吉良吉影はトレーナーとして静かに暮らしたい 作:ボンゴレパスタ
木造の旧校舎から響き渡った大きな爆音は、待ち合わせをしていた空条承太郎たちの耳にも届いていた。
「じょ、承太郎さんっ!今の音って!!」
「トレセン学園の方から聞こえたみたいだぜ~!!行こうぜ、承太郎さん!」
4人はトレセン学園の方で聞こえた大きな音に、すかさず駆け出していくーーその音はトレセン学園一帯に響いており、人々はその騒ぎに何事かと集まり出していたのだった。
―――視界が霞み、息をするたびに空気を取り入れようと肺が悲鳴を上げる。
仗助の容態は、腹部や脚に木片が深々と突き刺さり、その身体は切り傷と火傷に覆われている。仗助は最早いつ倒れても可笑しくないような状態だったが、同時に彼は覚悟をしていたーーすなわち、どんなことがあっても吉良との決着をつけるという覚悟だった。
「―――東方…仗助…」
「出しな…てめ~の…キラー…クイーン…を…」
マックイーンは仗助から側から離れるように促され、その勝負を静かに見届ける…トレセン学園の一角で繰り広げられる、恐らく誰にも気づかれることがない静かな闘い…しかしその闘いには杜王町の尊厳と、トレセン学園の未来が懸かっていた。マックイーンが固唾をのんで見守っていると、その静寂を打ち破るかのように吉良と仗助が雄叫びを上げながら向かっていく。
既に満身創痍の中、キラークイーンとクレイジーDは一進一退の肉弾戦を繰り広げていくーーマックイーンはその闘いを視認することができないことに、また自身が何の役にも立てないことへの憤りを感じながら、仗助に声援を送っていた。
――正直先ほどの戦いでは吉良の方が少し上手でしたが、今はお互いが負傷していますわ…どう転んでも可笑しくないはず…
クレイジーDに触れようとキラークイーンが拳を繰り出すが、その度にクレイジーDは的確にその攻撃を防いでいくーーークレイジーDが反撃を加えようと拳をキラークイーンの頬にあてると、吉良はうめき声をあげながら何とか仰け反りながらキラークイーンの蹴りで反撃を加えた。
「―――ウグッ」
キラークイーンの蹴りによって仗助は膝に着いたのだったーー吉良はゆっくりと立ち上がると、忌々し気に仗助に対して口を開いた。
「―――やはり最悪の時にこそ、この吉良吉影に運命は味方するということか…東方仗助…貴様は本当によくやったと言っていいんじゃあないか…敵ながら天晴なやつだ」
「―――キラークイーン!!こいつを爆弾に変えろ!!」
勝利は最早揺るぎないものになったーーー吉良の指示によってキラークイーンが倒れた仗助に拳を繰り出していくーーマックイーンはその光景を見て、動かずにはいられなかった。仗助と吉良の間に割り込むように入ると、両手を広げ、仗助のことを懸命に守ろうとするのだった。
―――もう二度と失いたくない
マックイーンの脳裏にはチームメイトやトレーナー…守りたい人たち、守りたかった人たちの顔がよぎっていく…これ以上自分の手から零れ落ちないように、これ以上目の前の悪魔から大切な人を奪われないようにーーーマックイーンは自身に迫ってくるキラークイーンの攻撃から目を瞑るーーすると、キラークイーンの攻撃は手前で止まったーーー正確にはその拳は止められていた
「―――――そんなまさか」
吉良はキラークイーンの拳が止められている場所をまじまじと見つめるーーそこには最初何も存在していないかのように思われたが、蜃気楼のようにぼんやりと見えるヴィジョンが浮かび上がってくるーーその姿はさながらルーヴル美術館に所蔵されているギリシャ彫刻の傑作であるサモトラケのニケに顔と腕を付けたように双翼が背中に生えた女性のような、清廉で、しなやかでありながら猛々しさも感じる容姿をしていたーーその天使のようなものがキラークイーンの腕を力強く握ると、吉良の腕はその手形がくっきりと浮かび上がるのだった。
「――――ありえない……まさか…発現したというのか…?」
万が一にもありえなかった逆転劇。吉良はキラークイーンをすぐに離れさせると、信じられないものを見たかのようにマックイーンの横に控えているそれを見つめ、口を開くのだった。
