サイヤ人 in ヒロアカ   作:H & J

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お久しぶりです。モチベーションの低下とリアルが忙しくなったせいで、なかなか更新できてませんでした。

それでもこれからも何とか頑張って投稿していこうと思います。

では続きをどうぞ!



第36話 文化祭当日①

 病院で壊理と面会した日から更に日が経ち、あっという間に1カ月が経過した。

 

 来る人工衛星の打ち上げに向けて、発目と共に着々と準備を進めてきた彼は、遂に目的の物を完成させるに至った。

 

 そして文化祭当日。

 

 

『お待たせしました! それでは只今より、雄英高校文化祭を開催します!』

 

「「「「イエェェェェェーイッ!!」」」」

 

 

体育館の舞台上に上がった司会の宣言に、集まった大勢の生徒の歓声がどっと沸き上がる。

 

 

「いやー、遂に待ちに待ったこの日がやって来ましたか。楽しみですねぇ」

 

 

 鳴り止まぬ歓声の中、発目もまた身体を震わせてうずうずしている。

 

 今日この日のために入念な準備を進めてきたのだ。抜かりはない。むしろ中止にさえならなければそれで良い。そのための対策も既に済ませている。

 

 今はただ、全力で楽しもうではないか。

 

 

「そうですね。ひとまず舞台を楽しんでから、その後で最終調整に入りますか」

 

 

 彼の言葉に発目は笑顔で頷き、楽しそうに右手を高々と振り上げた。

 

 そうこうしている内に舞台の幕が開き、最初の出し物が披露される。最初はヒーロー科1年A組、内容はダンスホール的なライブ演奏との事。

 

 今年は敵との衝突で何かと世間を騒がせ、雄英にも大きな影響を齎した中心的存在。そんな彼らの事を好ましく思わない者は数多く存在するが、完全アウェーな舞台でどんなパフォーマンスを披露するのか。

 

 そんなある種の期待を胸に見守っていると、暗闇に包まれた体育館が一気に明るくなり、よく知った声が響き渡った。

 

 

「いくぞコラァアアアアアアッ!!」

 

 

 

 

 

 ────雄英全員、音で()るぞ!!

 

 

 

 

 

 いつにも増して荒々しく力強い爆豪の掛け声と同時に、ド派手で煌びやかなA組の演奏が始まった。

 

 

 

 

 

 ■■■■■■■■■■■■

 

 

 

 

 

 さて、雄英高校文化祭が始まるまでの1カ月間にどんな日々を過ごしたのか、ダイジェストでお送りしようと思う。

 

 

 緑谷や通形と一緒に壊理のいる病院へお見舞いに行った1週間後のある日、人工衛星の製作を進めている彼と発目の所へ件の2人がやって来た。

 

 すぐ傍にエリを連れて。

 

 

「やあ、久しぶり……ってわけでもないね! 作業は順調かい?」

 

「やたらと大きいけど今度は何を作ってるの?」

 

「…………」

 

 

 通形も緑谷も相変わらず元気そうで何よりである。

 

 傍にいるエリも、開発工房特有の機械音や油の臭い、飛び交う大声におっかなびっくりし過ぎたのか、茫然とした様子で部屋中を見渡している。

 

 

「おお、これはこれは緑谷さんに通形先輩。今日は一体どのようなご用件で? 用が無いのでしたら私忙しいので、これで失礼しますね! では!」

 

「あっ、ちょっと待って発目さん……って、何か凄く汚れてない?」

 

「お風呂に入る時間も勿体なくて! それで何でしょう? ひょっとして新たなベイビーの開発依頼ですか!?」

 

「あ、うん、そうだけど……近い」

 

 

 会話のペースに全くついていけない緑谷が戸惑うも、バグった距離感で一気に詰め寄る発目を見て彼は思わず苦笑した。

 

 その後、緑谷の話を聞く限り、どうやら個性の扱いが洗練されて上手にパワーを引き出せるようになったので、更なる攻撃手段を増やしていきたいとの事だった。

 

 具体的には指を弾いて風圧による遠距離攻撃がしたいので、指向性やコントロールを補助してくれるグローブが欲しいと緑谷は口にした。

 

 

「ふむ、なるほどなるほど。それはまた面白そうな要望ですね。良いですよ、是非とも喜んで作りましょう」

 

「良いの? ありがとう! あっでも、文化祭終わった後でも構わないからね」

 

