吉良吉影はトレーナーとして静かに暮らしたい   作:ボンゴレパスタ

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アナザーワン バイツァ・ダスト3

 

 

 

 

 

 

 

 

いつものランニングコースである街路樹に立つマックイーンは、呆然としてその場に立ち尽くしていた。

 

 

 

 

「一体何が起こったのですの…?」

 

 

 

――岸辺露伴という漫画家に出会って、吉良の正体を伝えた…そして気づいたらまたこの場に意図せず戻ってきたのだった。

 

 

 

 

マックイーンは現状を理解することができず立ち尽くしていたが、その場に居ても当然答えが出るはずもなく、いつものようなコースを回ってトレセン学園に戻った。

 

 

 

 

白昼夢を見ていたような気持ちに包まれつつ、マックイーンがトレセン学園の校門に着くと、後ろから唐突に声が聞こえてきたのだった。

 

 

 

 

「…やぁ、メジロマックイーン。合宿に行かずサボりなんて感心しないな」

 

 

 

 

マックイーンは少なくともこの光景にデジャヴを感じていたーー校門に着いたこの時、この男に話しかけられるというこのシチュエーションに見覚えがあったのだった。

 

 

 

「……」

 

 

 

 

訝し気に首を傾けるマックイーンを見つめると、吉良は満足げに微笑んだ。

 

 

 

「その様子じゃあ、まだ2回目というところかな…まだ君は私の能力の全貌を掴んでいるわけじゃあないだろう…もう少し君にはそのまま頑張ってもらうとするよ」

 

 

 

 

吉良はそう言うと腕時計で時刻を確認し、校外に歩みを進めていった。

 

 

 

 

マックイーンはその様子を見て、静かにその背中を睨みつけるのだった。

 

 

 

 

 

――本当は吉良に続いて合宿所に向かうべきなのだろう

 

 

 

 

しかし何か嫌な予感がした。

 

 

 

 

 

このままだと先ほど見た幻覚同様のシナリオに進んでしまうーーそれに今さっき吉良が言ったセリフだ。彼の言葉には何か自身のまだ及び知らぬ恐ろしいものの片鱗をマックイーンは感じていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

踵を返し、行く当てもないままマックイーンは学園の方へと歩みを進めた。するとマックイーンのポケットが静かに振動するーーーポケットの中を確認し手を伸ばすと、それはマックイーンの携帯が来電を告げるバイブレーションだった。

 

 

 

 

「――はい、もしもし。メジロマックイーンです」

 

 

 

 

マックイーンが自身の名前を告げると、返ってきた声はマックイーンのよく知る声だった。

 

 

 

 

「―――マックイーン、私だ。ナリタブライアンだ」

 

 

 

 

その声はマックイーンのチームメイトの一人、ナリタブライアンだった。

 

 

 

 

ブライアンは生徒会の一員として、そして先発隊合宿所に向かって出発し、既に到着していた。

 

 

 

 

「――マックイーン。体調不良だそうだな…心配したぞ。ゴールドシップやチケットもお前のことを待っている。いつでも来るといい」

 

 

 

――嘘をついてしまった手前、マックイーンの心の中には深い絶望感が真夏の青空の積乱雲のように立ち込めていた。彼女の言葉になんとか取り繕いつつ、マックイーンは口を開いたのだった。

 

 

 

 

「…心配いりませんわ。この後に合宿所には向かいます。ゴールドシップとチケットさんをどうかお願いします」

 

 

 

 

「おい!それはどういう意味だ!マックイーン!」

 

 

 

 

 

「そうだよ!まるで私達が問題児みたいじゃあないかぁ~~!酷いよぉぉぉ!」

 

 

 

 

ブライアンの後ろから二人の大きな声が聞こえてくるーーどうやらブライアンとの会話が聞かれてしまったようだ…マックイーンが苦笑すると、ブライアンは改まったように口を開いたのだった。

 

 

 

 

「…聞いて分かるように、私達は元気だ…マックイーン、何かあったのは声を聞けばわかる…こんな時、何て言ったらいいのかわからないが…私を信じて、話してほしい。何か力になれるかもしれない」

