普通の女子高生である白居小望には、魔術の才能があった。
その魔力を頼りに、六体の超常存在が助けを求めてやってきたのだ。
喋るモルモットはんのこ、妖精しろいおもち、魔術動物しまりん、ヒトダマ飴良ミタマ、狸人間こぬ、暗黒生物ガミネ。
魔術とは無縁の生活を送ってきた小望だったが、彼らの助けになるため動き出す!
「ここがわたしの部屋。はんのこと、こぬ。二人はここで待ってて」
「わかったよ、小望」
「俺が最優先だろ!」
食い下がるこぬを小望はなだめる。
「文句言わないの、宇宙の危機の方が先」
次に、しまりんに魔術組織について聞く。
「ワイズマンだっけ。そこって、魔術の修行とかしてくれるの?」
「もちろんです! いますぐ高度な魔術は難しいかもしれませんが、その膨大な魔力を放出するだけでも大きな戦力になるはずです!」
「わかった。それで、しろいおもち。あなたの言う魔道少女って何?」
「普通の少女の魔力を魔術師レベルまで高められる、和菓子次元の技術なの!」
「それ、わたしに使ったら意味ないんじゃ?」
「いや、つまるところ魔力ブーストなの! 小望に使ったらもっと魔力が高まること必至なの! ただし……」
「ただし、何?」
しろいおもちは言いづらそうに口を開く。
「いままで多くの次元の少女に断られてきたんだけど……魔道少女の衣装を着ることが条件なの」
「うっ……!」
アニメで見るようなやつか、と小望は身構える。だが、状況を聞いている限りなりふり構っていられない。
「わかった。わたし、魔道少女になるよ。あ、あとあと悪いことが起きるとかないよね?」
「無いと誓うの! それじゃあ行くの!」
しろいおもちが発光とともに腕輪型に変形し、小望の腕に巻き付く。小望の衣服があっという間に白を基調としたコスチュームに変化。
「やっぱりちょっと恥ずかしいかも!」
フリルにミニスカート、リボン……女子高生にはハードルの高いものばかりだ。
だが小望は(ここでうだうだ言っても仕方ない)と開き直り、しまりんに向き直る。
「じゃあ早速、わたしをワイズマン本部に連れてって!」
「わかったのです!」
小望の部屋の扉をしまりんが開くと、そこはいつの間にか地下への階段が続いていた。
「わたしの家は!?」
「ワイズマン本部とのゲートをつないだだけです、心配しないで!」
しまりんが先導し、小望、おもち、さらにミタマとガミネも付いてくる。
「まずはしまりんとジェシカって人を助けに行く。世界の危機だからね」
「わかったのです」
「次にミタマさん、あなたのとこの神様を鎮めに行く。怒ってるのはなかなかヤバそうだからね」
「了解ニャス」
「その次はおもち、あんたの次元を助けてあげる。優先度としてはこんな感じでいいよね?」
「確かに……宇宙の磁場の影響は今だ軽微……しかしいつかこの星にも影響がある……」
ガミネがゆっくりとささやく。
「大丈夫! あんたのも忘れないようにしとく!」
今後の方針について練りながら階段を下りていくと、大広間に出た。
フロア全体が青一色で、魔術的な不気味な雰囲気を漂わせている。
「ここがワイズマン本部……」
「これはこれは大勢で、ようこそ」
フロアの奥の通路から、青髪にスーツの女性が現れて声をかけてくる。
眼鏡もスーツも髪と同じ青色なのが、この青い空間と相まって不思議な印象を与える。
何より目を引くのは、その両腕だ。魔術組織にはとても似つかない、ロボットアームとビームライフルが異物感を醸し出している。
「えっと、あなたは……」
「おっと、申し遅れました。私はアークドライブ田辺。あなたに救助要請を出したのは私です」