「いえいえ、そんな遠慮しないで今すぐ作りましょう! クライアントの無茶に答えるのが出来るデザイナーというものですから!」

 

「あ、ありがとう発目さん……!」

 

 

 文化祭前で忙しそうな様子に遠慮しがちな緑谷を、発目は豪快に笑い飛ばすと早速ペンと紙を片手に机へと向かった。

 

 この思いきりの良さと行動力は、発目の大いなる武器と言える。やり取りを見ていた彼はそう思った。

 

 となれば、人工衛星の開発はこちらで黙々と進めておこう。ああなってしまうと、発目は一通り作業が終わるまで動く事はない。

 

 

「ねえねえ、ところで君は何を作ってるの? もし良かったら教えてよ!」

 

 

 発目を見て微笑んでいると、暇を持て余した通形がこちらに話しかけてきた。

 

 どうやら2人で製作中の人工衛星に興味津々らしい。気になるなら是非とも詳しく教えてあげようじゃないか。

 

 彼はノリノリで人工衛星の打ち上げ計画を語った。通形もエリも興味津々で傾聴してくれた。

 

 

「人工衛星かぁ。この前のメディカルマシーンといい、うちのサポート科は本当に凄いや。どれもこれも作る物のレベルが高い」

 

「空に飛ばして宇宙を飛び回る……お兄さんが作る物、どんな物か楽しみ」

 

 

 2人とも説明を聞いて期待十分なようで、熱心に語った彼もこれには満足気に笑った。

 

 是非とも当日を楽しみにしていてほしいと思う。きっと忘れられない文化祭になるだろうから。

 

 

「体育祭はヒーロー科に対する副次的なアピールチャンスの場でした。が、今回は私達が主役の場を与えられているのです!」

 

「おお……!」

 

 

 彼らの背後では発目が文化祭に対する意気込みを熱心に緑谷に喋っている。彼女も文化祭という日を待ちに待っているという事だ。

 

 

「それよりアイアンソールはその後どうでしょう? また何かあればすぐ言って下さい!」

 

「うん、ありが……あっ、発目さん、後ろ……」

 

「えっ……ああっ!? ベイビー!?」

 

 

 熱心に語っている発目の背後で、発目が担当していた人工衛星の一部が激しい炎を纏っていた。恐らく緑谷のサポートアイテムの話に夢中になって、一瞬目を離したのが原因だろう。

 

 それを見た瞬間、彼は急いで火消の水を用意しに駆け出す。

 

 

「わーっ!? お前らまたかよ!」

 

「水! 水持ってこい!」

 

「な、何かごめん発目さん!」

 

「行こうエリちゃん! ここは危ない!」

 

「うん、びっくりした」

 

 

 騒ぎが大きくなりそうな予感を察知して緑谷達は去って行った。

 

 それは別に良いのだが、ちょっと目を離しただけでここまで炎上するとは思わなかった。まだまだ改良の余地がありそうだ。

 

 

 

 

 

 ■■■■■■■■■■■■

 

 

 

 

 

 それから少し時が経って、1週間が経過した頃。

 

 雄英の敷地内で発目が開発したアイテムの試運転を行っていると、緑谷とオールマイトの2人組に遭遇した。

 

 見たところ何やら修行中のようだった。

 

 

「いやー、すみません。お怪我はありませんか?」

 

「発目さん!? それに君も……いや、怪我は無いから大丈夫なんだけど……」

 

 

 こちらの存在を認識した途端、緑谷が急にあたふたし始めたが何か不都合な事でもあるのだろうか。

 

 

「私達たまにここでベイビーのテストしてるんですよ! 受け止めてくれてありがとうございます!それは今開発中の小型第三の目ベイビーなんですが、ちょっと不調を起こして暴走しちゃったみたいでして!」

 

「そうだね。気を付けないといかんよ、少年少女」

 

 

 発目が開発した超高性能カメラを搭載した自立型の小型飛行ロボット、通称『第三の目』。

 

 性能テスト中に暴走したそれがオールマイト達の所へ飛んで行ったが、オールマイトがさっと受け止めてくれたおかげで事無きを得た。

 

 これがパワーローダー先生ならグチグチ言われていたが、オールマイトは少し注意する程度で済ませた。優しい。

 

 

「そうだ緑谷君! この前頼まれた例の新アイテムですが、ちょうど似たような性能のベイビーがいたので、あなた用に今カスタマイズしてます。申請通ったらすぐお渡しいたしますよ!」

 

「えっ……文化祭の後で良いって言ったと思うけど、本当に作ってくれてたの!?」

 

