サイヤ人 in ヒロアカ   作:H & J

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文化祭に向けて準備していたら、突然パワーローダー先生と一緒に外出する事になった主人公と発目の2人。
メディカルマシーンを使いたい相手がいるとの事だが、その人物とは一体……。


第34話 メディカルマシーン

 突然治崎が逮捕されたという衝撃が抜け切らないまま、パワーローダー先生の車に乗って走り続けること30分と少し。

 

 実家にも寄りつつ、かなりのスピードを出して向かった場所はとある大学病院。実家からもそこそこ近い場所にあるこの病院内に、今回2人を呼び出した人達はいた。

 

 

「あっ、来た! やっと来てくれた! ああ、いきなり呼んでごめんね! でも今緊急事態で……!」

 

「俺からもお願いしたい! 頼む! サーに死んでほしくないんだ! だから……!」

 

「私も彼に言わなくちゃならない事がまだたくさんある! だからお願いだ少年少女、勝手な我儘だがナイトアイをどうにか救って……!」

 

「こらっ! 3人とも落ち着きなさい!」

 

 

 病院の入口で待っていたのは4人。

 

 緑谷、オールマイト、リカバリーガール、そして名も知らない金髪の青年。その内の男性3人が涙目になりながら一気に詰め寄ろうとした所を、リカバリーガールが後ろから杖で叩いて落ち着かせる。

 

 カツンッ! と響く乾いた音を聞きながら、彼と発目はリカバリーガールの方に視線を向けた。

 

 

「いきなり呼び出して悪かったね。本来なら私がどうにかしなきゃならないんだが、いかんせん事態が事態でね。悔しいが、今回は私じゃどうにもならなかったのさ」

 

「いえ、別にそこまで謝る事はありませんが……それで、メディカルマシーンが必要な方はどこに?」

 

「……確かに、今は謝ってる場合じゃなかったね。急いで患者のいる部屋まで案内するよ」

 

 

 発目に催促され、リカバリーガールを先頭に全員で患者のいる病室まで向かう。その間、初対面の金髪の青年と互いに自己紹介した。

 

 

「2人とも初めましてだね! 俺はヒーロー科3年の通形ミリオ。ヒーロー名はルミリオン! 先輩だからって堅苦しくしなくても大丈夫! 気軽に接してね! よろしく!」

 

「こちらこそ初めまして! 私、サポート科1年の発目明と申します! よろしくお願いしますミリオさん!」

 

 

 先程までの切羽詰まった表情と違い、落ち着きを取り戻したのか笑顔でフレンドリーに接してきた。とても明るく振る舞っており、非常に親しみと好感が持てる。こちらとしても接しやすいのでありがたい。

 

 こうして軽く自己紹介を済ませていると、前を歩いていたリカバリーガールの足が止まった。どうやら目的の部屋に着いたようだ。

 

 

「着いたさね、この部屋だよ。ほら、お入り」

 

 

 案内されるがままに病室へ失礼すると、まず目の前にいたのはヒーローと思しき2人の男女とイレイザーヘッドこと相澤の計3人。

 

 その更に奥にこの病院の医師と看護師の数名、中心に人口呼吸器と大量の管に繋がれた男がベッドで横になっている。

 

 目的地に着いた来たところで、まずは一体どういう状況なのか詳しく説明してもらおう。

 

 

「来たか2人とも。すまんな、急に呼び出して。早速だがメディカルマシーンってやつを用意してほしい。詳しい説明は俺からするよ」

 

 

 室内にいた相澤からそう言われ、早速メディカルマシーンの準備に取り掛かる事に。

 

 ポケットからホイポイカプセルを幾つか取り出すと、それを室内の空いたスペースに投げて中身を展開。軽快な破裂音と共にマシーンの本体と要の治療液が入ったケースが出現した。

 

 背後から緑谷達が「おお……!」と感嘆の声を上げる中、発目と2人でテキパキと組み立てる。

 

 

「まず、今回治療が必要なのはサー・ナイトアイというヒーローだ。その人がさっき死穢八斎會との戦闘中に腹を貫かれてな。それで今、危険な状態なんだ。

 で、俺の隣にいるこちらの2人がナイトアイのサイドキック、バブルガールとセンチピーダーだ」

 

「センチピーダーだ、よろしく」

 

「よろしくね、2人とも!」

 

 

 簡潔に話す相澤の声の後、2人の挨拶が聞こえたので一瞬だけ振り返ると、ムカデのような頭部をしたスーツの男と青肌の女性が柔和な笑みを浮かべていた。

 

