吉良吉影はトレーナーとして静かに暮らしたい   作:ボンゴレパスタ

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さよならトレセン学園ーー黄金の心

 

 

 

 

 

雨が上がり、雲の隙間から夏の日差しが顔をのぞかせている。

トレセン学園の校門付近…硝煙と瓦礫に包まれた一帯は騒然としていた。

 

 

 

 

 

 

「こ、これは夢だ…」

 

 

 

 

 

 

譫言のように呟き、曇天に霧散していく一言。杜王町に産まれ落ち、産まれながらに罪を犯すしかないという性を背負った罪人は、今ここに裁きの時を迎えようとしていた。

 

 

 

 

 

 

自身が一年もの時をかけて積み上げてきた新たな人生ーーその全てが瓦解するように吉良は糸の切れたマリオネットのように力なく倒れ、後は審判の時を待つのみとなったーーすると遅れて救急隊員たちが現場に到着し、その内の1人が吉良の元へと駆け寄ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「大丈夫ですか?もうすぐ救急車が来ますからね」

 

 

 

 

 

 

救急隊員としての責務全うしようとした、声をかけた正義感あふれる彼女に対して、吉良はその手を一心不乱に掴み取るーーその瞬間、もはや吉良の傷を映し出したかのようにヒビが入って傷だらけなキラークイーンが姿を現し、隊員に憑依するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーまさかこれは

 

 

 

 

 

 

 

最早打つ手は全て封じ、追い詰めたかに思われた悪魔…だがその悪魔のその目には、未だ執念が宿っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

マックイーンはすぐに叫ぶかのように周囲の仗助たちに声をかけたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大変ですわ!バイツァ・ダストが発動致しますわ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――バイツァ・ダスト?」

 

 

 

 

「今まで説明する暇がありませんでした…吉良は成長したんですっ!スタンド能力を持っていなかった時の私や、今吉良の側にいる女性のように無力な人間に対して発揮して、吉良が絶望した時に偶然発動する能力ですわ!つまり今、正体が明るみに出てとことん絶望している今のように!!時間を一時間ほど巻き戻す爆弾なんです!!」

 

 

 

たった今一同が知った、吉良の恐るべき能力。その突拍子のない話に一同が驚愕していると、隊員の腕をつかんだ吉良は、何かに取り憑かれたように言葉を捲し立てたのだった。

 

 

 

 

 

 

「ーー私の名前は吉良吉影だ。今まで手の綺麗な女性を50人以上手に掛けてきたーー貴方だけだ。私の正体を知るのは、貴方だけになるッ!!」

 

 

 

 

 

 

「大変ですわ!!バイツァ・ダストが始まりますわ!!今吉良を倒さなければ、吉良の正体を知るものはみんな爆死してしまいますわ!!」

 

 

 

――その瞬間、弾かれたように承太郎たちが吉良に向かって駆け出して行った。

いつもは冷静に状況を分析する承太郎が、何も言葉を発さずに駆け出していることからも、その緊急性は十分に窺い知ることができたーー吉良はこちらに向かってくる承太郎たちを見据えると、口を開いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「来るか!承太郎っ!!近づいてこい!時を止めてみろ!きっとその限界さが、再びバイツァ・ダストを作動させるのだ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「承太郎さん!!時を止めろ!!キラークイーンにスイッチを押させるな!」

 

 

 

 

 

 

負傷によって身体を動かすことができない仗助が力の限り叫ぶーーしかし既に吉良はキラークイーンの右手を握りこみ、スイッチを押そうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「いいや!限界だ!押すねっ!!…今だ!」

 

 

 

 

 

 

キラークイーンの親指が今まさにスイッチに触れようとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

勝利まであと一歩というその場面。吉良は自身の身に起こった異変に気が付いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――スイッチを押そうとするその手が動かない

 

 

 

 

 

 

 

 

「キラークイーンッ!!!スイッチを押せ!!」

 

 

 

 

 

 

 

再び自身の側に控えるキラークイーンに命令するが、キラークイーンは静かに首を横に振るのだった。その顔はいつものように表情を窺い知ることはできない…だが、スタンドとは能力者の精神を表すもの…吉良は自身の身に起こったことを認識できなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

―――なぜだ?

