チルドレンズ   作:晩舞龍

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14歳の宇宙人バーチャルユーチューバー・ヤケクソうさ子の二次創作小説。


第一章
ヤケクソうさ子


 ヤケクソうさ子とは、バーチャルユーチューバーである。しかしその実態は、アニマル星からやってきた宇宙人なのだ。

 なんの過ちか太陽系の惑星・地球に飛ばされたうさ子は、齢11歳ながら三重県で強制労働を行うハメに。

 そして月日は流れ、うさ子は14歳になっていた。西暦2022年のことだった……

 

 

 うさ子の周りでは、最近奇妙な現象が頻発していた。といってもそれは、普段から彼女の周りをうろつく不思議な生命体・馬ちくわやデーモンのことではない。

 地球人たちに危害を加える危険な生命体の痕跡が街に残っているのだ。

 ある所では巨大な生物に食い散らかされた人間の血だまり。また別の場所では、服だけ取り残された跡。

 宇宙人であるうさ子には人間を守る義務はない……が、自分の近所の人間がいなくなると生活に支障が出るかもしれない。

 何より、うさ子には憧れの姿があった。うさ子の脳内でいつもスマートに彼女を励ましてくれる存在、スーペリアうさ江。

 うさ子には、うさ江が颯爽と町に現れ、事件を解決する様子が脳裏に浮かんでいた。そして、

(わたしもそんな大人になりた~い!)

 と考えたのだ。

 うさ子は空いている時間に積極的に奇妙な現象について調査を始めた。

 

「えっと、一件目はここだね」

 暗く見通しの悪い路地裏で、その無残な様子が残っていた。

 先日、最初の事件現場を調査しに来た警察官数名が襲撃を受け重傷。

 ほとんどの事件現場は誰も近づかず手つかずとなっている。

 事件は合計10件発生しており、すべてを回ればなにか手掛かりがつかめそうだ。

「よし、スマートに解決して見せるっ!」

 そううさ子が意気込んだ、次の瞬間。

「!!」

 うさ子の眼前に、巨大な口が彼女を食らわんと現れた。

「ぐっ!!」

 なんとか避け、武器の包丁を構える。そして、敵の姿を観察。

 それは、人間の全長ほどもあるヒル……殺人ヒル!! 

「でっかいヒル……人間を食い散らかしたのはお前か」

 ヒルにはうさ子の言葉は当然通じず、再び巨大な口を開いて突進してくる! 

 うさ子は持ってきたバッグから、巨大な武器を取り出し対抗する。

「チェーンソーならどうだ!!」

 包丁では不利と判断した彼女だが、ほかにものこぎりやこん棒などの武器を所持している。

 チェーンソーは突進してきたヒルを真っ二つに切り裂き、黒一色の路地裏に血の雨を降らせた。

「どうだ、これで一件落着!」

 うさ子は満面の笑みと血まみれの体で家路につくのであった。

 

 しかし、事件は終わらなかった。

 うさ子が殺人ヒルを討伐した1週間後も、被害者は日に日に増え続けている。

「おかしいな~?」

 うさ子は気になって再び事件現場を回ってみることにした。

 

 十数件の被害現場を見て、うさ子はその様子をまとめた。

 その結果、事件現場にはいくつかの傾向があった。

 A・大量の出血が確認されたが、死体が残っていない。

 B・出血、死体なし。人間の衣服だけが残されている。

 C・死体有り。銃殺と思われる弾痕複数。

 

 つまり、ここから導き出される結論は。

「犯人は3人……いや、3体?」

 Aのケースは、うさ子が倒したヒルのものであろう。

 しかし、BやCのケースは腕も足もないヒルには不可能だ。つまり、少なくとももう1人、または1体の元凶がいることになる。

 

「でも……どうやって犯人の居場所をつかめばいいのかな?」

 警官を襲ったのもおそらくヒルだ。殺害後、現場に戻り何回かに分けて血を吸いに来ていたのだろう。

 ほかの犯人が現場にもう一度戻るとは考えにくい。

 

 ここでうさ子は、インターネットから情報を収集することにした。狭い町の中なら、ある程度情報を絞り込める。

「見つけた」

 恐怖の人面犬の噂がこの周辺で広がっているらしく、ネットのオカルト掲示板で複数の情報が確認できた。

「この背景、どこだっけ……? 見覚えがあるんだけど……」

 

 撮影場所の特定に苦労したものの、無事うさ子は人面犬の目撃現場である場所へやってきた。

 それは、普段からペット的生命体・馬ちくわがたむろする神社だった。

「道理で見覚えあったわけだ。でも、馬ちくわたちの様子はふつうだなぁ」

 馬ちくわとは、ちくわの胴体にちくわの足が4本生えているなんとも不思議な生き物だ。

 しかし、うさ子や人間に危害を加える様子はなく、放置している。

 噂の人面犬は人間のみ襲うのだろうか……そう考えていたうさ子の視界に、巨大な白い物体が映り込んできた。

 全長3m程のいびつな球体をしたそれは、確かに人面犬であった。

 4足歩行、犬の頭部、そして、体の中から這い出ようとする人間の不気味な顔面が皮膚から浮かび上がっている! 

 それはまさしく、人間の肉体のみを吸収する犬、人肉吸収犬! 

「きもちわるっ~!!」

 思わず飛びはね、後ずさるうさ子。人間を吸収しすぎてもはや歩くことすら困難な様子の犬は、転がってうさ子を押しつぶさんと迫ってくる! 

「悪いね! わたしは地球人じゃなくてアニマル星人なのさ!」

 包丁とのこぎりを突き立てると、鮮血をまき散らしながら犬が悶える! 

