チルドレンズ   作:晩舞龍

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ハンマーナイト・トキコ

「私の名前は、槌谷解子(つちやときこ)……17歳……生まれは埼玉県、あ、日本っていう国の……女子高生……」

 桃色の派手な頭髪。見慣れない奇妙な服装。それを前に、二人は困り果てるばかりだった。

「なあお嬢ちゃん、どんな魔法を使ったのかは知らんが、うちの()()()を返しちゃくれないか」

「そうっすよ! あの人がうちらのメインアタッカーなんすから、欠けると困っちゃうっす」

「えっと……ツバサ、って?」

 

 事件は数分前に起きた。

 冒険者や決闘者。荒くれ物の集まるこの街の一角。

 いつものように三人は仕事のために酒場に集合した。

 三人は同じチームのメンバーとして、依頼される仕事をこなす何でも屋の仲間だった。

「今日の仕事はなんすか?」

 緑がかった頭髪の合間から角を覗かせる少女が聞くと、

「うん、今日はこんな仕事を貰って来たよ。二人も確認して」

 と、赤いハットを被った銀髪のリーダーが依頼書の写しを二人に手渡す。

「なになに……北西の森の魔獣退治か。しかしこの規模、ちいとばかし大変すぎやしないか? ツバサ」

 全身を甲冑の如きフルプレートに包んだ巨漢の男が依頼書に目を通しながら疑問を呈す。

「大丈夫! 今日は……」

 そういいかけたリーダー・ツバサの体が突如として青色に光り始める。

「えっ!? な、なにこれ!? 二人とも、助け、てっ」

 光る本人にも状況は掴めない様子で、それをどうにかする間もなく、目の前には別の人間……槌谷解子が、入れ替わるように出現していた。

 

 とりあえずテーブルにつき、三人は状況を整理することに。

「私にも、今の状況がよくわからなくて……ここはどこなんです?」

「ここはブンバウリュの街だ」

「バン……なんて?」

「ブンバウリュ、だ。聞いたこともないってか?」

「はい……皆さんは日本や埼玉って……知らない、ですよね……」

 明らかに人間でない、角の生えた少女に、歴史やファンタジーでしか見たことの無い甲冑の男が、とても解子の故郷について知っているようには見えなかった。

「聞いたことあるか? ナナシ」

「いや、ないよ。でも、言葉通じてるんだし、近いんじゃない?」

「う~む、だがこの服装も見たことの無いものだ。お前さん、いったいどうやって俺たちの目の前にいきなり現れたんだ?」

「はい、私は故郷で学校という場所に向かってて……その途中で突然、体が光りだしたんです」

「それで、気づいたらここにいたのか」

「そう、みたいです」

 うーんと甲冑の男が腕を組む。

「よくわからんが、ツバサが消えて、この女が現れたのは事実のようだ……見たところ危険そうではない、というところか」

「ツバサって?」

 解子が聞く。

「我々チーム・ストーンズのリーダーだ。あいつがいないと仕事ができん」

「もしかして、入れ替わったとか? でも、確認するすべもないっすし、とりあえず今後のこと考えましょうよ」

 そう言って少女が、解子に向き直る。

「ボクはナナシ。ワーオーガっす! よろしくっす!」

「ワー、オーガ? って?」

「ヒト族とオーガ族のハーフっす! って、その様子だとオーガ族も知らないっすか!? ほらここ」

 ナナシと名乗った少女は自身の頭から生える角を指さす。

「これがオーガ族の特徴。かっくいいっすよね!」

「う、うん。えと、よろしく」

「よろしくっす!」

「じゃあ、次は俺だな」

 甲冑の男が解子に向き直る。

「俺の名はパイライト。巷では、この見た目だからか、鉄鉱仮面と呼ばれている。よろしくな」

「改めまして、槌谷解子です。よろしくお願いします、トキコって呼んでください」

 自己紹介も終え、ひと段落着いたところでナナシがあっと声をあげた。

「そうだ! いいこと思いついた!」

 

 

 武器屋「ガトレイン」

 

