サイヤ人 in ヒロアカ   作:H & J

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主人公にボコボコにされながらも健気に修行に励む原作主人公。

そんな中、遂に文化祭の日がやって来た。



第37話 文化祭当日②

 時は飛んで文化祭当日。

 

 文化祭のトップバッターを飾った1年A組のライブは、それはもう凄まじい盛り上がりを魅せた。

 

 彼らに対して反抗的な感情を抱く者が多い中、逆境を撥ね退け会場に集まった全員の心を躍らせたのだ。大成功といって良いだろう。クラス全員の熱量と、1ヵ月で仕上げたとは思えない高いクオリティが、成功に大きく響いたと思われる。

 

 会場に来ていたエリもライブにご満悦だったので、わざわざ病院からここまで足を運んだ甲斐があるというもの。

 

 気になってライブを見に来たこの2人もしっかりと楽しんでいた。

 

 

「いやー、凄かったですね。まさかあそこまで凄まじいライブとは思いませんでした!」

 

 

 発目の感想に彼も頷く。

 

 確かにA組のライブは凄かった。だがそれと同時に、こちらも負けていられないという気持ちが強くなった。

 

 

「さあ、ライブを見てしっかり気分転換しました。次は私達の番です」

 

 

 発目と一緒に賑わう校内を歩き回りながら、彼は気持ちを切り替えた。

 

 模擬店で買った大量の食べ物を口一杯に頬張り、午後から行われる技術展示会の最終調整を行う。

 

 

「私達の発表は結構終盤の時間ですね。文化祭のフィナーレを飾れそうで丁度良いじゃないですか」

 

 

 発表の時間までそれなりに時間が空いているので、本番に向けて入念な調整ができそうだ。空いたこの時間をしっかり有効活用させていただこう。

 

 彼は人工衛星の打ち上げに向けて意気込んだ。

 

 

「ここまで来れば、後腐れのないように全力で楽しむだけです。雄英に集まった全員の度肝を抜いてやりましょう!」

 

 

 そう言って発目は拳を突き出したので、彼もそれに合わせて拳を突き出し、コツンと合わせた。

 

 

 

 

 

 ■■■■■■■■■■■■

 

 

 

 

 

 それから数時間後、遂にその時がやって来た。

 

 

「お集まり頂いた皆さん、お待たせしました。それではこれより、私達の自慢のベイビーを紹介していこうと思います!」

 

 

 雄英の敷地内に設置された技術展示会の会場内、その一角でマイクを手にした発目が仰々しく手を振った。

 

 彼と発目の前には、発明品が気になって見に来た生徒や教員達が大勢集まっている。

 

 そんな衆目に晒される中、2人は最初にして最大の見せ場を披露する。

 

 

「今回私達が文化祭に向けて開発したベイビーはこちら! そう、人工衛星です!」

 

「「「「おおっ!?」」」」

 

 

 観客の驚く声が響き渡る。

 

 覆い被さった布を剝ぎ取るとそこにあったのは、如何にもなフォルムをした巨大な人工衛星が鎮座していた。

 

 その隣には大型のロケットが設置されており、そちらもかなり目を引く存在感を放っている。

 

 

「私達はこの文化祭で何か大きな事をやってみたいと思い、考えました。その結果、人工衛星を作って宇宙に飛ばしてみようという結論に至ったのです!」

 

 

 それから発目は熱弁した。

 

 人工衛星の製作開始から完成に至るまでの軌跡、こだわった部分や他の衛星とは何が違うのか等々。

 

 それから皆して気になって耳を傾ける中、15分程の説明が終わった。本当はまだまだ語れるし、伝えていない事もたくさんあるのだが、あまり長々話しても退屈なので簡潔に済ませた。

 

 

「とまあこんな感じで、私達は見事衛星の開発および打ち上げ準備まで整える事ができたわけですが……」

 

「ですが……?」

 

 

 発目の言葉に観客が更に身を寄せる。

 

 最低限の説明を済ませたところで、ここからが本題である。もうお分かりだと思うが、ここまで来てやる事は1つしかない。

 

 

「その開発した人工衛星を、今から宇宙へ打ち上げてみようと思いまーす!」

 

「「「「「おおおおおおーっ!!」」」」」

 

 

 その言葉に、更に大きな歓声が沸き上がる。

 

 人工衛星の打ち上げ。それを聞いて気にならない者はこの場に居ない。

 

 ごく限られた場所の限られたタイミングで、限られた人しか目にする事ができない瞬間を一高校の文化祭で見れるのだ。迫力満点、大興奮間違いないに決まってる。

 