 

 

 

 

 

 

 

涙があふれて、前が見えない。

 

 

 

 

 

 

 

 

―――ライス、ライス…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一体なぜだ。なぜ今彼女への想いが…吉良が重い頭を前に向けると、その答えが視界に飛び込んできた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――メジロマックイーン…!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

――既に彼女のスタンド、グレイト・デイズの射程範囲に入っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー恐らくこの男は罪悪感で動くような男ではないはずですわ。

 

 

 

 

 

 

 

だとしたら、この男の心にあるもの。この男の心の中でスイッチを押すことを一瞬でも遅らせることができるもの…それはライスさんとの…

 

 

 

 

 

 

 

 

――時間で言えば、吉良がスイッチを押すことを遅らせたのはほんの一瞬だった。

だがそのたった一瞬が勝敗を左右するには、トレセン学園の未来を救い、その因縁の決着をつけるには十分だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「スタープラチナ・ザ・ワールド!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

その瞬間木に付いた葉の水滴が地面に落ちる直前で動きを止める。スタープラチナの能力によって世界は数秒間、時を止めてその中を承太郎はたった一人、行動することができるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

承太郎は制止した時の中で、静かに吉良のことを制止するというファインプレーを成し遂げた彼女に、静かに視線を送るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

仗助や目の前の少女―――マックイーンたちにこの役目はさせたくない。

 

 

 

 

 

 

 

 

―――手を汚すのは、一人で十分だ

 

 

 

 

 

 

 

 

仗助をはじめとした、杜王町に住む黄金の意思を持つ若者たち。そして、出会って数分しかたっていないが、恐らくたった一人でこの学園を守るために戦っていたメジロマックイーン。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その成長を肌で感じながら、承太郎は目の前で停止する吉良に向き直り、静かに深呼吸をするーーすると承太郎は背後から自身のスタンド、古代ローマの拳屈強な戦士のような容姿をしたスタープラチナを繰り出したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――やれやれだぜ、間に合ったようだな

 

 

 

 

 

 

 

 

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラァァァァァァァァーーーーーーーーーーーー!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

スタープラチナはその拳を繰り出すたびに、雄たけびを連ねていくーーその力強い拳が吉良の身体に撃ち当たるたびに、吉良の身体は、骨は、そして血管は粉々に砕けていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

承太郎は静かに吉良から背を向けると、口を開いた。

    

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――時は動き出す」

 

 

 

 

 

スタープラチナの能力が解け、世界に再び時間の流れが戻るーーースタープラチナに撃ち込まれた攻撃の痛みと衝撃が、津波のように吉良の身体を駆け巡っていく。その衝撃に吹っ飛ばされた吉良は数メートルを滞空すると、静かに地面に崩れ落ちたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「やった!間に合いましたわ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

―――最早勝敗は決した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

仗助たちはぼろ雑巾のように倒れている吉良を、静かに神妙な面持ちで見下ろしていた。

吉良は地面に血だまりを作りながら、その中で何か小さく呟いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウマ娘という生物は、生来人間よりも聴力に優れ、小さな音でも聞き分ける能力を持つ…つまりマックイーンは聞いてしまった。承太郎たちには聞こえなかった最期の声――トレセン学園の誇りを傷つけ、自身のトレーナーの命を平気で奪った男が審判を下されるその直前、譫言のように呟いたその一言を聞いてしまったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ライス」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おいストップ!そこに誰か倒れているッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マックイーンがその言葉の真意を聞くことは叶わなかった。

突然吉良の背後から、救急車が近づいてくる。スタープラチナの攻撃によって致命傷を負った吉良には近づく救急車を止める術はもう残されていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

後輪が吉良の頭を巻き込み、ひしゃげた音が辺りに鈍く響く。

 

 

 

 

 

 

 

「大変だ!男が救急車の下敷きに…」

 

 

 

 

「いるのに気が付かなかったんだ!!」

 

 

 

 

「早く車を戻せっ!!」

 

 

 

 

辺りは突然の出来事に騒然となり、救急隊員や警察は事態の確認や収拾のために慌ただしく動き始める。警察官は承太郎や野次馬たちをテープを使うことによって追い出し、救急隊員は救急車の下で血だまりの中で倒れこむ男の安否を確認するため、男の元へと駆け寄っていく。仗助やマックイーンたちはその光景を、固唾をのんで見つめることしかできなかった。

 

 

 

「―――死んでいます。即死です」

 

 

 

吉良の元へと駆け寄った救急隊員から発せられた一言。

その一言は、杜王町とトレセン学園の尊厳を踏みにじり、大勢の罪のない人々の命を奪ったこの男との長い闘いの終わりを告げる一言だった。

 

 

 

 

―――同じですわ

 

 

 

 

マックイーンは目の前でたった今死んだこの男―――吉良と自身がやったことは何ら変わらないという、喉にへばりついたザラメのような不快感を抱いていた。

 

 

 

 

―――この学園を守るためとはいえ、私は人を殺してしまった。

 

