チルドレンズ   作:晩舞龍

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登場人物紹介

・魂川りんり…大宇宙倫理の会 教祖。凸凹星人ぽここから魔術を教わった。

・桃戸メリー…りんりの大学時代の友人で、大宇宙倫理の会のメンバー。りんりに対し並々ならぬ感情を抱えている。

・めろじゅー…りんりの大学時代の友人で、二頭身の謎の生命体。放っておくと増えたり減ったりする。

・凸凹星人 凸星ぽここ…地球に不時着した宇宙人。この星のルールを破ってしまい、厄災デチクゥや天災イヨプゥなどの大災害を呼び覚ましてしまう。現在、姫寺まつこの家で義姉妹として居候中。

・姫寺まつこ…ぽここの姉兼保護者。ぽここ不時着の際死亡し、後に生き返った経験を持つ。

・アニマル星人 ヤケクソうさ子…アニマル星からやってきた宇宙人。謎の組織「藤野財団」が作り出した改造人間と戦う。気性が荒い。

・アニマル星人 ヤケクソきつ子…別の世界のヤケクソうさ子。気性が荒い。

・アニマル星人 ヤケクソうま子…うさ子やきつ子とはまた別の世界のヤケクソうさ子。気性は穏やか。

・改造人間第11号機 11子…藤野財団によって改造されたシャチ人間の少女。うさ子と同棲中。

・改造人間第12号機 山科ひびや…藤野財団によって生み出された改造人間。改造される前の記憶を失うも、正義の心に目覚め、藤野財団を撃破。

・ジェシカ・マージマン…魔術組織「ワイズマン」に所属している、世界最強の魔術師。以前、ヤケクソうさ子の身に起きた異世界事件の解決に協力した。組織の指令で、ぽここが呼び起こした「天災イヨプゥ」の様子を見に行くことに。

・トルー・ルート…ジェシカの母。魔術師で生物学者。

・アークドライブ田辺…トルーの恋人。サイボーグ。

・ハーフィズ…「ワイズマン」所属、エジプト出身の降霊術師。別名"ロード・シャーマン"。

・白居小望…魔術の才能を持った普通の女子高生で、ひょんなことから魔道少女に変身する力を得る。

・しろいおもち…和菓子次元からやってきた使者。小望を魔道少女にした。

・しまりん…小望を「ワイズマン」に勧誘した魔術動物。

・飴良ミタマ…霊界に住むヒトダマ。小望に助けを求めに来た。


魂川りんり

 2022年12月 東京 大宇宙倫理の会

 

「あなたはこの世界のルールを大きく逸脱した、あの事件の一端を担ったと言っても過言ではない」

 ジェシカ・マージマン……世界最強の魔術師の言葉は重みが違う。そして、自身に罪悪感があるからこそその言葉は心に暗い影を落とす。

「あなたたちは悪意があってあれを引き起こしたわけではないのは分かっています。ですが、贖罪の機会は必要でしょう」

「うん……」

 いつも以上に死んだ魚のような目をして、魂川りんりが頷く。

「では、これを」

 そんな彼女に、ジェシカは一冊の本を手渡す。

「これは?」

「マジックの書……魔術に関する教科書のようなものです。あなたには魔術のスジがあるみたいですから」

 ジェシカは大宇宙倫理の会の応接室をうろうろと歩きながらりんりに語りかける。

「その本で魔術を学んで……この世界を危機から守ってください。それがあなたに与える罪滅ぼしであり、使命です」

 ジェシカは懐から、魔術や超常の力によって未解決となっている事件の資料を取り出す。

「僕はあなたたちが起こした事件の後始末をしなければなりません……不在のあいだ、この世界を頼みますよ」

 ジェシカはマジカルゾーンへのゲートを開き、その中へ消えていった。りんりの返事も聞かずに。

「私が説得されなくてもやるって、分かってたのかよ」

 

 

 2023年1月 東京 大宇宙倫理の会

 

「あけましておめでとうございます……って、また魔術の勉強ですか? 正月くらい休みましょうよ」

 手作りのおせちを運んできたメリーとめろじゅーを見て、りんりは手を止める。

「ありがと。でも、未解決の事件をほっとけないからさ」

 りんりの手元には、民間人の行方不明事件から、UMA狸人間の発見報告まで、警察の手にさえ負えない超常事件の資料。ジェシカから受け取ったこれをモチベーションに、魔術の特訓に励んでいた。