 だが、よく見るとその表情は若干強張っていた。緊張が滲み出ている。無理をして笑顔を振る舞っているのが明らかだった。とても不安で気が気でないという感情。

 

 今、虫の息となっているサー・ナイトアイというヒーローは、それだけ周囲の人達に慕われているという事だ。

 

 

「ここまで準備しておいて今更ですが、本当にメディカルマシーンをその人に使っても大丈夫なんですか? これ、まだ世間に公表していない物ですけど、それって医療従事者の観点から見てどうなんでしょうか、リカバリーガール先生? あと、そこにいるお医者さんも」

 

 

 ナイトアイとサイドキック達との関係性を推察していると、マシーンの準備を進めている発目がいきなり尋ねた。

 

 ほぼ完成品とはいえ完璧というわけではない医療機器を使っての治療。しかもそれを操作するのは齢16の学生2人。

 

 確かに、これからやろうとしている事は正直言って不味い。何がとは言わないが、色々と不味い。これで仮に治療失敗で亡くなってしまったら、後々面倒な事になるのは間違いない。

 

 だが、リカバリーガール達の反応は意外にもあっさりしたもので……。

 

 

「このまま延命措置を行ったところで焼け石に水。どう頑張っても明日を迎える事は絶対に適わない。ならば、一縷の望みに賭けてみたくなったのさ。私も、ナイトアイには死んでほしくないからね……」

 

「確かに発目さんの言う通り、医療従事者としての立場で考えると、助からないからといって学生に任せるのは駄目です。

 ただ、やはり目の前で死にゆく一方の患者を診るのは、その……色々と心にくるものがありましてね。完全に私情ですが……」

 

 

 どうやら駄目なものは駄目という事はしっかり自覚しているが、助かる可能性があるならやはり死んでほしくないという思いらしい。

 

 人の死と幾度となく向き合う医療従事者でも、慣れないものはどうしても慣れないのだろう。時にはこういう私情で動く事も大切なのかもしれない。

 

 そうこう話している内に、メディカルマシーンの設置がようやく完了した。

 

 

「これが…‥メディカルマシーン……」

 

 

 誰かのぼそっと呟く声が耳に入る。

 

 見た目は完全に原作のドラゴンボールに登場したメディカルマシーンそのもので、人1人が入れる治療カプセルの中に呼吸器が取り付けられている。

 

 他にも患者の状態を診るために、バイタルサインを測定するための装置や脳波測定器などの機器も搭載しており、仮に異常が起こったとしてもすぐに対応する事が可能だ。

 

 これを使って、今から本格的な治療を行う。

 

 サー・ナイトアイの負傷はかなりのものだが、それでもメディカルマシーンの回復性能なら概ね問題はない。実際に使ってみないと分からない部分はあるが、それでも早ければ1時間、遅くても3時間あれば完治するだろう。

 

 さあ、やってやろうではないか。

 

 

「さあ、準備は終わりました。それでは今から治療に入ります。まずはナイトアイさんに着けている呼吸器と管を全部外して、カプセルの中に移動させます。その間は時間との勝負です」

 

「「「はい、分かりました」」」

 

「それと、治療に関係ない方は一旦部屋から出て行ってください。治療の邪魔なので」

 

「「「あっはい」」」

 

 

 というわけで、発目の言葉を皮切りにナイトアイの治療が始まった。

 

 メディカルマシーンの目の前まで移動させたナイトアイの傍に、治療に携わる者全員が集まる。

 

 そして医師と看護師協力の下、ナイトアイの身体と繋がっている管を全て抜き取り、身体中に巻かれている包帯も取り除く。

 

 

「ナイトアイさん、少しの間しんどいですが頑張ってください」

 

「全て外しました! 出血を抑えて! 行きますよ、せーのっ!」

 

「慎重に慎重に! 極力負担のかからないように!」

 

「はい大丈夫です! 呼吸器着けて!」

 

「セット完了、カプセル閉じます! 皆さん急いで離れてください!」

 

 

 ものの30秒もしない内に取り外しからセットまでの工程を全て完了させ、メディカルマシーンのカプセルを閉じていく。

 

 ある意味で最も死ぬリスクが高い工程を何とか切り抜けたところで、次の治療液でカプセル内を満たす工程に急いで移る。

 

 

「では治療液を投入します。損傷の酷い腹部を重点的に治癒するように設定して……スイッチON!」

 

 

 専用のタブレット端末を操作しながら治療開始のボタンを押す。

 

