チルドレンズ   作:晩舞龍

32 / 44
スーペリアうさ江 ~ガミネ:アポカリプス~

 支歴2504年、私たちは惑星規模の災厄に見舞われた。

 50年前にこの星からはるか遠く離れた場所で観測された超新星爆発。その影響で、激しいスピードで宇宙線が降り注いだ。

 宇宙線は我々の体を蝕み、半数の人類、それもXY性染色体を持った者だけが死に絶えた。そして、私たちは子孫を残すことが不可能になった。

 

 支歴2534年改め、獣歴1年。私たちの新たな出発は、宇宙線による滅亡の危機を救うとある人物の来訪と共に始まった。

 彼女はある日突然、小型の宇宙船に乗ってやって来た。

 森へ落下した宇宙船を調査するために自警団が現場に向かう。そこに私も含まれていた。現場に到着すると、小型のフェリーのような物体が斜めになって地面に突き刺さっていた。しばらく警戒しながらその機体を観察していると、その船のハッチが開き、中から宇宙服を着た子どもが降り立った。

 それまで、我々は惑星外の存在と接触したことは無かった。

 全てが未知の遭遇だった。しかし、このまま死に絶えるだけの愚かな霊長を、神は見捨ててはいなかった。

 

「な、何者……宇宙人、か?」

 その体格から子供に見えるが、何しろ宇宙人など見たことない私たちは、電磁銃を構えながら恐る恐る近づく。

 すると、驚くべきことにその宇宙人の子どもは、ヘルメットを外しその顔を露わにした。

 生き残った私たちと同じく、女性のようだ。男性であれば、もしかしたらこの世界を存続させることが出来たかもしれない、と気落ちする仲間を横目に、私は少女に話しかける。

「はじめまして。わたしは……」

 しかし、名乗る前に彼女が口を開いた。

「○○○○○○○○! ○○○○○○! ○○○。○○○○○○○○○○○○?」

「え?」

 当たり前のことだ。我々だって、海を挟んだ土地では別々の言語を扱う。

 星の海を越えてやってきた者が、我々と思いのほか似ている外見だからついそうだと思い込んでしまったが、我々と全く違う言語体系を持っていて当然だ。

 ただ、少女の様子は、私たちに対し危害を加えようという様子ではない。

「すまない、君の言葉は分からない……だが、私たちに敵意は無い。君もそうだと嬉しい」

 すると、少女は服のポケットから、何やら通信端末のようなものを取り出した。

 改めてみると、少女は全身を水色の宇宙服に包み、そこから除く顔は幼い。

 水色に輝く髪、黄色にきらめく瞳、そして何より異質なのはその頭部から生えているようにみえる大きな漆黒の角だ。ここは私たちの常識から照らし合わせると宇宙人っぽい、という感覚を覚える。

 

 さて、少女は端末を何やらいじくり終え、それに向かって発声した。

「私の言葉がわかるかね?」

「!?」

 突然、少女……いや、少女のもつ端末から、我々の用いている言語による音声が流れだす。それは、少女がリアルタイムで話す内容を翻訳しているようだ。

「え、ええ! 聞こえてるわ! あなたは、一体……!?」

「コホン、ごきげんよう諸君。私は雪乃らぎという者だ。はるばる惑星シラユキからやってきた、研究者だ」

「わざわざ、どうも……ずいぶん大人な喋り方するのね……あ、私はうさ江。スーペリアうさ江よ。よろしく」

「よろしくうさ江君。君の眼鏡、似合っているよ! だが、もうワンポイント欲しいな! 例えばそう……うさ耳、とか!」

 

 

 この惑星に、初めて他天体からの生命体が来訪した。それだけなら、私たちは2000年以上連れ添った支歴を改めることは無かっただろう。

 彼女は、ただこの星にやって来ただけではなかった。この星の未来を、大きく変えるその一端となり、そして私たちを滅亡の危機から救ったのだ。

 

 私たちは、人類の半数である"男"が居なくなってからその生活を大きく変えることになった。国内や国家間の統治には追加の人員が必要となり、人口の減った国同士は統合されていった。

 だんだんと、人々は不安をかき消すように寄り集まって生きるようになり、この星の大地は"人の住まない廃墟のような土地"と"人口密集地のコロニー"の二種類に分かれていった。

 

