山科ひびや0.5話でもある
そんなお話
藤野財団
藤野財団は、藤野工業の創設者・藤野邦童(ふじのほうどう)が運営する組織である。表向きには医療研究を行っているとされているが、その実態は人間や動物を改造し、人造生命体を生み出す研究だ。
なぜ、彼らは研究を始めたのか。それは、藤野工業のある場所が関係していた。それは藤野邦童の生まれ育った三重県だ。
親が資産家だった邦童は山奥に莫大な土地を持っていた。事業に成功した邦童は有り余る資産で山奥にいくつか別荘を建設し、ご丁寧に監視カメラも設置。
その一つが2019年1月22日、謎の飛翔体を捉えた。同じ場所をとらえていたカメラには映っていなかったことから、何者かによる隠ぺいの痕跡だと睨んだ邦童は、来たる宇宙人の襲来に備え、様々な生物兵器の開発を指示した、というわけだ。
研究チームは、最初にヒルに関する研究を始めた。凶悪な殺人ヒルが完成したが、知能は無いに等しかった。
2例目はプラナリア。無限に増殖する力は不老不死に応用できるかと期待されたが、実験中に死亡。
3例目、人間のDNAを組み込んだ犬。人間と融合する性質を持ち得てしまい、研究員の黄昏森太郎ほか三名を吸収。実験は凍結。
4例目、生命の縫合者。
5例目、ロンリーウルフ・ジョー。人間と魚との融合。被験者の誘拐の際に錯乱し実験後暴走。
6例目、プレゼントばこ男。
7例目、デススパイラル・マイケル。人間とカマキリの融合。一番の成功例だが、担当者はその後別の組織に引き抜かれてしまう。
8例目、鬼。
9例目、コマンダーグリーン(仮)。データ消失。
10例目、ポー藤野。データ消失。
11例目、11子。人間とシャチの融合。性格に難あり。脳改造前に脱走。こちらもデータがほとんど失われている。
12例目、山科ひびや。人間と機械の融合。最強の改造人間。
さて、ここまで見るとおかしな点に気づくであろう。
消失したデータが明らかに多い。
だが、現場の担当者はこの事態に違う意見を唱えている。
「こんな改造人間を作った記憶はない、まるで突然現れたようだ」
「データも全く無く、明らかにおかしいのに、改造人間のナンバーなどの辻褄は合っている」
「藤野と名を冠しているが、会長は知らないようだ。ドー藤野なる機体の構想の跡もある」
など。
つまり、研究のいくつかは、藤野財団が行った宇宙人に対抗するための兵器。
そして、データの消失しているいくつかは、誰もそのことを知らないのになぜか存在する兵器。
一人の研究員は興味深いことを話す。
「11例目のシャチ人間は脱走してしまったものの、その特殊能力で、先日現れた精神寄生体を撃破した。まるで、彼女はあの寄生体を倒すために生まれてきたかのようだ」
あの時、藤野財団でも寄生された研究員がいた。その原因である親玉を捕捉した際、11子と宇宙人がそれを撃破したのを確認している。
そして、こうも言っている。
「もし11例目が、寄生体撃破に特化した存在として生み出されたのなら、同様にデータが失われている9例目と10例目にも説明がつく。彼ら機械には精神はないのだから、寄生される心配もない」
この異常に気付いたのは、2022年11月のことだ。それまでは誰もこの異変に気付いていなかったのか、それともこの時から現実が書き換わったのか……このとき11子は脱走した直後だったため、彼女の過去について財団は調査できていない。
だが、もしも彼女の出自が、そしてロボットたちの出自が我々の常識を超えるものだったら……?
それは、宇宙人に勝る我々人類の脅威となりうるであろう。
「私の名は山科ひびや! 藤野財団によって改造された正義の改造人間!」
「えっ? えっ?」
「宇宙人は私が殺す!」
「えーっ!?」
帰宅途中のヤケクソうさ子の前に現れたのは、財団出身を名乗る改造人間だった。
金属のアタッチメントである右腕や「ヤケクソうさ子」という名前を知っている以上、改造人間であることは疑いもない。(ヤケクソうさ子は普段は福原舞子という偽名をつかっており、本名は11子くらいしか知らない)
薄暗くなってきた町で、うさ子は隠し持っていた黒い衣装に身を包む。
黒うさ子。戦闘用のコスチュームは戦いやすいだけでなく、全身のトゲで相手を寄せ付けない。そして、この暗闇ではカモフラージュになる!