「勿論です! 絵描きが休憩に絵を描くのと同じですから! 元があるので時間も大してかかってないんですよ!」

 

「何かもう……色々とありがとう!」

 

 

 それはそうと、緑谷の新サポートアイテムだ。

 

 この前依頼された物だが、指を弾いて遠距離攻撃がしたいという要望に応えるべく、只今発目が開発の真っ最中である。

 

 彼も手伝おうか尋ねたが、人工衛星の製作も同時並行で進めないといけない関係上、今回彼は開発に携わっていない。

 

 とはいえ製作過程はしっかり見届けているので、どんな物になるかは殆ど予想できている。

 

 

「そうだ少年、もし良かったら少し手伝ってほしい。君の個性は緑谷少年と同じパワー型だし、扱いも君の方が上手い。何かアドバイスしてくれないか?」

 

 

 アイテム開発中の発目の表情を振り返っていると、オールマイトが話しかけてきた。緑谷の修行に付き合ってほしいとの事らしい。

 

 人工衛星の開発も概ね順調に進んでいて余裕があるし、何より修行と聞いて断るサイヤ人は存在しない。

 

 彼は二つ返事で了承した。

 

 

「ありがとう。早速だが、今緑谷少年は遠距離攻撃ができるようになるための特訓中だ。彼も扱えるパワーが増したからね。

 指を弾いて風圧で攻撃するらしいんだが、如何せんコントロールが難しくてね」

 

 

 この前緑谷から聞いていた通りの内容だ。

 

 オールマイトと緑谷は個性が似ている事もあってか結構仲が良いとは聞く。だが話を聞く限り、オールマイトは感覚で動く派で緑谷に適切なアドバイスができないらしい。

 

 今現在、緑谷に課している特訓内容は瞬間的に出力するパワーの切り替え、微細な力のコントロール。

 

 身体が壊れるギリギリのラインを引き出して遠距離攻撃をしつつ、それ以外は安定した出力で機敏に動き回るというもので、確かに人によっては難しい修行だった。

 

 とはいえ、彼もぶっちゃけ感覚派なので大したアドバイスは出来そうにない。それでも相手になるくらいは可能だ。

 

 無意識に出来るようになるまで何度も繰り返し、少しずつ慣らしていこうじゃないか。

 

 

「特訓に付き合ってくれるの? ありがとう!」

 

 

 緑谷もやる気十分なようで何より。

 

 では早速始めよう。

 

 

「じゃあ行くよ……フルカウル・8%!」

 

 

 瞬間、緑谷の全身に翡翠色の火花が迸る。

 

 彼がほんの少しだけ気が膨れ上がる感覚を覚えたのも束の間、全身を強化した緑谷が一気に間合いを詰めてきた。

 

 

「ハアッ!」

 

 

 彼の顔面に緑谷の右足が迫る。

 

 最近になって変えたシュートスタイルという新たな戦闘スタイルらしいが、実際に見たのはこれが初めてだ。

 

 正直このまま受けてもダメージは無かったが、体育祭の時の飯田戦を思い出し、寸前で緑谷の蹴りを屈んで回避する。

 

 あのまま蹴りが直撃していたら、逆に緑谷の足がへし折れて悲惨な結末になるところだった。危ない。

 

 

「やっぱり反応が速い……というか今の、当たってたら僕の足がヤバかったな。忘れてた」

 

 

 やっぱり忘れてたんかい。

 

 とはいえ、手合わせするのはこれで2度目。期末試験直前にヒーロー科全員と戦ったが、それから結構時間が経っている。それより前の体育祭の記憶が薄れているのも仕方ないだろう。

 

 そんな事を思っていると、緑谷が後ろに下がって距離を取った。早速撃ってくるつもりだ。

 

 

「イメージ……強いイメージを持って……撃つ!」

 

 

 緑谷が指を弾いた瞬間、凄まじい暴風が波となって襲いかかる。

 

 周辺の木々が彎曲し、草木が吹き飛んで土煙が舞い上がる。人なんて簡単に吹き飛ばしてしまう程の風圧。

 

 それでも彼にとってはそよ風にも満たないもので、何事もなくその場に立っていた。それは緑谷も分かっていた事で、分かっているからこそ遠慮なく攻撃を放つ。

 

 

「まだ……まだまだぁ!」

 

 

 木から木へと飛び移りながら、空中で体勢を変えて様々な角度から空気の塊を飛ばしてくる。

 