 

 

 

――吉良が救急車に轢かれる直前、既に能力は解除していた…それに吉良が胸につけていたペンダント…あれはライスがくれたものだと吉良は口にしていた。つまり、あの男の心の中には、少なくともあの少女との絆を感じていた節があったということではないだろうか…それにあの男が死の間際に発した一言は、彼が最期に思っていたのは、決して自分のエゴだけではなかったのではないだろうか。バイツァ・ダストを発動させたのも、承太郎さんの攻撃を受けても尚そのスイッチを押そうと試みたのも、自分が心許した少女のもとへ帰りたかったのだとしたら…

 

 

 

マックイーンは自身の友人――ライスの顔を思い浮かべる。彼女は生来、薄幸な気質を持つウマ娘だった…そんな彼女にとって、自身を支えてくれた吉良の存在がどれほど大きいものかは彼の話をする時のライスの顔を見れば明らかだった。結局自身のやったことが、ライスから大切なトレーナーを取り上げることに繋がってしまったのだ。

 

 

 

―――これは私が背負うべき罪ですわ

 

 

マックイーンは空を静かに見上げると、心の中で自身の大切な存在にーーーたった一人で孤独にこのトレセン学園を守ろうと、その誇りを取り戻そうと闘い抜いたその男に、その闘いが終わったことを報告するのだった。

 

 

 

 

 

 

―――終わりましたわ…トレーナーさん

 

 

 

この報告が何処かで彼に届いているのなら。どうか彼に心の安寧を。

 

 

 

街の喧騒の中で、今にも埋もれてしまいそうな少女の小さな、静かな願いは雲の切れ間から差す日差しに乗って天高く昇っていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

――トレセン学園で起きた、爆発事故。

旧校舎の2階で起きた爆発は、幸いにも周囲の建物には被害を及ぼさず、また生徒の殆どは夏合宿に向かっていたために生徒に被害は出なかったが、爆発直後にトレセン学園の校門付近にて爆破によってケガをした男が混乱し、救急車に飛び出してその場で死亡が確認された。男の遺体は顔がタイヤに巻き込まれ損壊が著しかったが、死亡の直前に男の手当てをしていた救急隊員の証言や、またその証言をもとに歯形の照合を行ったところ、その男の身元は1年程前から行方が分からなくなっていたM県在住の吉良吉影であると断定された。爆発事故の原因は警察の調査が行われるも、現在のところ爆発の原因はわかっていない。

 

 

 

 

シンボリルドルフは表向きの報告書を読み上げると、静かに向き直り目の前のマックイーンを見つめるーーマックイーンは彼女をじっと見つめ返すと、ゆっくりと口を開くのだった。

 

 

 

 

「―――わかりましたわ。今からお話いたします…このトレセン学園で何が起こったのかを…」

マックイーンの報告を聞いたルドルフは、誰もいない生徒会室で静かに目を閉じていた。

 

 

 

 

――何故トレーナー君は何も教えてくれなかったのだろう。

 

 

 

 

そう心の中で問いかけるが、既に彼女はその真意に気づいていた。

 

 

 

きっと私のことを巻き込みたくなかったのだろう…彼はそういう男なのだ。だから私は彼をトレーナーとして信頼したし、彼と共に全てのウマ娘のために邁進したいと願った

 

 

 

 

…そして、だから彼のことをーーー

 

 

 

 

彼女の頬に熱いものが流れていくーーその溢れ出る感情と共に。少女は誰もいない、部屋の中でしゃくりあげるように、皇帝と呼ばれた完全無欠のウマ娘としてではなく、たった一人のトレーナーを想うウマ娘として、一生背負っていくその想いを、傷を想って泣いていたーールドルフは大粒の涙を流して、声にならない声で届くはずのない彼の名前を何度も呼んだ。

――とある空き教室の一角

 

 

 

 

一人室内で佇む少女――マンハッタンカフェは、険しい顔を浮かべながら口を開く…最も傍から見ればその光景は、誰もいない教室の中で一人の少女が独り言をつぶやいているという異様な光景だが、カフェは意にもそれを意にも介せず空間に向けて言葉を投げかけたのだった。

 

 

 

「――それがあなたの本当の顔、というわけですか……マックイーンさんから貴方が生前何をしてきたのか聞きました…本当は顔も見たくありません…貴方がトレセン学園にいること自体、本当は嫌なんです」

 

 

 

「―――それでも、貴方の願い。聞き入れようと思います――貴方のためではありません…大切な友人のため…ライスさんのためです」

 

 

