とあるオタク女の受難(魔法少女リリカルなのはVivid編)。 作:SUN'S
私のコーチは物凄く強くて変人だ。
今までジル先生と培ってきた技術を底上げする膨大な基礎練習を繰り返し、私の事を人間じゃないと言いながら大きなタイヤを引き摺って都市を三十周させられ、ジル先生のトレーニングも呼応するようにキツくなった。
そして、私は夢の中とはいえお祖父ちゃんに会うことが増えた。ずっと会いたいと思っていたお祖父ちゃんとのお話は楽しかったけど。
いつも真っ黒な何かが迫ってくるとお祖父ちゃんに「さあ、早く戻りなさい」と言われて夢から覚める。最近は毎日のように夢を見るけど、ジル先生とコーチに会えば「今日は半歩進んで戻れば地獄だ」とロードワークにも使われる機械の上でミッドチルダを横断できる距離を走った。
私はジル先生に「なんだかスウェットがキツくなってきた気がするんです」と言えば鏡の前に呼ばれ、ジャージとシャツを脱ぐように言われた。
もしかして、太ったのかな?と思いながら鏡に映った自分の身体を見て驚いた。少し前の私と比べれば筋肉の張りは無くなっているけど、全身の筋肉を余すことなく鍛えられている。
あんまり筋肉の付かなかった脇腹や脇の下にも筋肉がある。あの変な動きの効果なのかな?なんて考えつつ、ジル先生の「彼女の鍛練法は近代格闘技では辿り着けない極地にある。だけど、その彼女に私は勝ち越している」と微笑んだ。
あの人にジル先生が勝ったという話は聞いたことあるけど、ジル先生の技術でも辿り着けていない。そんなすごい人の鍛練法を独占して、私は個人的に手解きを受けている。
それは、とても羨ましがられることなるだろう。
しかし、どうしても地獄のようなトレーニングを思い出してしまい素直に喜べない。むしろ鬼とか悪魔とか叫びながらコーチのトレーニングから逃げようとしていたような気がする。
「ジル先生、コーチって何者なんですか?」
「んーっ、戦う考古学者じゃないかしら?彼女って昔はリンネみたいにいじめられっ子だったらしいけど、私の知ってる噂だと格闘技の教本を読んで直ぐに仕返しに行ってたそうよ」
「成る程、ただの化け物ということですね」
「それは言い得て妙というやつかな。私が出会った頃は彼女なりに苦悩したりしてたし、今回のコーチも試行錯誤の息抜きかもしれないし…」
ちょっとだけ私に似てるとか思ったけど。
やっぱり、コーチは人間の枠組みを外れた存在らしく、そんな人に三回も勝ったジル先生も人間離れした何かなのだと改めて実感した。
そう言えばフーちゃんに試合のチケットを送ってみたけど、私の試合を見に来てくれるかな?と考えながらジル先生の操作する強制防御技術成長マシーンと呼ばれる機械にボコボコにされる。
いくら猫の手みたいなグローブでもパンチされたら痛いし、私の顎が縦に割れるんじゃないかって勢いで振るわれるパンチは死ぬ気で弾き飛ばす。
そんなトレーニングを続けている成果なのかは分からないけれど、他の選手に殴られてもダメージが残ったりすることは殆んどない。