吉良吉影はトレーナーとして静かに暮らしたい   作:ボンゴレパスタ

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クレイジー・D(ダイヤモンド)は砕けない1

時刻は8時28分。

 

 

 

 

 

吉良吉影がバイツァ・ダストを発動し、その勝利は確実かに思われた――しかしメジロマックイーンの奇策によって、吉良の正体が遂に杜王町からやってきた東方仗助に知れ渡ることになったのだった。

 

 

 

 

「てめー、今確かに言ったよな?」

 

 

 

 

不良が喧嘩を吹っ掛ける時の挑発とは比較にならないほどの、仗助の殺気のこもった目つきや構えにマックイーンは思わず身じろぎした。

 

 

 

 

「なっ…」

 

 

 

 

吉良も先ほどまでの様子とは打って変わり、青ざめた顔つきで仗助のことを見つめていた

 

 

 

「吉良吉影っつたよな~!」

 

 

 

 

 

吉良は仗助の姿を認めると、反対の方角へと逃げようとするーーーしかし仗助がポケットから手を出すと、吉良が頬から血を吹きながら地面に吹っ飛ばされたかのようにマックイーンには見えた…やはり東方仗助も能力者だったのだろう。

 

 

 

 

 

実際仗助の繰り出した中世のグラディエーターのような恰好をしたスタンド、クレイジーダイヤモンドの拳は吉良の顔面を捉え吹っ飛ばしていたのだった。仗助は地面に這いつくばる吉良の姿を冷たくにらみつけると、手の平を慎重に髪にあてがいその乱れを整えるのだった。

 

 

 

 

 

――頭上には淀んだ雲から雨がポツポツと降り注ぎ、その様は無様な罪人の処刑を嘲り笑う聴衆のようだった。僅かに湿ったアスファルトに惨めに這いつくばりながら、吉良は眼前に立ちふさがる仗助の姿を憎々し気に睨みつけたのだった。

 

 

 

 

 

――全てはそこの小娘のせいだ

 

 

 

 

 

スタンド能力を持たない非力な少女によって破綻した自身の安寧。

吉良にとってそれは取って代えることができない代物であり、それを奪ったのがメジロマックイーンであるという事実は吉良の自尊心を深く傷つけていた。

 

 

 

 

 

仗助と接敵してしまった以上、最早生き死にを掛けた戦いを避けることはできないだろう。依然地に這いつくばりながら、吉良は前方の無表情にこちらを見つめるクレイジーDを睨みつけた。

 

 

 

 

――今の仗助の攻撃

 

 

 

 

 

吉良の逃走を防ぐために行ったクレイジーDの攻撃。

牽制のために放った攻撃のために満身の力は籠っていなかっただろうが、今の攻撃は…

 

 

 

 

 

 

 

――私は必ず生き延びなければならない

 

 

 

 

私自身の平穏のために、そして…

 

 

 

 

 

吉良は眼前の仗助を睨みつけると、マックイーンの傍に落ちているバッグに目配せした。

――幸い運はまだこちらに向いているようだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

仗助は吉良を睨みつけながら、さながら死刑執行人のように冷え切った声で吉良に話しかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「もしもてめーが同姓同名の人違いであれば、治してやるからよ」

 

 

 

 

 

 

 

仗助がクレイジーDに声をかけると、雄たけびをあげながらクレイジーDが一歩踏み込んでくるーー吉良は最早自身に選択肢が一つしか残されていないこと、そしてこれからの運命に腹を括ると、吉良は身を守るために自身のスタンドの名前を叫んだのだった。

 

 

 

 

 

「戻れキラークイーンッ!!」

 

 

 

 

 

マックイーンの背後からキラークイーンが飛び出し、吉良の眼前に立つーーそして、繰り出されたクレイジーDの拳を間一髪のところで防ぐのだった。

 

 

 

 

 

マックイーンは現在の時刻を確認し、すかさず遥か先にいる露伴の姿を確認するーーすると岸辺露伴の身体は時刻になってもその身体は崩壊することはなく、降り始めた雨空を忌々し気に睨みつけているのだった。

 

 

 

 

―――露伴さんが生きているということは

 

 

 

 

 

 

 

 

つまりバイツァ・ダストは解除され、露伴をはじめとした人々が爆破される運命は消滅したということになる。

 

 

 

 

 

 

「運命に勝ちましたわっ!!」

 

 

 

 

 

 

喜びのあまりマックイーンは大声を上げるーーしかしその一時の喜びは、殺人鬼の言葉によってかき消されることになった。

 

 

 

 

 

 

「激しい喜びはいらない…その代わり深い絶望もない。植物の心のような人生を…そんな平穏な生活こそ私の目標だったのに」

 

 

 

 

 

 

目の前の殺人鬼が放った唐突な人生論――ある意味生き方としては理にかなっているのかもしれないが、それを口にしているのは平穏とは程遠い人殺しを繰り返す怪物である。

 

 

 

 

 

「そんなことがよ~許されるはずがね~だろがよ~!てめーが重ちーを殺したから追ってんだろうが!!」

 