 

 

 

 

「私達、だろ!ブライアン!マックイーン、ゴルシ様に隠し事は抜きだぜ!」

 

 

 

 

「そうだよ、マックイーン!なにかあったのなら正直に言ってよ!」

 

 

 

チームメイトのマックイーンを心配する声が、彼女の心に染みわたっていく――通常とは程遠い緊張状態を送っていたマックイーンは、その言葉にマックイーンの頬には熱い涙がこぼれていった

 

 

 

 

――話しましょう。彼女たちの力を借りれば、何か活路が開けるかもしれませんわ。

 

 

 

マックイーンは意を決し、自身が見聞きした全てを包み隠さずブライアンたちに話したーーマックイーンの話を全てを聞き終わると、ブライアンは口を開いた。

 

 

 

「――――ありがとう。マックイーン。やはりトレーナーは…」

 

 

 

 

冷静に返しているように聞こえるブライアンの声だったが、その声が僅かに震えているのをマックイーンは気づかぬはずがなかった。ブライアンはチームの中では新参だが、気性難故受け入れてくれるチームは少なく、彼女の考えを尊重し熱心に指導するトレーナーの死は受け入れ難いものだろう…ゴールドシップやチケットたちは言うまでもない。

 

 

 

 

「…そうしましたら、今後どうするべきか考えましょう、ブライアン…」

 

 

 

そう言葉を続けたマックイーンだったが、いつまでたっても彼女から返事はない。

 

 

 

 

「…ブライアン?」

 

 

 

 

再度小さく彼女の名前を呼びかけると、彼女から返ってきたのは返事ではなかった。

 

 

 

「グハッ…」

 

 

 

電話の向こうからブライアンの吹き出す声が聞こえ、何か倒れる音が聞こえるーーーそして何かが破裂する音が響き渡ったのだった。

 

 

 

「ブライアン!ブライアン!一体どうしたのですか!」

 

 

 

電話の彼女に向かって懸命に呼びかけるが、その返事が返ってくることはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三度目の同じ光景を目の前にしたとき、マックイーンは自身の置かれた異常性に気づいた。

 

 

 

 

――あの男の仕業に違いありませんわ

 

 

 

 

 

―――急いでトレセン学園に戻って、吉良のことを探す。

 

 

 

 

しかし彼の姿はどこにも見当たらず、既に時刻は8時27分を回ってしまっていた。

 

 

 

 

 

「一体あの男はどこに…」

 

 

 

 

「―――どうやら私のことをお探しのようだな」

 

 

 

 

 

唐突に背後から聞こえてきた声の方向に急いで振り向くと、そこには探していた人物―――吉良吉影がいたのだった。

 

 

 

 

 

「―――あなた一体、露伴さんやチームの皆さんをどうしたのですか!?それにこの朝を繰り返しているのは何ですか!?」

 

 

 

 

「――そんなことを言うということは、マックイーン。君は誰かを吹っ飛ばして時間を巻き戻したようだな。ということはマックイーン、君は少なくとも3回くらいはこの朝を繰り返してきてるんじゃあないかな…?」

 

 

 

 

 

――やはりこの悪魔の仕業だったのだ

 

 

 

 

 

マックイーンは憤怒のこもった目つきで吉良を睨みつけたが、吉良はそれを意にも介さず言葉を続けた

 

 

 

 

 

「――私の能力、キラークイーンは成長したんだ…「第三の爆弾、『バイツァ・ダスト』君が私のことを誰かに喋ったり、誰かが私のことを探ろうとすると発動する爆弾で、発動すると私を追った者を爆弾で吹っ飛ばして時間を一時間ほど巻き戻す能力なのさ…」

 

 

 

 

「――そして君は今、露伴という男。そしてシリウスのメンバーをどうしたのかと言ったな…君がそいつらに私の正体を話したからこうなったのさ…君はある意味、歩く地雷と化したってわけだな」

 

 

 

 

…この男という精神のどす黒さ。そしてそれに気づかず正体を話してしまった自身の浅ましさ。

 