 しかし、それを面白く思わないのが桃戸メリーだ。

 サイボーグ関係の仕事をする様子が無いのはメリーにとって安心することだったが、こうも自分に構ってくれないと、不満もつのる。

「……」

「どうした、メリー……って、おい!! 後ろ!」

「え?」

 メリーが後ろを向くが、何もない。

「そうじゃなくて、足元! めろじゅーが!」

 そこには、いつもと変わらない様子のめろじゅーが、何故か二人いた。

「なに、これ……」

 

 おせちを食べながら、りんりとメリーは目の前の不思議な光景を見つめていた。

 瓜二つの二人(二匹?)のめろじゅーは、どちらもいつもと変わらぬ様子でおせちをつついている。

「なあ、昔から思ってたんだけど、コイツっていったいなんなんだ?」

「さあ……そもそも大宇宙倫理の会にはいつからいたんでしたっけ? 天文部のころ?」

「確か、トウジより前にはいたような気がするんだが、経緯を全く思い出せないな……」

 もはやどちらが今までのめろじゅーなのかりんり達にもわかっていなかったが、なにか危険があるわけでもなく、しばらく様子を見ることにした。

「それにしても、こうやってりんりと食事するのも久しぶり……最近、ずっと忙しそうだったから」

「かまってやれなくて悪かったよ、今度から飯くらいは一緒にとろう」

「ハイ!」

 そんなりんりとメリーの様子を、二人のめろじゅーがぼーっと見つめていた。

 

 

 

 2023年2月 三重

 

 ピンポーン。

 

 コン、コン

「こんにちわ~。大宇宙倫理の会で~す」

 

「主教勧誘お断り! なんてね」

 ニカッと笑いながらドアを開け、ヤケクソうま子が顔を出した。

 

 りんりの訪問はもう三回目になる。

 ジェシカから受けた、平和維持の使命。魔術が満足に使えない今は、事件の対応をするわけにもいかず、こうして身近にいる宇宙人(異世界人)たちの様子を見に行くことにしている。

「どうよ、様子は」

 部屋の奥からヤケクソきつ子が眉間にしわを寄せて出てくる。

「帰れ」

「そんなこと言うなよ~元気にしてるか様子見に来ただけだろ~」

「そうだよきつ子。わたしたちの暮らしぶり見てもらおうよ」

 きつ子はぼりぼりと頭を掻きながら、りんりを案内する。

「ここがリビング。向こうがキッチン。あっちにわたしとうま子の部屋。ほら、もういいだろ」

「どうなの、自分と暮らすってのは」

 りんりの質問に、うま子がニコニコと答える。

「なんか不思議な感じ! 双子のお姉ちゃんができた、みたいな」

「フン」

 きつ子は頬を赤らめてそっぽを向く。

 二人はうまくこの世界になじめているようだ。

「困ったことがあったら言ってよ。そうだ、仕事とか」

「仕事はわたしたち、苦い思い出があるから遠慮するね……でも、当分は大丈夫だよ」

 うま子によると、以前からヤケクソうさ子が戦っていた改造人間を生み出す組織・藤野財団が壊滅したらしい。改造人間でありながら改心した山科ひびやによるものだそうだ。

 壊滅した財団の資金は、ジェシカも所属する魔術組織「ワイズマン」が秘密裏に回収し、壊滅に貢献したうさ子とひびやに与えられたようだ。

「それを分けてもらってるから、生活費は大丈夫」

「そういう事情があったのか……そういえば、うさ子と11子は? 隣に住んでるんだろ? 呼んでも返事なかったけど」

「あいつらは今日は改造人間の残党狩りだ」

 

 

 同日 静岡

 

「11子ちゃん!」

「私が隙を作る! うさ子、合図したら来て!」

 11子が敵に突貫する! 

 だが、四本の足による跳躍は彼女の追随を許さない。

「キル!! エブリデイ!!」

 飛び上がりながら、その改造人間の背中から無数のミサイルが放たれる! 

「危ない!」

「くっ……これじゃ近づけない」

 11子がいったん、うさ子のいる後方まで下がってくる。ミサイルによる爆風が晴れると、そこに改造人間の姿は無かった……。

「チッ! 逃げられた。プレゼント箱男め……」

「帰ろっか、11子ちゃん」

 

 

 数日後 東京 大宇宙倫理の会

 

 事務所の空き部屋は、今やりんりによる魔術修行のための場所となっていた。不在のジェシカに代わり、魔術の経験があるぽここが所業の成果を確認する。ぽここは凸凹星からやってきた宇宙人で、今日は姉のまつこと共にやって来ていた。

「ミスティックシールド!」

 りんりの腕に装着されたプラズマブレスレットが、大気をプラズマに変化させ、電磁シールドを作り出す! 菱形のそれが腕に出現し、りんりはさらに続ける。

「ワープディメンション!」

 空間をこじ開け、遠くの場所へと繋がるゲートを開く! 

