吉良吉影はトレーナーとして静かに暮らしたい 作:ボンゴレパスタ
――日没が間近に迫り、カーテンの隙間から夕陽が差す教室。
ナリタブライアンは能力によって幼児となってしまった自身の姉を膝に抱えながら、教卓の机の中にうずくまり、スーパークリークの目を搔い潜っていた。
幼くなってしまった姉を前に、ブライアンは少しの気まずさを感じながら彼女を見つめていた。
―――沈黙が二人の間を流れていく。
…別に姉貴が嫌いになったわけじゃあない。
だがトレセン学園に入学し、顔を合わせる機会は次第に減っていき少しずつ姉貴とは疎遠になってしまっていた。今では姉妹だというのに姉貴と顔を合わせてもどんな話題を話せばいいのか、どうやって話を続ければいいのか内心困惑するようになってしまっていた。
そんな沈黙を打ち破るかのように、幼いハヤヒデは口を開いたのだった
「私ね、妹がいるの…ブライアンって言うんだけど」
「姉k…ハヤヒデちゃんにとって、ブライアンってどんな存在なんだ?」
―――ずっと聞いてみたかったこと。姉貴とは腹を割って話したことなどほとんどない…
「ブライアンはすごいんだよ!この間の駆けっこだって、私より速かったんだ!」
「そうなのか…ハヤヒデちゃんはそれを見てどう思うんだ…?」
「…私が勝つ。私が勝って、ブライアンに背中を見せてあげないと!ブライアンが退屈しないようにーー私が目標になれるように!」
「――だって大好きな妹だから!」
――何歳になっても、姉貴は姉貴だな
ハヤヒデの本心を聞き、僅かに微笑むブライアンの前で、ハヤヒデは不安そうに言葉を続ける。
「ブライアンは私のこと…きっと嫌いじゃないよね…?」
幼い彼女だからこそ、あふれ出る彼女の本心。その気持ちに応えるようにブライアンも口を開いた。
「妹は…きっと妹はハヤヒデちゃんのこと、大好きだよ…心配しなくていい」
不器用ながらも、きっと記憶が残らない今だからこそ伝えられる素直な気持ち
今まで話せなかった分も。伝えられなかった分も。一歩踏み出すために、クリークの能力を解かなければならないーーー私が戦わなければならない。
「――今から鬼ごっこを終わらせてくる…ここで少し待っていてくれないかい?」
「――うん!おねーちゃん、頑張って!」
スーパークリークとの決着をつけるため、ブライアンは教室の戸に手をかけた。
「あらあら~自分から姿を現すなんて~いい子いい子してほしくなったんですね~?」
スーパークリークはブライアンの姿を認めると満面の笑みをこちらに向けてきたが、その表情の裏には言い様のない狂気を滲ませていたのだった。
クリークからにじみ出るオーラに対する恐怖が顔に出ないように努めながら、ブライアンは口を開いた。
「…姉貴を元に戻してもらおう」
「そうなんですね~ブライアンさんは最初に何で遊びますか~?かくれんぼはさっきしたから、次は好きなだけ甘やかせてあげますからね~」
――どうやら話が通じる状態ではないらしい…今のクリークは本能と願望の赴くまま、行動しているようだ…
覚悟を決めたブライアンは前傾姿勢を取ると、クリークに向かって一直線に向かっていった。
「あらあら~ママがすぐにいい子いい子してあげますね~」
笑顔を張り付けたクリークが繰り出す光の攻撃をかわしながら、ブライアンはまっすぐクリークのもとへ突き進む…その目に姉を助けるという確かな意思を宿らせて
クリークまでの距離が5メートルほどになったその時、何者かに足をつかまれたことでブライアンの足は止まった。足を見てもその方向には何も見当たらないが、確かに足には何者かがこれ以上前に進まないように彼女の足をつかんでいたのだった。
「よしよし~これ以上お痛をしないように抑えておかないと〜ママのところにようやく来てくれましたね…これでいい子いい子してあげられます~!」
何者かにとりつかれたように、クリークはブライアンの元に近づいていく。そして確実に彼女に光線を当てられるように正面から光線を撃ち出したのだった
「―――これを待っていたんだ…お前が油断してご丁寧に正面から光線を撃ってくるこの瞬間を待ってたんだ」
ブライアンは胸ポケットから何かを取り出すーーーそれはハヤヒデが日ごろ持ち歩いている手鏡だった。
「確実に光線を撃ち返せる瞬間をなーー!」
光線が鏡に反射し、跳弾となってクリークのもとへと向かっていく。
「の、能力を解除しないとーー」
光線が当たるその瞬間に能力を解除したクリークだったが、思い切り後ろに仰け反ったためバランスを崩した彼女は強かに後頭部を打ち付け、意識を手放したのだった。
ハヤヒデはゆっくりと目を覚ます。
――ブライアンは…?
ーー早く妹に会わなければ
妹の姿を探しに廊下に飛び出すと、ちょうどこちらに向かってきたブライアンと鉢合わせするのだった。
「ブライアン…」
「姉貴、目覚めたか…」
――伝えたいことは沢山ある。話したいことが沢山ある。目の前に現れたハヤヒデの姿にブライアンが言葉を詰まらせていると、ハヤヒデは口を開いたのだった。
「――そろそろ門限だぞ。生徒会副会長たるものが、これを破ってしまってはな…」
「相変わらず口数多いな…頭でっかちだな姉貴は」
「誰が頭でっかちだ!私の頭は大きくないぞ!」
でかいという言葉に過剰に反応を示したハヤヒデが頻りに自身の頭部を触っているーーその様子を見て思い直したブライアンは口を開いた。
「―――すまん…言い過ぎた」
ハヤヒデとの関係を一歩前進させようと決意していた手前、いつものように突き放す態度を取ってしまったことを詫びると、ハヤヒデは口元を僅かに上げながら口を開いたのだった。
「―――いいんだ、ブライアン。先ほどやっと可愛い妹の本心が分かったんだから…
――お姉ちゃんのこと、大好きだってことが」
―――え?
「~~~~~~っ!!!!」
ハヤヒデの記憶が戻ることはないだろうと言った剥きだしの、素直な台詞。その時のことをハヤヒデが覚えていたという想定外の焦りと、恥ずかしさで顔を真っ赤に染め上げながらブライアンは似合わず矢継ぎ早に言葉を取り繕ったのだった。
ピュリティオブハート
能力者;スーパークリーク
破壊力D/スピードB/射程距離B/持続力A/精密動作性D/成長性A
光を光線のように発射し、当たったものを幼児化させるスタンド。放った光に掠ってしまっても能力は発動する。クリーク自身も光に当たることによって効果は作用し、光は鏡といった反射するもので跳ね返すことができる。