 するとみるみる内にカプセル内が翡翠色の液体で満たされ、瀕死のナイトアイを優しく包み込んでいく。

 

 やがて頭部まで完全に浸かり切ったところで、治療液の投入を止めてタブレット端末をテーブルに置いた。

 

 

「……はい、これでひとまず終了です。後は心拍数とか脳波をチェックしながら、何か異常があれば適宜対応する感じですね。

 まあ、3時間もあれば完治すると思いますよ」

 

「えっ、嘘……もう終わり? しかも3時間で完治? あの大怪我で……?」

 

 

 発目の発言に驚愕する看護師の声が聞こえた。

 

 今までの医学の常識では到底考えられないので、そのような反応をするのも当然と言える。ただし、まだ完全に終わったわけではないから油断は出来ない。

 

 しかもドラゴンボールに出てきた本家メディカルマシーンだと、旧式タイプでも1時間もしない内に傷を癒せるのだが、今回は残念ながらそこまでの性能には至らなかった。肝心の治癒性能は本家と遜色ないのだが、その分時間が倍以上掛かる。

 

 ナイトアイの治癒が終わった後は治癒時間の短縮にも力を入れようか。

 

 

「これでナイトアイの怪我が治ったら凄い事さね。雄英でも使われるようになれば、私も安心して老後を過ごせそうだね」

 

「これ、学生2人でどうやって作ったのか疑問でしたけど、製作にあの殻木先生が携わっているんですね。それなら納得ですよ」

 

「す、凄い……これが雄英高校サポート科……!」

 

 

 治療が終わるまでの間、リカバリーガールと病院の医師達の会話を聞きながら、発目と2人でメディカルマシーンに不調が出ていないかチェックしながらデータ収集に徹した。

 

 そうこうしている内に時間は流れ、あっという間に3時間が経過して……。

 

 

「……よし、そろそろ良い感じですかね。じゃあマシーンを止めてナイトアイさんを出しますか」

 

 

 もしもの事があればすぐにでも機器を止めてナイトアイを出す予定だったが、それも杞憂に終わった。

 

 3時間が経過した今、カプセル内で治療液に浸っているナイトアイに傷は一切見当たらない。背中まで貫通していた腹部の大怪我も3時間の間ですっかり塞がっており、6つに割れた引き締まった腹筋を露わにしている。

 

 

「ほ、本当に3時間で治った……革命だ」

 

 

 ナイトアイの容体を見てもう大丈夫と判断し、再びタブレット端末を操作してカプセル内の治療液を抜いていく。

 

 それからカプセルを開けて呼吸器などを看護師達に取り除いてもらい、身体を拭いて病衣に着替えさせる。

 

 そこでようやくナイトアイが目を覚ました。

 

 

「……ん、ここは……それに私は一体……?」

 

「おはようございますナイトアイさん、九死に一生を得た感想はどうですか? 突然ですが、あなたの負っていた怪我は全て治りました」

 

「君は……」

 

「私は発目明。雄英高校サポート科の1年です、よろしくお願いします。早速ですが、今の状況について軽く説明しますね」

 

 

 目を覚ましたばかりのナイトアイに簡潔に自己紹介を済ませると、今の状況について簡単に説明する発目。

 

 所々省略しながらの大雑把な説明だったが、ナイトアイの理解力は非常に高く、すぐに状況を把握してくれた。自身の怪我が完治した事も含めて。

 

 

「……そうか、私は助かったのか。潔く死を受け入れる覚悟でいたが、ギリギリのところで……そう言えばオールマイトは? 意識が無くなる直前でオールマイトと話をしたんだが、今あの人はどこに? それにミリオと緑谷も」

 

「ああ、その3人なら部屋の外で待機していますよ。あなたのサイドキック2人も一緒です。今呼ぶのでちょっと待っててください」

 

 

 そう言って発目が部屋のドアを開ける。

 

 すると、慌ただしく駆け寄る足音が複数聞こえ……。

 

 

「ナイトアイ! ナイトアイは無事で……ッ!! ナイトアイッ!!」

 

「サーが生きてる! 本当に治ったんだ! やったぁぁぁぁー!!」

 

「うああああああああん! サーが無事で良がっだぁぁぁぁぁぁ!」

 

「バブルガール、ハンカチを貸すからこれで拭きなさい」

 

 

 緑谷、ミリオ、バブルガール、センチピーダーが部屋に入り、完全に回復したナイトアイの姿を見るや否や、一斉に駆け寄り涙ながらに喜びを露わにする。

 