田辺と名乗った人物はそのロボットアームで握手を求めてくる。それに応じる小望。
「ジェシカは私の娘なんです。実力があるのはわかっているんですが、心配で」
「そ、そうなんですね。魔術も習ったことないんですけど、私でよければ力になります!」
「そちらは?」
「別次元の妖精、霊界のヒトダマ、宇宙生物です」
「ふむ……」
「ここが、魔術師たちが訓練を行うトレーニングルームです」
田辺に案内され、室内へ。
すると、数人の魔術師らしき人物が入ってくる。
ひとりは、白スーツにカラフルレンズの洒落た若い男。
「よう、田辺! 話ってなんだ?」
「来ましたか。小望さん、こちらはハーフィズ。エジプト出身。"ロード・シャーマン"という、降霊術の専門家です」
「おう。嬢ちゃんに教えるのは格闘技というか、身体の使い方だけどな」
次に入ってきたのは、黒い和装の女。頭には針金でできた鉢巻をしており、不気味だ。
「あんた、カタギのくせにやるねえ。こいつは借りてくよ」
そういうとおもちとミタマとガミネをつまみあげ、連れていく。
「彼女は最強のイタコ、霊障(たまあたり)京子。君と同じ日本出身。いままで色々な宇宙人や霊とも戦ってきたベテランだ」
田辺が紹介しているうちに、彼女はもう部屋を出て行ってしまったようだ。
「彼らは本当に別次元や宇宙から来たのか、なにか危険な放射線を放っていないかを調べてくれる。その間に、君は魔術と護身術の訓練だ」
「はい!」
そうは言っても時間がない。ジェシカがいつ四次元の神に敗れるかもわからない。
「超特急で鍛えてやる。まずは魔力の覚醒からだな、ちょい体借りるぜ」
ハーフィズは札を取り出し、自身の額と小望の額及び四肢に貼り付ける。
「これは?」
「呪札だ。これを媒介として、魂……スピリットとパスを繋ぐ」
呪札は、不思議な粒子を纏い始めていた。
「次に、あんたのスピリットに干渉する。魔術を使う感触を覚えてもらうために、あんたの体をラジコンのように使わせてもらうぜ」
次の瞬間、小望の肉体は操作が効かなくなった。
(うわ、自分の体なのに勝手に動いてる! 変な感じ……)
試しに、ハーフィズが小望の腕から魔力を放出する。
「バカ!」
田辺が叫ぶが遅い。部屋の壁が、巨大な魔力の光弾で吹っ飛んだ。
「嬢ちゃん、やるなあ」
「あ……これが魔力の放出?」
「そうだ。それさえできりゃあ、とりあえず戦える」
「えい!」
小望は自分でも魔力を放ってみる。
「ちょっ!?」
田辺が止める間もなく、反対側の壁が塵と化す。
「わたしにも出来た!」
「筋がいいなぁ」
建物に甚大な被害が出ているにもかかわらず、のんきに構えているハーフィズと、あきれ返る田辺。
しかし、二人とも内心では驚いていた。小望は二人が想像する以上の素質を持っている。
「これなら……」
そこに、突然もう一人の人物が乱入してきた。
それはまさしくテレポーテーションによる転移だ。
全身を黒ずくめの服で覆った、稀代のサイキッカーにしてジェシカの母。トルー・ルート。
「トルーさん! 何かあった!?」
田辺が駆け寄る。
(田辺……どうやらジェシカの限界が近い……私はこれから助けに行きます……)
「分かった。小望、まだ護身術までは教えられていないけれど、来てくれるかい」
「もちろんです!」
そう返事をしたのも束の間、爆発と勘違いするかのような振動波が全員を包み込んだ!
「!?」
声も発せない空間の中で、トルーは無意識にサイコフィールドを展開!
その場にいた田辺、小望、ハーフィズを守る。
だが、
「ぐうっ」
逆に振動波がサイコフィールドを侵食。トルーは衝撃を全身に受け、気絶!
