チルドレンズ   作:晩舞龍

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ヤケクソうさ子4

「ここ、わたしの家……?」

 気付くと、布団の上にいた。しかし、何か違和感があった。自分の家なのに、他人のもののような感覚。

 ちょっとした家具の配置。知らない本。一本多い歯ブラシ。ここには、もう一人、住んでいた? 

 じゃあ、今までわたしが住んでいた家はどこへ? ここはいったいどこ? 

「まさか、夢の中?」

 最近、よく変な夢を見る。悪夢と言っていい。

 

 自分が今よりももっと不幸になっている夢。

 自分が今よりももっと幸せになっている夢。

 

 どちらもいい気分ではない。

 あの時の自分の選択が間違っていたら、こうなっていたのだと。

 少しの巡り合わせが違えば、自分はこんな友を得られていたのだと。

 

 何だか、自分の人生がとても危険な綱渡りのように恐ろしく感じられてしまう。

 

「大丈夫、夢じゃない……いや、それは大丈夫じゃないのか」

 なんて自嘲しながらも、耳に神経を向ける。

 不安になって、やっぱり鏡を見る。

「よかった、私だ」

 そこには、オレンジの耳を生やした、ヤケクソうま子がいた。

 

「またわたしか!」

 

 うま子の背後から声がした。驚いて振り向く。そこには、以前彼女が夢で目にした、幸せな世界の自分……ヤケクソうさ子と、不幸せな世界の自分……ヤケクソきつ子がいた。

 

 

 数刻前。

「危ないッ!」

「ミスティックシールドぉ!」

 りんりはとっさにそれを展開し、きつ子のナイフの一閃を受け止める! 

「ナイスですよ!」

 その際に生まれた隙を、ジェシカは逃さない! 

 魔術で編み上げたロープを射出し、きつ子の両手両足を拘束する! 

「ちくしょっ! この!」

 

「ど、どういうことなの」

 うさ子はただ、呆然とその一部始終を見ていた。

 

 

 そして現在に戻る。

 ジェシカはうさ子に、一度家に戻ることを提案したのだ。

「あなたの身の回り……つまり、家でも何か異変が起きている可能性が高いです。見に行きましょう」

 その結果がこれだ。

 もう一人、並行世界のヤケクソうさ子が出現している。

「狐の次は馬!? わたしの血筋はどうなってるの!?」

 

 縛り上げられ転がされるきつ子と、特に危険なそぶりは見せていないため放置されているうま子。

 それを不安そうに見るうさ子。

 不思議なことが起きるものだ、とジェシカ、11子、りんり、ぽここが眺めている状況だ。

 

「めろじゅーとメリーは置いてきた。あいつらはこの戦いについてこれそうにない」

「貴方、バリアはれるだけでしょう……」

「みんな、駄弁ってる場合じゃないよ! これどうすればいいの!?」

 うさ子の問いにジェシカが答える。

「そうですねぇ。並行世界からやってきたとはいえ、きっとほとんど私たちと変わらないと思いますよ。とりあえず、そっちの危険な奴だけでも始末しましょうか?」

 確かに、ナイフを持った血気盛んな宇宙人に暴れられてはたまらない。だが……

「待ってください」

 制止したのは、ヤケクソうま子だった。

「わたしは、少し前から夢で二人……並行世界の自分のことを見ていました」

 うま子が語るには、ヤケクソきつ子の境遇は厳しいものであり、そのせいで人間を信じられなくなってしまったのだという。

「でも、ここが別の世界であるのなら、きっと理解してくれる人もいる。そして、彼女に危害を加えるものもいないから、彼女が暴れる理由だってないはず」

「そううまくいくぽこ?」

 うま子は、きつ子のほうに向きなおり、いう。

「並行世界の自分同士、助け合えると思いませんか……? わたしも、友達が欲しいと思ってたんです」

「ずるい! わたしも自分と友達になってみたい!」

 と、うさ子も参戦する。

 

「話はついたようですね……戸籍の方は、『ワイズマン』で用意しておきますよ」

 ジェシカはそう言い、空間のゲートを開く。

「気合たっぷりで来てもらって申し訳ありませんが、これにて一件落着です。帰りますよ、悪徳教祖に時空犯罪者」

「ちょ」

「その呼び方は心外ぽこ!」

「事実じゃあないですか?」

 うさ子と11子はその様子を微笑ましく見送った。どうやら彼らも、不思議だが仲の良い組み合わせらしい。

 

 騒がしく、忙しく、驚き、しかし新しい友を得たうさ子。しかし彼女にはまだ懸念があった。

「山科ひびや……改造人間だけど、分かり合えそうなんだよなぁ」

「うさ子ならきっとできる。私だって、別の世界の自分だって友達にしたんだから」

「まあ、今回はあんまり活躍できてないような気がするけど」

 11子は首を振る。

「あの子たちが来たのは、うさ子が精神寄生体を倒したから。精神寄生体を倒せたのは、私を財団から連れ出したから。全部、うさ子のおかげ……」

 恥ずかしくなったのか、メガネを拭き始める11子。

「そっか、ありがと」

 

 

 

 一週間後。

「うわっ」

「うわっとはなんだよ、うわっとは」

 朝、11子と出かけようとしたうさ子の前に、おそろいの服で着飾ったきつ子とうま子の姿が。

「二人は隣の部屋に越して来たんだ」

 11子は楽し気に眺めているが、うさ子は微妙な表情だ。

「自分と同じ顔が二つも並んでるの、改めてみると変な感じ!」

「自分の顔だろ! 文句言うな!」

「まあまあ」

 きつ子がキレ、うま子がなだめる。

 凸凹のようで、なかなかいいコンビのようだ。

 

 

 

 一方その頃。

「厄災デチクゥ。並行世界の境界に棲まう神は退けましたが……」

 時間と四次元と霊界。三柱の神は人間とは全く違う尺度・価値観の存在のため、いつやってくるか以前に怒っているのかどうかもわからなかった。

 魔術師機関・ワイズマンの長は、ジェシカに彼らの様子を伺ってくるよう命じた。

 

「時間の神や霊界の神はまだいいです。そこまで迷惑をかけたわけではないのですから……」

 ジェシカはマジカルゾーンを通して神々の住まう場所へと向かう途中、ひとりごちる。

「でも、四次元空間の神にはなんと説明すれば良いのか……どう考えても死体の不法投棄ですからね……」

 ジェシカを乗せた空飛ぶ魔術飛行機は、時間も空間も超越した異次元空間へと入っていく。その先に待つのは、天国か地獄か、はたまた。

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