「自己紹介がまだでしたね、私はマトンよう子。羊の獣人です」
「そしてわたしは蛇の獣人・ジャクズレあけ美。改めて以後よろしく」
アニマル星人。
うさ子は幼少の頃……物心がつく前に地球にやってきた。
宇宙からの来訪を当時制限・管理していた魔術組織・ワイズマンによって、不時着した宇宙船は回収され、その時にうさ子の出自について教えてもらったのを、うっすらと覚えている。
偽りの戸籍と、頭部から生えた謎の突起。そして、不時着時に着ていたこの星のものではない服。それらはうさ子がこの星の人間ではないことを雄弁に物語ってはいたが、いかんせん元の星の記憶はない。
うっすらと捨てられたのか事故だったのだろうと考えていた彼女にとって、まさか同郷の存在が自分を訪ねてくるとは思ってもいなかった。
「場所を変えて話そう」
うさ子の提案に二人は頷き、11子とちあもを残してうさ子はアパートを出る。
広い空き地に出た。案外、こういったところの方が内緒話をするには都合がいい。カフェや雑踏では、誰が聞いているか分からない。ワイズマンは壊滅状態だが、海外の諜報機関などの危険もある。
「それで、あなたたちの目的は何?」
単刀直入にうさ子が問う。
「私たちの仲間になってほしいのです。そして、リーア様に仕えるアニマル星人の勇士の一員となりましょう」
「リーア……様?」
マトンよう子は訥々と話し続ける。その瞳には仄暗い狂気が感じ取れる。
「リーア様は、滅亡の危機にあった私たちアニマル星人の子どもたちを救ってくださった……私たちだけじゃなく、全宇宙の子どもたちを」
アニマル星は既に、宇宙生命体ガミネという存在によって滅ぼされたという。うさ子にとってはあまり実感がわかなかった。
その時、彼女たちアニマル星人の生き残りであった十数人を救ったのが、"リーア様"というトンア星人らしい。
トンア星人は宇宙をめぐり子どもたちを集めて"楽園"に住まわせ、そのなかでも特に優秀な戦闘能力を持つアニマル星人たちを、惑星の探査・斥候として使役している……
それが、うさ子が受けた印象だ。
マトンよう子の話には言葉の端々に怪しいところがあった。
それは、ウソをついているという様子ではなく……
特に気になったのは、"子どもたち"や"楽園"といった単語だ。
なぜ子どもだけを集めるのか。楽園とは何なのか。
「その星の大人はどうするの? 子どもと引きはがすってこと?」
うさ子が問うた。
「そうだね」
よう子は表情を一切変えずに返答する。
「現住成体人類と幼体人類を隔離し、リーア様が子どもたちを正しく導く。醜い成体は駆逐する」
よう子は驚愕の事実を口にする。しかも、それに何ら疑問を持っていないようだ。
だが、それも仕方のないことだ。うさ子が様子を伺う限り、そこに疑念などはいっさい介在していない。幼少のころから"リーア様"とやらの洗脳教育を受け、トンア星人のおぞましい凶行を常識と信じて疑うことをしないのだ。
「わたしは断る。そして、トンア星人を止める」
うさ子は悟った。次のターゲットはこの星、地球だと。大人が滅ぼされ、子どもたちはトンア星人の傀儡となる……そんな未来は断固として御免被る。
「うさ子!」
11子が走ってきた。手にはうさ子愛用のチェーンソー。こうなることを見越して持ってきたそれを、11子は思い切りブン投げる。うさ子は飛び上がりながらそれをキャッチし、よう子の脳天目掛けて斬りかかる。
よう子は懐から即座に、何やらトリガーらしき機構の付いた機械を取り出し、チェーンソーを受け止めた。
ガキィンと激しい金属音が鳴り響き、チェーンソーはうなりをあげてあらぬ方向へ弾かれる。
「何て硬い金属……」
「私たちにあなたは勝てない……なぜなら、リーア様の開発してくださったこの"リーアライザー"があるから……」
よう子はうさ子から距離を取ると、その機械・リーアライザーの……まるで銃のようなそれの……銃口に似た部分を胸に向けて押し付け、トリガーを引いた。
「リアライズ!」
彼女の胸の奥に宿る、親より受け継がれし生命体の遺伝子が現実のものとなって彼女の体に発現する!
衝撃波がよう子を中心として発生し、彼女の頭部にあるアニマル星人特有のアクリル製の耳を押しのけ、螺旋状の大角が生えてきた!
ヤケクソうさ子 第二部 獣人編
第二話 「リアライズ」
かざして光る!掲げて鳴る!君もイナリマンに変身だ!
DXイナリスティック!
そして、闇の力を手に入れろ!
DXリーアライザー!