世紀末転生ダービー伝説はちみー味 作:それがダメなら走っていこう
side:イチゴ味聖帝
オレは気が付いたらトレーナーになっていた。
ケンシロウに倒された後イマイチ記憶があいまいであったが……
あとで引き出しに入っていた書類を改めてみると……
驚きの事実がそこにはあった。
オレには南斗武術協会からトレセン学園に紹介された
部活動指導員・外部指導者という肩書が与えられていた。
NPO法人・国際競技南斗武術協会――理事の名は何とユリアだった!
いや確かに核戦争前は
南斗の事務と財務なんかは
宗家正統血統であるユリアの家がやっていたが……!
これによって本来であれば要るはずの教職員資格や
トレーナーの資格試験などが免除されていた。
完全なるコネ採用である。
いつの間にユリアあいつはこんな手続きを……!!
秋川理事長の推薦文と共に南斗武術協会からは
南斗武術の鍛錬ノウハウをウマ娘の健全育成の為
応用してほしい云々などと書かれている……
ともかく、オレの立場は南斗の格闘技団体が
保証してくれているようだ……一応給与も出るらしいし……
そんなことを思い返しながら
テイオーとグラスと一緒に歩いていたのだが……
……体育館の所にトレーナーの人だかりが出来ている。
URAが管轄するトレセン学園の生徒数は約2000人。
中高一貫のマンモス校だ。
単純計算で1クラス40人だとして50クラスはある事になる。
教職員の数もトレーナーを合わせれば100名を軽く超える。
見知らぬ顔も多い。
そして知らない行事も多い。
「フハハ……いったいあれは何をやっているんだ?」
「えー?トレーナーなのに知らないの?
今日は地方から来た子や飛び級とか
新しくトレセンにスカウトされた新入生・転入生達の
出迎えの歓迎式典らしいよ?」
テイオーは小ばかにしたように返してくる。
「関係する父兄や教職員と転入生、新入生はともかく
在校生やトレーナーは別に
この式典に参加するのは義務ではありませんからね……」
グラスは小首を傾げたように答えてくれた。
なるほど、トレーナーは別に行かなくてもいい奴か!
「フハハ……! 参加義務のある行事をすっぽかしたかと
一瞬ちょっとビビってしまったぞ!」
「モー、シッカリしてよねー」
「フハハ、しかし解せんな。
アレが出迎えの歓迎式典だというのなら
なぜトレーナーたちの人だかりは会場に入れず
外の扉の前で待機しているのだ?」
「気になりますか?
既に担当の付いているサウザーさんには関係ないですよ?」
グラスワンダーは相変わらずにこやかに笑っているが
なんだか影があるし圧があるような気がする……
「そう言わず教えてくれると助かるがな」
「……あれは、まだ担当のいないトレーナーにとっては
別の意味で大事な行事……リクルーティング活動ですから」
テーテーテ テーテテー テテー♪
そんな軽快な式典BGMと……
「木製」の扉の前で
包拳礼を取っている理事長秘書たづなさんがいた。
親指は自分の方に向けている。
そして理事長秘書たづなさんは宣言した。
「これより トレーナーのリクルーティング活動における
新入生・転入生の
「フハハハ……なんなんだあれ……抽選会?」
「ワカッテナイナー。
しょうがないからボクが特別に説明してあげるよ」
やれやれ、という様子で両掌を上向けて
テイオーは説明を始める。
「100人以上いるトレーナーが
新入生や特待生、地方からの転入生に
一気に声掛けたら収集つかないじゃん。
ウマ娘の側は応対だけでえらい手間じゃんか。
トレーナーは前評判の良い子取りたいしどうしたって集中するよ?」
「だからああやって抽選会を開いて
トレーナーの声をかける順番を決めているみたいです。
有望なウマ娘に負担を掛けない為の措置ですね。
一説では……ジュエルというものが配布されますが……
それは何でもURAと学園への寄付金によって交換できるとか……」
「フハハ!!それ割と生臭く世知辛い話じゃないか?」
寄付金の多寡で人事に介入するとか割とアレな気がするぞ!
「トレーナーは大変だよねー。
選挙とかの供託金と一緒で……
これもいわゆる『ふるい』みたいだよ?