 

 

 

 

吉良の口にした、エゴイズムと矛盾を孕んだ醜悪な価値観に思わず仗助の怒号が飛び、二人はその吐き気を覚えるような邪悪さに顔を歪ませていると、吉良はそれを全く意にも介さずに言葉を続けた。

 

 

 

 

 

「そしてその平穏を妨げるのは、貴様らたったの二人だけだ。つまり君たちを始末すれば、再び私たちの平穏な生活が戻ってくるということだ」

 

 

 

 

 

その言葉に反応し、再び仗助がクレイジーDを構えると、続けて吉良もキラークイーンで戦闘態勢を取るーースタンド同士が一歩踏み出す直前、二人の間には互いの息遣いが聞こえるほどの静寂が流れる。パラパラと流れる雨の一粒一粒がくっきりと視認できると錯覚するほど、スローモーションに時は流れていた…やがて同時にクレイジーDとキラークイーンが踏み出し、攻撃に入る。

 

 

 

 

互いに一歩も譲らずに肉弾戦を繰り広げていくーーやがてキラークイーンの絶え間ない攻撃の中で、僅かな間隙が生じたーーそれをクレイジーDがその隙間を縫うように拳を繰り出していくが、キラークイーンはそれを躱すと、クレイジーDの顎に鮮やかな蹴りを繰り出したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「グッ…」

 

 

 

 

 

 

仗助が顔から血を吹き出して吹っ飛んでいく…そして側道に生えている生垣に突っ込むと、マックイーンは驚愕の声を上げた。

 

 

 

 

 

「そ、そんな…まさか吉良の方が…」

 

 

 

 

 

 

吉良はスーツの身だしなみを整え、ほくそ笑みながら生垣に倒れこむ仗助を見下ろすという、先ほどとは逆の構図で彼に言葉を投げかけた。

 

 

 

 

 

 

「――さっきの攻撃で、君のクレイジーDの実力はある程度わかったよ、東方仗助…私も成長しているということさ。トレセン学園という場所で、精神的にも肉体的にも成長したからね…それに君はキラークイーンの拳に触れないように防御をしながら戦わなければならないからな…本来の力を発揮するっていうのは難しいんじゃあないか…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

吉良の言葉に、仗助は顔を歪ませたーーー確かに吉良の言葉は的を得ていた…現在仗助の前に立ち塞がるキラークイーンの戦闘力は、承太郎が靴のムカデ屋で戦った時の話よりはるかに向上していた。

 

 

 

 

 

 

 

―――もしかすると、承太郎さんよりも

 

 

 

 

 

 

体勢を立て直すために急いで生垣から立ち上がり、吉良から距離を取るーーすると吉良はますます顔に冷酷な笑みを張り付かせながら言葉を続けた。

 

 

 

 

 

 

「―――おいおい。私のことを追ってきたっていうのに、逃げたら意味がないだろう?…まぁ、遠距離の方がこれの真価を発揮できるがな」

 

 

 

 

 

 

 

マックイーンは吉良の言葉を聞いて、地面に落ちた自身が持ってきたバッグを見るーーーするとそこに入っているはずのものが、いつの間にか姿を消しているのだった。

 

 

 

 

 

 

 

―――まさか

 

 

 

 

 

 

もしもあれが吉良の手に渡ったとしたら…だがそれしか考えられない。あれは自分で動くことはできないはずだから。

 

 

 

 

 

 

マックイーンは吉良と仗助の間に目を凝らす…すると、そこには非常に見えにくいが透明の円形の物体が真っすぐ仗助に向かっていた。

 

 

 

 

 

 

―――やはりそうですわ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

考えるよりも先に、身体が動いていた。マックイーンは咄嗟に仗助の元に駆け寄ると、彼の身体を突き飛ばした。するとその円形の物体は、火を吹きながらマックイーンの身体を貫通していった。

 

 

 

 

 

 

 

「―――フム。もう少しで仗助に一発喰らわせることができたのに、お前のせいで当たらなかったじゃあないか…メジロマックイーンーーだが、まぁいい。どうせお前も仗助を吹っ飛ばした後に始末するつもりだったからな」

 

 

 

 

 

 

吉良はそう言うと、身体からキラークイーンを再び出現させた…キラークイーンの腹部には、マックイーンが先ほど吉良を倒すために持ってきた猫草が収納されていたのだった。

 

 

 

 

 

 

「私がわざわざこいつを飼っていたのはこのためさ…猫草の空気弾はキラークイーンの爆弾に利用するためにな」

 

 

 

 

 

 

―――目の前で一人の少女が力なく倒れる…仗助は眼前の吉良を阿修羅のごとく煮えたぎった怒りを内包した視線を送ると、怒号を発するのだった。

 

 

 

 

「吉良吉影ッーーーーーーーーー!!!!」

 

 

 

 

 

本来であれば仗助の怒号は辺りに響き渡り、集合場所に到着している仗助を除いた4人の耳にも届くはずだったーーしかし突然降った通り雨は仗助の魂の慟哭を雨音で打ち消したのだった。

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