「トルー!!」
田辺がトルーを抱え、周囲を警戒する。
「一体何が起こってる!?」
ハーフィズが頭上に気配を感じ、身構える。すると、天井に突然ジェシカが出現し、落下してきた!
「おっとキャッチ!」
ハーフィズは冷静にジェシカを受け止め、その様子を確認する。彼女もトルーと同様に気絶しているようだ。
「田辺、これは……」
「来るぞ……"四次元の神"が……」
突如、目の前の空間にトルーのテレポーテーションのようにして少女が現れる。
しかし、その姿はトルーやジェシカ、そしてこの世界にいるどの人間とも違う。
それは言わば、絵画のキュビズムを三次元に投影したような、ゲームの粗いポリゴンのような見た目だ。
そして、黒髪ツインテールの少女であることは辛うじて分かる。
「やっほー! わたし、こっちの次元に遊びに来ちゃった!」
「なるほど……神様にとっては遊びってわけか」
ハーフィズがそう呟く。それに、少女が意識を向ける。その刹那、ハーフィズが吹っ飛ぶ!
「うおおっ!」
先ほど小望が破壊した壁を超え、向こうの部屋の壁に叩きつけられて気絶した。
「小望! 魔力をありったけ放出するんだ!」
「はいっ!」
小望は両手をポリゴンの少女に向け、体中の魔力を放射する!
滝のような勢いで魔力が流れ、それを少女は
「えいっ!」
と、指一本で跳ね返してしまった。
「うわああああッ!!」
小望は目を覆った。自身の放った魔力の奔流がそれ以上に大きな力で跳ね返されるのを直視したくなかった。
だが、それは小望に直撃はしなかった。
「うおおおおおっ!」
田辺だ! 田辺の右腕のビームライフルから放たれる閃光は辛うじてエネルギーの流れを変え、間一髪でその場の全員の危機を救った。
「あ、ありがとうございます……」
「トルーもジェシカもハーフィズも負けた……このままじゃ勝てない! ひとまず逃げよう!」
「は、はい……でも、ここの人達は……」
「優秀な魔術機械が足止めしてくれるさ、それもいつまで持つか分からないが」
田辺はトルーとハーフィズを、小望はジェシカを抱えてその場を逃走する。
「待ってよ」
瞬きする間もなく、ポリゴンの少女は彼らの眼前に出現する。
「このカッコ、変かなぁ? じゃあ……」
少女は瞬く間に、小望たちと変わらない"普通の"人間の容姿に変化した。黒髪に赤メッシュ、黒いパーカー。頭の上には、名状しがたい何か、この次元のものとは思えない物体が乗っており恐怖心を掻き立てる。
そしてツインテールは、明らかに彼女の頭と接続されていない。宙を浮いている。だが、彼女の頭部と連動して動いている。そのシステムは全く不明だ。
「どう? これで遊んでくれる?」
見ると、体のパーツも所々がずれており、本来の人体では絶対に向かない方向へ動いているものもある。小望たちとは根本的に違う存在なのだということをまざまざと見せつけられる。
「あ、自己紹介ね。いいよ、わたしは天災イヨプゥ」
「この前は厄災デチクゥがお世話になったみたいだね。でも、わたしはあいつとは違うから。別に怒ってるわけじゃないよ! でも、遊び相手が欲しくてさぁ!」
イヨプゥと名乗った天災は、この世界に対して怒りの鉄槌を下しに来たわけではないようだ。つまり、彼女が満足するまでこの大災害は止まらない。
頼みの綱のジェシカは倒れ、ピンチヒッターの小望は力及ばず……
「ど、どうすればいいの……!?」
新登場マシーナリーチルドレン
てんさいイヨプゥ
補足(元ネタ)
霊障京子…マシーナリーとも子EX 恐山の超人兵士篇、イタコとの死闘篇より
ハーフィズ…ロード・シャーマンより