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部屋に踏み入れれば、部屋の中にあった視線が全てこちらへ向く。とは言っても、その視線は2人分だけど。
「こんにちは。僕が来ましたよ」
「ロミオさん」
部屋にいたのは、アーミヤとケルシー。ケルシーが相変わらず、じっとこちらを見ているのが怖いけど最近は慣れた。
「それで、一体何の用ですか?」
「はい。単刀直入に言います。……ロミオさんに、ある作戦に加わって欲しいんです」
いつになく真剣な様子で、アーミヤが言う。いや、真剣なのはいつもの事だ。だけど、どことなく空気が重い。
なぜだか、嫌な予感がする。僕の嫌な予感は、的中率八割だから本当に嫌だ。
「作戦に、ですか?」
「はい。とても、重要な作戦です。そのために、ロミオさんの力も貸してほしいんです」
「いえ、それは良いんです。恩もありますし、エリートオペレーターでもありますから。それで、作戦……とは?」
どうか、「嫌な予感」が外れる二割の方を引き当てて欲しい。
でもそんな祈りも虚しく、予感は的中する。
「─────『ドクター』奪還作戦です」
◇◇◇
まず思ったのは、「来ちゃったか」だ。そして同時に、やはりここは平行世界か何かなのだろうと思った。
時々わすれかけるが、自分も一応『ドクター』だったものだ。今じゃどちらかと言うと『先生』のほうがしっくりくるけど……。
「『ドクター』については……ご存知ですよね?」
「ええ、まあ。知ってる前提で大丈夫です」
「それなら進めますね。そのドクターを救出するための作戦に、ロミオさんの力も貸してもらいたいんです」
ウルサス帝国の移動都市、チェルノボーグ市。そこの秘匿施設で治療されているはずの『ドクター』を奪還する作戦。
本来ならそれだけなのだが、そこに武装蜂起したレユニオンが加わることによりかつてない渾沌へと動いていく。
アーミヤが言うには、『レユニオン・ムーブメント』が不穏な……不審な動きを見せており、数日も経たずに蜂起するだろうということだ。
元々は僕が参加する予定は無かったのだけども、レユニオンの動きからして、僕を投入した方が良いとの判断になったそうだ。
「ロミオさんには、医療班の警護と、万が一集団で襲撃してくる方々がいた場合にその足止めをお願いしたいんです」
いうなれば遊撃隊とかそんな辺りだろうか。いや多分、言葉の使い方が違うな。
さてここで、「エリートオペレーターなのに自分の隊ないの?」という疑問が出る人もいるかもしれない。
結論から言えば、僕は今のところ隊を持っていない。基本的に、現場の人員にあわせて動いたりとかで単独行動のような感じだ。
まあ、もしも生徒達がもう少し成長したりして彼らが望むのならだけど、「先生の隊に入りたい」って言われたりもしているから、彼らが隊員になる可能性もある。
「わかりました。やり遂げましょう」
「では、作戦の日付ですが────」
諸々、必要な情報を聴いた。
◇◇◇
そして、だいたいのことを話し合い終わった後。
「それでは、お願いしますね。私は少し用があるので、先に失礼します」
そう退室していったアーミヤを見て、自分も一旦部屋へ戻ろうかと扉へ向いた時だ。
「……待て」
「はい?まだ何か用でも?」
ケルシーに呼び止められた。
「用という用では無い。しかし、聞いておかなければならない事だ」
「はあ」
こちらも、真剣な表情だ。……まさかとは思うけど、自分が『ドクター』だとでも気づいた……んなわけないか。
「『ロミオ』。君は、『ドクター』について、いつどこで知った?」
「どこ、と言われましても……まあ、オペレーターの間とかで話くらいは」
「そうじゃない。君自身が……いや、いい。戻ってくれ」
何を聞きたかったのだろう?と言う疑問は残れど、これ以上何か言われてもなと思ってさっさと退出した。
………作戦決行は3日後。