とあるオタク女の受難(魔法少女リリカルなのはVivid編)。 作:SUN'S
第1話
○月%日
早朝、私は公園の隅っこでキム・カッファンの動きを真似ていると綺麗な金色の髪を揺らす女の子に話し掛けられた。
どうやら彼女は本格的なストライク・アーツを習っているらしく、私のやっていた動きの見えなかったところを聞きに来たそうだ。
確かに鳳凰脚の動作は分かりにくいけど、見ず知らずの人に話し掛けたり、何の警戒もしないで近づくのはダメよ?と教える。最近は辻殴りなんて危ないことやってる人もいるし、明るいからって安心するのは危ない。
そして、なにより貴女みたいに可愛い女の子は余計に警戒するぐらい丁度いいと思う。私の言葉に首を傾げる女の子の問い掛けに話を戻し、キム流テコンドーについて細かく教える。
まあ、とはいってもだ。
私のやっていることは真似事の範疇で、本格的に格闘技を習っている君と比べれば児戯みたいなものよ。そう、やんわりと伝えた筈なのに見ただけで技を出来るなんて凄いですと言われた。
それは強ち間違ってないから否定しないけれど、私の動きを見るより先生や友達と仲良く切磋琢磨するほうが何百倍も必要な事だ。
○月#日
今日も公園にやって来た高町ヴィヴィオと話しながら鷹村守の技を見せ、彼女の参考になる程度に解説を加える。私の個人的な感想だけど、彼のボクシングは豪快かつ正確だ。
人間を撲殺する技術を極めるのは難しい。
まあ、より的確に急所を狙うとなれば彼ほど理想的なボクサーはいない。私は話を続けながら高町さんのフォームを修正し、ねじりを加えたストレートを身体に馴染ませる。
私の手のひらにパンチを打つ高町さんにフックを放ち、ダッキングしながらボディを打つように指示する。ただ、やはりと言うべきなのか、高町さんのパンチには貫通力がない。
そうなるとパンチの質を変えるしかないのだが、私の独断で教えるのは危険だ。とりあえず、ジャブの練習は怠らず、鏡でフォームを修正しながら反復していれば、こうなるよとジャブを見せる。
流石に音速は越えてないと思うけど、肉眼で見るのは難しいぐらい速く打てるようになるし、高町さんは発展途上だから私を簡単に越えられるよ。
○月&日
私が高町さんにボクシングを教えてから三日ほど経った頃だろうか。なんだか思い詰めたような表情でやって来た高町さんに「どうやったら強くなれますか?」と聞かれた。
なにがあったのかを聞けば高町さんの先生が連れてきた女の子と戦ってガッカリさせてしまったそうだ。確かに、それは高町さんが思うように悪いことなんだろうけど。
次は高町さんの本気を見せればいい。私は強いですって、今度はガッカリさせませんって、しっかりと全力を出し切るつもりで戦えば分かり合える。
私の言葉を聞いてたのか。それとも最初からそのつもりだったのかは分からないが、高町さんは「まだ、知り合ったばかりですけど。私に強くなる方法を教えて下さい!」と頼まれた。
べつに私は構わないけれど、高町さんの先生に許可を貰わないとダメよ?と言えば「あっ、それは大丈夫です。あそこに居るのが私の師匠ですから」と隣のベンチに座っている赤髪の女性を指差す。
まあ、あれだ。私と特訓しようか。
その子との再戦のためにも私は高町さんに必殺技を教える。まあ、私のトレーニングは早朝だけになるけど、しっかりと見せてあげる。
私の勝者の拳ってやつをね。