 

 

 

その毒牙にかかってしまったマックイーンは、吉良への憤りと自身の不甲斐なさに見せまいとした涙をあふれさせながら、せめてもの虚勢を張って吉良に問いかけた。

 

 

 

 

「――――時間が一時間ほど戻ったというのなら、露伴さんやブライアンさんは死んでいませんわ」

 

 

 

 

その言葉を聞くや否や、吉良は眉を吊り上げて高笑いを始めたーーまるで掛け算のできない同級生を小馬鹿にするガキのように、吉良は彼女を嘲ながら口を開いた

 

 

 

 

「フハハハハハッ!確かにそうだな…だが君は見ただろう!?ここに来るまでのランニングコースの中で、何か見覚えがあるというデジャヴを感じているはずだろう…?同じ景色を繰り返していると」

 

 

 

 

「つまり前の朝に行われたことは、必ず運命として固定化されるということさ!…つまりあとは頭の回る君なら皆まで言わずともわかるはずだ!」

 

 

 

 

――その瞬間、マックイーンの顔は青ざめた。

 

 

 

 

前の朝に起こった出来事は運命として固定化される…つまり前の朝に爆破された人間はその事実を固定化するということになる

 

 

 

 

マックイーンは校門から飛び出し、100~200メートル先に目を凝らすーーーそこには岸辺露伴が誰かを待つかのように誰もいない交差点の一角に立っていた。

 

 

 

 

―――彼を助けなければ

 

 

 

 

懸命に足を繰り出して、露伴のもとに駆け寄る…しかし彼の距離まで残り数十メートルとなったところで、彼の背中から突然血しぶきが吹き出し、そのまま爆破が全身に広がり消滅したのだった。

 

 

 

―――助けられなかった

 

 

 

 

力なく地面に座り込み、涙をアスファルトに落とす…露伴の様子を見たらブライアンに電話する気にはとてもじゃあないがならなかった。

 

 

 

 

「ククッ…時刻は8時31分を回った。君に憑依したキラークイーンは、君が露伴と出会い、彼や君のお仲間に私の正体を話したという事実を消し飛ばして時間は流れていくわけだ…君は私の正体を能力がある限り話せないし、何か書いたり動画で残したりしても、見た者は爆死するわけだな…君がどんな行動を起こしたかは知らないが、今みたいに君の行動が原因となって彼らは死んだってわけさ。このままバイツァ・ダストを解除すれば、露伴たちの死亡は揺るぎないものになるが、まだ解除はしないよ。まだ君に私の正体を嗅ぎまわっている奴が何人か尋ねてくるだろう。そいつらを始末するまでは解除はやめておこう」

 

 

 

 

吉良はそう言うと、踵を返して去っていった。

 

 

 

 

マックイーンは絶望に打ちひしがれていた――正に無敵というべき吉良の能力。その恐るべき能力の手の内を明かされても尚、マックイーンに打つ手はなかった。

 

 

 

 

 

 

第三の爆弾「バイツァ・ダスト」

 

能力者;吉良吉影

 

 

破壊力 - B / スピード - B / 射程距離 - A / 持続力 - A / 精密動作性 - D / 成長性 - A

マックイーンを衝動的に殺害し、絶望的状況に追い込まれた吉良が矢に刺されたことによって成長し、発現した能力。

憑依した人物から吉良の正体の情報を得ようとすると爆弾が発動。吉良の正体を知ろうとした人物を何人だろうと爆殺し、どんな能力をもってしても抵抗は不可能。

同時に時を吹っ飛ばして1時間ほど戻す。時間が戻る前に起きた出来事は『運命』として残り、バイツァ・ダストを発動している限り時間が戻った後でも再現される。ただし、憑依されている者の行動次第では、この運命は変わりうる。

時間が戻ったことは、キラークイーンに憑依されている人間以外は感知する事が出来ない。このことは吉良本人も例外ではなく、時間がもどったことを知っていて記憶もそのまま保持していられるのは憑依されている本人だけである。ただし、発動と同時に時が戻った初回については吉良だけが記憶を持ち越せる。

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