――突如として起こった、連続トレーナー失踪事件

短期間の間に失踪したトレーナーの数は3名にも上り、何れもその消息は現在も分かっていない。しかしその失踪の日時、状況や場所はそれぞれ異なっておりその関連性はないものであるとされ、次第にその話題は過ぎ去っていった…

 

 

 

その事件の元凶ともいえる吉良吉影が残した負の遺産…心の傷をライスは確かに負っていた…吉良がライスの元を去ってから既に1週間が経とうとしていた。ライスは部屋から一歩も出ず、無気力な毎日を過ごしていた。

 

 

 

 

今日もライスはぼんやりとした思考の中、無為に一日を過ごそうとしていた。すると、室内に急に風が吹き込んでくるーーその方向にゆっくりと目を向けると、開けた覚えがない窓が開いており、カーテンが室内に向かって静かに揺れていたのだった。

 

 

 

―――すると、カーテンの側にある机に見覚えのない1枚の紙が置かれていた。

 

 

 

 

 

ゼンノロブロイさんの物かな?

 

 

 

 

ライスがゆっくりと机に近づきその手紙を手に取ると、その差出人は、今ライスが会いたいと願って止まない人物だった。

------------------------ー--------

 

 

 

 

 

 

ライスへ

 

 

 

 

突然君の前から消えてしまって済まない。本当はあの日君のもとに帰りたかったんだが、事情があってそれも出来なくなってしまった。

 

 

 

 

そして併せてライスに謝らなければならないことがある。それはしばらくライスとは会えないということだ。それは君のことを嫌いになったからというわけでは決してないーー私にとって君は…私の全てだった。選抜レースが終わったその日の夜に、孤独に涙を流す君を見つけてから、宝塚記念を征するまでライスは私にとってかけがえのないものとなっていたということを伝えておきたかった。

 

 

 

 

―――あとは私の願いを聞いてほしい。

それは、これからもライスには走り続けてほしいということだ。

 

 

 

 

君の走りは素晴らしい。君の走りは人を魅了する才がある。

 

 

 

 

私はライスのことをいつまでも見守っているーーーだから、私にライスのことが届くように走り続けて欲しいーーーーー

 

 

 

--------------------------------

 

 

 

 

 

 

ライスは一字一字を噛みしめるように読み終えると、静かにベッドに涙を落としながら吉良の痕跡を抱きしめた。

 

 

 

 

 

―――お兄様

 

 

 

ライスの心に迷いはなかった。

お兄様はライスのことを見ていてくれているーー今はまだ会えないかもしれない…でもお兄様のところにもライスの祝福が届くようにーー

 

 

 

ライスがその悲しみの楔を振り払うかのように、ゆっくりと一歩ずつ外に向かって歩みを進めていくーーやがてライスが閉め切ったドアを開き部屋の外に出ると、数日振りに部屋を出た彼女に対する歓声が誰もいなくなった室内にも漏れ聞こえたのだった。

 

 

 

すると部屋の窓が開くと、カーテンが室外に向かって微かに膨らんでいき、その窓は再びゆっくりと閉まるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「東方ぁ~東京観光の途中で事故に巻き込まれて、長い間入院していたところ悪いんだが、まだ進学届出してないのはお前だけだぞ…」

 

 

 

 

ぶどうが丘高校の教室の一角――二つの机と椅子が向かい合わせにつけられ、片方には頭が禿げかかった教師が座り、もう片方に座る男…東方仗助に話しかけた。仗助はゆっくりと教師に向き直ると、静かに口を開いたのだった。

 

 

 

 

「―――見つかったっす。やりたいこと」

 

 

 

「――え?」

 

 

 

「だから、見つかったんすよ…将来やりたいこと…だから俺、頑張るっす」

 

 

 

そう話す仗助の目には、新たな可能性と意思が強く宿っていた。

 

 

 

 

 

―――果たして悲しみというものは、乗り越えられるものなのだろうか

 

 

 

 

ある人は、きっとそれは時間が解決するだろうと言うだろう。

 

 

 

 

ある人は、それはきっと癒すものではなくその傷を抱えて生きていくものだと言うだろう。

 

 

 

 

トレセン学園の受けた傷―――それは決して深くなく、多くの人がその尊厳と命を奪われた。それでもいつかは、焦土の中から芽が生まれ、花が咲く様に空を見上げることができる日がいつか来ることを願うばかりだ。

 

 

 

 

 

――遥か先に待つ再生に向かって、トレセン学園は少しずつだが、確実にその一歩を踏み出していたのだった。

 

 

 

 

 

 

「――会長。午後からの会議の準備、全て整いました」

 

 

 

 