 

「「失礼します」」

 

 

 その4人の後に続いて部屋に入ったのは相澤とオールマイト。先に入った4人の喜ぶ声を聴いて、この2人もナイトアイの治療が成功に終わった事を理解していた。

 

 オールマイトは薄らと目に涙を浮かべており、それでいてとても晴れやかな笑顔を見せている。

 

 そして、部屋に入って来たオールマイトとそれに気付いたナイトアイ、両者の目が合う。

 

 

「……本当に無事で良かったよ、ナイトアイ」

 

「あなたこそ、元気でいてくれて良かった、オールマイト」

 

 

 2人の笑顔が弾けた。

 

 

 


 

 

 

 サー・ナイトアイを治療してから数日後の事。

 

 

『そうかそうか、成功したのか! そりゃ良かった! 3人で苦労して作った甲斐があったわい!』

 

 

 とある場所へ向かう車の中、彼は蛇腔総合病院にいる殻木にナイトアイの治療の件を報告していた。

 

 いきなりメディカルマシーンを使って治療したと聞き、最初こそ驚愕し動揺した殻木だったが、事の経緯と結果を聞いて安心したように笑い声を上げた。

 

 

『ナイトアイはその後、身体に異常は起きてないのかね? ……ふむ、なるほど。今のところ問題は無さそうじゃの。()()1()()の方も異常は無いようだし……ならば今後も引き続き観察を頼む。では切るぞ……』

 

 

 電話を切って軽く息を吐く。

 

 あれからというもの、死穢八斎會との戦闘で負傷したヒーロー達のほとんどは通常の治療で回復し、既に退院して帰路に就いている。

 

 雄英のヒーロー科も全員学校に帰っているのだが、その中でも通形だけは個性を失うというかなり特殊な傷を負ってしまったらしく、しばらくの間休学するとの事。

 

 それを聞いて、通形の個性もメディカルマシーンで治せないかどうか一応試してみたのだが、残念ながらナイトアイの様には上手くいかなかった。

 

 通形の個性が消された絡繰りは、どうやら外傷とは全くの別物という事が分かり、現状メディカルマシーンですらどうにもならなかったのだ。こればかりは今も入院して寝込んでいる壊理の個性次第だろう。

 

 そして肝心のナイトアイだが、治療した次の日になって「もうとっくに回復したので、早く死穢八斎會の事件の後処理をしに事務所へ戻る」と宣い、そのまま退院。

 

 今では数日前まで腹に大穴が開いていたとは思えないくらい元気に働いており、無事に社会復帰を果たしている。ただし、メディカルマシーンを使った事による異常が今後出ないとも限らないので、今もまだ容体の観察は続いている。

 

 

「……よし、着いたよ。まさか君をもう1度ここに連れてくる事になるとはね。頼むから今日は余計な事しないでくれよ?」

 

「へい少年、今日は奴と面会する時間とか無いから、そのつもりでね?」

 

 

 と、ここ数日の出来事を思い返している途中で声が掛かり、意識を外界に向ける。

 

 短い間に色々な事が起こったのだが、そんな彼は現在オールマイトと塚内警部、そして()()1()()を加えた計4人で再びタルタロスに来ていた。

 

 タルタロスに来たという事は当然囚人との面会に来たわけだが、今回の相手はオール・フォー・ワンではない。

 

 あっという間に手続きを済ませ、この前と同じくタルタロスの地下収容施設へ。

 

 タルタロスの地下は全部で30の階層に分かれているのだが、今から会う予定の囚人の部屋は最深部ではなく途中の地下20階。

 

 このタイミングで用がある囚人と言えば1人しかいない。

 

 

「……お前は、あの時の……今更俺に何の用なんだ……?」

 

 

 そう、死穢八斎會の若頭、治崎廻ことオーバーホールである。

 

 

 


 

 

 

 数週間ぶりに知人に会って、真っ先に目に付いたのは腕だった。

 

 肘から先の部分が両腕とも消失しており、どう考えても不便そうなのが見て取れる。

 

 そして何よりも注目すべきは治崎の表情。

 

 生気が一切感じられないのだ。出会った当初は柔和な笑顔の裏で鋭い眼光を放ち、野心と活力に満ち満ちていた。

 

 それが今では嘘みたいに消え去っている。まるで別人だった。

 

 そう言えば逮捕された治崎の護送中にその護送車を敵連合が襲撃して多大な被害を出したというニュースが流れていたなと思い出しながら、彼は改めて治崎と向き合った。

 