しかし、そんなうさ子の頬を敵の腕に付いていた鎌が掠める!
「うわっ!?」
ひびやの腕から鎌が発射されている! それは金属製のロープで腕とつながっており、ひびやはそれを巧みに動かしてうさ子を襲う!
「わっとと! 遠距離とは聞いてないけど~!」
ナイフで切断を試みるが、強靭なロープはしなやかにそれを受け流し、ひびやの元へと戻っていく!
刹那、ひびやはうさ子の零距離まで近づいていた! 遠距離が有利と見せかけておき、一瞬で間合いに入ったのだ!
瞬時に攻撃が来ることはないと油断していたうさ子の腹部に、振りぬいたパンチがクリーンヒット!
一方、11子も突如現れた二体のロボットに翻弄されていた! 巨大な異形の腕でコマンダーグリーン(仮)を握りつぶそうとするが、傷一つつかない!
(シャチの歯が刺さらない!? なんて硬いボディなんだ!)
それどころか、腕から液体金属を射出!
「わっ!」
11子の皮膚を焼きにかかってくる! 思わず手を放し、後退する彼女に、コマンダーは
「オーファン」
と電子音を響き渡らせながら高速突進! 近くの塀に叩きつけられる!
「がはぁッ……」
崩れ落ちる間もなく、ポー藤野による重い一撃の拳が見舞われる!
「ぐわあああああ!!!」
そこに、ひびやに吹っ飛ばされたうさ子が上に積み重なる形で倒れこんでくる。
「さあ、観念しろ! 悪の改造人間と宇宙人!」
ひびやにそう言われるが、二人には心当たりがない。
「いや……悪はそっちじゃない? 誘拐とか、改造とか」
「何を言っている! 私は藤野財団に改造された正義の改造人間だ!! 脳を改造される前に脱走し、悪の宇宙人を倒す! それが私の使命だ!」
「いや、それだったら11子ちゃんも脳改造前に脱出してるし……わたしは改造人間から人間を守って来たっての」
ひびやの顔色が曇る。
「いや、貴様は私の仲間の改造人間を惨たらしく殺して……でも、その改造人間は悪で……!?」
「もしかして、あなたは"脳を改造されてない"って記憶を埋め込まれてるんじゃないの」
「何ッ!? そんなこと……ない、と思う……」
歯切れの悪いひびや。体勢を立て直す二人。ひびやの指示を待つ二機のロボット。
「さて、どうしよっか11子ちゃん」
「相手は動揺してるけど……全員実力は私たちより上。でも、家もバレてるから逃げられない」
「困った~……ん?」
どうしたの、と11子が声をかけるが、次の瞬間、うさ子が驚いた意味に気づく。
うさ子と11子の前には、ポー藤野、コマンダーグリーン(仮)、山科ひびや。
その二陣営の間の空間に亀裂が走り、薄暗い空間が出現している!!
「なにこれ……!?」
「わかんないけど、私たちにはどのみち逃げ場がないんだ、行こう!」
11子に従ってうさ子と二人、その空間に飛び込む!
「ま、待て! 逃げるな!」
動揺しており反応が遅れたひびや。しかし、その時には既に二人とも謎の空間ごと消えていた。
「イテテ……ここは?」
「気づいたかな?」
顔を上げると、そこには11子の他に複数人がいて、場所はどこかの事務所のようだった。
奇抜な恰好の人間(?)が数人いる中、一番手前で偉そうに座っているうさ子よりひとまわり小さい白髪青目の少女が話しかけてくる。
「やあ初めまして。僕はジェシカ・マージマンですよ。以後よろしく」
カマキリと人間が融合した改造人間、デススパイラル・マイケルは確かに成功したが、昆虫と人間の融合にはこれ以上の成果は望めなそうだ。そう判断され、より強い生物との融合研究に資金は割かれることになった。
昆虫にはまだまだ無限の可能性があるというのに。カイコ、トノサマバッタ、ハリガネムシ……まだ試していない昆虫の改造人間のアイデアがあるのに。
そして、昆虫の力を最大限に引き出すには人間ベースではいけない。昆虫自体を改造しなければならないのに!
そんな時、別の組織にスカウトされた。
「君の夢を共に実現しようじゃあないか」
断る理由は無かった。
補足(元ネタ)
ドー藤野……ポー藤野氏のサブアカウント名より