求めよ、さらば与えられん―――――
人間には、才能がある。そして、才能は大きく二つに分けられる。
一つ目は、努力する才能。それは人を秀才に変える。
そしてもう一つが、天性の才能。神から与えられたギフト。それを持つ者を人々は、天才と呼ぶ。
魔術の才能は血筋に左右されない。ほとんどの魔術師は親も魔術師だが、才能が発現せず親と違う道を歩むものも多い。
その一方で、現在最強と名高い魔術師ジェシカのように、親とは関係なしに途轍もない力を持って生まれてくるものもいる。
日本に暮らすフツーの女子高生・白居小望もそんな魔術の天才であったが、彼女の周りの環境はいたって普通のものだった。そのため、彼女が才能を開花させることは無かった。
2023年2月。運命の歯車が回りだすまでは……
その日は休日だった。マニア垂涎のレアなレトロゲームを求めて、白居小望は今日も中古ゲーム専門店巡りをしていた。そんな時。視界になにか、日常生活ではお目にかかることのないような生物が横切ったのを小望は目にした。
「今のって……モルモット、だっけ?」
路地裏に逃げ込んだその生き物を、小望は自然と追いかける。
「おーい、モルくん。出ておいで」
すると、そのモルモットは敵ではないと判断したのか、その姿を小望の前に見せた。
どこからどう見てもモルモットだ。だが次の瞬間、彼女は驚きのあまり腰を抜かした。
「お願いだ、きみ。ぼくを助けてくれないか」
ペタン、と尻もちをつき、
「しゃべったぁぁぁ!」
小望は叫んだ。
「驚かせてごめん。ぼくは"はんのこ"。気づいた時にはなぜか喋れるようになってたんだ。その前の記憶はなくって……」
「そうなんだ……記憶、戻るといいね。お家はあるの?」
はんのこと名乗ったモルモットは首を振る。
「この辺りでひっそり暮らしていたんだけど……さっき、頭から野菜の生えた怪人が現れて、逃げて来たんだ。きみもここから離れた方がいい」
耳を澄ますと、たしかに近くからざわざわと人々のどよめき声が聞こえてくる。
「じゃあ、わたしの家に来ない? 飼ってもいいかお母さんに聞いてみるよ」
「いいのかい?」
「うん、だって……」
次の言葉を継ごうとした小望の声は、そこに現れた別の存在に遮られた。
「見つけた! 僕を助けてほしいの!!」
「な、なにこの生き物!?」
「ぼくも初めて見たよ」
小望とはんのこが驚くのも無理はない。そこにいたのは、空をふわふわと浮かぶおもちのような生命体だった。
「君が白居小望だね! 僕と一緒にきてほしいの!」
「あなたは……?」
「僕はしろいおもち! 君と同じ名前! 運命だよ、これは!」
「はあ……」
小望は疑いの目で目の前の奇怪な生物を睨む。
喋るモルモットは百歩譲って認めても、この既存の生物に当てはまらない生命体の言うことは信じられない……
「あなた、何なの? 動物?」
「和菓子次元からやってきた使者なの! 駄菓子次元からの侵略者・くろいおはぎに対抗するため、君の力が必要なの!」
「意味わかんない……私の力って?」
「魔力なの! 本当はジェシカに頼みたかったけど、彼女は不在だったの! だから次に強い君に白羽の矢が立ったの!」
「ちょっと、待って! 一気にいろいろ言われてもわけわかんないよ!」
「なら、一言で言ってあげるの! 僕と協力して、魔道少女として戦ってほしいの!」
魔法少女、のようなものだろうか。
しろいおもちは、妖精たちの住む「和菓子次元」からやってきたという。だが、どの世界でも争いは起こるようで……もう一つの妖精世界「駄菓子次元」の侵攻を逃れてきたようだ。
侵略者の首魁・くろいおはぎという妖精を打ち倒せばいいと、しろいおもちは言うが、これはきっと戦争……のようなものだ。そう簡単に事は進まないだろう。