 とはいえ、打ち上げるのは観客の目の前にある衛星ではない。

 

 

「今皆さんの目の前にある衛星とロケットはただのハリボテ。流石にこんな所で打ち上げるわけにもいきませんからね。本物は既にグラウンドの中心に設置したロケットの中にあります」

 

 

 ここは技術展示会の会場。周りには他のサポート科が開発したアイテムが所狭しと並んでいる。

 

 こんな場所で衛星の打ち上げなんて馬鹿な真似はしない。流石に狭すぎる。なのでここからは外に出て、打ち上がる光景が見える位置に移動してもらう。

 

 それから観客と共に会場の外に出て、打ち上げが見えるポイントまで歩いて行った。この時点でかなり大がかりな発表だ。

 

 

「さあさあ皆さん、カメラの準備はよろしいですか? たった1度のシャッターチャンスですよ! では行きましょう、発射まで10秒前!」

 

 

 観客の注目、盛り上がりが最高潮に達したところで発目が打ち上げのカウントダウンを開始した。

 

 その手には如何にもな発射用の青いボタンが握られている。

 

 

「9、8、7……!」

 

 

 発目の声に合わせて周囲も声を張り上げる。ノリが良くて大変結構だ。

 

 

「6、5、4……!」

 

 

 カウントダウンを叫ぶ皆の声につられ、他のクラスの出し物に行っていた人の注目が一気に集まる。

 

 

「3、2、1……!」

 

 

 そして、たった2人の発表のために集まった大勢の観客が、一斉にカメラをグラウンドの方に向けた。

 

 

「発射!!」

 

 

 カウントダウンがゼロになったと同時に、発目が青いボタンを力強く押した。

 

 瞬間、グラウンドに設置されたロケットの噴射口から夥しい量の煙と炎が舞い上がる。

 

 そのまま人工衛星を乗せたロケットは徐々に地面から離れ、数十秒足らずであっという間に上空へと飛び立った。

 

 

「「「「わああああああーっ!!」」」」

 

 

 打ち上げの瞬間、飛び立つロケット。それらを見た観客が今日一番の凄まじい歓声を上げた。

 

 校内にいるほぼ全ての人達が注目していると言っても過言ではない状況で、見事打ち上げに成功したのだ。

 

 

「2人とも凄いなぁ……まさかあんな大がかりな代物を1ヵ月で作り上げるなんて」

 

「確かにね! 俺も正直驚いてるよ。ここまでやれる1年生なんて見た事ないからさ。エリちゃんはどう?」

 

「うん、何というか……ぶわぁああってなって、大きな音がして、すっごく速くて、とってもキラキラしてた」

 

「そりゃ良かった!」

 

 

 会場でロケット打ち上げの瞬間を見ていた緑谷達も、サポート科2名の壮大な発明に感嘆の声を漏らしていた。

 

 特に午前中にA組のライブを観て、屈託のない飛び切りの笑顔を見せたエリもこれには感動しており、今も輝いた目で上空のロケットを見つめている。

 

 これには通形も喜んだ。 

 

 

「あの2人、何かいつも凄い事やってるよねー」

 

「確かにそうね。特に今回は人工衛星の打ち上げだもの。本当に凄いわ、ケロケロ」

 

「ほわぁあああ……一体いくらしたんや……」

 

 

 一緒に文化祭を回っていた葉隠、蛙吹、麗日の3人も思い思いの感想を口にする。若干1名違うところに注目しているが、それもまた一興というものだろう。

 

 

「人工衛星か……やっぱあいつ凄ぇな」

 

「おっ、轟が珍しく褒めた。こんな事もあるんだな」

 

「お前もそう思わねえか、爆豪?」

 

「けっ、知るかんなもん。つーか何で俺まで半分野郎と一緒にいるんだおい」

 

「まぁまぁ、今日ぐらい良いじゃねーか。皆で一緒に楽しもうぜ」

 

 

 少し遠くに離れた場所では、轟、瀬呂、上鳴、爆豪、切島の5人がごちゃごちゃ話しながらも飛び立つロケットを眺めていた。

 

 爆豪は何やら気に食わない様子だったが、彼らしいといえば彼らしい表情である。

 

 

 このように、会場に集ったそれぞれが十人十色の反応を見せる中、遥か上空へ飛んで行ったロケットを見つめていた発目が、再びマイクを手に取った。

 

 

「……はい、たった今切り離しが終わりました。先端に搭載した人工衛星だけが宇宙へ飛び立ちましたね。これにて人工衛星の打ち上げ及び、私達の発表の終わりです」

 

 

