吉良吉影はトレーナーとして静かに暮らしたい   作:ボンゴレパスタ

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アナザーワン バイツァ・ダスト4

 

 

――――私のせいですわ

 

 

私が岸辺露伴やブライアンたちに吉良の正体を話さなければーー吉良の能力の全貌を知っても尚、マックイーンには最早打つ手が残っていなかった。

 

 

 

小さく身体を震わせながら立ち上がろうとしても、思うように力が入らず、思わず倒れこんでしまう…マックイーンの身体が地面に激突する寸前、彼女の身体を何者かが支えたのだった。

 

 

「大丈夫!?」

 

 

マックイーンを助けた少年は随分小柄で逆立ったクセのある短髪という風貌をしており、マックイーンと同じ年くらいか、少し年上のようだった。

 

 

 

 

 

 

「…君、トレセン学園の生徒だよね?――僕の名前は広瀬康一。ちょっと君に聞きたいことがあるんだけど」

 

 

 

 

 

―――まさか、この方

 

 

 

 

 

だとすると非常にまずいことになる。この広瀬康一という男はもしかして。

 

 

 

 

 

「…あ、ありがとうございますーー大変失礼いたしました」

 

 

 

力なくその少年にお礼を述べると、急いでそこから立ち去ろうとする…しかしマックイーンはその進路を大柄な男によって塞がれてしまったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…すまない。ケガはなかったか?」

 

 

 

 

 

 

190センチ以上はあろうかという身長に、全身を白に統一した服装――特徴的な風貌をしたその男は、非常に眉目秀麗な顔で覗き込むと、ぶつかったマックイーンに詫びを入れた。

 

 

 

「承太郎さん!集合場所はここで合ってますよね?露伴先生、先に着いてるはずなのにいなくって…」

 

 

 

 

 

――やはりこの方たち、岸辺露伴さん達の仲間のようですわ

 

 

 

岸辺露伴とこの場所で待ち合わせしていたということは、この男たちは能力者ということになる。やはり吉良はこの男たちの追跡の目を免れるため、川尻浩作としてトレセン学園に潜り込んだのだ。

 

 

 

 

そしてこの男たちがこの場所に来たのは…

 

 

 

―――調べに来たんですわ、吉良吉影のことを

 

 

 

 

康一たちに質問を受けるわけにはいかない。マックイーンはすぐにこの場から立ち去ろうとしたが、唐突に背後から声が聞こえたのだった。

 

 

 

 

「おっと、集合にちょっと遅れちまったな。もう8時33分だ…」

 

 

 

 

後ろを振り返ると、そこには二人の男がいたーーー1人はブルドックのように凶悪な目つきをしており、ポンパドールのような髪型をしていた。もう1人はさながらミケランジェロが彫った彫刻のように美しく、先ほどの大柄の男とよく似た顔つきの男だったが、その頭には特徴的なリーゼントを乗っていたのだった。

 

 

 

「あ!仗助君に億康君!遅いよもう!」

 

 

 

 

「ごめんな、康一~、ちょいと寝坊しちまってよ…って露伴のヤローは来てねーのかよ!あいつがいなきゃあ情報を聞き出せないじゃあねーかよ!」

 

 

 

 

 

―――こ、この二人も仲間なんですわ

 

 

 

 

急いでその場から立ち去ろうとするマックイーンだったが、その時彼女に康一が声をかけたのだった。

 

 

 

 

「君、さっきここに男の人は来ていなかったかい?」

 

 

 

 

「――いいえ。岸辺露伴さんなんて人、私は知りませんわ」

 

 

 

尋ねてきた康一の顔を見ようともせずにマックイーンは立ち去ろうとしたが、唐突に彼女の肩を掴んだものがいた。

 

 

 

「承太郎さんっ!どうしたんすか、突然!?」

 

 

 

「―――待ちな…お前今『岸辺露伴』って言ったな。俺たちは一度もあの男の苗字を口にしてないんだぜ…」

 

 

 

 

 

――――なっ

 

 

 

 

周囲の視線がマックイーンに注がれる。返事に窮していたマックイーンだったが、返事を待たずに承太郎は口を開いた。

 

 

 

 

 

「――君はメジロマックイーン君、だな?先ほど露伴から連絡が来たんだが、君のチームのトレーナー、数日前から行方不明だそうだな…怪しいと思うかもしれないが、何か事情を知っているなら教えてほしいんだ」

 

 

 

―――情報は既にこの人たちの手に渡っていた。

 

 

 

 

 

マックイーンが声を出せずにいると、間に仗助が入り口を開いたのだった。

 

 

 

「…ごめんな~メジロマックイーン、だっけ?今君に質問したのが俺の親戚の空条承太郎さん。最初にあったやつが広瀬康一。怖そーな顔してるやつが虹村億康だ…そして俺の名前は東方仗助だぜ」

 