 私、スーペリアうさ江が住んでいるのはダンス国のフクヤマコロニー。宇宙線で汚染されたこの町に、シラユキ星人雪乃らぎがやってきた。

 人類の数が単純に半分減っただけで、食糧不足や労働力不足はない。ただ、未来もない……町のみんなは奇異の目でこの星にやってきた宇宙人を見るが、そこに希望はなかった。ただ、退屈な毎日にささやかな変化が起きた。それだけ。

 私は廃墟と化し、今はだれも近寄らない郊外の研究施設にらぎを連れてきた。彼女の要望だ。

「ありがとう、うさ江君」

「あの、貴方はどうしてこの星に? 研究って、いったい何の?」

「うむ。私は雪乃生態研究所というところの所長をやっていてな。研究内容は生物学」

 らぎは散らかっている椅子や検査器具をどかし、重要な書類が入っていそうな棚に手を伸ばす。

「この体じゃ届かん! うさ江君、取ってくれないかい」

 私は高いところにしまわれたファイルをらぎに渡す。

「ふむ、やはり宇宙線の影響か。この星の人類はあと何人残っている?」

「そうね……恐らく、40億ほどよ」

「それだけいれば十分だな。さて、うさ江君。君たちは宇宙線によって男性が死に絶え、子孫を残すことが出来なくなった。そうだね?」

「ええ、そうなの……まさか、貴方……!?」

「私にかかれば、君たちに子どもを作ってあげることは簡単だ。ただし、条件が一つある」

「本当に!? その、条件って!?」

 夢のような提案に、私は思わず身を乗り出す。

 もう30年も、この星に新しい子どもは生まれていない。またこの星に活気が戻ると思うと、いてもたってもいられなかった。

 そんな興奮した様子の私を落ち着かせ、らぎ……らぎ博士は言ったのだ。

「君たちは私の実験に協力し、獣のDNAを宿してもらう」

 

 らぎ博士の角には、様々な動物のDNAが含まれており、それを抽出して培養。

 さらに、らぎ博士の持ち込んだ"再構築技術"で肉体を作り変える。その際、動物の要素を持ったホムンクルスとなることと引き換えに、私たちは単為生殖を可能にしたのだ。

 もちろん、生まれてくる子どもたちにも動物の要素は引き継がれる。しかし、私たちは人間であることにこだわっていられるような状態ではなかった。郊外の寂れた研究所であったその場所はいつの間にか、巨大な研究プラント施設と化し、毎日被験体希望者が後を絶たなかった。

 

 

 あれから10年。ずっとらぎ博士の助手として彼女を手伝ってきた私にも、やっと実験の順番が回ってきた。

 この星にやって来た時から、ずっと彼女のお世話をしてきたことで「実験でもし何かあって死なれちゃ困る」との理由で、こんなに遅れてしまったが、ずっと待ち望んでいたのだ。

 私の頭部から、桃色のアクリル板のようなものが二本生えている。

「これは?」

「"うさぎ"という動物の耳の部分のようだな。ああ、ウサギというのはメラノ星や凸凹星に生息している……」

 鏡に映る私の姿は、地味だった今までに比べ、パッと明るくなった印象を受ける。

 私はその時、らぎ博士と初めて会った時のことを思い出した。

「君の眼鏡、似合っているよ! だが、もうワンポイント欲しいな! 例えばそう……うさ耳、とか!」

 

 ああ、このことだったのかと得心すると同時に、あの時のことを覚えてくれていた博士の気遣いを思い、涙が零れる。

「ありがとう、博士」

「おいおい、泣くのはまだ早い。本命はあっちだろ」

 そうだった。私にも、ついに子どもができたのだ。博士とともに、新生児培養プラントに向かう。

「YK-9番。この子か。君とそっくりじゃないか! 髪も、そのうさ耳も」

「ええ、私より似合ってるかも」

「名前はもう決めてあるのか?」

 

「もちろん。私の愛する娘……」

 

 

「ヤケクソうさ子」

 

 

 

 新生児は培養ポットの中で2年間過ごし、その後やっと外の世界で暮らすことが出来る。だが、旧時代の妊娠・出産とは違い、親の直接的な影響を受けない。不慮の事故など無く、幼少期を迎えることが出来るのだ。

 そう、何事も起こらなければ。

 

 私が実験を受け、そしてうさ子が培養ポットに入った、獣歴10年。

 このアニマル星の希望であるらぎ博士がやってきてから、もう10年の月日が流れていたのだ。博士の姿はその間ずっと子どものままだ。一度、そのことについて聞いたとき、「そういう身体なのだ」と言われ、それ以上は聞かなかったが……そういえば、博士の研究の目的についてもよくわかっていない。

