平安時代の陰陽師・二桁三毛太。彼によって生み出された、鬼を殲滅する仮面。
同じく陰陽師の三駄乙の精神を取り込むことで完成したそれは、使用した術者に強大な「雷」の力を与えた。
役目を終え、歴史の闇とともに忘れ去られていた。由来も、用途も……
しかし、仮面の中の精神は長い時が経った現代でも生きていた。そして、再び危機が訪れたのを察知。一人の少年と融合することで、悪を滅ぼす超人として蘇ったのだ!
2023年1月 日本
「やめろぉ! その薬は飲みたくないぃ!」
空手家か、柔道家か。胴着を着た屈強な大男が、実験台の上で磔にされている。
「だいじょぉぶ……わたしも飲んだからサァ」
怪しげな女が、その近くで薬品やら実験器具やらを準備している。特異なのは、その格好だ。アニメの描写ならば、そういった怪しげな実験は白衣でやりそうなものだ。
しかしその女は、黒い制服に身を包んでいる。
それが一層怪しさを際立たせている。
黒い眼鏡と赤いリボン、そして天然パーマが印象的だが……実験台の上の男はそんなことを気にしている余裕はない。
「キミの場合は、どんな能力が発現するか……楽しみだねぇ」
男の口元に怪しげな薬の入ったビーカーが押し付けられ、黄緑の液体が流し込まれる。
「ゲホゲホッ!! 不味いぃ!」
苦しみもがく男。その毛髪が、みるみるうちに植物のように変化していく!
「うおおおぉ!! なんだこれはぁ! やめてくれよぉ!」
「おお! わたしよりもだいぶ"具現化"してるねぇ」
2023年2月 アメリカ・ニューヨーク
「サンダーチェンジ!」
「Zだ! Zが来やがった!」
逃げるゴロツキやチンピラ。それを雷のごときスピードで追い越す黒い影。
「ちくしょおっ!」
ナイフなど、各々が凶器を取り出し臨戦態勢に。だが、そんなことをしている間に、彼らは腹部に衝撃を感じていた。
「うう~っ!」
悶絶し、倒れこむ男たち。後に立っていたのは、仮面のミイラ男だけだった。
「だいぶ戦いが板についてきたな」
「まあね。スーツ? のおかげで筋肉疲労はないし、ものすごいパワーもスピードも出るし、もう最高だよ」
デイライトは、自分の体の中に精神を間借りさせている陰陽師の三駄乙、通称「乙仮面」と対話していた。もちろん人気のない路地裏でだ。
「そろっと、あんたの言ってた悪い仮面って奴を倒しに行ってもいいんじゃない?」
「そうだな、だが……敵は強大だ。そして、今まで倒してきたような非超人ではない。我々と同じかそれ以上の力を持っている」
「そんなこと言っても、この世界には僕とそいつ以外には怪人とかいないからなぁ」
デイライトは、乙仮面の力で全身黒いミイラのような超人・仮面サンダー乙へとサンダーチェンジし、ニューヨークの平和を守っていた。
その相手は、銀行強盗やチンピラばかり。超人や怪人はおろか、戦闘のプロと戦った経験すらない。
その点を乙仮面は不安視していた。
一方で、乙仮面が存在を察知していた"もうひとつの仮面"には大きな動きがない。日本にいるのは確かだが、まだ暴れだしてはいないようだ。であれば、デイライトを鍛えるための猶予がある。乙仮面はそう考えていた。
2023年2月 日本
実験によって怪しい薬……「ヤサイニナール」を飲まされ、男は顔から植物が生え、やがて顔中覆われてしまった。
「これじゃ、顔面キャベツ男だな」
男の顔は葉っぱで丸く固められ、隙間から辛うじて目が覗いている。
男は野菜の研究に関心があり、最先端の研究を見学できると聞いて「ザ・ベジター」の施設を訪れた。
そこで彼を待っていたのは、野菜の成分を注入され、野菜人間にさせられてしまうという恐怖の実験だった。
あのあと、命からがら逃げだしたものの、施設にはその後女は現れず、重要な証拠も残っていなかった……
この顔では社会で普通に生きていくことなどできない。
その代わり、得たものもあった。それは、実験の影響による超人的な力だ。
自身の体や周囲から植物を発生させることが出来、しかもかなりの重量の物体を持ち上げることも可能だ。
男は何とか自身の顔を治療しようと、施設の跡に残されていた「ヤサイニナール」を改良。
52回もの改良を続け、ついに「ヤサイニナールZZ」が完成した。
ゴク、ゴク。
「うん、うまい!」
味は改善されていた。味は。
「うおお!!」
誰がこの展開を予想できていただろうか。
今度は、顔から肉が……ベーコンのような帯状の肉が生えてきたのだ!
「なんじゃこりゃあ!!!」
「ここが日本……」
「来るのは初めてか? まあ、俺も平安時代の頃しか知らないからお互い様だな」
もうひとつの仮面を破壊するため、はるばる日本へ。成田国際空港に降り立ったデイライトと乙仮面。
さっそく街に足を踏み入れると、何やら騒ぎ声が聞こえる。
「もしかして、"もうひとつの仮面"かも」
「だが、仮面の力は感じないな。とにかく、行ってみよう」
デイライトは物陰に隠れ、右手を高く掲げる。
「サンダーチェンジ!」
電撃とともに、仮面サンダー乙へと雷撃転身する!
「よし、行くぜ!」
稲光のように超高速で現場へ急行。すると……
「誰か、俺を止めてくれ! 頼む!」
頭を抱え、もがき苦しむ怪人の姿が。
「あれは仮面の超人?」
「いや、違うな。なにか別の力で生まれた怪人のようだ」
「なんか、顔がキャベツみたいだ。ロールキャベツ男?」
「ロールキャベツという料理はわからんが……植物が肉で巻かれているな。それが男の頭に付いている。何とも奇妙だ」
「たぶん僕たち、あの人のこと言えないと思うよ」
少なくとも怪人は、民間人に手出しをする様子はない。ただ路上で苦しんでいる。
「あの~、大丈夫ですか?」
「誰だ……? お前は」
「仮面サンダー乙……いちおう新人ヒーローやってます」
「そうか、俺は……肉巻きキャベツとでも呼んでくれ。人体実験でこんな、野菜人間になっちまった。助けてくれ」
「助けるったって……」
怪人となり苦しむ男を、ただ見ていることしかできないデイライト。
「乙仮面……なんかしてやれないのか?」
「そうだな……彼の体には、植物の細胞が深く入り込んでいる。これを切除することは難しいだろう」
「そんな……」
デイライトは無力感に襲われた。超人的な力を持っていても、目の前の人間ひとり助けることができない。
「僕は悔しい! この力があれば、鬼だって倒せるっていうのに!」
「そうだな……だがデイライト。別の方法を考えよう。まだ何もできないと決まったわけじゃない。物事を広い視野で捉えるんだ」
乙仮面の助言に、デイライトは顔をあげる。
「そうだ……肉巻きキャベツさん! あなたが受けた人体実験……いったいどこの誰にやられたんです!?」
「ああ……いまはどこにいるのか分からんが、「ザ・ベジター」という組織の、S.T.ブロッコリーという女だ」
「キャベツの次はブロッコリーかよ……!?」
新登場マシーナリーチルドレン
肉巻きキャベツ
補足(元ネタ)
二桁三毛太……三駄乙氏の別名義より
ヤサイニナール、ヤサイニナールZZ……肉巻きキャベツ氏のTwitterより