「ここは武器だけじゃなく防具も揃ってる。とりあえずは武器と、足の装備だな」

 物珍しそうに武器の棚を眺める解子は、その言葉に驚く。

「私、戦ったことなんてないんですけど! 先に防具を買わせてください!」

「ダメっすよ! 武器や魔導書が無いと、依頼を受ける騎士としてエントリーできないんすから」

「私が、騎士? 魔法使いとかじゃダメなんですか!?」

「このチームだと俺が戦士。ナナシが盗賊。ツバサは"決闘者"だったが……あれは特殊だからな。そして」

 鉄鉱仮面が立てかけてある巨大なハンマーを手に取る。

「魔法使いなんてものは伝説だ。お前さんが言いたいのは魔術師だろうが……あれは才能が無いとなれん。お前さんは、とても有りそうには見えんな。そうなると、一番簡単なのは騎士。武器を持つだけで今日からなれる」

「頼むっすよトキコさん! リーダーがいない今、戦力が欠けると次の仕事ができないっす~」

「で、でも私が戦力になんてなれるのかな?」

「仕事ができなくなるよりはマシだ、という判断でいい武器を買ってやるから大丈夫だ。ほれ」

 重そうな漆黒のハンマー。それをふいに投げられ、思考停止してしまうトキコ。だが、次の瞬間……

 片手でそれをキャッチし、指先で一回転してみせた。

「あれ!? 私、いま……」

「うむ、上出来だ。それは使用者に魔力を流し込み、動きをサポートしてくれるハンマーだ。新米にはとても買えない値段だが、特別だ。それと自動回避の靴……これがあれば雑魚相手には防具いらず」

「あ、ありがとうございます!」

「そのかわり、ツバサが戻ってくるまでバリバリ働いてもらうっすよ!」

「う、うん。頑張る!」

 

 

 北西の森

 

「い、いよいよですね……緊張してきました」

「お前にはナナシのフォローをしてもらえばいい。俺が一人で魔獣を狩るあいだ、いつもナナシとツバサがサポートし合っていた。その代わりだ」

「はい!」

「いい言葉を教えてあげるっす! このあたりに伝わる言葉なんすけど。「日々を生きるのに必要なのはスリリングさと力試し」っす!」

(スリリングさと……力試し……)

「よし、私の力、試してみます!」

「その意気だ! がんばれよ」

 鉄鉱仮面はずんずんと魔獣の群れに向かっていき、その両腕にそれぞれ握られた二振りの剣で魔獣を屠っていく。

 一部の魔獣が逃げ出し、それをナナシとトキコが追いかける! 

「せいっ!」

 ナナシの飛び道具が魔獣の足止めをし、そこにトキコが追い付いてとどめの一撃! 

「うおりゃああっ!!」

 魔獣の胴体にヒット! ハンマーの魔力によって最適化されたトキコの体はホームランバッターのように華麗なフォームで、魔獣を霧散させる! 

「やったっす!」

「うん!」

「あ、っでもまだまだいるっすよ! 逃がすと街に被害が出るんで、しらみつぶしにやっちゃいましょう!」

 ナナシが斧型武器を取り出し、トキコがそれに続く……

 

 

「おつかれさん」

 魔獣を殲滅し、街への帰路につく三人。

「私にも……出来ました」

「どうやら、スリリングさがクセになったみたいっすね」

「だって、私今までこんなことやったことないもん……まだ心臓がバクバク言ってる」

「そりゃあよかった。これからもツバサの代わりにガンガン働いてくれよ」

「ツバサさんはどうするんですか? それに、私も元の世界に……でも、こっちも捨てがたい……」

「まあ、おいおい考えよう。今日はナナシと同じ部屋に泊まれ。あそこの食堂はうまいぞ」

「考えたらよだれ出てきちゃったっす」

「ハハハ!」

「ふふっ!」

 

 突如、異世界にやってきたトキコ。彼女は鉄鉱仮面やナナシに助けられ、最初の一日を無事に終えた。衣食住に加え、職も見つけ……

 

 

 一方、全てを失ったものもいた。

 

「本日午前8時ごろ、埼玉県XX市で不審な人物がいるとの通報があり、銃を持った人物が警察に拘束されました。自称マリガン=ツバサ容疑者(25)は意味不明な供述を繰り返しており……」

 




新登場マシーナリーチルドレン
マリガン=ツバサ

補足(元ネタ)
槌谷解子…https://twitter.com/pylite6/status/1538134325212094464より
ナナシ…https://twitter.com/pylite6/status/1538269622138732544より
鉄鉱仮面…https://twitter.com/pylite6https://twitter.com/gaminessium/status/1550117612343795714より
武器屋「ガトレイン」…https://www.nicovideo.jp/watch/sm39493588より
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