 だが、その塊には指向性が無い。彼に届く頃にはかなり広範囲に分散し、それに伴って威力もかなり減衰している。

 

 そこそこの敵相手なら今の時点で十分だが、トップヒーローを目指すのであれば更なる改良が必要である。特に、敵連合のような手練れには一切通用しない。

 

 だからこそ発目にサポートアイテムの開発を依頼したのだろう。それは有効な手だが、ある程度は自分でもコントロールできるようになった方が良いと思う。

 

 それこそオールマイトや爆豪のように。

 

 

「ッ!? なるほど、確かにそれもそうだね。オールマイトも言ってた、アイテムに頼りすぎないようにって!」

 

 

 今思った感想を緑谷に伝えると、本人もそれを自覚しており、苦虫を嚙み潰したような顔で頷いた。

 

 自覚があるならそれで良い。今の自分に何が足りていないか、どんな課題があるのかを自覚しているのはとても重要な事だ。恐らく緑谷はすぐに克服できるだろう。

 

 

 ──それからしばらく時間は経って、緑谷の動きが徐々に洗練されてきた。実際に相手に撃つ事で、遠距離攻撃の感覚を少しずつ掴んできたらしい。

 

 

「フッ! タアッ! ハアアアッ!」

 

 

 そろそろ10分が経過するが、今もなお健気に空気砲を撃ち続け、成長を遂げている。

 

 空中で体勢を整えながら攻撃するのもかなり形になってきた。指向性の問題はまだ解決途中だが、今日はこれで十分だろう。

 

 最後に少しだけ反撃して終わりにしよう。

 

 

「ッ!? 構えた! 攻撃が来る!」

 

 

 彼の動きに緑谷は敏感に察知し、素早く態勢を整えた。どんな攻撃が来ても可能な限り対処できるように。

 

 コンマ数秒、緑谷の警戒が一気に上昇する中、彼は飛び回る緑谷に向けて右手を伸ばす。

 

 

「まさか、僕と同じ……」

 

 

 彼の手の形が変わる。

 

 緑谷の表情が警戒から驚愕に移り行く中、親指で抑えつける事によって蓄積した中指のエネルギーが、一気に解き放たれた。

 

 

「ガッ……!?」

 

 

 指を弾いて生み出された空気の塊が、避ける間もなく緑谷の胴体に直撃した。

 

 先程の緑谷のように、広範囲に風が広がって威力が減衰する事はなく、しっかりと形を保ったまま大砲の如く突き刺さる。

 

 完璧な指向性を持った、今後緑谷が目指すべき空気砲の完成形である。

 

 

「ぐぁああああああああっ!?」

 

 

 あまりの衝撃に血反吐を吐きながら、緑谷は勢いよく吹き飛ばされた。

 

 立ち並ぶ木々を薙ぎ倒して後方へ飛ばされ、地面を削りながら何度も跳ねて転がっていく。

 

 一応空気砲が緑谷の身体を貫通しないように威力は調整したが、それでも今の緑谷が耐えられる上限を超えていたらしい。

 

 

「ァ……カハッ……」

 

 

 その後、数百m吹き飛ばされた緑谷の様子を見に行くと、本人は全身傷だらけの状態で白目を向いていた。

 

 四肢の骨が滅茶苦茶にへし折れてかなりの重傷だが、今すぐ死ぬレベルの怪我ではない。適当にメディカルマシーンに入れて放置すれば完治するだろう。

 

 

「み、緑谷少年!? ちょっと君、いくら何でもこれはやり過ぎだよ! もう少し加減して!」

 

「相変わらず容赦がないですよねー。まぁ、あなたらしいですが」

 

 

 とはいえ、これには修行を頼み込んだオールマイトもご立腹なようで、流石に抗議されてしまった。発目は発目で遠い目をしていたが、特に何かを言われる事は無かった。

 

 そんなこんなで強制的に修行は中止となったが、緑谷にとってかなり良い経験になったのではなかろうか。

 

 

 

 

 

 ■■■■■■■■■■■■

 

 

 

 

 

 その後、急いで保健室へ直行し、勝手に設置したメディカルマシーンに緑谷を入れて治療した。

 

 緑谷は1時間程度で完治した。

 

 

「いやー、緑谷さんかなりの重傷でしたね。厳しい特訓お疲れ様です」

 

「あはは、お疲れ……」

 

 

 ボコボコにされてげっそりした緑谷に、発目が呑気な口調で労いの言葉をかけた。

 

