女子棟の廊下が良く見える。部屋から出てきた発目が笑顔で手を振っている姿もばっちりだ。
そんな廊下の、自室のドアの真正面に位置する1枚の窓に、彼は左手を押し当て気を込めた。
すると、窓ガラスが1枚丸ごと綺麗に切り取られ、そのまま最上階から地面に落下するかと思いきや、シャボン玉の様にふよふよと空中に浮かぶ。
普通ではまずあり得ない怪奇現象。目の当たりにした発目が目を見開く中、窓から飛び出した彼は正面にある女子棟の窓にも手を押し当てると、これまた簡単に切り取って回収した。
「あんなに大きな窓ガラスが風船みたいに……気という物は本当に摩訶不思議な力ですね」
目の前で気を駆使して工事を進める彼に、感嘆の声を漏らす発目。
期末試験でスカウターを製作した時から気の存在を認知している彼女だが、それでも気というエネルギーの可能性には毎度驚かされるばかりだった。
そんな発目に、その気になれば相手の記憶を読み取ったりテレパシーを行ったり、その技術を応用して格下の相手になら精神世界に干渉する事も可能だと彼は伝えた。
「マジですか? 気ってそんな事も出来るんですね。もうこれ個性の完全上位互換じゃないですか。出来る事が多すぎますよ」
否定はしない。だが少しだけ違う。
個性も高い戦闘力を有する者が使えばその分強力になるし、サイヤ人の彼にだって当然通用するレベルの物へと変貌する。だが、この星に生きる住人とサイヤ人である彼との戦闘力に雲泥の差があるため、どうしても気は個性の上位互換にあると見えてしまうのだ。
ただ利便性と汎用性という点では個性を軽く上回っていると自負しており、実際その通りなので発目の発言もあながち間違いではない。
廊下の窓を次々と剥ぎ取り、予め持参していた大量のホイポイカプセルを取り出しながら、彼はそう思った。
「さあさあ、工事はまだ始まったばかりですよ。力仕事とか大体の工程はそちらに任せますが、こちらも出来る限りの手は尽くしますので」
発目に急かされるままにカプセルから取り出したのは巨大な金属の塊。他にも建設に必要な材料は一式、それも十分すぎる量を取り揃えている。
これらを使って今から増設する物、それは工房である。
雄英の校舎内にも立派な工房は存在するが、わざわざ学生寮から校舎まで向かうのは割と億劫なもの。出来る事なら自室から近い場所にも工房が欲しいのだ。もっと言えば、寮を改造して好き勝手したいのが本音である。特に深い理由はない。
以上の動機の元、彼は身体から発した気を駆使し、様々な資材を遠隔操作する事で一気に組み立てていく。傍から見れば、大量の金属の塊が縦横無尽に空中を飛び回っているように思えるだろう。
その光景はまさに圧巻。2人のしている事に気付いた他のクラスメイト達が驚きと興奮に声を上げる。
「おお、2人ともまた何かやってるねぇ! 寮に行っても相変わらずだな!」
「面白そうだしウチらも行ってみようよ! 先生が見たらびっくりするよ!」
「いや、確かにそうかもしれないけど、これ大丈夫かな……後で怒られたりしないよね?」
「しっかしまあ、あいつの個性マジで強いよな。逆に何が出来ないんだろ?」
「本当にな。ヒーロー科に居たら今頃とんでもないヒーローになっていただろうに。……まあ、考え方は人それぞれってやつだな」
「とりあえず言える事は……あの2人本当にマジで頭おかしい」
「「「「それな」」」」
頭がおかしいという割には止めもせず、それどころか2人の作業を手伝おうとノリノリで現場に集まり始めた時点で、サポート科1年H組に真面な人はいない。
非常に悲しい事だが、現在クラスメイト達は彼と発目のやる事成す事にいつの間にか慣れてしまい、その結果すっかり感性が狂ってしまっている。担任のパワーローダー先生が浮かばれないが、こればかりはどうしようもない。
こうして2人で始めた増築工事は、いつの間にかクラス総出での大規模工事へと発展し、その賑わいは日没まで続く。
「…………やっと、やっと完成しましたね。最初は5階部分のみの増設、それも簡易的な工房のはずでしたが……」
工事開始から数時間が経ち、ようやく完成した頃にはすっかり日は暮れていた。
発目の言葉通り、当初の考えでは2人の部屋を繋ぐ新たな通路と工房のみを作るはずだった。
しかし期せずして、クラスメイト全員が興味本位で参加した事により、あれよこれよと色々な物が更に追加で建てられた。そして最終的に、1階から5階までの高さを誇る、寮とは別の大きな棟が中庭に建つ結果となった。
これには彼も発目も、そしてクラスメイト達も、協力して1つの大きな物を作り上げた達成感と高揚感で歓喜に震える。
「おおー! 出来たー!」
「すっげぇぇぇぇ! でけぇぇぇぇ!」
「俺らもやれば案外何とかなるもんだな!」