面接の負担が減るボクらにとってはありがたいけど」
「色々グレーですが……学園の収入元になっているので……
あくまで『寄付』という体裁らしいです」
「トレーナーの実力ではなく
お金でスカウト優先権を買う、というのに
いささか思うところもあるのですが
テイオーさんの言うよう一つの指標となるのも事実です」
グラスはちょっぴり顔をしかめた。
「ウマ娘のレースはスポーツエンターテイメントと
アイドル業界をミックスした一大興行。
G3以上のいわゆる重賞という言われるレースに入着……
五位圏内に入れば……そのウマ娘とトレーナーは給与とは別に
入着賞金、グッズロイヤリティ、協賛企業からのCMオファーなど
……多額の現金収入が見込めます」
「そ!実績を上げている優秀なトレーナーは
単純にお金に困らなくなるわけじゃん。
実績と実力が数字と金額で換算されるよー。
トレーナー選びの一つの基準になるってわけだね
ウマ娘の将来性と才能にいくら投資できるかって話でもあるし」
「それを学園やURAに「寄付」するという形でジュエルを手に入れ
学園側から有能な才気あるウマ娘の原石を斡旋してもらい
見込みの在るウマ娘をさらにスカウトしやすくなる……というわけです」
「フハハなるほどな、金も実力というか実績のうちというわけか」
より有能なトレーナーとウマ娘はさらなる富と名声を手に入れ
それによって優秀な弟子を取りやすくなる仕組みか……
中央トレセンというのは世紀末の荒野とは別ベクトルで
本当にシビアな世界らしいな。
「あくまでスカウト優先権というのもミソですね
ウマ娘たちも中央に来るような子たちは基本良家の子女。
育成方針がかみ合わなければ拒否する権利があります
スカウト優先権を貰っても交渉が不調に終わり「すり抜ける」こともよくある話です」
「あれ?オレはあの抽選会とやら行っていないが……」
「あー、ウマ娘側から担当になってと
持ち掛けた場合はチガウヨー」
「ウマ娘側からお願いした場合その限りではないと言うことですね。
その場合はトレーナーさんがOK出せば担当契約が成立します」
そんな説明をテイオーとグラスに聞いたが
たづなさんはおもむろに胡坐をかいて座った。
まて!!おもむろに座るな!!
胡坐をかくな!!
世紀末病人トキかおまえは!!
すごく嫌な予感がするぞ!!
「ジュエルは投げ捨てるもの(キリッ)」
そう言うとたづなさんが扉を開いた。
「はあっ!」
掛け声と扉が開かれ、そこにいた有象無象のトレーナーたちが
光に包まれた。
「――理事長が激熱の扇子を持って来ることはありません……
トレーナー諸氏は賢さが不足しているようなので……
重点的に鍛えてみましょう。
せめて生活に支障を出さず安らかに引くがいい……」
木製の扉の前に集ったトレーナーたちの様子がおかしい……
「な、なにぃ……」
「ジュ、ジュエルが勝手に溶けていく……」
「お、お前財布痛くないのか?決済停止に気が付かなかったのか?」
「お、おいお前こそ……」
「あ、な、なにを……あああああ!お、オレのジュエルも……」
「あああ~気持ちいい~……ちにゃ!」
「いい気持ちだはははは……ばわ!!」
おい!名も知らぬトレーナーどもが
本当に世紀末病人の有情破顔拳喰らったようになってるぞ!!
と思ったのは一瞬だった。
奴らが本当に爆死したと思ったのは錯覚で
真っ白に燃え尽きたモブトレーナーたちが
林檎のカードを手に膝から崩れ落ちたり倒れたりしている。
どうやら、彼らはウマ娘のスカウトに失敗したらしい。
だが成功した奴もいる……
義足のトレーナーがまんまるのアイドルウマ娘に声をかけていた。
「スカウトを受けてくれ、タダでとは言わん!土産は渡そう!」
世紀末の雰囲気の義足のトレーナーはくるりと後ろを振り向いた。
「この臀部……撫でたければ撫でるがよい!」
「だまらっしゃい☆ それがアイドルに言うことか!
しゃしゃしゃしゃーいっ☆(ガチギレコンボ)」
そしてぶん殴られていた。
「ぐふっ……海を割るようないい拳だ……」
義足のトレーナーは倒れたが、なんだかんだで契約は取れたようだ。
「
この沼に嵌ったものは
死ぬ間際に天井を感じる……み、水……」
「も~また喉乾いたの? はいトレーナーお水!
ウララ、どんなトレーニングをするか楽しみだな~!」
胸に七つの傷を持つ男がしたり顔でこの出来事を解説すると
桜の光を宿すウマ娘を連れ立ってというか介抱されつつ。
歓迎式典会場から踵を返していった。
「ほわあああああ!?!?」
オレはがくがくわなわな震える膝を抑えきれなかった。
前世の死因居たー!?
「ちょ、どうしたのさトレーナー!」
「大丈夫ですか!?」
「見えちゃいかんもんが見えた!
見えちゃいかんもんが見えた……!
今世紀末の救世主というか水中毒患者いなかったか!?」
理事長秘書のURAとトレセン学園の
集金システムビームも恐ろしかったが……
その衝撃が吹っ飛ぶ恐ろしさだ!!
ケンシロウいるじゃねーか!!
相変わらず、面白いかどうかは、わからん。
そして適宜改稿していきたい。