チルドレンズ   作:晩舞龍

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イナリマン#3 宇宙人総進撃

「宇宙から飛翔体有り! 落下予測地点は……ここです!」

 矢季のPCを霧崎がのぞき込む。

「あとどれくらいだ」

「1分20秒で……」

「退避!」

 

 急いで那須を連れ、建物の外へと退避した二人。

 那須は、

「意外と普通の雑居ビルだな。予算無いの?」

 などとのんきなことを言っている。

「無いのは予算じゃなく時間! 急に巨大生物がわんさか出るから人員だって二人だけ!」

 矢季が吠えているのを歯牙にもかけず、霧崎は空を見ている。

「オレンジ、いやベージュ色の球体が見える。来るぞ」

 

 瞬間、ドカンという轟音と共にビルの隣に球体は落下。爆風とアスファルトの破片が舞い上がり、三人はなんとか近くの電柱にしがみつく。

「あ、あれってこの前の……?」

 矢季が見上げた先には、先ほどまで球体だったベージュ色の巨体。それは猫に酷似しており、体長も以前現れた巨大生物第四号「コスモキャット」と同程度だった。だが、よく見ると顔の形状が異なっている。以前は一つ目で不気味な印象を漂わせていたが、今回の個体は目が二つ。それだけなら地球上の猫と変わりないが、この宇宙生物は目に赤いバイザーのような機器を付けている。明らかに文明の機器だ。

 

「奴は知的生命体なのか……?」

 驚く霧崎。写真に巨大猫を収める矢季。那須は一言も発さず、自身の中の狐と対話する。

 

(どうする、狐。あの猫が来るのは二回目だぞ)

(お待ちなさい。奴は以前の個体とは違います。私と対話するチャネルを備えてきています)

(ほほう。で、先方はなんて?)

(彼の名は小宇宙猫 第弐号機・チェムペーク。第壱号機・フォーモに代わり、この星を記録に残しに来ただけのようです。私の方から、上空での観察にとどめるよう打診し、了承を得ました)

 

 猫はおもむろに飛び上がり、上空を飛行し始めた。

「最初からああしてくれよな」

「那須君、あの猫について何かわかるの?」

「ああ……観光しに来ただけだな」

「ふーん?」

 

 狐と猫の間で不可侵の密約が交わされたが、地球人がそれを知るはずもなく。

 

「こちら霧崎。……了解」

「上層部はなんて?」

「他国と協力し攻撃に移るそうだ」

 いまだ戦力の足りない巨大害獣殲滅班に変わり、政府は攻撃を決定。

 

 30分後。

 対空ミサイルの雨が猫を包んだ。

 全弾命中、損傷なし。

 

 猫、地上に再び降下。

(話と違う! 狐、貴様は人間の上位存在ではないのか!)

 怒る猫。どうやら地球の生命体の現状を誤解し、狐にのみ接触を図ったようだった。

 猫が癇癪を起し、街を破壊。自衛隊が攻撃を加えるも、効果なし。

 

(ものを頼みに来たのに自身の調査不足を棚に上げ破壊行為。駆除に値します)

(わかったよ。俺もこのまま踏み潰されちゃかなわん)

「矢季。頭がかゆい、かんざしを取ってくれ」

「何ですか、この一大事に!」

 乱雑に引っこ抜かれたそれを、矢季は那須の手に持たせる。

「サンキュ」

 閃光、轟音、爆風。

 イナリマン、顕現。

 

「まさか、ほんとに那須くんなの」

「あの男が……今巨大化したのか」

 

 イナリマンがチェムペークの首根っこを掴み、市街地から離れた所へ投げつける。

「うにゃあ! うにゃあ!」

 イナリマンを威嚇するチェムペーク。しかし、恐れが勝っている。同族を瞬殺した存在であるからして、その感情は当然であろう。

 イナリマンの瞳が光る。光ったと同時に、相手に隙を与えぬまま光波熱線が発射される! 

 チェムペークはすんでのところで飛翔し、逃げ去ろうとする、が! 

 熱線はチェムペークの体を追尾! すぐさま追いつかれたチェムペークは首元を貫通し、上空で爆発四散! 

 

「なんて強さだ」

「まるで戦闘ではなく駆除ね……」

 巨人を見上げながら呟く霧崎と矢季。その近くに、黒い影。

 

「私の餌場に、あれは邪魔ですなぁ」

 そう言うと、その影はみるみる巨大化! 

 

「霧崎さん! 後ろ!」

「何だ!? また巨人か!?」

 

 昆虫のような頭部。人間のような体躯。文化活動による人間の感情の動きを食料とする宇宙人、メラノ星人だ! 

 

(こんにちはイナリマン。私はメラノ星から来たもので。ここは私にとって格好の餌場、オアシスなのです)

(それで?)

(貴方のような星外生命体に不寛容な存在は邪魔なのです。消えてもらいましょう)

(私とて、危害を加えない限りは対話での解決を模索しているのですが……貴方はもうその気はなさそうですね)

(ええ、もちろん)

 メラノ星人の触覚が怪しく動く。

(おい、狐! 連戦だが大丈夫か)

(先ほど熱線を打ってしまいました。再充填に30分かかります)

(大丈夫かよ!? こんなとこで死にたくないぞ)

(ええ、だから肉弾戦で仕留めます)

(お、そうこなくちゃな!)

 

 イナリマンはボクシングのようにファイティングポーズを構え、次の瞬間、大気を切り裂く高速のフックがメラノ星人を強襲した! 

 

 

「あなたが編入してきた霧ヶ峰さん?」

「そう。この星のこと、もっと知りたくて来ちゃった」

「? 不思議な言い回しするのね。でも、きれいな金髪! どこから来たの?」

「それはもう、遠くから」

 

 国立池袋大学・秋葉原キャンパス。人文・歴史・科学、ロボット工学……あらゆる英知が集まる最先端の大学に、一人の変わった編入生がいた。

 

「それは……神話の本?」

「そう。九尾の狐について調べてる」

「じゃあ、私の研究室に遊びに来なよ! わたし歴史専門で、伝承とか伝説結構詳しいんだよ」

「そう、ありがとう」

 その編入生はゆっくりとベンチから腰をあげ、手を差し出す。

「これでいいんだっけ? ここの挨拶」

 

「うん、バッチリ! じゃあよろしくね! 私は源頼子」

 

「わたしは霧ヶ峰エニマ。よろしく」

 

 淡く輝く空色の瞳の奥が、怪しく光った。

 

 

 




新登場マシーナリーチルドレン

ミナ・ライコ(作中名称:源頼子)

補足(元ネタ)
小宇宙猫(Cosmo-Cat)第弐号機 チェムペーク…「大宇宙猫のmemeどれに関する記録(小宇宙猫ちんぴき)」より
霧ヶ峰エニマ…都合により#4で解説
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