「力仕事は全部1人に任せっきりだったけど、ウチらはウチらでやれる事やったって感じ? みたいな?」
「とにかくこれを半日足らずで完成させたのはマジで感激だわぁ」
「パワーローダー先生どんな反応するかな? 怒るか呆れるか叫ぶか喜ぶか……喜ぶはなさそうだね」
「よっしゃ、記念に皆で写真撮っとこうぜ!」
誰かが発したその言葉に全員が賛同し、出来上がったばかりの超大型工房の前で記念にと集合写真を撮る。
他のクラスでは突然の引っ越しでストレスが溜まり、空気が悪くなる一方で、サポート科1年H組の生徒達だけは異様な賑わいと共に充実感を噛み締めていた。
一方その頃、ヒーロー科1年A組の学生寮にて。
引っ越し初日に開催された部屋王決定戦が無事終了し、その後神野事件に赴いた緑谷達5人組が蛙吹の本心を聞いて打ち解け合っている頃。
「……………………」
部屋王決定戦に参加せず早々に部屋に籠もった爆豪は、未だに寝付けずぼんやりと天井を眺めていた。その脳裏に浮かぶのは、敵連合のアジトで敵連合と打ち解け合い談笑する、とあるサポート科の同級生の姿。
個性伸ばしの訓練の最中、突如連合の襲撃に遭い攫われた爆豪は、極度の緊張状態を長時間強いられていた。
その時に突如現れた彼の存在に、爆豪も敵連合も驚愕したのは言うまでもない。何の前触れもなく姿を見せたのだから当然である。
だが、爆豪にとってはその後の事の方がもっと衝撃的だった。なんと敵連合のメンバーの大半を相手に、彼は余裕の態度を一切崩す事なくたった1人で完勝してみせたのだ。
(俺1人じゃどうしようも出来なかった奴らを、ああも一方的に……)
ヒーロー科A組・B組が総力を挙げて戦ったにも拘わらず、それでも命懸けで退けるのが精一杯の精鋭達。それが敵連合に対する強さのイメージだった。
しかし現実は非情である。ヒーローでもヒーロー科の生徒でもない、同じ学年のサポート科の生徒1人が、自分達が苦戦を強いられた相手を一方的に追い詰めていた。
一切触れる事なく、近付く事すら許さず相手の動きを拘束。燃え盛る炎を顔面に浴びても全くのダメージ無し。ワープゲートを蹴り飛ばすという奇想天外な対処方法。肉体を圧縮されても優勢を保ち、圧倒的な実力差で逆に相手の戦意を挫く。
天下のヒーロー育成機関である雄英高校を幾度となく襲撃し、社会を震撼させた敵連合。そんな連合メンバーが次から次へと呆気なく倒されていったあの衝撃を、爆豪は生涯忘れないだろう。
(ちっ、クソが……)
そして神野事件の前夜に彼が起こした出来事を、爆豪は未だ誰にも伝えていない。クラスメイトにも、教師にも、家族にも。そして憧れのヒーローやムカつく幼馴染にも。
今回の事は誰かに言い触らしても構わないと彼に言われてはいるものの、爆豪は何故かあまりその気になれなかった。漠然とした理由だが、とにかく他の人に伝えようという気力が湧かないのだ。
勿論、そんな事はヒーローとしてあるまじき行為。オールマイトをも超えるヒーローを目指す爆豪としても、そこの所はしっかりと自覚している。それでもやはり、結論は変わらない。
(……俺はこんなにも弱かったのか? ジーニストを瀕死に追いやって、オールマイトまで終わらせて……クソが……)
それからしばらくして、今はこれ以上考えてもどうしようもないという結論に至り、今日はもう早く寝ようと目を瞑る爆豪だった。
しかし、その日の夜は中々寝付けなかった。
そして翌日、校舎内の工房にて。
学生寮の中庭に建てられた巨大な工房を目の当たりにして、様子見に来たパワーローダー先生が案の定発狂して倒れたその後。
発目はパワーローダー先生と共に、アイテム開発に勤しんでいた。
「いやー、先生きっとびっくりするだろうなとは思っていましたが、まさかいきなり叫んで気絶するとは予想外でした。あれそんなに衝撃的でしたか?」
今朝、いきなり担任が倒れる瞬間を目撃した発目が、当時の状況を思い出したのか、茶化すような笑みを浮かべて尋ねる。
だが、尋ねられた当の本人にしてみれば全く笑える状況ではない。
「衝撃的も何も、まさか引っ越し初日にあれをクラス総出で建てるとか普通思わんだろ。お陰様で俺の仕事がまた1つ余計に増えたよ。というかどうするんだよあの建物……校長先生あれを見て唖然としてたぞ。俺、あんな顔する校長を見たの初めてなんだが」
「それはそれは……悪い事しましたね。校長先生には後で菓子折りでも持って詫びに行きましょうか先生」
「悪い事したってお前……その原因を作った奴が今更何を言っているんだ白々しい。というか、何で俺も謝りに行く前提なんだよ。一緒に行くの俺じゃないだろ」
発目の言葉に即座に反論するパワーローダー先生。