 

「……言っておくが、お前に話す事は何もないぞ。話す気もない。時間の無駄だ、帰れ」

 

 

 出会って早々この態度、これは相当な重症だ。

 

 どうやら会話の余地すらないらしい。

 

 

組長(オヤジ)……ごめんなぁオヤジ……俺がしくじったせいで、全て失っちまった……ごめん……」

 

 

 視線を下に向け、ただうわ言のように『組長(オヤジ)』と何度も呟き謝り続ける治崎。どうやら相当未練があるようだが、これはこれでちょうど良い。

 

 どう頑張っても会話の余地など無いし、治崎の言う通り話す事も無い。ただし、それは他の人だったらの話。

 

 実を言うと、今回治崎との面会を望んだ人は別にいる。

 

 まだここに来たばかりだが、落ち込んでいる治崎に早速サプライズゲストを紹介しよう。

 

 そう思い、彼は右手を挙げて合図を出した。

 

 

「ごめんオヤジ……本当にごめ────」

 

「謝るべき相手が他にいるんじゃねえのか、治崎?」

 

「────ッ!? その声は……!」

 

 

 ブツブツと謝る治崎の言葉を遮り、貫禄のある低い声が部屋中に響き渡る。

 

 それを聞いて誰よりも驚いたのは治崎だった。驚愕を露わにした顔で見上げると、そこにいたのは白髪でガタイの良い老齢の男。

 

 落ち着きと貫禄を兼ね備えたその風格は、まさに今まで生き延びてきた極道を纏める長に相応しく、威厳ある堂々とした立ち振る舞い。

 

 死穢八斎會の組長、ご本人様の登場である。

 

 

「な、んで……どうしてオヤジがここに……寝たきりだったはずじゃ……?」

 

 

 未だに動揺を抑えきれない治崎が、ガラス越しに目の前に立つ組長に尋ねる。

 

 一方で、見るも無残な姿に変わり果てた治崎を見て、組長は一瞬顔を顰めるも、その疑問に淡々と答えた。

 

 

「この坊やに治してもらったんだよ。寝たきりだった俺を、坊やが作った医療機器を使ってな。んで、お前がここに収監されていると聞いて、1度会って話がしたいと俺が頼んだのさ」

 

 

 ────今から3日前。

 

 ナイトアイが事務所に戻った後で、リカバリーガールから直々に頼まれたのだ。「死穢八斎會の組長と思しき寝たきりの老人を、メディカルマシーンを使って治療出来ないか?」と。

 

 話を聞けば、どうやら警察側が重要参考人として事情聴取をしたいらしく、しかし脳に原因不明の負傷があり寝たきりなので、現状どうにもならないとの事。

 

 リカバリーガールの個性で治せないのか尋ねたところ、人の自然治癒力を活性化させる事は出来るが、そこから逸脱した治癒までは不可能なようで、脳の負傷は治癒の対象外と言われた。

 

 というわけで、仕方がないしずっと寝たきりのままも何だか可哀想だと思い、発目と共にメディカルマシーンを使用して組長も治療したのだ。

 

 そして現在に至る。

 

 

「いきなりですまんが坊や、ちょっとこのバカと2人きりにさせてやくれねえか? 腰を据えて話がしてぇんだ」

 

 

 部屋に入るや否や、治崎と2人きりにしてほしいと懇願する組長。

 

 何やら色々と積もる話もありそうで、今回ばかりは部外者がここにいても会話の邪魔にしかならないと分かっているので、大人しくその頼みを聞く事に。

 

 面会時間は限られているけど、時間の許す限り2人で色々と話し合ってください。そう言って面会室を出て、オールマイト達のいる隣室へ移動する。

 

 そして部屋に残ったのは、ボロボロに泣き崩れる治崎と険しい表情をした組長の2人。

 

 2人がその後どんな言葉を交わしたのか。それは2人の名誉のためにも、今後ずっと内密にしておこうと思う────。

 

 

 




サー・ナイトアイは勿論なんだけど、寝たきりの組長もついでに治しちゃえ! みたいなノリでこういう展開になりました。

やったねオーバーホール! これで組長に謝罪出来るし、大人しく敵連合の活躍を黙って眺めていられるよ! これには組長さんもニッコリ!

そして次回から文化祭編です。個人的に早く第5章に入りたいのです……。

※主人公は自分に関する機密情報に対しては口が軽いけど、他人の秘密とかに関してはかなり口が堅いです。ただし場合にも依ります。
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