 実験を受ける人たちには、動物の要素を身体に取り入れることが単為生殖の必須条件だと説明していたが、彼女は最初にこう言っていた。

「君たちに子どもを作ってあげることは簡単だ。ただし、条件が一つある」

 あの時は興奮のあまり気に留めていなかったが、動物のDNAが無くてもいいといわんばかりの物言いをしていたことに、落ち着いた今になって疑問を覚えた。

 

「そろそろ教えてくれない? 博士のこと」

「いいよ、うさ江君。君には世話になりっぱなしだしねぇ」

 博士もこれ以上はぐらかせないと悟ったのか、高級な椅子にどっかりと座り、私に向かい合う。

「私は宇宙の複数の星に研究施設を持っている」

「は、はあ……」

「私の目的は、究極的には人体の全てを知り尽くすこと。ただの知識欲だよ。そのためならどんな星にも行って、いろんな生物やその星の"人類"を観察してきた。でも、宇宙にはいろんな奴がいる。もちろん、人類もそうじゃなくても。とんでもない大災害に会った時に、私はスペアの体を……今のこれもスペアの体なんだけどね。それで死なずには済む。でもさぁ、そのたびに研究施設を壊されちゃ困るんだ」

 そこで、と博士は赤いファイルを机から取り出す。

 私ですら読んだことの無い、極秘のものだ。何度か博士が持ち出しているのを見た。

「動物と人間の細胞を掛け合わせたとき、ごくまれに突然変異が起きることがある。その力は、宇宙のブラックホールを飲み込み返すほどの力だ。私もまだ、二人しか実際に合ったことはないんだけどね。その力をもつ者を生み出せば、私のボディーガードにぴったり。いい案だろ?」

「そのために、貴方は10年もこの星で……!?」

「たかだか200年しか寿命のないアニマル星人にはバカだと思われるかもしれんが、私の寿命は無限だよ。だって、いくらでも体を再構成できるんだからね。無限の研究へいざ行かん、そのための護衛作りさ」

 壮大な規模の計画を明かされ、うさ江は困惑する。

「なぜ、私たちを……?」

「そりゃ、困っている人なら、問題を解決すれば私に協力してくれるだろう? 君たちを利用したんじゃない。WinWinの関係さ」

「確かに、貴方はこの星を救ってくれた……これから、この星の人類はホムンクルスとして生きていく。でも、待って。貴方は」

 

「その突然変異が生まれれば、去ってしまうの?」

 

 沈黙。しかしそれは、答えを私に突きつけているようなものだった。

「そう……」

「大丈夫さ。君と離れることは無い」

「え?」

 ほら、と機密ファイルを開いて見せる博士。そこに書かれていたのは。

「まさか10年もかかるとはね。灯台もと暗し、というやつだ」

「私、と、うさ子、が……」

「そう。突然変異。素晴らしい! 二人にはこの星を離れ、私と共に来てもらう。私とその技術を完全には理解していないこの星はやがて、死に絶える。だが君の子孫は私が永劫に残すと約束しよう」

 私の目の前は真っ暗になり、その場にバッタリと倒れこんだ。

 

 

 確かに、私の身体能力は凄まじいものになっており、本気を出してしまえば町一つ吹き飛んでしまいそうでとても試すことなどできなかった。

「うさ子。私の愛する娘。貴方だけは、誰にも渡さない……たとえこの星を救ってくれた博士にも」

 うさ子は私が惑星外に脱出させた。まだ言葉も話せず、その両足で立ったことさえないが、うさ子もまた私と同じ突然変異だ。きっと、博士のボディーガードは危険な仕事だ。宇宙の未知に数多く遭遇することだろう……

 うさ子を乗せた宇宙船は、博士が乗ってきたものだ。外惑星の最新技術で、この星と似通った環境の星を目的地にセットした。ここに残り、博士の宇宙航行に付き合うよりは安全だろう。

 

 私のこの時の判断を、博士は軽率だと罵った。しかし、結果としては正しかった。この星が、30年前の宇宙線を上回る大厄災に見舞われる前に、うさ子を惑星外に逃がしてあげられたのは、私の人生の中でも一番の幸運だった。

 