 人工衛星を上空まで運ぶ役目のロケットが切り離され、無事に衛星が大気圏からの脱出に入った事と、発表時間の終わりを告げる。

 

 今回の人工衛星は通常の物とは違い、かなり特殊な作りをしている。そのため地球を脱出して更に遠くへ進むのだが……、

 

 

「以上、お集まり頂いた皆さん、ありがとうございましたー……と、言いたいところですが」

 

「「「「えっ?」」」」

 

 

 しかし、ここで終わるかと思った途端、発目が発したその言葉で一気に会場の空気が変わった。

 

 終わったかーなどと呑気に呟いて会場を後にしようとした人達の足が止まり、一斉に彼と発目の方へ視線が戻る。

 

 

「人工衛星を打ち上げてはい終わり、なんて、それだけでは少々物足りないと我々思いましてね」

 

「「「「えっ、えっ?」」」」

 

 

 皆の困惑が収まらないが、そんな事などお構いなしに発目は言葉を綴る。

 

 

「そこで、ここから私達にできる事はないかと考えました。その結果……」

 

 

 観客の注目が再び集まったところで、発目はポケットからとある物を取り出した。

 

 ボタンである。先程のロケット発射用の青いボタンとは違う、濃く禍々しい雰囲気を纏った赤いボタン。見るからに危険信号が伝わる真っ赤なボタン。

 

 それが今、発目の掌の上に乗っていた。

 

 

「これが何だか分かりますか? そう、ボタンです。では一体何のボタンでしょうか?」

 

「「「「えっと……」」」」

 

 

 突然投げ掛けられた疑問に全員が一斉に静かになり、言葉を詰まらせた。

 

 シンと静まり返った会場内で、発目は更に続けた。

 

 

「それからもう1つ。私の最も親しき友人は過去にこう語ってました。『芸術は爆発だ』と……そう、爆発です。爆発……」

 

 

 何故か意味深に爆発という単語を連呼し始めた発目に、会場の皆は嫌な予感が脳裏に過った。

 

 この2人がいつも爆発騒ぎを起こして担任と揉めている話は結構有名である。だけどまさか、まさかこの特別な日にそんな事をするわけがないと、心のどこかでそう思っていた。

 

 その期待は見事に砕け散る事になる。

 

 

「これが私達のフィナーレ(答え)です! ポチッとな!」

 

 

 皆の注目がある中で、発目は手に持ったそのボタンを勢いよく押した。

 

 その瞬間──、

 

 

 

 

 

 

 

「──────ッッッッ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 突如、遥か上空が昼間以上に明るく照らされた。

 

 太陽の光以上に眩い光が見ていた全員の目に入り込み、一瞬視界を奪う。

 

 それと同時に感じる僅かな熱。別に火傷する程の高温ではないが、それでもほんのり温かくなったと確信できる。

 

 その後から襲ってきたのは、思わず耳を塞いでしまう程の巨大な爆発音。凄まじい衝撃波と轟音が空気を伝い、激しい暴風となって地上にまで降りかかってきたのだ。

 

 紛う事なき大爆発。芸術的なまでに綺麗で、激しい、ド派手な大爆発。先程の打ち上げの感動を軽々超える衝撃が、集まった人々の脳裏に刻まれた。

 

 

「「「「……………………」」」」

 

 

 あまりの衝撃に全員が言葉を失った。

 

 唐突過ぎる大爆発でパニックになるでもなく、泣き喚くでもなく、ただ只管にシンと静まり返った。

 

 いつまでも情報が完結しない。予想以上の大爆発に脳が理解を拒んでいた。

 

 

「はい、いかがでしたか? 切り離されて残ったロケット部分をかつてないレベルで大爆発させてみました! いやー、発表の最後を飾る良い演出になったのではないでしょうか!?」

 

 

 全員が未だに唖然としたまま上空を見つめる最中、空気を読まない発目が爆発の説明を行った。

 

 人工衛星の開発途中、彼と考えて仕込んだ物である。

 

 

「これで今度こそ私達の発表の終わりです! それでは皆さん、ご清聴ありがとうございましたー!」

 

 

 拍手は返ってこない。

 

 誰もが空に目を奪われ放心状態となっているのだ。魂が抜けたように、その場に突っ立っているのだ。反応などあるわけがなかった。

 

 しかし、何事にも例外は存在する。

 

 

「……やりやがった。マジかよあの2人、やりやがった……何やってんだお前らぁああああああああっ!!