「すっごいなぁ」

 感心した様子のまつこ。

「グッドぽこ!」

 ぽここから見ても、りんりの魔術の技量はまず及第点を獲得した、と認められるものであった。

「よし! ……これで私も……!?」

 次の瞬間、りんりが開いたワープディメンションから不思議な物体が飛び出してきた! 

「ニャス~!?」

 現れたのは、人魂のような小さな存在。よく見ると、髪の毛や顔らしきものも確認できる。

「な、なんだぽこ!?」

「りんり、このワープディメンションどこと繋げた!?」

 慌てるぽこことまつこの大声に、メリーとめろじゅー(×2)も駆け付けた。

「そりゃもちろん、ジェシカのところに……」

「今危険な任務中じゃなかったぽこか!?」

「やべぇ~……」

 りんりが空間に開いた穴を閉じようとする。

 

「待って!」

 慌てた様子で次々とゲートから人がなだれ込んでくる。

 その中にはボロボロな様子のジェシカの姿も。

「閉じて!」

 青髪にスーツの人物にそう言われ、急いでりんりはワープディメンションを閉じる。

「何とか、間に合ったみたい」

 そう言って倒れこむのは、白いドレスのような派手な衣装に身を包んだ少女。

「なんだ、これ」

 

 

 数刻後。

 

 意識を取り戻したジェシカが事情を説明してくれた。

「天災イヨプゥ」……りんりやぽここ達の時間遡行など、一連の事件によって引き起こされた大厄災のうちの一つ。

 ジェシカの抵抗むなしく、ワイズマン本部は崩壊。辛うじてさきほどのワープディメンションによって脱出してきたという。

 ここ、大宇宙倫理の会に逃げてきたのはジェシカと両親、白居小望、しまりん、しろいおもち、飴良ミタマ、ハーフィズ。

 

 ジェシカと母のトルーは魔術師、トルーの恋人・アークドライブ田辺はサイボーグだという。

 それを聞いた時、メリーの顔が盛大に曇ったが、りんりは気づいていない。

 白居小望は、しろいおもちによって魔道少女にさせられた高校生で、しまりんの勧誘でワイズマンを訪れたところ、巻き込まれたようだ。

 飴良ミタマは、ジェシカによると別の大厄災の被害者のようだ。

 そして、ハーフィズは「ワイズマン」所属のシャーマンなのだが……彼だけ、まだ意識を取り戻さない。

「魔術師は世界中のゲートからワイズマン本部にアクセスしている。このまま病院へ行けば不法侵入となってしまう」

 ジェシカはそう説明し、回復魔術をかける。そのジェシカも、かなりのダメージを負っており、これ以上の戦闘は不可能そうだ。

 

 りんりが白居小望に声をかける。彼女もりんりと同じく、魔術は見習いのようだ。

「どした。暗い顔して。みんな命は助かったみたいだし……」

「ひとり、って言っていいのかな。はぐれちゃったんです」

「え?」

 ワイズマン本部脱出の際、別行動を取っていたミタマと合流した小望たち。しかし、まだ別行動をしている者がいた。それが……

「ガミネ?」

「そうです。このくらいの、黒いスライム……みたいな」

「なんじゃそりゃ……いや、あのミタマってやつにも驚かされたけどね……」

 

 ワイズマンから脱出したメンバーはしばらくの間、大宇宙倫理の会でかくまうことになった。

「二人の時間がさらに減った」とメリーはおかんむりの様子だ。

 ぽここは、まつこの身の安全を守るという。

 大宇宙倫理の会ではダメージを負ったトルーとジェシカ、意識の戻らないハーフィズ、戦闘力の無いしまりんとおもち、ミタマにメリーとめろじゅーたちが残り、アークドライブ田辺が彼らを守る。

 りんりは白居小望の魔術修行も兼ね、ジェシカに代わって平和維持活動を行うことにした。

 の、だが。

 

 

 2023年3月

 

「緊急速報です。ただ今、京都市の山中で二体の巨大生物が確認されています。現在両者はにらみ合っており膠着状態ですが、周辺には被害も出ているとの情報が入っています」

 

 白居小望が驚きの表情で呟く。

「この黒くてでかいの……もしかしてガミネ?」

 りんりはテレビの前で頭を抱え叫んだ。

「こんなの私に対処できるかよ……! ジェシカ~!」

 

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