「どうしてくれるんだ! 貴重な突然変異は一人いなくなるし、宇宙船もないし! こんな時に奴が来たらどうするんだ!」

「ごめんなさい、でも……? 博士、"奴"って?」

「以前、私の研究施設を破壊した、宇宙生物だ! ブラックホールみたいになんでも飲み込んでしまう! だから、ブラックホールすら破壊する突然変異の力が必要なんだ」

 言の葉は時に力をもつ。それは星の海を越え、運命の糸を手繰り寄せる……

 はたまた、"奴"はらぎ博士を以前から狙っていたのか。

 もしかしたら、自分を脅かす突然変異の存在を感じ取ったのかもしれない。

 

 理由は不明だが、私と博士の関係が最悪になったタイミングで、災厄は突然やってきた。

 

 

「あれが、ブラックホール……」

 街の上空は陰に覆われ、恒星の光はほとんど届かない。その巨大な黒い球体が、以前博士の研究施設を飲み込んだ生命体だという。

「宇宙生物ガミネだ。うさ江君、あいつをお前に倒してもらう。だがその前にもう一仕事だ」

「はい……え?」

 

「うさ江君。君が奴に負けて死んだら、貴重な突然変異体が私の手に一つも残らない。それは困る。だから、もう一人生んでいってくれ。もちろん、そのためにはもう一種類の動物の細胞を取り込んでもらう必要があるがね」

「……え、動物のDNAって子ども一人に一種類って感じだったの!?」

「食いつくところそこかよ……これから死ぬかもしれないんだぞ」

「私は死なない。絶対にうさ子とまた会う日まで」

「そうかい。じゃ、二人目よろしくな」

 

 

 

 

 軍の攻撃を受け、ガミネの巨体から黒い肉片が零れ落ちる。それは、瘴気へと変化し町の人々を蝕んだ。

 ガミネの襲来から二か月で、既に30億人のアニマル星人は死に絶えていた。

 その間、うさ江は何度もガミネへのアタックを繰り返した。本来町を一つ破壊することのできる一撃は、瘴気を帯びた肉塊を飛び散らせ、周辺の街を地獄へと変えるだけだった。そんな戦いを繰り返し、うさ江は……私が軽口をかけることもはばかられるほどに精神を疲弊させていた。

 そんなうさ江の唯一の喜びは、培養ポットで眠る第二子・ディシプリンうさ美だった。私の乗ってきた宇宙船はうさ子と共に宇宙の彼方。ここでガミネを止められなければ、うさ江や私もろともうさ美も死ぬ。

 

「私に三つ目のDNAをちょうだい」

 25回目のガミネへの攻撃作戦が失敗した日、うさ江から提案があった。

 うさ江はうさ子を産んだ時に「うさぎ」のDNAを、うさ美を産んだときに「イノシシ」のDNAをすでに取り込んでいる。

 未だ、二種類のDNAをその体に宿したものはいない。うさ江はヤマアラシの能力さえ突然変異体の効果によって糧としたが、これが次もうまくいく可能性は無い。

 

「死ぬなよ、死んだらうさ美も研究施設もおじゃんだ」

「わかってるわよ!」

 娘を守るため、うさ江は三度目の実験によって「トラ」の力を我が物にした。

 

 

 それから二か月。

 その星にもはや生物はいなかった。廃墟の星。

 空を覆う巨大な黒き巨体・ガミネが見下ろす眼下には、すでに半壊した研究施設。

 そこには、数十人の子どもたちと、この星の最後の砦・最強の戦士スーペリアうさ江がいるのみだった。

 

 数日前のガミネの端末子機による襲撃で博士はうさ江のことを身を挺して守った。

 彼女は死んでも別の体があると言っていた。しかし、ここであの体を捨てた以上、うさ江やうさ美の回収は諦めたということだ。

 いや、好意的に解釈するなら、彼女はうさ江を守りたかった……それほどの価値や友情を認めていたのかもしれない。

 うさ江は空を見上げる。だんだんと、巨大な瞳が大きくなっていく。このままではいずれ全員、あの巨体に押しつぶされて死ぬ。

 うさ江の体もすでに限界だった。

 うさぎ、イノシシ、トラだけでなく、鼠、牛、龍、蛇、馬、羊、猿、鳥、犬……

 既に十二もの生物の力を取り込んでいた。そのパワーでガミネの体の半分を削ったこともあった。もちろん、そのあとの被害は言うまでもない。これ以上の強化はうさ江の体が耐えきれない。それ以前に、彼女に新たなDNAを与えてくれる博士はもういない。