 朝から散々な目に遭ったせいか、修行中に見せた覇気は全くない。肉体は完治しているが精神的に相当疲れているようだ。

 

 そんな緑谷から尋ねられた。

 

 

「ねえ、最後に君が見せた空気砲だけど、あれはどうやってやったの?」

 

 

 最後に食らわせた攻撃の謎を聞かれ、彼は快く答えた。

 

 原理は簡単。指を弾く瞬間、拳を放つ要領で腕を真っ直ぐ伸ばすだけである。要は押し出す要領で空気の塊を飛ばしているのだ。砲丸投げをイメージしてくれたら理解が早まるだろう。

 

 指を弾いて空気の塊を作る。それを壊さないように腕全体を使い、押し出すように真っ直ぐ飛ばす。この2つの工程を同時に行っているだけだ。

 

 慣れればアイテム無しで精密な遠距離攻撃が可能になる。いざという時に取れる手段は多いに越した事はない。

 

 

「なるほど、砲丸投げのイメージ! その発想があったか。でも言うは易し、行うは難し。実際にやろうとしたら凄く時間がかかるぞ」

 

 

 緑谷の空気砲に関してはまだまだ課題だらけだ。だが本人がそれを自覚しているので、その点は問題ないだろう。 

 

 彼が問題視しているのは、やはり緑谷の扱うパワーそのものにある。

 

 

「えっ、現時点で身体を壊さず出せる力がどのくらいか? 全力を100としたら、今は20くらいが限度だよ」

 

 

 彼が思う緑谷の課題は、やはり出力できるパワーが小さすぎるという点だった。

 

 ちょっと前までは8%が限度と聞いていたので、それを考えれば随分な成長だ。だが、何度も言うがトップクラスの敵を相手取るにはまだまだ足りない。

 

 そう思いながら、彼は更に質問を重ねた。

 

 

「空気砲の時の出力が20%かって? うん、そうだよ。オールマイトと話し合って、普段は8%で動いて瞬間的に20%の力を引き出してるんだ」

 

 

 つまり空気砲を打ち出す瞬間、手だけ通常の倍以上のパワーを出して攻撃しているという事になる。

 

 確かに部分的にパワーを上げて攻撃するのは構わないが、変化が倍以上となると肉体にかかる負荷が大きすぎる。体力の消耗もより激しくなるだろう。

 

 それではいずれどこかでボロが出る。バランスが悪く、圧倒的に長期戦に向いていないのだ。それは好ましくない。

 

 

「言われてみれば確かにそうだけど、ならどうすれば良いのやら……」

 

 

 思い当たる節があったからか、新たな戦闘スタイルの問題点を指摘されて緑谷は唸った。

 

 改善方法に随分お悩みのようだが、1つシンプルな方法がある。

 

 15%だ。

 

 

「えっ……?」

 

 

 緑谷はこれから、寝る時以外は常に15%の力を引き出したまま学校生活を送るのだ。無論、身体がその負荷に慣れるまで。

 

 最初は結構きついだろうが、その状態に慣れればいざという時に限界まで力を引き上げても、身体にかかる負担は最小限で済む。

 

 瞬間的な出力の切り替えも、8%から20%より15%から20%の方が容易だろう。加えて力のコントロール技術の向上や体力の増加にも繋がる。

 

 厳しい分、得られるリターンは大きい。ただ無理強いをするつもりはない。今後どうするかはオールマイトと相談して決めればいい。

 

 こちらからは以上だ。

 

 

「……分かった、ありがとう。君のアドバイスを上手に活かせるよう、もっと頑張るよ」

 

 

 こうしてその日の修行は終了した。今後の緑谷の更なる成長に期待が高まるばかりである。

 

 なお、途中からオールマイトが完全に空気になっていたが、これもまた時代の流れというものだろうか。非常に物悲しい限りだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 このようなやり取りが1ヵ月の間にあり、そして現在、文化祭当日に至る。

 

 

 




冒頭の部分、原作では文化祭の開幕は9時、A組のライブは10時からで時間差あるけど、まあここら辺はちょっとくらい変更しても問題ないかなって思ったり思わなかったり。

ちなみに、ジェントル戦はカットしました。あれは緑谷が相手するからこそ意味があるのです。あとは主人公が参戦すると話がダレるし、そもそもジェントルと主人公は相性最悪だと思ったので。

多分文化祭編はあと1話、2話くらいで終わって第5章に移ると思う。
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