チルドレンズ   作:晩舞龍

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凸凹シスターズ

「スゥーッ…………」

 安心してほしい。決して私は、危険なものを吸引しているわけではないのだ。

 私の両手に包まれているのは、我が家で飼育しているハムスターだ。

 この子を"吸引"することで、日々のストレスが緩和され、私の心の健康が保たれているのだ。

 私は社畜のアラサーOL・姫寺まつこ。SEとして働き、休日はこうして充実した時間を過ごしている。

 私はこの時、知る由もなかった。どこにでもいる普通のOLだった私が、まさか宇宙人と出会うことになるなんて。しかも、その宇宙人と家族になるなんて……。

 

 その日はよく晴れていた。休日なので家でダラダラしようかとも思ったが、ふと気が向いて買い物に出かけることにした。それはただの偶然だった。だから、その出会いは運命のようなものだったと思う。

 外を歩いていると、人々が空を見上げて何か指さしている。つられて上を見やると、青空に浮かぶ点。それはだんだんと近づいてきている、そう思った時にはもう遅かった。

 私の眼前には、カラフルな謎の物体があった。

 あまりに一瞬のことに、悲鳴を上げることも回避すらも間に合わず、脳に大きな衝撃が来る! 

(なになに!? なんだこれ!?)

 

 気づくと、私の視界にはブッ倒れた私が映っている! 

(私、もしかして死んだ!?)

 自分の手や体に意識を向けると、透明になっており後ろの地面が透けて見える! 

(なんかアニメとかで見る幽霊みたいだ)

 倒れた自分の様子を伺うと、近くにはカラフルで奇抜な恰好をした女の子。彼女が空から落ちてきたのか? 空から女の子が落ちてくるのもアニメの中だけだと思っていた。声が届くのかは分からないが、一応お~いと叫んでみる。

 すると周りの人々は誰一人気づかない様子だが、そのカラフルな女の子だけは私の方を向いた。

 

「ごめんぽこ!」

(ぽこ?)

 そう言うやいなや、その少女は私の倒れた体を掴み、もう一度頭突きした。

(ちょっ何して……ぐわっ!?)

 強く引っ張られる感覚とともに、目の前に少女の姿が映った。

「あれ、元に戻ってる!」

 私は、先ほどの頭突きで元の体に戻ってきたようだ。まだ頭がヒリヒリする。

 周囲の人たちの奇妙な視線に耐えかね、私はカラフル少女の手を引いて自宅まで帰ることにした。

 

 それからは怒涛の質問攻めだ。なにせ先ほどから一つも状況が飲み込めていない。

「まず、あなた何者!?」

 少女は銀河のように美しい瞳をぱっちりと開き、こちらの質問に答え始めた。

「あなたのハートに急降下! 凸凹星からやってきた宇宙人、凸星ぽここぽこ~!」

「宇宙人? あんたが? 私のハートじゃなくて、頭に激突してきたみたいだけど……」

 確かに、彼女は服装だけでなく髪色も瞳もすべてがカラフルで、私の鼠色の髪とは対照的だ。

「わかった、いったん宇宙人だということは認めよう。ぽここって言ったね、あなたはさっきのこと説明できる?」

 さっきのこととはもちろん、空から落ちてきて私に激突、そして幽体離脱現象だ。

「もちろんぽこ! ぽここは宇宙船が故障してこの星に落っこちちゃったんだぽこ」

「なるほど、それで空から……一応わかった。それでそのあとは?」

「お姉さんが死んじゃったぽこ!」

 

「は? ちょっと待って! じゃあ私は……今なに? ゾンビってこと?」

「ゾンビ? はよくわからないけど、お姉さんは生き返ったから大丈夫ぽこ」

「生き返った~!?」

 すでに私の頭はパンク寸前だ。しかし、彼女の話を精一杯解釈していく。

「ぽこのせいでお姉さんは魂……正確にはアストラル体が肉体から離れてしまったぽこ。でも、ちょうどよくお姉さんとは頭突きでぶつかったから、肉体にダメージはなかったぽこ!」