 

 

 シンと静まり返った会場内でただ1人、担任のパワーローダー先生の大絶叫が響き渡った。

 

 その後、終盤に差し掛かっていた事もあり、色々とありながらも文化祭は最後まで続行した。

 

 

 

 

 

 ■■■■■■■■■■■■

 

 

 

 

 

 爆発騒ぎで多少揉めながらも、何だかんだ最後まで文化祭をやり通した翌日。

 

 校長室にて、彼と発目は先生達の前に呼び出されていた。

 

 

「さて、何か申し開きはあるかな?」

 

「ありません! 強いて言うなら、爆発した時に文字が浮かぶような細工を施せば良かったなと思ってます!」

 

「なるほど、全く反省していない事だけはよく分かったよ!」

 

 

 中心に座る根津校長に尋ねられ、発目は大きな声ではっきりと即答した。隣に座る彼も発目と同様、ありませんと冷静に返す。

 

 とはいえ、全く反省していないと言われるのは少し心外だ。勿論反省はしている。せっかく警察の上層部と揉めながらも行われた文化祭を、あわや中止寸前まで追い込んだのだ。

 

 だが、何も考慮しなかったわけではない。あえて上空で爆破したのはそのためで、雄英バリアに大きな干渉が無ければ誤報も何もないと判断していた。

 

 その結果はご覧の通りだし、結構なニュースにもなったが、それでも人的被害も物的損害もゼロに収まっている。全て計算通りだ。

 

 なので反省はしているが後悔はしていない。

 

 

「いや、計算通りって。まずそんな事するなよ」

 

 

 彼らの説明を聞いた相澤が冷静にツッコみを入れた。これには他の教員達も何度も頷く。

 

 

「今年の文化祭の開催で、校長が警察庁と相当揉めたのを知っててなお実行したのはどうなのよ?」

 

「しかもそれを知ってるからこそ、中止の条件に引っ掛からないギリギリを攻めた内容ぶち込んできたの、余計質が悪ぃぜ」

 

「変なところで理性的なのどうなってんだ?」

 

 

 相澤に続いてミッドナイト、プレゼントマイク、スナイプの3人が矢継ぎ早に叱ってくる。

 

 これには横で聞いていたオールマイトも悩ましい顔で眉間に手を当てるだけだった。

 

 

「あれ、そういえばパワーローダー先生はどこへ? 担任のはずなのに見当たりませんね」

 

「お前達の担任なら今保健室のベッドで横になってるよ。度重なるストレスで胃を痛めたらしくてな。リカバリーガールも呆れてたよ」

 

「えっ、そうだったんですか? それはお気の毒に……後でお見舞いがてら様子でも見に行きますか」

 

「……お前らが行くと逆に負担になるから、パワーローダーが回復するまで接触禁止な」

 

 

 おっと、これは困った。担任の先生とまさかの接触禁止令を下されてしまった。仮にも生徒相手にそんな事を言っても良いのだろうか。これは断固抗義だ、許せん……冗談だが。

 

 そんな事を思っていると、校長が「はい注目!」と手を挙げて言った。

 

 

「とりあえず、今後は事前に何をするのか伝えてから行動に移してほしい。サプライズにしても、せめて私にだけは予め教えてくれると嬉しい。

 そうすればこちらも柔軟に対応できるからね。だからくれぐれも、今回みたいな事は勘弁してくれたまえ。分かったかな?」

 

 

 笑顔で淡々と言うが、目は笑っていない。有無を言わさぬ圧力でこちらに訴えかけているのがよく分かる。

 

 だけど確かに今回のサプライズは、全責任者の校長だけでも伝えるべきだったと言える。そこは反省ポイントだ。今度からはそこにも気を付けながら行動しよう。

 

 

 ──その後も彼と発目は教員達の説教をしこたま受け、1時間以上経ってようやく解放された。

 

 今もなお寝込んでいるパワーローダーのお見舞いに行けないのは残念だが、あの先生の事だ。すぐにでも復活するだろう。

 

 そう思いながら、彼は発目と一緒に寮へ戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやー、まさかあそこまで堂々とした態度を取られるとは思いませんでしたね。あの2人の倫理観どうなってるんですか?」

 

「要はマジもんのマッドサイエンティストって事だろ。ったく、パワーローダーが思いやられるぜ」

 

「でも作る物は毎回レベルが高いですよね。素人目で見てもよく分かります」

 

「天才と馬鹿は紙一重とは、まさにこの事だな」

 

 

 2人が退室した後、教師それぞれが思った事を口にしあう。他とは明らかにズレた思考を持つ2人に、皆して頭を悩ませていた。

 

 それだけではない。悩める問題は他にもある。

 

 

「にしても、昨日公安から直接連絡が来たのはびっくりしましたね」

 