 うさ江は、もうあのガミネには勝てないと悟っていた。

 しかし、ここで死にゆく我が子や子どもたちを見ることは耐えられなかった。

「うさ美、ごめん……守ってやれなくて……そして遠い星にいるうさ子……どうか私のことをたまにでいいから思い出してほしい……」

 

「あなたは私のことを、幼いころにあった知らない人……いや、実在する人物だとも思っていないかもしれない。夢で見たひとだと。もしかしたら忘れてるかも」

 

「でも、私はあなたの母親だよ。いつだって、あなたを愛してる。見守ってる」

 

 うさ美は、年上のデキルコとら子という子に遊んでもらっている。この数分後には死が迫っているとも知らずに。

 

 でも、それでいいとうさ江は思った。この星の生物が全て死に絶える、その瞬間が我が子の笑顔なら、それで……

 うさ美はうさ江の突然変異を受け継いでいる。ウサギとイノシシの二つの能力はガミネに対抗するもう一つの力となる。だが、うさ江と共に戦うには幼すぎた。

 

「うさ美、お母さん行ってくるね!」

「まま」

 振り返らず、空を飛ぶ。

 この力は鳥と龍の力だ。

「うわあああああ!!」

 もはや決死の特攻だ。半狂乱になりながら、その目は真っ直ぐにガミネをとらえる。

「私は、私たちは、お前を許さない!! お前にとっては雑草かもしれないけど……私たちが何をした!」

 滅びの運命を一度は逃れたアニマル星。だが、彼らに待っていたのはより強く、より大きく、決して逃れることのできない滅亡への宣告だった。

 

 ここに、最後までその滅びに抗った者がいた。名を、スーペリアうさ江。

 最後のアニマル星人。

 

 

「まま?」

 うさ美が何かを感じ取り、外へ出ようとする。とら子や他の子どもたちに止められる。すると、ボロボロになって歪んでいるドアが開いた。

 先ほど、うさ江が出て行ったそのドアが。

「まま!」

 

「やァ」

 そこにいたのは、うさ江ではなかった。青い髪。そこから覗く、昆虫のような触覚。そして、吸い込まれそうな金色の瞳。怪しげな雰囲気の女性が、子どもたちに明るく声をかけた。

「おーいみんな、こっちこっち!」

 

「あ、あなたは……?」

 子どもたちの一人が聞く。

「私はリア。みんな、これから楽しいところへ行こう。平和と幸せの楽園へ!」

「たのしいとこ!?」

 ガミネの襲来によって、周りの大人たちが死んでいくのを見ていた子どもたちにとって、それは抗いがたい提案だった。

「さあ、このゲートを通って。急いで急いで!」

 疑うことなく、ゲートの先の光を目指して、子どもたちが駆け込む。

「ほら、あなたも」

 リアが最後のひとり、うさ美の背中を押す。

「ままは? ままがまだきてない」

「あァ……死んだよ」

 

 その日、アニマル星は消滅した。ブラックホールの如く、なんでも飲み込む宇宙生物・ガミネによって。

 

 

 

「クソッ!」

 雪乃らぎは、どこかの惑星にある別のボディに精神を戻していた。彼女の目標である突然変異体は、ついに回収は叶わなかった。

「また一からやり直しか……まあ、気長にやるかぁ……」

 

 

 

 

 11年後。長い長い航行を経て、ヤケクソうさ子はとある辺境の星に到着した。

 生まれも、自分の親さえ思い出せないまま。

 ただ、その星……地球に到着した際に対応してくれた「ワイズマン」という組織が、宇宙船に残された情報を彼女に教えてくれた。

 アニマル星出身、ヤケクソうさ子……それが自分の名前だと。

 

 

 

 その数年後

 

「リーア様。おはようございます」

「おはよう、デキルコとら子。それに、ディシプリンうさ美」

 あの日惑星滅亡を逃れた子供たちは、リア……トンア星人リーアに連れられ、"楽園"にやってきていた。

 

「次の星は……地球だ。この星でも、子どもたちを救わなきゃね。君たちにも協力してもらうから、頼んだよ」

「「はいッ!!」」

 

 

 




新登場マシーナリーチルドレン
雪乃らぎ

補足(元ネタ)
スーペリアうさ江、ディシプリンうさ美、デキルコとら子…ヤケクソうさ子twitterより
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。