巨大宇宙生物ガミネとの一件で力を失った九尾の狐。
那須藤高という人間と融合し巨人となるが、その関係は良好とは言えず…
一方、自衛隊は巨大害獣殲滅班を設置。そこには那須の過去の知り合いである矢季弥生もいた。
「巨大な猫のような生物が、都市部を蹂躙して進んでいきます!」
体高40mはあろうかという巨大な猫が四足歩行で市街地を蹂躙する。空から突如現れたそれは、ただ街を見て回り、目から発射されるライトを照射して地球を観察しているようだ。だが、人間からすればたまったものではない。社会生活が大混乱に陥れられている。
「なんで俺みたいな顔のいい男があんな姿に変身しなきゃなんねぇんだよ!」
「やかましい。ああ……このような人間と一体化した数日前の私を殴りたい……」
「へいへい、じゃあ行くぞ」
藤高が赤いかんざしを掲げると、赤と水色の発光がその体を包み込む!
「頭が高い! 控えおろう! ヤァヤァ我こそは、日本一顔のいい男・那須藤高!!」
青年の体が白く、狐のようで女体のような、巨人へと変わる!
身長60mの巨体が都心に出現し、巨大猫型生物を見下ろす。
(それで、どうすればいい?)
藤高の問いに狐は答えず、イナリマンの目から水色に発光する光波熱戦が発射される!
熱線は巨大な猫の体を違わず捉え、その体を焼き尽くす。
(おいおい、いきなり攻撃って野蛮じゃぁないのか?)
(地球人が倒壊した建物に潰され、何人も亡くなっています。害虫は駆除する。それは人間も同じでしょう)
(むむ……確かに。あいつの目的は分からないが、放っておくわけにもいかないか)
(先ほど思念波による対話も試みましたが、あれはロボットのような、決められた行動を行うだけの生命。目的を話してくれそうもありませんでした)
細かい破片まで滅却され、跡形も無くなった猫を一瞥し、イナリマンは元の人間の姿へと戻った。
「矢季! 撮れたか!?」
「はい、バッチリ!」
「しかし、だからといって何かわかるわけでもないが……」
「あ。あれ……」
「どうした?」
「那須です。前の現場にもいた……巨人の追っかけでもしてるんですかね?」
「少し、話を聞いてみるか」
「失礼。巨大害獣殲滅班の霧崎というものです。少々、お話を伺いたい」
「久しぶり、那須くん」
「ああ、矢季か。そういえば自衛隊に入ったんだったか」
「那須くんは?」
「まだ気ままな大学生活さ」
「久しぶりの再会を邪魔して申し訳ないが、巨人について何か知っていることがあれば教えていただきたい」
「ああ、それは俺だな」
「えっ?」
(えっ?)
矢季が声をあげるのと、狐が心の中でひっくり返るのは同時だった。
「どういうこと……? 似ても似つかないし、那須くんあんな大きくないし……」
「九尾の狐とかいう精神寄生体に乗っ取られた! それでこのありさまだ。巨大なバケモノと戦わさせられている」
(このバカ男……どうしてこんな気楽に正体をばらしてしまうのです)
「霧崎さん、これいつものことなんです。そんなだから奇人とか変人とか呼ばれてて」
「しかし、巨人の外見には狐の要素もあった……それをウソに取り込むとは、よく観察していると言えるな」
「そうですかね?」
「こいつの話は全くの荒唐無稽だが、自供した以上調べないわけにもいくまい。連行しよう」
「マジですか!?」
「マジだ。いまは少しの手掛かりでも欲しい。巨大猫の方は細胞も残らなかったようだしな」
政府は巨大生物を命名。第一号「ブラックボール」第二号「フラッシュフォックス」第三号「イナリマン」第四号「コスモキャット」
「ほかのはまあわかりますけど、あの巨人はなんでイナリマン? 体つきはどうみても女性ですよね」
「あの那須という男がそう言ったんだ。まあ、manには人間という意味もあるわけだから間違いでもないだろう」
「那須くんは本当に巨人なんですか? 私には信じられません」
「ああ、取り調べでも荒唐無稽なことをずっと言ってるよ。ただ、話には全く矛盾が無い。よくできた物語のようだ。それが俺にはどうも怪しく見える」
都内某所の映画館。ここでは、きょう公開初日を迎える話題の映画を見ようと大勢のファンが集まっていた。
「いやあ、ついに公開かぁ。俺は昨日までに過去作品全部見返してきたよ!」
「パンフレットと、デザイン本ひとつずつ!」
「監督、ちゃんと終わらせてくれよ……」
「いや、私はまだ終わってほしくないよ……」
期待に目を輝かせる人間たちの群れが、熱気と共に巨大な箱に吸い込まれていく。
照明の落とされた漆黒の空間に、ポツリと文字が灯される。
『株式会社RRR制作作品』
観客のボルテージが最高潮に高まる。
『劇場版 つむりん聖誕』
おおっと感動の声を漏らすもの。スクリーンの端から端まで見逃さんと、目を見張るもの。買ってきたポップコーンをつまもうとし、口が開いたままになってしまっているものまで。
そんな観客たちの様子を、スクリーンを一瞥もせずにじっと眺めている人物がいた。
映画の上映が終わり、彼らは感動と興奮の熱狂冷めやらぬまま劇場を出た、はずだった。
確かに映画の内容は素晴らしく、内容も余すことなく覚えている。
しかし、彼らは誰一人として、心のうちからこみ上げる熱い気持ちがなかった。それは決して映画の出来が悪かったわけではない。なぜか、脳が落ち着き、その活動を穏やかにしている。
なぜか?
彼らには知る由もない。哀れな被害者たちを尻目に、観客たちをじっと見ていた男が立ち去る。全身を黒い着物に包み、深いつばの帽子を被っている。だが、なんということだろう! その顔は人間のものではなく、どちらかといえば虫に近い何かを感じさせる。その瞳は複眼。帽子に隠れて見えないが、頭頂部には触覚もある!
その正体は、遥か彼方のメラノ星からやってきた宇宙人。
文化活動による知的生命体の感情の動きを主食とする彼にとって、映画館は格好の餌場だった。
新登場マシーナリーチルドレン
双翅亭めらの(作中名称:メラノ星人)
補足(元ネタ)
つむりん聖誕…PC用フリーゲーム「つむりん聖誕」より