「? 確かに、私の体はちょっとおでこが痛いぐらいだけど」

「ぽここたち凸凹星人の頭部には、エネルギーをアストラル界に送る力があるぽこ! そのおかげで、ぶつかったときのエネルギーはどっかいったぽこ」

 なるほど、わからん。

「でも同時に、お姉さんの魂までアストラル界……分かりやすくいえば死後の世界に行っちゃったぽこ」

「なるほど、それでもう一回頭突きして戻してくれたってわけね」

 コクコクと頷くぽここ。

「私は姫寺まつこ。まあ今回は不幸な事故ってことで、あんま気にしなくていいよ」

 もともと一つのことに頓着するタイプではないが、そんなことよりも宇宙人に出会ったという衝撃で一度死んだ(?)ことなど頭から飛んでいた。

「じゃあ、まつこお姉ちゃん! よろしくぽこ!」

「よろしくって……あ、でも家に帰れないのか、しょうがないな……じゃあ、えーと、よろしくぽここ」

 こうして私たちは、星を超えた姉妹になったのだった。信じられない? 突拍子すぎる? 私もだ。

 

「この子はなんて言う生き物ぽこ?」

 ぽここが見つめていたのはウチで飼っているハムスター。

「ああ、ハムスターだよ。ぽここの先輩だから仲よくしろよ」

「ぽここはペットじゃないぽこー!」

 プリプリと頬を膨らませて起こる様子はまさにハムスターだ。

 

「お、アイドルアニメか」

 ぽここがテレビに向いて熱心に画面とにらめっこしている。

「現実のアイドルはなんだか争ってていやな感じだったぽこ。でもアニメのアイドルはすごくキラキラしててステキ! ぽこに衣装も似てるし!」

 たしかに、ぽここの服はアイドル衣装のようにも見える。

「確かに、言われればアイドルに似てるかも。ぽここのほうがよっぽど派手だけどね」

「フフーン!」

「ほめたわけじゃないけど……まあいいか」

 

「DX姫寺タイマー?」

 私が以前作ったプログラムだ。

「特撮で出てきたタイムマシンの話が好きでさあ。私が作ったのは時計のプログラムだけどね」

「じゃあぽここがタイムマシン作ってあげるぽこ!」

 そういうとぽここの手から何やら不思議なキラキラのオーラが出始めた。

「はぁ? って、おい! なんかやばいぞ!」

 ボンッ!! 

 魔法のように突然に、目の前にタイムマシンらしき二人乗りの乗り物が出現した。ドーナツ型でどちらかというとUFOみたいだ。

「デカッ! 片付けて片付けて。ていうか、宇宙船は直らないの?」

「う~ん、この星は凸凹星と環境が違いすぎるから無理そうぽこね」

 タイムマシンは出せるのに……? と思う私なのであった。当のぽここは帰れなくなったことをあまり気にしていなさそうではあるが。

 

「ぽこ!」

 出かけようとした私をぽここが止めた。

「どうした?」

「午後は絶対雪が降るぽこ! 傘もってくぽこ!」

「まだ雪には早いと思うけど……予報でも降るとは一言も言っていなかったし」

「ふふん、これは未来予知ぽこ」

「ホントなんでもできるのなお前」

 なんでも、自分に関することには使っていないが、私を心配して使ってくれたらしい。ありがたいことだ。

 ちなみに、その日は本当に雪が降った。宇宙人とはすごいものだ。

 

 

 なんだかんだで、成り行き上宇宙人と共同生活を送ることになったのだが……結論から言うと、非常に面白い。

 ぽここのやることは想像を超えてくる。たまにだけど。

 そして、独身だった私が家でも多少明るくふるまうことが増え、結果的に前より元気になっている気がする。

 不幸な事故から始まった不思議な関係だが、案外うまくいくものだ。

 これから先いろんなトラブルがあるだろうが、まあ何とかなるだろう。

 だってぽここは、すごくて可愛い、宇宙に一人だけの私の妹なのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんだかすごく、いやな予感がするぽこ……」

 その日は良く晴れた休日だった。家でダラダラしていた私に、ぽここはそう言ってソワソワしている。

「何、また天気予報?」

「天気予報じゃなくて未来予知! 雪が降るよりずーっと悪い予感がするぽこ!!」

「まあ、ぽここがいるし何とかなるだろ」

 そう余裕で構えていた私とぽここの耳に、甲高いチャイムが飛び込んできた。

 

 ピンポーン。

 

「うわ、タイミング悪いなあ。未来予知ってこれじゃないよね?」

「……」

 ぽここは黙って、我が家のドアをにらみつけている。

 すると、ドアの向こう、チャイムを押した人物がノックをし、声をかけてくる。

 

 コン、コン

「こんにちわ~。大宇宙倫理の会で~す」

 

 

 

 

 

 つづく

 

 

 

 




姫寺まつこと凸星ぽここの二次創作小説。

補足(元ネタ)
姉妹関係、ペットのハムスター、DX姫寺タイマー、その他一部設定:姫寺まつこ及び凸星ぽここの動画、配信、twitterより
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