今回の騒動のそもそもの原因を作った、雄英始まって以来の1番の問題児の顔を思い浮かべ、先生の表情がより一層暗くなる。
ここ数ヶ月で数々の問題を起こしている彼と発目の存在は、パワーローダー先生のストレスを急増させる最大の要因となっており、胃を痛めては溜め息を吐く日々が続いている。
サポート科の教師として、2人のアイテム開発の速度と技術の高さ、発想の自由度などは目を見張る物があり、実力自体は高く評価している。だが、それらの長所を打ち消して余りあるデメリットの存在が全てを台無しにしている。
黙って大人しくしていれば何も言う事はないのだが、それがどれほど困難で高い壁か。加えて最近では、そんな2人の自由奔放さに影響されたのか、周りのクラスメイト達も徐々に行動に躊躇がなくなっている傾向にある。悪い方向に向かっているのだ。
それが顕著になったのが昨日の大規模増設工事。始めは2人のみの工事が、いつの間にかクラスメイト全員での工事に発展し、最終的に巨大な工房が中庭に建つ結果となった。これには先生も頭を抱えており、緊急性の高い目下の課題となっている。
「で、肝心のあいつはどこに行ったんだ? 昼になって工房出ていったけど、いつになったら戻って来るんだか。もう4時間は経ってるぞ」
「ああ、彼なら今寮に戻っていますよ。言ってませんでしたっけ? 多分、今日はもうここに戻らないと思いますよ」
クラスの問題児が昼を過ぎてから工房にいない事に疑問を持ったパワーローダー先生が尋ねると、発目から意外な答えが返ってくる。
常に訓練があるヒーロー科と違い、普通科やサポート科などはまだ夏休み中という事もあって校舎に行くか寮で寛ぐかは生徒の自由となっている。よって校舎に来る生徒の数は全体で見れば非常に少ない。
だが、いつも工房に籠もってはアイテム開発に没頭していた彼がいないというのは相当に珍しい事態。これには先生も予想外で面食らっており、一体何があったのだろうと気になり続けて質問を飛ばす。
「いや、今日はもう戻って来ないってどういう事だ? あいつに限ってそんな事あるのか? 急にどうした、何か変な物でも食べたのか?」
「先生は彼を何だと思っているのですか? まあ、その気持ちは分かりますが……」
生徒に対する担任の散々な言いように、発目は若干呆れた表情になるものの、その気持ちに肯定しつつ質問に答える。
「本人曰く、どうやら寮に戻って────あっ」
「へっ……?」
だが、質問の答えは発目の素っ頓狂な声によって途切れ、それを聞いたパワーローダー先生も間の抜けた声を上げる。
そして次の瞬間──。
「「どわひゃああああああああっ!?」」
開発工房内に爆音が轟き、衝撃波と熱波が押し寄せる。
またしても発目がしくじった事で、アイテムが異常を来し爆発を起こしてしまったのだ。その影響で近くにいた発目とパワーローダー先生は、回避する間もなくものの見事に吹っ飛ばされる。
工具はあちこちに散乱し、作りかけのアイテムは爆発により黒焦げ、工房内は黒煙に塗れ、分厚い金属製の扉は形を歪め廊下に倒れた。
やがて煙が収まり、視界が良好になったところで起き上がった先生が声を荒げる。
「ゲホッ、ゲホッ……お前なぁ! 思い付いた物を何でもかんでも組むんじゃないよ!」
「フフフフフ、失敗は発明の母ですよパワーローダー先生。かのトーマス・エジソンが仰ってます。作った物が計画通りに機能しないからといって、それが無駄とは限らな……」
「今そういう話じゃないんだよぉ! 1度で良いから話を聞きなさい! 発目!」
「まあまあ、そう声を荒げないで……おや?」
怒鳴られるも全く反省する様子を見せない発目に、もはや怒りを通り越して泣きたい感情が湧いてきたパワーローダー先生。ここまでくると可哀想になってくるが、そんな先生には目もくれず、発目は自身の胸に妙な感触を覚えて前を向いた。
するとそこには、発目の下敷きになる形で仰向けに倒れている緑谷がいた。すぐ側には麗日と飯田が唖然とした表情で発目を凝視している。否、正確には発目のある一点に3人の視線は集まっている。
16歳の少女のものとは思えない、発目が持つ非常に豊かな2つの双丘に。
それらが緑谷の硬く筋肉質な胸板に、変形して潰れそうなほど押し付けられている。これにより、女子と真面に触れ合った経験のない緑谷の緊張が、一気に極限まで引き上げられた。
「あれ!? あなたは何時ぞやの!」
(あ、あが、あががが……お、お、おっ……!)
(……っぱい!)
緑谷と麗日の、2人の思考が見事に重なり合った瞬間だった。
まあ、この2人が寮生活するとなったらこうなるかなと思って書きました。
発目単体だと、原作通り工房に籠もって爆発騒ぎを起こすだけでしたが、如何せんもう1人による影響がねー。
……さて、第3章もようやく終わりが見えてきましたね。