「――――ありがとう、エアグルーヴ。すぐに向かおう」

 

 

 

 

「――はい…ですが会長。よろしいのですか…?もう少し休んでいても…」

 

 

 

 

「――いいんだ。止まない雨はない。私もまた歩み出さなければ…行こう、エアグルーヴ」

 

 

 

 

悲しみは心の中に今もあるーーだが残されたものとして、受け継いだものとして歩き出さなければならない。誰もいない生徒会室の机の上には、彼女のかけがえのない証である写真が彼女を見守るように掛けられていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夏の暑さが通りすぎ、涼しさが顔をのぞかせる秋口

新生シリウスは、新体制の中でまた歩き出そうとしていたのだった。

 

 

 

 

 

「今日は新メンバーを紹介する…と言っても俺がまたトレーナーに戻るとはな」

 

 

 

 

「先代トレーナーさんが戻ってきてくれるとあれば、とても心強いですわ」

 

 

 

 

 

「――あいつが行方不明とあれば、他の奴らにチームを任せたくはないからな」

 

 

 

 

「…そういえば、新メンバーとは?」

 

 

 

 

「そりゃあおめー、ライスだろ」

 

 

 

 

「まったくゴールドシップさんたら…ってえぇ!?ライスさんが!?」

 

 

 

 

その言葉を聞くと、トレーナーの背後からライスがちょこんと現れたのだった。

 

 

 

 

「――えへへ。皆さんよろしくお願いします!」

 

 

 

 

「本当にライスさんが…!」

 

 

 

 

「おいお米!うちのチームはスパルタで有名だからな~!息を抜いたらすぐにおかゆにしてやるぜ~!!」

 

 

 

 

「え、え~!?ゴールドシップさん…」

 

 

 

 

 

ライスたちはゴールドシップとの会話に夢中になっているーーそれを見つめたマックイーンは、傍から見れば誰もいないと思われるであろう空間に向かって口を開いた。

 

 

 

 

「――――貴方を許すつもりはありませんわ…決して

 

 

 

 

 

…ですが、私は貴方の死をもってその罪を償わせました。これ以上、もう私が貴方に対して攻撃することは致しません…生身を失ったその身体じゃあ、もうこの世に干渉はできないみたいですし…せめて貴方にできることを……見守ってあげなさい。貴方の罪を、そして身命を賭した貴方の証を…」

 

 

 

 

 

 

マックイーンは誰もいない空間に向かってそうつぶやくと、新たなチームメイトであるライスに声をかけたのだった。

 

 

 

 

「さぁ、ライスさん…練習に参りましょう」

 

 

 

 

「―――うん!」

 

 

 

 

もしかしたら、あの男と少女の行く先に救いなんてないのかもしれない。

それでも尚、マックイーンはターフに向かって走る、いつか最愛の人が自分の元に戻ってくることを信じている少女と、彼女を見守るようにその少し後ろをついていく男に神が慈悲を与えることを願わずにはいられなかった。

 

 

 

 

ターフの上を、爽やかな風が駆け抜けていく。

2人の行く末に果たして救いがあるのか否か、それは誰も知らないーーターフの上を駆け巡る微風だけが、その行先を知っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

吉良吉影はトレーナーとして静かに暮らしたい 完

 

 

 

 

 

 

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to be continued?










これにて「吉良吉影はトレーナーとして静かに暮らしたい」は完結となります。






元々大好きなコンテンツだったジョジョとウマ娘を掛け合わせた本作、如何だったでしょうか?








書き始める前にある程度ストーリーは構築した上で書き始めたため、作品をあげる度に皆さんから感想のコメントで前向きなコメントをいただけると非常に嬉しい気持ちでした。








個人的に本作の終わり方に関しては思うところがありまして、本当は吉良がバイツァ・ダストを成功させ、ライスの元へ帰るエンドも考えていました。

ですが吉良の性格を考えると自分の解釈としては、吉良は根本から人を殺めた過去を反省し、真っ当な人間になるという人間ではなく、あくまで吉良は殺人を抑えることができない人間であり、ライスは自身が望む平穏の中の一部になるに過ぎないという矛盾を抱えたエゴイストであると思いますし、それが吉良の悪役としての魅力であると考えています。






ですから顔を変えてトレセン学園に潜り込んでもマックイーンらによってその悪事を暴かれるという部分を描きたかった節があります。


何はともあれ、私の書きたかったストーリーは概ね書くことができたので満足してる次第です。







この作品を見ていただいた全ての方々に感謝します。




作品を通して何か質問があればぜひ書いていただければお答えしますので、よろしくお願いします





最後になりますが、本当にありがとうございました






































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