チルドレンズ   作:晩舞龍

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前回までのあらすじ

巨大宇宙生物ガミネの侵略を止める為、九尾の狐はすべての力を使い果たした。
一方、この一件で地球人類は宇宙からのまだ見ぬ脅威を知ることになった。


イナリマン#1 巨大害獣無法地帯

 都市部から離れた山中に巨大不明生物が出現したとの報は、瞬く間に世界中を駆け巡った。日本は諸外国への対応に追われる中、巨大生物二体の痕跡を探したが、撮影した映像と踏み荒らされた木々以外には何も残っていなかった。

 

 その一方で、自衛隊から独立した独自の組織の設立も進められ、法案が審議中の現在、自衛隊内の仮組織として「巨大害獣殲滅班」が置かれた。

 

「今のところは自衛隊に指揮権があるが、有事に最終判断を下すのは我々になる」

 仮設の詰め所で班長の大河内が、選抜された隊員たちに向けて訓示を行っている。

「誰にも経験したことのない未曽有の災害だ。では各自、準備を」

「了解!」

 そう返事をしたのは、若きエリート・霧崎刃(きりさきやいば)と新人の矢季弥生(やきひろみ)だ。急ごしらえの組織のため、まだ三人しか構成員がいないが、文句は言っていられない。さっそく、先日の事件について調査を開始する。

「霧崎さん、この前の事件のデータ見ました。あれって、地球の生物なんですかね? それとも宇宙の生き物?」

「そうだな……黒い生物を第一号、金の生物を第二号としよう。第一号は地表に突然落下し、そして空へ帰っていった。こいつは宇宙生物で間違いない」

 だが、と霧崎は顎に手を添えて唸る。

「金の生物は地上……森から出現したように見えた。そして、外見は我々の知っている狐と酷似している」

「つまり、まだ見ぬ新種の生き物!?」

「判断するには、まだ情報が足りないな。そういえば、矢季も現場にいただろ? 写真は撮ったか」

「もちろん!」

 矢季は現像した写真をデスクに広げる。

 

「ふむ……これは」

 霧崎が指し示したのは、白い巨大狐の写真。

「それは、第一号が金色の光を帯びた時の第二号の様子です」

「ふむ……これは死んだと捉えるべきか、それとも……」

「もし死んでしまったとしたら……」

「ああ。次同じような事態になったとき、対処できるのは我々だけだ」

 

 

 九尾は、ガミネに黄金の"色"を与え、そして通算四回目となる力の発動によって"楔"である鶴千代の肉体も限界を迎えてしまった。

 九尾の狐による力はあの世との境界線を裂き、狐は黄泉路へと引き戻される。

 

(いや、まだ私は戻るわけにはいかない……同じような存在が必ず、地球人を脅かしにやって来る)

 すんでのところで踏み留まる。

(死者を冒涜するような行いは心苦しいですが……今生きる人々を救うため!)

 狐は最後の力を振り絞り、人間の遺体を探す。

(……!?)

 ない。死体が、一つも。

 それもそのはず。明治以降、日本人はほぼ100%火葬によってその遺体をあの世へと還している。

 

(こんなはずでは……っ!)

 その勢いに流されるまま、狐は仕方なく"生きている人間"へとその体を移す。

 

 現代では珍しく、着物をまとった男。無意識に狐は、なじみのあるその外見につられてしまったのかもしれない。

「うおい! 何だ、貴様」

 いきなり体を借りたとはいえ、その男に不遜な物言いをされ狐は驚く。

「申し訳ない。私は九尾の狐……訳合って貴方の体をお借りできませんか?」

「いやだね」

「ええ……えっ?」

「い・や・だ」

 キッパリと断られ、狐はさらに驚く。

(なんですか、この生意気な男は……私の事情すら聞こうともせずに!)

「ええい、迷惑をかけたと下手に出ていれば! 上位存在に対する敬いが足りないのでは!?」

「うっせえ! 何なんだアンタは!」

「お黙り!」

 言うと同時に、そこが人通りの多い街中であるにも関わらず、男の体は発光し始めた! 

「どうなってやがる!?」

「貴方にはこれから、私の力を使って人類を守ってもらいます! ついでに真人間に教育してあげましょう!」

「余計なお世話だーーッ!!」

 その体はみるみる巨大化。身長60mを超す人型の生物が都心部に顕現した。

 

 全身は白く、体に走る赤いラインと水色の目が特徴的だ。

「なぜ俺は巨人になってる!? しかも、女の体じゃねぇか!」

「私は神話でも語られるように女神としての側面も持っています……貴方と融合するにあたり、その面が特出してしまったのでしょう。以前はそんなことは無かったのですが……」

「べらべら喋ってねぇで元に戻せ! 通行人が滅茶苦茶動画撮ってるぞ!」

「おっと、失礼」

 

 

 

「はい、こちら巨大害獣殲滅班。なに? 都心で巨人出現?」

 班長の大河内が号令を出す。

「殲滅班、出動。現場に急行せよ」

「了解!」

 

 霧崎と矢季が現着。しかし、巨人の姿はない。ネットには確かに、白い女巨人の映像が。

「一目写真に撮りたかった~!」

「とにかく聞き込みだ。ついてこい」

「はいぃ……ん? あれって……」

 矢季が何かを見つけ、霧崎が立ち止まる。

「どうした?」

「いや、昔の知り合いです。那須という男で、変人なんですけど」

「巨人騒ぎと関係はなさそうだな」

「そうですね、すいません呼び止めて。聞き込み始めましょ」

 

 

「何が上位存在だ! 現代の常識が全くなってない! それになぜ、俺のような顔の言い男が女の姿に変わらなければならないんだ!」

「やれやれ……どうしてこんな男と一体化してしまったのか……」

「おい、狐。早く俺の体から出ていけ。今なら迷惑をかけたことは不問にしてやるから」

「それが……普段私は遺体を借り、この世にとどまっています。それは、生者との分離ができないからなのです」

 息を吸い、空を仰ぎ、その男・那須藤高は街中にもかかわらず大声で叫んだ。

 

「バカッ!!!!」

 

 




新登場マシーナリーチルドレン

矢季弥生

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