小望が答えを渋っていると、再び奇怪な生き物が路地裏に出現した。
「今度はなに!?」
「私はしまりん! 小望さん、力を貸してください!」
「白くて小さい……熊?」
「次から次へと現れるなあ」
と、はんのこはのんきに感想を漏らす。
「私は魔術動物と言って、普段は魔術の世界で暮らしているんだけど……最強の魔術師であるジェシカさんが大ピンチで、魔術組織"ワイズマン"から救助要請に来たんです。小望さんに助けてほしいんです!」
どうしてこんなにも同時に、複数の存在が小望の元へ現れたのか。
「みんな、小望のつよい魔力に惹かれて助けを求めに来てるの!」
と、しろいおもちは言う。
「今までそんなこと一回もなかったのに!」
「小望よりも強いジェシカという人が、いま不在だからなの!!」
「もー!! じゃあまず、ジェシカさんを助けに行かなきゃ。しまりん、いまどういう状況?」
「ジェシカさんは訳あって、怒っている四次元の神様の様子を見に行ったんです」
「ふむふむ。全然分からん。それで?」
「四次元に閉じ込められちゃいました」
「あちゃー。そりゃ大変だ……私にどうにかできる問題? これ。私より強いジェシカって人でも勝てないんでしょ? そもそも、私魔術なんか使ったことないし」
しろいおもちが補足する。
「それは大丈夫! 君はいわゆる天才肌なの!! 僕が魔道少女にしてあげれば、すぐにジェシカと同じくらい強くなれるの!」
「そのジェシカって人も私は知らないんだけどね……」
「ん! ぼさっとしてるから、またなんか来たの!」
しろいおもちの言うとおり、今度は幽霊というか、人魂というか……そういった存在が現れた。
「あの~すいません。小望さんで合ってます? 私のところのボスをちょっと鎮めてほしいんでニャスが……」
人魂は飴良ミタマと名乗った。霊界に住む存在で、そこの神様がお怒りだそうだ。
大暴れで手が付けられず、そのうちこの三次元世界にも侵攻してくるかもしれないという。
「待て待て! 俺を助けるのが最優先だろう!」
今度はなんだ、とその場の全員が思った。
狸だ。人面狸、いや狸人間とでもいうのだろうか。
「俺はこぬ。悪の組織によって狸人間になってしまった狸だ! このまま放っておくと、あの組織とんでもないことやらかすぞ!」
「これはんのこと同じ?」
「どうだろう、僕は記憶がないからなんとも……」
「お待ちなさい」
「また何か来た……」
空から降りてくる黒い物体。
まん丸で、しろいおもちとサイズ感も形状も酷似している。
「もしかして、さっき話に挙がってた"くろいおもち"?」
「いや、あいつはもっと悪い感じなの! こいつからは何も感じない……しいて言えば、虚無を感じるの!」
黒い物体はしろいおもちと明らかに違い、一つ目だった。そして、笑っているようにも見える口から言葉を発する。
「我は暗黒生物ガミネ……全部よくなってほしいが……あえて言うなら宇宙の磁場が乱れている……お前の力を借りたい……」
喋るモルモットはんのこ、妖精しろいおもち、魔術動物しまりん、ヒトダマ飴良ミタマ、狸人間こぬ、暗黒生物ガミネ。
三者三様の悩みを抱え、白居小望という一人の少女の魔力に引き寄せられて集まった。
ならば、彼女が取る行動は。
彼女が選ぶ道は。
「しょうがない! 全員助けてあげるから、順番ね! いくぞー!」
こうして、世界をまたにかけた彼女の人(?)助け大作戦が始まったのだ。
新登場マシーナリーチルドレン
しろいおもち(白居小望)
はんのこ
しまりん
飴良ミタマ
こぬ
ガミネ
補足(元ネタ)
くろいおもち…しろいおもちプロフィールより