マックイーンは恐る恐る閉じていた目を開くーーー目の前には、自身を吉良から守るように天使のような者が立ちふさがっていたーーそれはマックイーンの側に控えると、倒れている仗助に手をかざしたーーすると仗助はゆっくりではあるが、自分の足で立ち上がったのだった。
「…気持ちってやつはよ~人を動かす原動力になるんだよな…本当はいつ死んでもおかしくはねーんだろうがよ~…勇気が後押ししてくれている…ここにある正義の心が俺を後押ししてくれているのを感じるぜ…マックイーン…それがお前のスタンドの能力なんだな」
「―――私の、能力―――?」
「……あぁ、奇跡みたいだがよ~最高のタイミングで開花したんだな…マックイーン。その天使みたいなやつがお前のスタンドなんだ…そしてさっき触れられてわかったんだが、お前のそのスタンドの能力は…」
「―――感情を操る能力だ。触れた者が持っている感情を膨らませたり、反対に無くしたりできる能力だぜ…お前のスタンドに触れられたおかげで、ちょっぴりだがよ~立ち上がる気力を戻せたぜ……」
「―――これが…私のスタンド…」
無表情だが、聖母のような暖かさでマックイーンを見守っているスタンドーーそのスタンドはマックイーンが試しに心の中で念じると、吉良の前の悍ましい姿をした、人と猫を掛け合わせたような容姿をしたスタンドの前に立ちはだかり、両手を構え戦闘態勢を取ったのだった。
「ば、バカな…運命はこの吉良吉影に味方していたはずなのにーーーキラークイーンッ!」
キラークイーンが再びマックイーンを攻撃するために攻撃を繰り出してくーーしかしそのスタンドはキラークイーンの攻撃をいなすと、キラークイーンの腹部に拳を打ち当てるのだった。
吉良の身体が宙に浮き、力なく地面に崩れ落ちるーーマックイーンは信じられないという顔で、自身のスタンドを見つめていた。
「―――決めましたわ」
「私のスタンドの名前はーーーGREAT DAYSです」
――――ありえない
腹部にグレイトデイズの攻撃を受けながらも、その悪魔は身体に駆け巡る醜悪な執念のもと、ふらふらと立ち上がったーー吉良は立ち上がると、仗助達と距離をとるかのように、そして自身がもう打つ手がないことを認めたくないかのように無意識に数歩下がった。
――どうやら戦いの中で校門付近に戻ってきていたようだな
時間は今何時だ…?ライスは今頃何をしているのだろうか。きっと私が合宿所にやってくるのを今か今かと待っているだろう…
――帰らなければ
しかし運命は、トレセン学園に根付く正義の心は最早吉良のこと見放していた。校門の外、吉良の10メートルほど離れた距離から、まるで吉良を追い討ちするかのように声が上がったのだった。
「ほら!承太郎さん!爆発が起きていますよ!」
「――康一君、それよりも聞き込みをしないと。あの仗助は一体どれほど待たせるつもりなんだか…」
そこには爆発騒ぎを観物に来た野次馬と共に、吉良を追うために仗助と共に杜王町からやってきた承太郎たち4人の姿があった。
「あ、あの人ケガしてる!それに仗助君もいるよ!」
「仗助、なんでケガしてんだ!?」
「―――仗助のケガとさっきの爆発…どうやら無関係じゃあないようだぜ…どうやら話が見えてきたようだな」
―――杜王町とトレセン学園にある、確かに存在する正義の心…そして黄金の意思が遂に殺人鬼を追い詰めたのだった。
グレイト・デイズ
能力者;メジロマックイーン
破壊力 - A / スピード - A / 射程距離 - D / 持続力 - D / 精密動作性 - D / 成長性 – A
天使の姿を模したスタンド。スタンドが触れた者の感情を増減させることができる。
戦う際に恐怖という感情を取り除いたり、逆に勇気という感情を増やしたりすることも可能。元々触れた者が有していない感情を操作することは不可能。(例えば吉良に罪悪感を抱かせたくても、元々その感情とは無縁なため罪悪感を抱かせることはできない)
次回、最終回になりますが分岐エンドがあるため分けるかもしれません