「普通あれだけの爆発騒ぎを起こせば、いくら雄英バリアが反応しなかったとはいえ一発で退学、最低でも停学は確実なんだが……」

 

「まさか2人の退学処分取消を要請してくるとは。それだけ公安にとっては2人を手放したくない、という事ですかね」

 

「手放したくないというよりは、手放したら不味いというのが正しい解釈かと。彼の場合は特に」

 

 

 文化祭が終わった直後、例の爆発騒ぎの件で公安から1本の電話が掛かってきた。

 

 その内容は、今回の騒ぎに関しては一切を不問とし、2人の退学を検討しているのであれば直ちに取り消せというもの。

 

 その要請がどれ程の意味を持つかを、ここにいる全員は良く理解している。

 

 

「まぁ、最初から退学させるつもりは無かったけどね。彼は前にも1度やらかしてるし、これくらいどうって事ないさ」

 

「本当にお疲れ様です、校長……」

 

 

 ただ、例の問題児は1度世界が崩壊する一歩手前まで追い込んだ前科があるので、今更このくらいで停学や退学処分を下すつもりは更々無かった。

 

 その判断を下した校長の気苦労を想像し、相澤は深い溜め息を吐いて校長に労いの言葉をかけた。

 

 

 

 

 

 ■■■■■■■■■■■■

 

 

 

 

 

 波乱万丈の文化祭が終わって数週間後。

 

 

「いやー、楽しかったですね文化祭。少し揉めちゃいましたけど、あれも思い出の1つです」

 

「おいコラ、あれだけの事をやっておいて『楽しかった』の一言で済まそうとすんな」

 

 

 いつもの開発工房内にて、発目が何気なく発したその言葉にパワーローダーが厳しく咎める。

 

 

「またまたぁ、本当は先生も予想していたはずです。私達がただ発表して終わるわけがないって」

 

「ああ、そうだな。確かに分かっていたさ、お前らが文化祭という日だろうと絶対やらかす事くらいは。でもな……あんなの誰が予想できるんだよ!」

 

 

 パワーローダーは文化祭の日を振り返り、発目ら2人に対して酷く憤慨した様子を見せる。今回の事でかなりご立腹らしい。

 

 

「大体なんだよ、ロケットに爆弾詰めて上空爆破って!? 人工衛星打ち上げてはい終わりで十分感動だっただろ! 何でそこに余計なムーブ加えるの!? 

 しかもあれ、もし地上で爆発したら雄英が半分消し飛んでたぞ! 上空だったから被害無くて済んだけどさ、今思うと滅茶苦茶怖ぇよ! ちょっとは加減しろよ!」

 

 

 捲し立てるように怒鳴り散らしてくるが、芸術は爆発なのだから仕方ない節はある。最早ある意味そういう性なのかもしれない。

 

 というか人生は予想外の連続なのだから、先生もいい加減このパターンに適応してみてはどうだろうか。その方がストレスも少なくて済む。

 

 

「ばっかじゃねーの!? お前の方こそ何言ってるんだよ! あんなのに慣れてたまるか! もし慣れてしまったら、こう……人として大切な何かを失う気がするんだよ!」

 

 

 お前は何を言ってるんだと、ドン引きした表情を浮かべてこちらを見てきた。

 

 そうは言うが、あれでご立腹だったのは先生達くらいで、他は意外にも「何かよく分からんけど凄かった」みたいな普通のコメントばかり残している。

 

 特にクラスメイトの皆に至っては、「何かしてくると思ったけどあれは予想外だった」や、「予想が外れて悔しい。絶対当たったと思ってたのに」など、もはやゲーム感覚でこちらの行動を予測して当てようとしていた。

 

 

「えっ、嘘……俺の生徒、何かヤバい方向に転がってる感じ?」

 

 

 今更気付いたのか。しかしもう遅い。

 

 とはいえ別に洗脳だとか常識を変えようとか、そんな事は一切していない。好き勝手やり続けていたら自然と皆も適応していただけの話だ。

 

 後は先生だけである。

 

 

「い、嫌だぁああああああ! 適応したくない! 誰か1人はまともな奴が居ないとクラスが崩壊する!」

 

 

 八方塞がりな状況に陥ってた事実を知り、パワーローダーは大声を上げて頭を抱えた。

 

 哀愁さえ感じるその姿を見て、クラスを受け持つ担任は本当に大変なんだなぁと、どこか他人事のように考える彼であった。

 

 

 




はい、見事にやらかした2人ですね。彼らがただ人工衛星を打ち上げて終わるわけないじゃないですかヤダー! 文化祭が中止にならなかっただけマシですね。


※次回から第5章です。
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