「よしよし、いい子にしてろよ~!」

 呻きながらも再び迫ってくる犬に、うさ子はトゲこん棒を振り上げ脳天に叩き落す! 

 敵は思考回路を挽き潰され、沈黙! 

「よおし! これで事件解決……」

 うさ子はしかし、先の失敗から学べるよいこなのである。

「こいつには銃は使えなそうだ……ということは、第三の殺人犯がいるってことだ!」

 うさ子は今更ながら、自分の町の治安が心配になってきた。

 

 

 家に帰るとうさ子は、デーモンが何かを持って出ていこうとするところに鉢合わせた。

「何やってんのデーモン」

 デーモンは、地獄の悪魔の王だ。

 山羊の頭や角をもつ女体から羽が生えている、なんとも奇妙な姿で、うさ子に付きまとっていたところを好物のサーモン寿司で懐柔された。

 以降、うさ子の周囲で大人しくしているが、調子に乗って地獄に連れて行こうとすることもしばしばある。

 そんなデーモンの腕には、10歳くらいの少女が抱えられていた。

「おいこらデーモン! か弱い少女を誘拐して地獄に連れて行こうとするな!!」

 今までの行いから目的を看破したうさ子はデーモンを怒鳴りつけながら少女を引きはがす。

 しかし、少女が「ちがうのおねーちゃん」とデーモンを擁護する。

「どういうこと?」

「私がおねーちゃんにお願いがあって来たの……おねーちゃんって強いんでしょ」

 どこかでうさ子の戦闘の様子を見ていたのだろうか。その少女とうさ子は面識がなかったが、どうやらうさ子の実力を知って頼ってきたようだ。

「わたしでよければ力になるけど。どうしたの?」

「銃を持ってる悪者をやっつけてほしいの……お願い」

 そう嘆願する少女の目には涙。

 銃を持つ悪者とは、おそらく先の事件の3人目の犯人であろう……だが。

「ど、どうして泣いてるの?」

 いまだ人間との対話は慣れない宇宙人のうさ子。ましてや人間の子どもならなおさらだ。

「……」

 少女はうつむいたまま。しかし、ポツリとこぼした。

「おとつい、ママが帰ってこなかったの」

 その一言でうさ子はすべてを察した。

 

 

 殺人犯を今日まで逃がした責任はうさ子自身にある。一体目……ヒルを倒した時点で、ほかの犯人の可能性に至っていなかったせいで、少女の母親は死んだ。

 うさ子は、自身が応援するアイドルと少女を重ね合わせていた。まだ未来ある幼い存在から、愛する存在を刈り取り絶望をもたらす犯人は許せない。しかしそれ以上に、凶悪な存在をみすみす逃がした自身の不注意に対する怒りが沸き上がっていた。

「一刻も早く犯人を八つ裂きにするッ!!」

 うさ子は少女を家に帰した後、再び事件について調査した。これ以上、犠牲者も少女のような悲しむ人も見たくないから。

 すると、奇妙なことが分かった。ヒル、犬、銃殺犯。

 それぞれ殺害方法が違うことから誰がどこで行動しているのかも判別できるのだが……

 明らかに、棲み分けをしている。ほかの殺人犯と被らない範囲で活動しているようなのだ。

 ならば、自ずと銃殺犯のうろついている場所もわかっている。

「町の北側だ……片っ端から探していくから待ってろ!」

 

 

 うさ子はありったけの武器を持って夜の町を駆ける。すると、けたたましい銃声。

「向こうかっ!」

 すぐさま音の発生源へと向かう。その途中で……

「うわっなんだ!? 車ッ!?」

 あわや激突というスピードで突っ込んできたのは、車とも人間ともつかない不気味な生命体だった。

 もとはおそらく人間の男だったのだろうが、その下半身と胸部には無造作にかまぼこ状のパーツが取り付けられており、その下に接続された車輪で走行している。

 そして、両腕には2丁拳銃。

「お前か」

 うさ子がチェーンソーをすぐさま構えると、男だった生物は何かを呟き始めた。

「い……妹のかたき……!」

 その目は胡乱で、もはやこちらを見てすらいない。焦点の合わないその目はしかし、復讐の炎に燃えている。

 この"男だったもの"にも何か事情があったのだろう。だが、うさ子はそれでもか弱き人間を無造作に殺したことを許すわけにはいかなかった。

「妹のかたきだ! 死ねぇッ!!」

「あんたに何があったか。それはわたしにはわかんない。でもここで止めさせてもらう!」

 うさ子は突進してくる男のボディを爪で切り裂く! 

 普段のうさ子はグローブをしており、その中も人間と同じ手だ。しかし、今のうさ子は違う。

 本気でこの銃殺犯を仕留めるため、全身を黒いコスチュームで包んだその名も黒うさ子! 

 その体からは赤く発光する複数のトゲが敵の肉を切り裂かんと伸びている! 

 

「これでおわりだよッ!」

 爪を突き立て後退できない敵の肉体を、チェーンソーが抉る。

 飛び散る鮮血を顔面に浴びながら、うさ子はまたあの少女に会いに行こう、そしてお姉ちゃんとして遊んであげようと考えていた。

 

 

 

つづく




補足(元ネタ)
馬ちくわ…動画第3話より
デーモン…動画第2話より
銃殺犯(正式名称:ロンリーウルフ・ジョー)…pixiv第41回より
黒うさ子…pixiv第67回より
人肉吸収犬…pixiv第119回より
殺人ヒル…pixiv第155回より
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