「先生、おはようございます!」
爽やかな朝、キラキラな声、とびきりの笑顔。
月曜日の朝が憂鬱な人がいるって聞くけど、
きっと嘘。
「おはよう。今日も元気ね。宿題はちゃんとやってきたかしら?」
いたずら心に駆られ、明るく聞いてみた。
とびきりの笑顔を貼り付けた彼女は口ごもる。
「えーっとー・・・」
私はほほえみを継続する。
ついに笑顔がほつれた彼女は
突然、
「第一戦速!」
そう叫んで彼女は校舎へ駆けていった。
逃げられたわ・・・。
そもそも私は宿題を出していないのに。逃げるなんてあんまりよ。
「あらあら、そんなに私って怖いかしら」
うそぶきながら私も校舎に向かう。
玄関の前では榛名先生と霧島先生がマイクチェック・・・ではなくて服装チェックをしていた。
捕まっているのは陽炎さん。
「スカートの丈が短すぎます!膝上10センチまでといつも言っているでしょう!」
眼鏡を光らせながら霧島先生が叱るけれど、
「いいじゃんこれくらい。セーフセーフ。」
陽炎さんは応えていない様子。
「よくありません!校内の風紀が乱れます!」
「霧島先生の脇見せのほうがよっぽど風紀を乱していると思いまーす!」
・・・不毛ね。
艤装を呼び出そうとする霧島先生を榛名先生が押しとどめるのを横目に確認しつつ、手早く下駄箱で靴を履き替え、職員室への階段を上る。
扉を開けると、先生方はほとんどそろっていた。
玄関の攻防は避けて正解ね。参戦していたら遅刻は確実だわ。
先生方は朝礼が始まるまでのひとときをそれぞれに過ごしていた。
授業の準備をする先生、
質問に来た生徒を教える先生、
紅茶を飲んで一息つく先生・・・金剛先生余裕綽々ね。
明日からはもっと早く来よう。
堅く心に誓ったわ。
席について私も朝礼の準備を始めると、提督が職員室に入ってきた。職員朝礼が始まる。
提督からのお話が終わり、加賀先生からの各種事務連絡を聞き終えた頃、姉さんがやってきて席に座った。
「おそよう、姉さん」
にんまりしながらささやく。
「あぁ」
姉さんは意に介さない。
「重役出勤じゃない」
「校庭20周して、シャワー浴びてたからな」
・・・おかしいわね、職員朝礼より自主トレのほうが大事って聞こえたような。
「事務連絡を聞いておかないと生徒たちが困るわよ?」
と半ば自分を棚に上げて文句を言うと、
「事前に加賀先生から聞くべきことは聞いている。問題ない」
姉さんは言い切った。
提督からのお話は聞かなくていいのね・・・。
「おまえこそ、もっと早く来るべきじゃないか?朝礼が始まるぞ」
!
そうだった!支度中に職員朝礼が始まったから、まだ朝礼の準備が調っていなかった!
慌てる私を尻目に、姉さんは既に準備してあった出欠簿とプリントを携え立ち上がる。
私も急いで後を追った。
駆逐艦クラス担当の姉さんとは途中で別れ、私は重巡クラスの教室に向かう。
「鈴谷の甲板ニーソ、そんなに触んないでって、もーっ!」
黄色い声が飛び込んできた。
「レディの嗜みの一つですわ」
確実に熊野さんね・・・。
「何やってるの!早く教室に入りなさい!」
一応叱ってはみるけれど、熊野さんには柳に風。
「鈴谷さん、行きましょ」
すました顔で熊野さんは鈴谷さんの手を取り、教室に駆け込んでいった。
「朝から見せつけてくれるわね・・・」
ため息をつきながらも、つられてつい姉さんに思いを走らせてしまう。
最近姉さんとお出かけできてないし、今度映画にでも誘ってみようかしら・・・恋愛ものはいやがるかな。
って違う!教室の前で不謹慎だわ!
顔が赤くなっていないか廊下の窓ガラスで手早く確認して、そのまま窓ガラスの向こうの自分に向けて気合いを入れ直す。
今週も一週間がんばるわ!
振り返って教室のドアを開ける。
そう、月曜日の朝が憂鬱な人がいるって聞くけどきっと嘘。
「「陸奥先生、おはようございまーす!」」
花畑からのハーモニーに気圧されながらも、負けない笑顔で返す。
「はい、おはよう」
だってこんなに素敵に一週間が始まるのだもの。