 

 

 

 

 

 

 

――もう逃げることなんてできませんわ

 

 

 

 

 

 

恐らくこの4人が、吉良を追っていた最後の人たちで、露伴と合流して情報収集をするつもりだったのでしょうが、私の素性が知られていること、そして岸辺露伴のことを口にした時点で逃げることはもうできない…

 

 

 

 

 

実際に4人はマックイーンが逃げ出すことがないようにやや間隔を保ってはいるが、取り囲むように彼女の周りに立っていた。

 

 

 

 

 

 

――恐らくこの4人の能力者が吉良を倒す最後の希望である以上、彼らに質問をさせるわけにはいかない。

 

 

 

「ちょっとした質問なんだが、君が何か知っていることは…」

 

 

 

 

 

「お答えできません!!」

 

 

 

仗助の声を、質問を止めさせるために咄嗟にマックイーンは大きな声で遮るーーーしかしながら、そのことが却って4人の心に大きな疑念を残すこととなったのだ。

 

 

 

「おい…急にどうしたんだ…叫んだりして」

 

 

 

「まだ何も質問してねーのによ~」

 

 

 

――――もう駄目ですわ。今の私の言い方じゃあ、ますます疑いたくなりますわ

 

 

 

――最早マックイーンに手立てなど残されていなかった。これから4人には質問を投げかけれる…吉良に迫った時点で能力が発動する以上、彼らが質問した時点で吉良の能力が発動する可能性は否定できないため、彼らに質問をさせてはいけないとマックイーンは判断した。

 

 

 

――――1つ可能性がある。たった1つだけ、彼らからの質問を切り上げさせ、彼らがその異常性に気づくことができる手段がある。

 

 

――正直怖かった。ただあの汚らわしい殺人鬼を倒せる可能性が彼らにある以上、彼らには生きていてもらわなければならない

 

 

 

 

 

マックイーンは静かに目を開けると、胸ポケットからペンを静かに取り出すーーーそして4人には見えないようにペンを喉元に突き付けると、満身の力を込めてそれを喉元に突き立てた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――その手段は、私が死ぬこと。私がこの場で死ねばあの男の能力を解除できますし、彼らは殺人鬼の存在に勘づくことができるはずですわ。

 

 

 

「承太郎さん、早く質問しましょうよ。この子、吉良吉影のこと何か知ってるかもしれないっすよ?」

 

 

「―――待て。もしかしたら質問すること自体に何か問題があるのかもしれない…そして何か様子がおかしい。急に蹲ったりして…」

 

 

 

承太郎がうずくまるマックイーンに近づき肩を掴んで起こすと、マックイーンは両手でペンを掴み、喉に突き立てていたーーーしかしそのペンには見覚えのある姿…キラークイーンがマックイーンの握るペンを抑え込んでいたのだった。

 

 

 

「さ、刺せない…ペンがピクリとも動きませんわ」

 

 

 

「こいつはキラークイーンっ!」

 

 

 

 

「この姿は一度見たら忘れねぇ!」

 

 

 

4人がキラークイーンに向かってスタンドを繰り出して攻撃するが、その攻撃は全て露伴の時のようにすり抜けてしまったのだった。

 

 

「正確に言うと、キラークイーン第三の爆弾「バイツァ・ダスト」さ…君たちの瞳に入ったということ、それはつまり攻撃が既に完了しているということだ!」

 

 

 

キラークイーンがスイッチを入れると、4人の身体が一斉に破裂音と共に崩れていくーーその光景をマックイーンはただ見ることしかできなかった。

 

 

 

「きゃああああああああああああああああ!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小鳥がさえずり、人々の往来が朝の訪れを告げる…いつものランニングコースである街路樹にマックイーンは立ち尽くしていたーー時刻は7時36分、訪れた4度目の朝にマックイーンは大粒の涙をこぼしながらうわ言のように呟いた。

 

 

 

 

「また救えませんでしたわ…どうあがいても1時間後、吉良を止められる4人が露伴さんみたく爆破されてしまいますわ」

 

 

 

 

―――吉良吉影の醜悪さ、どす黒さを体現したような能力

 

 

 

 

自動的に吉良を守るバイツァ・ダストの能力は、マックイーンがどう考えても無敵の能力だったーー吉良が死ぬか、バイツァ・ダストの能力を爆死する前に解除しない限りこのまま何もしなくても彼らが死ぬことは既に運命として確定していた。

「―――能力を解除するか、あの男が死ぬか」

――何れにせよ、この4回目の朝があの男を止められる最後のチャンスですわ

 

 

 

これから私がすることは、メジロの顔に泥を塗ることになってしまうでしょう…ですが吉良を倒せる可能性があるなら、大切な仲間たちと、トレーナーさんが愛したチームやトレセン学園を守ることができるのなら

 

 

マックイーンの顔には最早、迷いなどなかった。

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